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640 キューブスライム
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世界樹がレリックアイテムだった可能性を示されてテンションが吹っ切れてしまったキュールは、呼吸が出来なくても構わず俺の精を飲み込み続け、そして案の定失神してしまった。
俺のお嫁さんが快楽で失神する姿は日常茶飯事だけど、咥えたまま呼吸障害で失神した姿は初めて見たんだよ……?
呼吸できる程度まで胃の中身を吐き出させたあと、キュールは力尽きるように再度失神してしまったので、キュールに昂らされた俺は寝転ぶみんなの上から白濁した雨を降らせて気を紛らわせたのだった。
「んもーっ。全身ぐっちょぐちょなのーっ! 別荘のお風呂、まだ上手く使えないのにーっ」
1番グチョグチョになっている場所で俺を抱きしめながら、どうしようとニーナが可愛く首を傾げている。
今日はロストスペクターから資料を回収する為に別荘に来たのであって、ここまでがっつりえっちしてしまったのは予定外なのだ。
もはや全身白濁液に塗れた状態だから、出来ればお風呂に入ってから帰宅したいんだけれど……。
別荘の浴槽が大きすぎて、未だに入浴の手間を改善できてないんだよねー……。
「んー……。プライミングポストで即興で井戸を用意しても、あの大きな浴槽に水を溜めるのは大変だよねぇ。レインメイカーで水を用意する? ……のはいくらなんでも魔玉の無駄遣い過ぎるか……」
もしかしたら高めに盛土してプライミングポストを設置すれば、高い場所に水源を作れるかもしれないけど……。
それにしたって水が溜まるまでは時間がかかりそうだし、もう少しスマートに解決する方法は無いものかなぁ……。
「全員で超高速で水玉をクリエイトしまくる……のは時間と魔力の無駄遣いか。しかもお金までかかっていいことないか」
「お、思い付きにしたって、よくもそんな下らない手段を実行しようと思うわねぇ……?」
「そんなはっきり下らないって言わないでってばぁ。あらゆる可能性を考慮してるだけなんだよー?」
くだらないって言うけど、確かお姉さんも以前同じこと言ってたんだよー?
呆れ顔のティムルを捕まえて、彼女の真っ黒な乳首をコリコリと齧る。美味しい。
じゃなくて、大量の水をスムーズに運搬する方法って何かないかなぁ?
「ふぅむ……。水はインベントリに収納出来ぬからのう。インベントリで水が持ち運べるなら解決する話なのじゃが……」
「出来ないからこそ、ティムルとダンはレインメイカーなんて開発しちゃったわけだからね。水に魔力を作用させるのは無理じゃないかなぁ~」
「……いやいや。お風呂に入る為に楽したいからって新たなマジックアイテムを開発する気なんですか? 用途が狭すぎて流石に呆れますよ旦那様ぁ……」
真面目に考えてくれるフラッタに、既に諦め気味のリーチェ。そして飲み水に苦労していたヴァルゴが呆れて溜め息を吐いている。
三者三様の反応を見せてくれているけど、誰も解決策を提示してくれることはなさそうだなー。
「んもー、髪の毛の先まで満遍なくかけないでよダンってばぁ……。う~、生臭いよ~」
「くそっ。抱いてくれねぇ癖にこんなにぶっ掛けやがって……! 処女のまま妊娠したらどうしてくれんだよ……!?」
「はいはいシーズ。夢が膨らむようなことばかり言わないのっ。で、2人はなんかアイディア無い? 水の大量運搬方法」
黙っていたらシーズに夜通しぶっ掛けたくなっちゃいそうなので、強引に彼女の言葉を遮りつつアイディアを募集してみる。
若くて柔軟な発想を持つ2人なら、俺達が考えつかないアイディアを思いついてくれたりとか……。
