異世界イチャラブ冒険譚

りっち

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638 異界の扉

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 呼び水の鏡の使用には、大量の生贄が必要なのかもしれない。

 そんな最低の想定を口にした後は、沈んだ雰囲気の中でとりあえず資料の運び込みを終わらせた。


「みんなお疲れ様ー。このあとどうする? 食事にする? お風呂にする? それともワ、タ、シ?」

「ん~。出来ればもう少しダンさんと話をしたいんだけど……。駄目、かなぁ……?」


 当然俺の夫婦ネタは通じず、もう少し話を続けたいと上目遣いにおねだりしてくるキュール。

 お前さぁ。上目遣いの使いどころが色気無さ過ぎるんだよ? 可愛いけど。


「俺としてはそろそろみんなと1戦も2戦も交えたいところなんだけど、他の皆も話がしたいのかな?」

「ん~。お姉さんも話を聞きたいわねぇ。というか話の流れ的に、とてもえっちする気分にはなれないわよぉ?」


 ティムルの言葉に、他の皆もウンウンと追従する。

 くそっ。コレだから神器の所有権なんて要らなかったんだよっ!


 え、神器関係ないって? 知ってる。


「話をするのはいいけど、その前に軽く食べ物と飲み物を用意しよっか」


 ここからえっちに持ち込むのは諦めて、話を続ける代わりに夕食を提案する。


 既に結構な時間になってるし、このあとの話も長引きそうだしね。

 性欲を満たせないなら、せめて食欲だけでも満足させてもらう事にする。


「ダンー。私は難しい話に興味無いの。だからいっぱいえっちなことしていいよーっ」

「私もお話はあんまり興味無いかな? だからパパ、ぎゅーっとしてくれる?」


 性欲を満たす事を諦めて真面目モードに移行した瞬間、コンコンニーナと小悪魔アウラにベッドに押し倒されてしまった。

 こ、こらアウラっ。ぎゅーっとしてと言いながら、ぎゅーっと締め付けてくるんじゃないっ。話できないでしょっ! 気持ちいいけどっ!


 コンコンニーナの狐耳をはむはむしながらモフモフしっぽを根元から扱き、娘のアウラの1番奥に何の遠慮もなく注ぎ込むこの幸福感。

 あぁ~。真面目な話をしなきゃいけないのに、意識の全てがニーナとアウラでいっぱいだよぉ……。


「最悪、呼び水の鏡を使ってエルフェリアにアウターを設置すればいいやって思ってたんだけど……。ぼくの考え、随分と甘かったみたいだ……」

「うんうん。リーチェは唾液もおっぱいも大事なところも、全身余すところなく甘くて美味しいよー?」

「んもうダンったらっ。えっちな気持ちはニーナとアウラに全部ぶつけて、話は真面目にして欲しいなぁ? 話が終わったらダンの好きにしていいから、さ」


 うわ、吐息も甘いし頭の中も甘々だなぁ。最高かよリーチェ。


「てか、悲観することないよリーチェ。俺も最悪の場合は神器に頼ろうって思ってたし、代償の話はあくまで俺の推論に過ぎないんだから」

「あ、そっか。本当に生贄が必要かどうかはまだ不明なんだ。でも試すわけにもいかないし、困ったね……」

「困らない困らない。所有権も放棄したいくらいの神器なんて使わなきゃいいだけの話だから。で、話をするならそういう前向きな事を話したいかなっ」


 コンコンニーナと根元まで繋がりながら、甘い甘いアウラの舌をしゃぶって唾液を啜る。相変わらず美味しいよぉ。

 ニーナの獣化も最早ずっと続けられるようになったし、お話の間はずーっとコンコンニーナと愛し合えるの幸せすぎるぅ~っ。


「神器を使わない異界の扉の開け方ねぇ……」


 マジックアイテム開発の第一人者であるティムルが、前向きな話をしたいという俺の希望通りの事を検討し始める。

 
「神器を使いたくない。だから間違いなく人の手で生み出されたマジックアイテムの貪汚の呪具を参考にするのね。だけど神器や貪汚の呪具のように魂を代償にするのは防ぎたい……ってことでいいかしら?」

「うん。俺達は既に魔力によって異界の扉を強制的に閉じているからね。魂を代償としなくても、魔力で異界の扉に干渉することは可能なはずなんだよ」


 というか、恐らく魂と魔力は本質的には同じエネルギーなんだと思う。

 魂の方がエネルギー効率が良いというか、より莫大なエネルギーを生み出せるというだけで。


 6人の魂が重なり合ったヴァンダライズも、広義で言えば魂で異界の扉に干渉したことになるのかもしれないけれど……。

 でも基盤となった俺の双剣から放たれた斬撃は、どちらもウェポンスキルだったからね。魔力的なエネルギーと言っていいはずだ。


 ヴァンダライズを体験した仕合わせの暴君メンバーが考え込んだのを見て、遠慮がちにシャロが口を開く。


「……スペルディア王城の奥に封じてある始まりの黒も、かつての邪神の血液から産み出されたと聞いています。つまり膨大な魔力こそ必要ですが、既に人の魂を用いずに異界の扉を開いた事実は存在しているのですね」

