異世界イチャラブ冒険譚

りっち

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642 ※閑話 失伝 分岐点

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「エデン。クラン。そしてパンゲニアか……。テレスとガイアを合わせると、少なくとも5つの世界がコラプサーに飲み込まれてしまったのね……」


 周囲に私たちしか居なくなった途端、コルが悲しげに呟いた。


 新たに滅亡させられた世界から人が送られてくるたびに、リーダーであるコルの両肩には新たな重みが圧し掛かっているんだろうな……。

 私たちが責任を感じたって仕方ないけど、コルは真面目だから……。


 この世界での生活が安定し、ガイアから来た人たちとも良好な関係を築けていたある日、またしても新たな人類が異界の門を通ってこの世界に現れた。

 新たに現れたのは、エデンと呼ばれる世界からの来訪者だった。


 しかし、話はコレで終わりじゃなくって……。

 エデンから来た人たちのお世話を焼いているうちに、更にはクランと呼ばれる世界の住人と、パンゲニアと呼ばれる世界の住人が、コラプサーに襲われてこの世界に逃れてきたの。


 ガイアの人たちが子供を生み、少しずつこの世界にも人の歴史というものが始まったような気がしていたのに、こうも滅亡を突きつけられると心が折れちゃうよ……。


「5つもの世界が滅亡を向かえたこの事実を、どのように捉えたらいいのかしらね……? 私たちが異界の門を調整したせいで、滅亡が早まってしまった世界もあるのかしら……」

「……コルー。気持ちは分かるけど、それを考えても意味無いぜー? 気持ちは、分かるけどさぁ……」


 コルとカルが、普段からは想像もつかないほどに落ち込んでしまっている。

 無理もない。異界の門を閉じるアイディアを出したのはカルで、それにゴーサインを出したのはコルなのだから。


 私だって実際に世界樹を生み出してしまったわけだし、責任を感じていないわけじゃないけど……。

 指示に従って任務を遂行しただけの私より、作戦を立案したカルと、それを決断したコルのほうが強いストレスを感じてしまっているんだろうな……。


「……滅んでしまった世界の事を考えても仕方無いけど、だからと言って考えないわけにもいかないわよね」

「コル?」

「滅んでしまった世界の為に私たちが出来ることは……。各世界から送られてきた最後の人類を、ちゃんと繁栄させてあげることだと思う、かな……」


 私の心配を余所に、自らを奮い立たせて前向きに振舞うコル。

 きっとまだ頭の中はグチャグチャのはずなのに、それでもリーダーとして前向きに振舞おうとするその姿に、何故か私は泣きそうになってしまった……。


 涙を堪えて言葉を詰まらせる私に構わず、コルが話題を切り換える。


「新しく訪れた人たちは、いずれもガイアの民より魔法適正に優れていたわ。けれど魔法文明自体は殆ど栄えてなかったらしくって、魔法の類は一切習得していないそうよ」

「身体能力は高いから、私の代わりに自分たちで魔物を狩れるのはありがたいね。これで私が居なくなっても、この世界の人々は魔物の恩恵を受け続けられるだろう」


 今までたった1人で魔物を狩り続けてきたミルが、安心したように胸を撫で下ろしている。

 ガイアの人たちも魔物を狩れないわけじゃないんだけど……。ちょっとだけ頼りないんだよね。


 けれどエデンからきた人たちは魔力操作が得意で、自分の魔力を色々と加工して魔物と戦うことが出来ているし、クランから来た人たちは魔力を目で見ちゃうことが出来るらしいのよね。

 パンゲニアから来た人たちは、青い魔力を鎧のように纏って戦うことが出来るみたいなの。


「ん~……。私たちが居なくなっても魔物から魔力結晶が得られそうなのは朗報なんだけど……」

「ん? コルは何が引っかかってるんだい?」

「種族毎にここまで能力差が激しいと、将来的に人種差別のようなことが起こりかねないわ。だから脆弱なガイアの民をサポートするような要素が無いと不味いかなってさ」

「種族差……。差別、か……」

「今は私たちも居るし、彼らも等しく世界の滅亡を経験した同士なんだけどねー。いずれは私たちだって居なくなるし、世界の滅亡を知っている人が誰も居なくなる時が来るでしょ? その時に今の身体能力差は結構厄介だと思うのよ」


 確かに、他の世界からきた人類と比べて、ガイアの民だけ極端に脆弱だと言っていいのよね。


 最も身体能力に優れたパンゲニアの民と比べると、筋力も反射神経も持久力も、ありとあらゆる要素で大きく劣ってしまっている……。

 確かにコレだけ極端だと、差別や迫害の温床になりそうだけど……。


「かと言って、ガイアの人たちだけを優遇するのも不味いよね……。何らかのサポートをするなら、それは全員に……。もしかしたらこのあとにも転移してくる人たちにも適用されるものでないと……」

