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7章 家族みんなで冒険譚2 聖域に潜む危機
504 フィリングポーション (改)
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「さぁニーナ。早速ティムルに会いに行こうっ」
クラクラットでの用事が済んだ俺は、ニーナを抱っこしたまま聖域の樹海に転移し、ティムルとリーチェの反応を目指して更にアナザーポータルを使用する。
転移先ではティムルとリーチェがキャーキャーと騒ぎながら、2人で抱きあって飛び跳ねていた。
なんだこの光景。この世の楽園か?
「あっダン! ちょうどいいところに来てくれたわっ! 今ね、頼まれてた魔力回ふ……」
「「ティムル大好きーーっ!」」
俺に気付いて声をかけてくれたティムルの言葉を待たず、ニーナと一緒にリーチェごとティムルを抱きしめる。
2人の女神が談笑する地上の楽園に、ニーナと一緒に突撃だぜっ!
「お姉さん大好きーっ。勿論リーチェも大好きーっ。2人ともいつもありがとう。ちゅっちゅ」
「んふー。ティムル、大好きなのーっ。リーチェも大好きっ。ぎゅー。すりすり」
「えっ、と……? お、お姉さんも2人のことが大好きよー???」
「あはっ! なんだか良く分からないけど、せっかくだしぼくも便乗しちゃえっ。ティムル、いっつもありがとーっ!」
「ワケ分からないのに便乗しないの、もう! 勿論リーチェのことも大好きだからねー?」
呆れたり戸惑ったりと忙しい様子のティムルを、俺とニーナとリーチェの3人でひたすら好き好きと伝えながらぎゅーっとする。
良く考えたらこの3人って、我が家で1番ティムル大好きな3人だったわ。ティムル大好きー。よしよしなでなで。
「んもう、これじゃ話も出来ないわ。落ち着くまで好きなだけ抱きしめてなさい。でもダンには抱きしめてもらうだけじゃ足りないかしらぁ?」
「そういうえっちに積極的なところも含めてお姉さん大好きーっ!」
むーっと突き出されたティムルの唇に大喜びで唇を重ねる。
そのまま気配遮断を発動して、魔物が乱入してこないよう気をつけながら4人で暫く抱きあった。
「あはーっ。なんだかお姉さんもみんなと離れたくなくなっちゃったから、このままでお話させてもらっちゃうわねー?」
暫くして落ち着いた俺達は、話をするために一旦地面に座り込む。
胡坐をかいた俺を跨いでティムルが正面から抱き付いてきていて、そのティムルの両隣でニーナとリーチェがディムルに抱き付いてすりすりと頬ずりしている。
俺に跨ったティムルは、いつもと違って着衣のままだ。
今はエロい気分よりもティムルが愛しい気持ちの方が大分強い。それにお互い報告もあるからえっちはお預けだ。
ティムルの背中と頭をさすさすと撫でながら、口を突き出せば直ぐに唇が触れ合う距離で見詰め合い、互いに起こったことを報告し合う。
「あはーっ。聞いて驚きなさいっ。ダンに頼まれたマジックアイテム、私とリーチェで無事に開発に成功したわよーっ!」
「流石だね2人とも。ティムルもリーチェもお疲れ様。ぎゅーっ」
俺の腕の中でモゾモゾ動くティムルが取り出したのは、角度によって様々な色に光り輝く液体の入った1本のビンだった。
中の液体は基本的に透明で、だけど赤青黄色と様々な色の煌きを放っている。
真っ暗な聖域の樹海でもこれだけ鮮やかな光を見せてくれるなら、明るいところで見たらもっと綺麗なのかもしれないな。
ティムルからビンを受け取って鑑定してみると、『フィリングポーション』と表示された。
「フィリングポーションか。キラキラしてて凄く綺麗なポーションだね。効果の方はもう確かめたの?」
「あはーっ。それを説明する前にご褒美が欲しいかしらぁ?」
「お安いご用だよ。説明が終わった後もいっぱいご褒美あげるからね」
抱きしめているティムルと情熱的に舌を絡ませ、お互いの唾液をジュルジュルと啜りあう。
そしてティムルを抱きしめたままリーチェと唇を重ねてその甘さを楽しみ、ついでにニーナともキスを交わしてご褒美の支払いを済ませた。
「効果の方は実証済みよ。でも魔力が回復するのは間違いないんだけど、回復量は大したことない感じねぇ」
「実際に服用してみたんだね。具体的にはどうやって検証したの?」
「ぼくが牙竜点星を使って軽い魔力枯渇を起こしたんだよーっ」
まるでしっぽを振る子犬のように、聞いて聞いてと笑顔で捲し立てるリーチェ。
むにゅむにゅ押し付けられる生意気おっぱいの感触を楽しみながら詳しい説明を聞くと、弓のチャージ型ウェポンスキル牙竜点星でリーチェが魔力枯渇を起こし、フィリングポーションを服用する様子をティムルが熱視で観察してくれていたらしい。
……なんだろうな?