「ん~……。そこはまだ何とも言えないんじゃないかなぁ? 当時はガルクーザによって数え切れないほどの命が失われていたからね。犠牲者の魂が作用していた可能性もゼロじゃないと思うんだ」

「……ダンさん~? 貴方は前向きな話がしたかったんじゃないんですか~? どうしてそんなウンザリするようなことばかり仰るんですか、もうっ」


 額に右手を当てながら、珍しくエマが俺を叱責する。

 俺だって別に好きでこんなこと言ってるわけじゃないんだよ? 思いついた事をそのまま口にしてるだけでさー。


「前向きな要素なら実はもうあるんだよー」

「え、そうなんですか?」

「うん。俺の上で元気に跳ねてるアウラの存在が、既にそれを証明してくれてるんだー」


 自分の名を呼ばれても気にせずに、自らダイナミックに動いて俺から魔力を搾り取ってくるアウラが、俺が遠慮なくぶちまけたモノを体内で即座に魔力に変換していく。

 今の俺の五感補正だと、アウラの中の状況が手に取るように分かっちゃうなぁっ。


「ホムンクルス計画……! 異種族の魔力付与……! つまり魔力で魂を作りだす事が可能!?」

「そそ。もしも異界の扉が魂でしか干渉できなかったとしても、その魂ってのは魔力で生み出せるのが既に実証されてるんだ。だから犠牲を伴わずに異界の扉を開いたり閉じたりできるはずなんだよー」

「ま、まさかアウラの中に好き勝手出しながら、そんな話に繋げてくるとはのう……。真面目なんだか不真面目なんだか分からぬのじゃ……」


 ハッハッハ。今更なにを言ってるのかなフラッタは。

 俺はみんなのおっぱいを吸っている時と、みんなの中に出している時が1番真面目な瞬間に決まってるでしょっ!


「不真面目に取られるのも仕方ないけど、俺はみんなと愛し合いながらこの世界の真理を追いかけてきたからね。祝福の力も世界の根源たる魔力もベッドの上で検証し続けてきたから、大真面目なんだよー?」

「あ~。確かにダンさんって、えっちな事をする度に強くなってるって言われてましたねぇ。あれって本当に戦闘能力も向上してたんですか?」

「そうなんですよムーリ……。困った事に旦那様は、私たちと肌を重ねるほどに強くなるのです。その背を追いかける身としては堪ったものじゃないんですよぉ~……」


 地獄のような環境に身を置いて腕を磨いたヴァルゴからしたら、俺の成長の仕方は悪夢のように映るかもしれない。


 けれどこの世界で強くなるには、職業補正を如何に理解し、十全に使いこなすかが重要となってくるのだ。

 剣や槍の技術の習得だって、職業補正を活用すれば一気に上達できてしまうのだ。


 ティムルを家族に迎え、好色家先生と初めてお会いした時から、俺は戦闘中よりも性交中のほうがよっぽど魔力操作に向き合ってきたからね。

 俺にとっては、みんなを愛することが強くなることに繋がるんだよ。


「ん~……。前向きとは言うけど、アウラの完成にはアウターの魔力を何百年も丸々費やしてようやく……って感じでしょ? ダンさん達がいくら突出した存在でも、流石に魔力が足りないんじゃないのー?」

「異界の扉2つ分の魔力で産み落とされた世界呪を祓った皆さんですけど、流石に常時その時ほどの魔力を生み出すのは無理じゃないんですか? それに、結局ダンさんたちしか実現できない方法になっちゃいません?」


 ターニアとラトリアの経産婦コンビが、アウラの話を参考に異界の扉を開くのは、魔力量という意味で現実的じゃないのでは? と問いかけてくる。


 だけど貪汚の呪具は、所有者1人の魂だけで異界の扉を開いているのだ。

 それを考えると、異界の扉を開くのには必ずしもヴァンダライズ級の魔力は必要ない、と思えるんだけどなぁ。


「さっきキュールが言ってたけど、この世界は異界からの魔力を自然と押し留めてしまうわけでしょ? だから貪汚の呪具は人の体内に異界の扉を開いて、この世界からの魔力干渉を最小限に抑えている……。ってことはつまりさ……」