「え~? 私たちは井戸から水を汲むのが常識だったから、あんまり気にしたことないかなぁ」
「井戸も掘り放題、レインメイカーで携帯も可能になってるくせに、これ以上とか欲張りすぎだろ? 風呂なんか入らなくても死にゃしねぇ……ってか、日常的に風呂に入れる奴なんて殆ど居ねぇっての」
2人でも駄目かぁ~。
というかシーズの言う通り、この世界の水事情だとプライミングポストとレインメイカーでほぼ完璧に事足りてるんだよなぁ。
「ん~……。移動魔法を井戸の底や川底に開いて、浴槽に水を流し込むとか……無理か。移動魔法が適用されるのはパーティメンバーとその所持品だけだもんな……」
「というかダンさん。地面にも魔力の阻害効果があるんだけど、水は地面以上に魔力を弾いちゃう性質があるんだよ。だから移動魔法を水底に設置するのは無理だよ? おかげで帝国のヴェル・トーガ海岸にも基本的に魔物は出てこないんだ」
「へ? 海って魔物出ないの? でもキューブスライムって川から出るよ?」
海には魔物が出ないと聞いて、この世界で初めて狩った魔物であるキューブスライムのことを思い出す。
喧嘩さえもしたことが無かった俺が魔物との戦いに慣れることが出来たのは、キューブスライムがあまり生物っぽくなかったからってのも大きいんじゃないかな。
「ってそうだよ! キューブスライムだよ! 強化従属魔法で大量のキューブスライムを確保して、お風呂の時に一斉に水の弾を発射してもらえばいけるんじゃっ!?」
「強化従属魔法の無駄遣いもいい所だよっ! ダンさんのお風呂に懸けるその情熱はいったい何処から来るのさっ!? そもそも無理だしっ!」
「あ、無理なんだ? 根拠はあるの?」
「いきなり冷静にならないでくれたまえよっ! 調子を合わせるのが難しすぎるよこの人ーーーっ!」
キュールもどっちかと言うとツッコミよりなのかなぁ?
っていうか我が家って、ボケが俺1人で女性陣が全員ツッコミに回ってる気がしないでもないな? 俺もみんなの中に絶え間なく突っ込んでるけど。
ぜぇぜぇと息を切らしたキュールの息が整うのを、ニーナとちゅうちゅうどぴゅどぴゅしながらゆっくりと待つ。
「あーもうっ。聞かれた順番に答えていくよっ? 海にはほぼ魔物は出ないんだ。キューブスライムすら出ない。そして、海も川も等しく魔力を弾く性質を持っているのは間違いないんだ」
水が魔力を弾く性質なんてどうやって? と思ったら、どうやら触心の魔力を弾かれてしまったという根拠があるらしい。
触心で水の情報を読み取ったんじゃなくて、触心そのものを弾かれたのね。
「魔力が弾かれ滞留しないはずの川でキューブスライムが出る理由は、正直分からないかな。キューブスライムなんかを詳しく調べた記録って、レガリアにすら残ってなかったと思うし」
「ん、まぁ村人でも狩れる上に、ドロップアイテムが1リーフの価値しか無いんじゃなぁ……。調査するメリットが無いかぁ」
「流れの速さや水の量、陸地の面積など、様々な要因が重なってキューブスライムが出現するのかもしれない。ただ1つ、キューブスライムは何故か人が居ない状態では発生せず、なにも無いところから人間に向かって、突然ピョンっと飛び出してくるんだよね」
「へぇ~。突然飛び出して来るのは知ってたけど、人が居ないと出てこないんだ? 普通の魔物とは正反対なんだね?」
ちょうど追放したばかりのロストスペクターたちに、人が多いから魔物が出なくて安心ですって話をされたばかりなんだけどな?
人が大勢居ると魔物が発生しない理由は、経験値自動取得スキルで大気中の魔力を吸い取っているからだと思うんだけど、逆に人間がトリガーとなって発生する魔物って……?