「うんうん。流石メル。私の言いたいことは全部分かってるみたいねっ。じゃよろしく~っ!」

「あっ、コルってば! 毎回同じ手は食わないんだからね~っ! ちゃんとみんなも協力してよっ!?」

「…………ごめんメル。私は他にやりたいことがあるから協力出来ないかな」

「えっ、ミル……?」


 コルが作ってくれたおちゃらけた雰囲気が、真剣なミルの発言によって霧散する。

 驚いて彼女の顔を見ると、見ているこちらが気の毒になりそうなほどの申し訳無さそうな表情を浮かべたミルが、全員に向かって強い決意と覚悟を表明する。


「……戦闘員ミルザエシスから、リーダーのコルモマエサに提案するよ。この世界での私の役割は既に終えたと判断して、今後は来るべきコラプサーの接近に備え、奴を撃退する方法を研究させて欲しいんだ」


 フルネームで呼び合う時は、私情を挟まない真剣な話。

 それが私たち4人で決めたルールだった。


「……確かにコラプサーへの備えは必要だけど、アテはあるのかしら?」


 突然の提案に驚いたコルだったけれど、フルネームを呼ばれたことで一気に表情を引き締め、越界調査隊リーダーの顔になってミルを問い質す。


「アテから探すような状況であれば、リーダーとしては貴女を遊ばせておくわけにはいかないわよ?」

「奴にも移動魔法が効果を発揮することはテレスに居た頃から分かっていたし、奴自身も越界転移して来ることから間違いないよね? だから移動魔法を研究して、転移を攻撃に応用する方法を研究しようと思ってる」

「移動魔法を攻撃にですって!? そんなこと、本当に出来るの……?」

「……コルが無理だと言うなら諦めるし、判断に従うよ」


 自分の話はあくまで提案で、リーダーであるコルモマエサに逆らう気は無いという事を強調するミル。

 コルの判断に従うけれど、そのコルにゴーサインを出して欲しくて、彼女は懸命に研究の必要性を訴える。


「だけど魔力を喰らうコラプサーに対しては、どれだけ威力を高めようとも攻撃魔法じゃ意味が無いんだ。奴に魔力を吸収されずに効果を発揮できる移動魔法なら、って思ったんだよ」

「…………」


 移動魔法を攻撃に転用する。

 そのあまりにも意外なアイディアを受けて、コルは沈黙してしまう。


 黙りこんでしまったコルを見て、カルと思わずため息が零れる。

 迷って答えが出せないなら、そんな時こそ私たちに相談してくれればいいのにぃ。


「コル。私はミルに賛成だよー」

「……理由は?」

「現状でミルの戦闘力が必要な事態は想定出来ない。ならここに縛っておく方が貴重な人員を遊ばせてしまう事になっちゃうぜー?」

「私もそう思う。移動魔法を攻撃に転用するなんて出来るかどうか分からないけど、相手は次々に世界を滅ぼすくらいの規格外の存在なんだもん。真っ当な手段じゃ対抗できないと思うんだ」


 私とカルで、ミルの提案を後押しする。


 移動魔法の攻撃転用は突拍子もなくて実現できる気があまりしないけれど、仮にそれが駄目でもコラプサーへの備えは絶対に必要だ。

 そしてそれを研究するのは、戦闘員としてあらゆる事態を想定する事に長けているミルこそが相応しいと思うのだ。


「判断が難しいときは、遠慮なく私たちの意見も聞いてよ。コルだけに責任を負わせるつもりなんてないんだからね?」

「…………今聞こうと思ってたのよ」

「「「ぷっ」」」


 リーダーとしての責任からか素直に私たちを頼ってくれないコルが、プイっと顔を背けながら放った呟きに、思わず3人で吹き出してしまった。

 こういうところが可愛いんだよなーコルって。


「はぁ……。3人の意見が一致しているなら文句は無いわ。進めてちょうだいミル」

「やったっ。ありがとうコル! 正直却下される可能性のほうが高いと踏んでたよっ」

「専門家3人が同意見なら是非も無いわよ。宜しくお願いするわ」


 お手上げとばかりに軽く両手をあげるコル。

 けれどその表情は少しだけ安堵しているようにも見えた。


「けれど大雑把でいいから研究スケジュールの予定は提出して頂戴ね? 研究成果もなるべくこまめに報告すること。それと行き詰ったら遠慮なく私たちに相談することっ。守れるかしら?」