「……つまり、この世界の魔力を可能な限り排除してやれば、最小限の魔力で異界の扉を開くことが出来る……!? そう言いたいのねっ……!?」


 俺の言葉を待たずに、ティムルが俺に詰め寄ってくる。

 流石はお姉さん。魔力視も出来てオリジナルマジックアイテムの開発にも成功し、更には単独で貪汚の呪具を使う相手と遭遇しただけはあるねっ。


「正解だよティムル。この世界からの抵抗さえ何とかできれば、異界の扉を開くために一瞬だけ魔力を注げばいい……。俺はそう思ってるんだ」

「か、肝心の異界の扉を開く方法は……! って、それこそ貪汚の呪具を研究すればいいのかっ……!」


 どうやら自分の知識と俺の提示したアイディアが重なり始めたキュールが、興奮しながら大きい声で独り言を叫んでいる。

 と思った次の瞬間、彼女はハッとしたように俺に向かって疑問を投げかけてくる。


「いやでもダンさん! この世界の魔力の干渉を受けないなんて、いったいどうやって!? ……まさかとは思うけど、アウター内に新たな扉を開くつもりじゃないだろうねっ!?」

「世界呪と対峙した俺が、同じ場所に異界の扉を2つ開く訳ないでしょー? ただ、アウターってのは良い線いってるよ」

「異界の扉が開いていないアウター……聖域の樹海かぁっ!! って、聖域の樹海はむしろ世界中から余剰分の魔力を集めている場所だよっ!? むしろ世界中のどこよりも魔力干渉が激しいんじゃ……!?」

「聖域の樹海に新しいアウターを出現させるとは言ってないでしょ。俺が参考にしたいのは整合の魔器……。もっと言えば、逆位置の魔錠を参考にしたいと思ってるんだ」


 聖域の樹海を成立させているレリックアイテム、整合の魔器。

 それが『正位置の魔鍵』、『逆位置の魔錠』、『均衡の祭壇』という3つのレリックアイテムからなる複合マジックアイテムであることは既に分かっている。


 この世界の魔力を発生させる正位置の魔鍵は、今回むしろ邪魔になる。

 そして魔鍵と魔錠を連結させないのであれば、均衡の祭壇も恐らくは必要ないはずだ。


「逆位置の魔錠……。あれは余剰分の魔力を吸収するレリックアイテムだよね……。つまりその機能を用いて、一定範囲内の魔力を極限まで排除するってこと……!?」

「そうそう。その一定範囲をどうやって区切るかはまだ思いついてないけどね。逆位置の魔錠で魔力枯渇を起こした範囲に、無理矢理異界の扉をこじ開けたいと思うんだ。で、1回試して見て、その扉がどうなるのかをまずは検証したいね」


 この世界に点在しているアウターを見る限り、異界の扉を開いてしまえば、後は勝手にいい塩梅まで広がってくれるような気はする。


 けれど魔力でこじ開けた極小の扉では、この世界の魔力に負けて閉じられてしまう可能性も否定出来ない。

 なので1回試してみて、アウター外周の境界線も俺達で用意する必要があるのかどうかを確かめたい。


「一定範囲の魔力操作……。あまり広くない範囲なら、ぼくとアウラの精霊魔法で対応できる……かも?」

「え、マジで……!?」


 大気中に漂う魔力を人為的に仕切る方法なんて思いつかず、どうしようかなぁと悩んでいる俺のところに、リーチェから驚きの提案が齎された。

 前々から何度も思ってたけど、精霊魔法万能すぎるだろっ。


「本当に大丈夫? 精霊魔法自体も逆位置の魔錠に吸収されちゃうんじゃないの?」

「それは大丈夫だと思う。整合の魔器を調べる時に色々検証したけど、精霊魔法なら逆位置の魔錠の魔力吸収効果に抵抗することが出来たから」

「既に検証済みってわけね。なら後は貪汚の呪具がどうやって異界の扉を開いているのかが分かれば……」

「人の手で、新たなアウターを生み出すことが出来る……!? う、うおーーーっ!? うっそだろーーーぅ!?」


 俺の言葉を横取りしたキュールが、興奮のままに魂の芯から雄叫びを上げる。

 そしてせっかく整理した資料を散らかしながら、恐らく貪汚の呪具について書かれた資料を片っ端から読み漁り始めた。


 学者であり研究者であるキュールは、アウターの人工発生に着手できるのが嬉しくて仕方ないようだ。


 これから俺達はエルフェリアとロストスペクター用に、少なくとも2つのアウターを新たに生み出さねばならない。


 現在はこの世界のアウターが1つ失われている状態だからな。

 魔力が不足してなんらかの異常が起こらないとも限らないので、人工アウターの研究は優先的に進めていかなきゃいけないことだろう。


 だけど魔力の流入量を増やすという事は、アウター外に発生する魔物を強化してしまうことにも繋がりかねないんだよね……。

 だからこんなこと、俺達の独断で決めてしまっていい案件じゃないよなぁ。


「はぁぁぁぁ……」


 みんながキュールに気を取られている隙に、誰にも気付かれないように深く溜め息を吐く。


 結局俺自身、種族代表会議に出席せざるを得ないわけかぁ。気が重いなぁ~……。

 ならせめてそれまでの期間は、思いっきり楽しませてもらっちゃうんだよーっ!


 手始めにニーナ! アウラ! いっぱいいっぱい愛し合おうねーっ! 
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