「正直、今までキューブスライムのことなんてなんとも思ってなかったんだけど……。ダンさんからアウターの違いを聞かされてさ、何か意味があるんじゃないかって思えてきちゃうよ」
「……意味、か」
キュールが呟いた言葉は、俺の心にも少し引っかかった。
他の魔物と性質が違う魔物。それはつまり、この世界を創った女神様が人間の為に用意した魔物である可能性があるということだ。
確かに生物が生きていく上で、飲み水の確保は最優先だと思う。
けれど川がある時点でそこから水を汲めばいいだけだし、水玉の水量も少なすぎてあまり役に立たないんだけどなぁ?
「ま、今はキューブスライムの意味については忘れるとして、従属魔法で隷属してもお風呂の用意に役立たない理由を説明させてもらうよ」
「あ、元々はそういう話だったね……」
キューブスライムの話が面白すぎて、お風呂の話をほとんど忘れてしまってたよ。
そんな俺に呆れ顔を返しながら、キュールが説明を開始する。
「キューブスライムの肉体は、見た目通り殆ど水で出来ているんだけどさ……」
「うんうん。攻撃を飛ばしてくる時とか、動いてるのが見えるよね」
「あの水って、魔力で生成したものじゃなくて、人に立ち塞がる時に川から吸いあげたものっぽいんだ。だから攻撃をしすぎると、体を維持する水分が足らずに死んじゃうのさ」
「あ、あいつらのピョンって、そんなに命懸けで行われてるものだったのか……」
キュールによると、1度発生したキューブスライムは水分の補充をすることが出来ず、たとえ川の中に沈めたとしても復活するようなことは無いらしい。
それどころか川に沈めてしまうと、川に溶けてしまってドロップアイテムも落さず消え去ってしまうようだ。
……あいつらって絶対に1体ずつしか出現しなかったし、出現頻度も低めだったよな? 確かになんか自然に発生した魔物っぽくない気がしてきたぞ?
「はいはい皆さん。お風呂の話はそこまでにしてくださいねー。お湯をお持ちしましたので、これで体を拭ってくださーい」
キューブスライムの存在意義が根底から覆されそうになったところで、ムーリとエマが一緒に大きな水瓶にお湯を用意して運んできてくれた。
うん。お風呂の入れ方を話し合っているうちにお湯を用意した方が早かったっすね。
俺の体はラトリアとエマが丁寧に拭いてくれるので、俺はムーリとリーチェの大きなおっぱいを隅々まで丁寧に丹念に拭き取っていく。
しかし俺の手が2人のおっぱいの先端から動かなくなってしまったので、他の場所は結局自分で拭いてもらった模様。
「さっきヴァルゴママが呆れちゃってたけどさぁ。パパの場合は普通に、お風呂用のマジックアイテムを開発した方が早いんじゃない?」
「ん~そうだねぇ……。例えばレインメイカーを改良して、魔玉じゃなくて人から魔力を込められるようにすれば、我が家のみんななら余裕で対応できる気はするかなぁ」
「うわっ、あっさりと具体的なアイディアを出してきたの……。ダンさんって、本当にここのお風呂に入りたくて仕方ないんだねー?」
うわって、そんな引かないで欲しいなぁターニア。ここのお風呂を作ったのは貴方の娘さんですからね?
みんなと一緒にここのお風呂に入りたいのは否定しないけどっ。
「なるほどぉ。マジックアイテムの使用には発光魔玉が必要だって思い込んじゃってたけど、私たちなら自分の魔力を使えた方がいいのねぇ」
「魔力を入力し、その魔力を水へと返還して出力する、ですかぁ……。まさかとは思いますが、我ら守人が守ってきた聖域の核たるレリックアイテムが、お風呂用マジックアイテムに流用されちゃうんですかぁ……?」
ティムルの呟きから整合の魔器を連想したらしいヴァルゴが、魔人族の秘宝をお風呂に転用されそうな流れにガックリと肩を落としている。
落ち込んだり悲しんだりしているわけじゃなく、呆れて脱力してるだけのようかな?