「了解だよっ。ただ分かってると思うけど、完全に未知の研究分野になるわけだから……。時間は、かかると思うんだ」


 自分から研究を申し出ておきながら、直ぐに成果を出すことは難しいだろうと俯くミル。

 移動魔法を攻撃に転用するなんて、そんなの前代未聞だもんね。見通しが立たないのも仕方ない。


「ミルはコラプサー対策。メルは種族差を解消するシステム作りをするとして……」

「ちょ、コルっ! なにをちゃっかり私に丸投げしようとしてるのよっ!?」

「カルは何かしたい事は無いかしら? 異界の門の問題はもうひと段落ついたと思うし、環境の変化だって急激には起こらないでしょ? 何かを始める余裕はあると思うわよ?」

「なにかぁ? 何かって、そうだなー……。思い切って相談してみるかねー?」


 完全に私をスルーするコルに問われ、う~んと考え込んだカル。

 けどなんとなくその様子は何かを探しているという感じではなくて、既に想像しているものを口に出すのが憚られる、そのように感じられた。


「正直言うとさ。私1人じゃこの想いが正しいことかどうか、やっていいことなのかどうかが判別できなくってさー」

「なによ? 随分不穏な感じじゃない。でもとりあえず聞いてみないと始まらないわ。駄目なら駄目って却下してあげるから、まずはなんのことか説明してくれる?」

「おっけ~い。ドン引きされたらちょっと嫌だけど、このまま悶々としたまま過ごすのも嫌だしね。話させてもらうぜー。覚悟しろよみんなー?」


 いつも通りの口調に少しだけ緊張感を孕んだカルが、私たちに聞く覚悟を要求してくる。

 けれど深く息を吐くカルこそが、私たちに話す覚悟を決めているようにしか思えなかった。


 そんなに言い辛いことって、カルがしたいことっていったい……?


「私、さ……。テレスの血を絶やしたく、ないんだ……」

「……え?」

「ガイアの人たちが子供を産んでるのを見てさ。赤ちゃんを抱いたミルがニコニコ笑っちゃってるのを見たらさ、我慢出来なくなっちゃったんだ……。このままテレスの血を絶やす事に、さ……」

「え、と……。それって、どういう……?」


 カルの言っている事が、理解できるようで理解できない。


 確かに私だって、テレスの人類の歴史をこのまま閉じてしまうことには抵抗がある。

 ガイアの人たちが子供を産み、育て始めているのを見て、羨ましく思う気持ちだってある。


 だけど、出身世界が世界が異なる人間同士で子供を作れないことは、既に分かっていることだ。

 他の世界に越界したテレスの男性が偶然この世界に訪れでもしない限り、私たちが子供を作ることは……。


「他の世界から人たちと子供を作れないことは分かってる。テレス人がこの世界に訪れる可能性が殆ど無いことも分かってるんだ」


 私の頭の中をそのまま代弁するように、テレスの血を繋いでいくことの難しさを口にするカル。

 けれど彼女の言葉はそこで止まったりはしなかった。


「分かってるけど……諦めきれなくってさ。方法、考えたんだよ」

「方法? テレスの血を絶やさない方法……って、まさかクローンでも作る気? だけど魔法強化が施された私たちのクローンを作る設備は、この世界じゃとても用意できないはずよ」

「その通りだよコル。私たちを複製する事は不可能だし、そもそも女しか居ない私たちを複製したとしても限界があるよね? だから私が考えたのは……。複製じゃなくて、創造、なんだ……」


 複製じゃなくて、創造……?

 クローンじゃなくって……人工生命体ってことっ!?


「世界樹を植樹した時に気付いちまったんだよねー。この膨大な魔力を用いれば、知的生命体だって問題なく生み出せるって事にさー」

「た、確かにそうかもしれないけど……! 人を創造するなんて、それこそ神の領域に踏み込んじゃってるよ!?」

「……うん。犬猫を創造するのとはわけが違う、テレス人の新規作成。そうして繁栄させたいんだ、テレスの血を……!」


 テレスの民をこの手で作り出したい。

 そう語るカルの姿に、何故か私は寒気を覚えた。


 かつてのカルは、この世界に生命を生み出す事の影響力の大きさに慎重だった気がするのに……。

 今のカルは自分の衝動に一直線で、良くない方向に進んでいるような気がして仕方が無い……!


「…………さっきミルにも聞いたこと、改めて聞かせて貰うわよ? カル、アテはあるの?」

「コル、それって……!?」

「ごめんメル。今はカルと話をさせて」


 コルなら止めてくれる。

 そう思っていた私は、カルに問い返したコルの言葉に驚いてしまう。


 驚く私を厳しい口調で制したコルは、話の続きをカルに促した。


「ねぇカル。貴女は人工的な生命創造なんて。本当に出来ると思っているのかしら?」

「出来る、と思ってるよ。みんなの……メルの協力さえあれば、の話だけどねー」

「えっ!? わ、たしっ……!?」


 まさかここで名前が呼ばれると思っていなかった私は、思わず津っ頓狂な声をあげてしまった。

 コレが……。覚悟を決めたカルの本音……!?


「メルが協力してくれなければ諦める。コルが許可しないなら諦める。ミルが賛成してくれないなら、綺麗さっぱり諦めるよ」

「カル……」

「こんなこと背負わせてごめん……。でも、私1人じゃ決断出来そうもないからさ。みんなに頼らせて、欲しいんだ……」

「「「…………」」」


 カルの言葉に、沈黙だけが谺する。

 彼女の気持ちも、自分たちが置かれている危機的な状況も分かっている私たち3人は、カルになんと言えばいいのか、どうするのが正解なのかも分からずに、ただ黙って項垂れることしかできないのだった……。
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