「……結局我が家に起こった問題を解決するには、エロいことを目指すのが手っ取り早いみたいだね。それじゃ広いお風呂でみんなとたっぷりと楽しめるように、アウター関係の問題に全力で取り組むよ」
「お風呂の件とは関係なく全力で取り組むつもりだったってばっ! もうっ!」
キュールのツッコミにみんなで笑って、汚し抜いた体と寝具を掃除する。
エロい匂いが充満している室内を精霊魔法で換気し、寝具も全て清潔なものに交換してからマグエルに帰宅した。
……しかし、この日はまだイベントが残されていたようだ。
「……ようやく現れたか。流石に少々待ちくたびれたぞ」
「へ?」
自宅前に転移すると、俺達の出現に合わせて声をかけてくる人物が居た。
その見覚えの無い人物は、まるで自分を無視して家に中に入ること許さないとでも言いたげに玄関の前に立ち塞がった。
どうやら来訪者は、若い男女の2人組らしい。
「な、なな……! なんで、貴女達がここに……!?」
どうやら突然の来訪者はキュールの知り合いらしい。
来訪者を見たキュールが、驚愕の表情を浮かべて1歩後ずさる。
けれど移動魔法は往復することは出来ないので、後ずさっても逃げ出す事に失敗してしまったようだ?
「なんでとは、ご挨拶じゃないかキュールよ。友人が婚姻を結んだと連絡をくれたのだから、祝いの言葉でも贈りたくもなろう?」
「……そんな理由で現れる人じゃないでしょ貴女は……? 現れていい人じゃないでしょう……? 皇帝陛下ぁ……」
「げっ!? ま~じで~?」
キュールの呟きで、目の前の女性の正体を知る。
お題。こんな皇帝は嫌だ。
回答。家に単独で乗り込んでくる。
……じゃ、ねーんだわ。
なんで帰宅した我が家の庭先で、隣国の皇帝陛下にエンカウントしてんだよ。おかしすぎるだろぉ……?
俺のお嫁さんが快楽で失神する姿は日常茶飯事だけど、咥えたまま呼吸障害で失神した姿は初めて見たんだよ……?
呼吸できる程度まで胃の中身を吐き出させたあと、キュールは力尽きるように再度失神してしまったので、キュールに昂らされた俺は寝転ぶみんなの上から白濁した雨を降らせて気を紛らわせたのだった。
「んもーっ。全身ぐっちょぐちょなのーっ! 別荘のお風呂、まだ上手く使えないのにーっ」
1番グチョグチョになっている場所で俺を抱きしめながら、どうしようとニーナが可愛く首を傾げている。
今日はロストスペクターから資料を回収する為に別荘に来たのであって、ここまでがっつりえっちしてしまったのは予定外なのだ。
もはや全身白濁液に塗れた状態だから、出来ればお風呂に入ってから帰宅したいんだけれど……。
別荘の浴槽が大きすぎて、未だに入浴の手間を改善できてないんだよねー……。
「んー……。プライミングポストで即興で井戸を用意しても、あの大きな浴槽に水を溜めるのは大変だよねぇ。レインメイカーで水を用意する? ……のはいくらなんでも魔玉の無駄遣い過ぎるか……」
もしかしたら高めに盛土してプライミングポストを設置すれば、高い場所に水源を作れるかもしれないけど……。
それにしたって水が溜まるまでは時間がかかりそうだし、もう少しスマートに解決する方法は無いものかなぁ……。
「全員で超高速で水玉をクリエイトしまくる……のは時間と魔力の無駄遣いか。しかもお金までかかっていいことないか」
「お、思い付きにしたって、よくもそんな下らない手段を実行しようと思うわねぇ……?」
「そんなはっきり下らないって言わないでってばぁ。あらゆる可能性を考慮してるだけなんだよー?」
くだらないって言うけど、確かお姉さんも以前同じこと言ってたんだよー?
呆れ顔のティムルを捕まえて、彼女の真っ黒な乳首をコリコリと齧る。美味しい。
じゃなくて、大量の水をスムーズに運搬する方法って何かないかなぁ?
「ふぅむ……。水はインベントリに収納出来ぬからのう。インベントリで水が持ち運べるなら解決する話なのじゃが……」
「出来ないからこそ、ティムルとダンはレインメイカーなんて開発しちゃったわけだからね。水に魔力を作用させるのは無理じゃないかなぁ~」
「……いやいや。お風呂に入る為に楽したいからって新たなマジックアイテムを開発する気なんですか? 用途が狭すぎて流石に呆れますよ旦那様ぁ……」
真面目に考えてくれるフラッタに、既に諦め気味のリーチェ。そして飲み水に苦労していたヴァルゴが呆れて溜め息を吐いている。
三者三様の反応を見せてくれているけど、誰も解決策を提示してくれることはなさそうだなー。
「んもー、髪の毛の先まで満遍なくかけないでよダンってばぁ……。う~、生臭いよ~」
「くそっ。抱いてくれねぇ癖にこんなにぶっ掛けやがって……! 処女のまま妊娠したらどうしてくれんだよ……!?」
「はいはいシーズ。夢が膨らむようなことばかり言わないのっ。で、2人はなんかアイディア無い? 水の大量運搬方法」
黙っていたらシーズに夜通しぶっ掛けたくなっちゃいそうなので、強引に彼女の言葉を遮りつつアイディアを募集してみる。
若くて柔軟な発想を持つ2人なら、俺達が考えつかないアイディアを思いついてくれたりとか……。
「え~? 私たちは井戸から水を汲むのが常識だったから、あんまり気にしたことないかなぁ」
「井戸も掘り放題、レインメイカーで携帯も可能になってるくせに、これ以上とか欲張りすぎだろ? 風呂なんか入らなくても死にゃしねぇ……ってか、日常的に風呂に入れる奴なんて殆ど居ねぇっての」
2人でも駄目かぁ~。
というかシーズの言う通り、この世界の水事情だとプライミングポストとレインメイカーでほぼ完璧に事足りてるんだよなぁ。
「ん~……。移動魔法を井戸の底や川底に開いて、浴槽に水を流し込むとか……無理か。移動魔法が適用されるのはパーティメンバーとその所持品だけだもんな……」
「というかダンさん。地面にも魔力の阻害効果があるんだけど、水は地面以上に魔力を弾いちゃう性質があるんだよ。だから移動魔法を水底に設置するのは無理だよ? おかげで帝国のヴェル・トーガ海岸にも基本的に魔物は出てこないんだ」
「へ? 海って魔物出ないの? でもキューブスライムって川から出るよ?」
海には魔物が出ないと聞いて、この世界で初めて狩った魔物であるキューブスライムのことを思い出す。
喧嘩さえもしたことが無かった俺が魔物との戦いに慣れることが出来たのは、キューブスライムがあまり生物っぽくなかったからってのも大きいんじゃないかな。
「ってそうだよ! キューブスライムだよ! 強化従属魔法で大量のキューブスライムを確保して、お風呂の時に一斉に水の弾を発射してもらえばいけるんじゃっ!?」
「強化従属魔法の無駄遣いもいい所だよっ! ダンさんのお風呂に懸けるその情熱はいったい何処から来るのさっ!? そもそも無理だしっ!」
「あ、無理なんだ? 根拠はあるの?」
「いきなり冷静にならないでくれたまえよっ! 調子を合わせるのが難しすぎるよこの人ーーーっ!」
キュールもどっちかと言うとツッコミよりなのかなぁ?
っていうか我が家って、ボケが俺1人で女性陣が全員ツッコミに回ってる気がしないでもないな? 俺もみんなの中に絶え間なく突っ込んでるけど。
ぜぇぜぇと息を切らしたキュールの息が整うのを、ニーナとちゅうちゅうどぴゅどぴゅしながらゆっくりと待つ。
「あーもうっ。聞かれた順番に答えていくよっ? 海にはほぼ魔物は出ないんだ。キューブスライムすら出ない。そして、海も川も等しく魔力を弾く性質を持っているのは間違いないんだ」
水が魔力を弾く性質なんてどうやって? と思ったら、どうやら触心の魔力を弾かれてしまったという根拠があるらしい。
触心で水の情報を読み取ったんじゃなくて、触心そのものを弾かれたのね。
「魔力が弾かれ滞留しないはずの川でキューブスライムが出る理由は、正直分からないかな。キューブスライムなんかを詳しく調べた記録って、レガリアにすら残ってなかったと思うし」
「ん、まぁ村人でも狩れる上に、ドロップアイテムが1リーフの価値しか無いんじゃなぁ……。調査するメリットが無いかぁ」
「流れの速さや水の量、陸地の面積など、様々な要因が重なってキューブスライムが出現するのかもしれない。ただ1つ、キューブスライムは何故か人が居ない状態では発生せず、なにも無いところから人間に向かって、突然ピョンっと飛び出してくるんだよね」
「へぇ~。突然飛び出して来るのは知ってたけど、人が居ないと出てこないんだ? 普通の魔物とは正反対なんだね?」
ちょうど追放したばかりのロストスペクターたちに、人が多いから魔物が出なくて安心ですって話をされたばかりなんだけどな?
人が大勢居ると魔物が発生しない理由は、経験値自動取得スキルで大気中の魔力を吸い取っているからだと思うんだけど、逆に人間がトリガーとなって発生する魔物って……?
「正直、今までキューブスライムのことなんてなんとも思ってなかったんだけど……。ダンさんからアウターの違いを聞かされてさ、何か意味があるんじゃないかって思えてきちゃうよ」
「……意味、か」
キュールが呟いた言葉は、俺の心にも少し引っかかった。
他の魔物と性質が違う魔物。それはつまり、この世界を創った女神様が人間の為に用意した魔物である可能性があるということだ。
確かに生物が生きていく上で、飲み水の確保は最優先だと思う。
けれど川がある時点でそこから水を汲めばいいだけだし、水玉の水量も少なすぎてあまり役に立たないんだけどなぁ?
「ま、今はキューブスライムの意味については忘れるとして、従属魔法で隷属してもお風呂の用意に役立たない理由を説明させてもらうよ」
「あ、元々はそういう話だったね……」
キューブスライムの話が面白すぎて、お風呂の話をほとんど忘れてしまってたよ。
そんな俺に呆れ顔を返しながら、キュールが説明を開始する。
「キューブスライムの肉体は、見た目通り殆ど水で出来ているんだけどさ……」
「うんうん。攻撃を飛ばしてくる時とか、動いてるのが見えるよね」
「あの水って、魔力で生成したものじゃなくて、人に立ち塞がる時に川から吸いあげたものっぽいんだ。だから攻撃をしすぎると、体を維持する水分が足らずに死んじゃうのさ」
「あ、あいつらのピョンって、そんなに命懸けで行われてるものだったのか……」
キュールによると、1度発生したキューブスライムは水分の補充をすることが出来ず、たとえ川の中に沈めたとしても復活するようなことは無いらしい。
それどころか川に沈めてしまうと、川に溶けてしまってドロップアイテムも落さず消え去ってしまうようだ。
……あいつらって絶対に1体ずつしか出現しなかったし、出現頻度も低めだったよな? 確かになんか自然に発生した魔物っぽくない気がしてきたぞ?
「はいはい皆さん。お風呂の話はそこまでにしてくださいねー。お湯をお持ちしましたので、これで体を拭ってくださーい」
キューブスライムの存在意義が根底から覆されそうになったところで、ムーリとエマが一緒に大きな水瓶にお湯を用意して運んできてくれた。
うん。お風呂の入れ方を話し合っているうちにお湯を用意した方が早かったっすね。
俺の体はラトリアとエマが丁寧に拭いてくれるので、俺はムーリとリーチェの大きなおっぱいを隅々まで丁寧に丹念に拭き取っていく。
しかし俺の手が2人のおっぱいの先端から動かなくなってしまったので、他の場所は結局自分で拭いてもらった模様。
「さっきヴァルゴママが呆れちゃってたけどさぁ。パパの場合は普通に、お風呂用のマジックアイテムを開発した方が早いんじゃない?」
「ん~そうだねぇ……。例えばレインメイカーを改良して、魔玉じゃなくて人から魔力を込められるようにすれば、我が家のみんななら余裕で対応できる気はするかなぁ」
「うわっ、あっさりと具体的なアイディアを出してきたの……。ダンさんって、本当にここのお風呂に入りたくて仕方ないんだねー?」
うわって、そんな引かないで欲しいなぁターニア。ここのお風呂を作ったのは貴方の娘さんですからね?
みんなと一緒にここのお風呂に入りたいのは否定しないけどっ。
「なるほどぉ。マジックアイテムの使用には発光魔玉が必要だって思い込んじゃってたけど、私たちなら自分の魔力を使えた方がいいのねぇ」
「魔力を入力し、その魔力を水へと返還して出力する、ですかぁ……。まさかとは思いますが、我ら守人が守ってきた聖域の核たるレリックアイテムが、お風呂用マジックアイテムに流用されちゃうんですかぁ……?」
ティムルの呟きから整合の魔器を連想したらしいヴァルゴが、魔人族の秘宝をお風呂に転用されそうな流れにガックリと肩を落としている。
落ち込んだり悲しんだりしているわけじゃなく、呆れて脱力してるだけのようかな?
「……結局我が家に起こった問題を解決するには、エロいことを目指すのが手っ取り早いみたいだね。それじゃ広いお風呂でみんなとたっぷりと楽しめるように、アウター関係の問題に全力で取り組むよ」
「お風呂の件とは関係なく全力で取り組むつもりだったってばっ! もうっ!」
キュールのツッコミにみんなで笑って、汚し抜いた体と寝具を掃除する。
エロい匂いが充満している室内を精霊魔法で換気し、寝具も全て清潔なものに交換してからマグエルに帰宅した。
……しかし、この日はまだイベントが残されていたようだ。
「……ようやく現れたか。流石に少々待ちくたびれたぞ」
「へ?」
自宅前に転移すると、俺達の出現に合わせて声をかけてくる人物が居た。
その見覚えの無い人物は、まるで自分を無視して家に中に入ること許さないとでも言いたげに玄関の前に立ち塞がった。
どうやら来訪者は、若い男女の2人組らしい。
「な、なな……! なんで、貴女達がここに……!?」
どうやら突然の来訪者はキュールの知り合いらしい。
来訪者を見たキュールが、驚愕の表情を浮かべて1歩後ずさる。
けれど移動魔法は往復することは出来ないので、後ずさっても逃げ出す事に失敗してしまったようだ?
「なんでとは、ご挨拶じゃないかキュールよ。友人が婚姻を結んだと連絡をくれたのだから、祝いの言葉でも贈りたくもなろう?」
「……そんな理由で現れる人じゃないでしょ貴女は……? 現れていい人じゃないでしょう……? 皇帝陛下ぁ……」
「げっ!? ま~じで~?」
キュールの呟きで、目の前の女性の正体を知る。
お題。こんな皇帝は嫌だ。
回答。家に単独で乗り込んでくる。
……じゃ、ねーんだわ。
なんで帰宅した我が家の庭先で、隣国の皇帝陛下にエンカウントしてんだよ。おかしすぎるだろぉ……?
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