その光景を思い描くと、なんかそこはかとなくエロスが漂っている気がするぞぉ?
「それで服用した感じなんだけど、魔力枯渇の症状を一気に緩和するくらいの魔力は回復させてくれるみたいだね。でもぼくたちの魔力を全快させるには程遠い回復量に思えたかな」
「俺達の魔力量で物事を語るのは難しいね。なにはともあれ2人とも、検証お疲れ様ー」
言葉と一緒に労いのキスを贈ろうと思ったら、唇が触れる寸前でリーチェの口が大きく開かれ、そのままリーチェに捕食されてしまった。
んもーエロ女神様ったら。触れるだけのキスじゃ物足りなかったの? ちゅうちゅうれろれろ。
「ダンとリーチェはそのままキスを続けてていいからねー」
キスする俺とリーチェの頭をよしよしなでなでしながら、ニーナがティムルとの会話を担当してくれる。
ニーナに撫でられたリーチェはなんだか凄く嬉しそうに緩みきった笑顔を見せながら、舌だけは情熱的に絡めてくる。
ティムルとは親友関係にあるリーチェだけど、なんかニーナにも特別な感情を抱いている節があるよなー?
「それでティムル。これはどうやって作ったの? 一般に流通させる事は可能なのかな?」
「それがさぁニーナちゃん。作るのは簡単だから流通させること自体は不可能じゃないんだけど、素材から考えるとかなりの高級品になってしまいそうなのよぉ……」
片頬に手の平を当てながら、困ったわねぇとため息を吐くティムル。
お姉さんのその仕草が可愛すぎて、こっちこそ困ったものなんだよ?
そんな可愛いお姉さんにキスをしたいのに、リーチェがちゅぱちゅぱれろれろと俺の舌を捕らえて離さないのも困ったものだけど。リーチェ大好きぃ。
「ヒールポーション、キュアポーション、バイタルポーションの3つに発光魔玉を3つ加えることでフィリングポーションは完成するんだけど……。素材のポーションの方も安くないからぁ……」
「そ、それは高いねぇ……。とても一般の魔物狩りには手が出せないの~……」
フロイさんに飲まされた肉体治療薬の激マズヒールポーションと、毒や病気に効果のあるキュアポーション。
そしてエマやターニアがお世話になった栄養ドリンク、バイタルポーションに更に魔玉まで必要なのか。
バイタルポーションだけでも、1本5万リーフでも買えない代物だからなぁ。
それらを素材とするフィリングポーションの価格は、1本で王金貨に届いてしまうかもしれない。
「他に魔力の回復方法が無いからって、なんだか随分と足元を見られてる感じなの~っ。なんか釈然としないねー?」
「前にダンが言ってた……バランスだっけ? なんか納得しちゃうわよねぇ。フィリングポーションが安価だったら、魔法とウェポンスキルのゴリ押しで大抵のことが出来ちゃうから……」
「仕合わせの暴君のメンバーは特にだよね。フィリングポーションの効果が高ければ、みんなのチャージスキルはおろかダンのヴァンダライズまでノーリスクで発動出来ちゃうから。そう考えると妥当な価値かなぁ?」
価格を考えると、非常用の救済措置として使うのが関の山かなぁ? アウラの魔力補給方法として考えるのは少し心許無い気がする。
職業浸透を終えたら、アウラの全身の装備品に魔力消費軽減と魔力自動回復を積みまくるしかないな。
「ふふ。ダンが居なくってもマジックアイテムを開発しちゃうなんて、ティムルはやっぱり最高のドワーフなのっ。ティムルは本当に何でも出来ちゃうのーっ」
「え、ええ? ダンもニーナちゃんもさっきからなんなのぉ? 2人とも可愛過ぎるでしょーっ!」
未だに褒められる事に慣れていないティムルは、照れ隠しに俺とニーナを思い切り抱きしめてくれる。
そんなティムルに大好き大好きと伝えながらも、クラメトーラで起こった出来事を説明するニーナ。
「熱視の時にダンが言ってた通りだったのっ! ティムルは始めっから最高のドワーフ族で、クラメトーラでの評価の方が完全に間違ってたんだよーっ」
「あはーっ。あんな奴らの評価なんてどうでもいいわーっ! 大好きなニーナちゃんに褒められる方がよっぽど嬉しいわよーっ!」
「最高のティムルを褒めないなんて無理なのっ! ティムル好きーっ! アッチンで会った時からずっと好きなのーっ」
「ニ、ニーナちゃんが可愛すぎるぅぅ……! こ、このままじゃダンより好きになっちゃいそう……!」
「クラメトーラの職人に関しては以上だね。あとは向こうから接触してこない限りは無視するつもりだよー」
自分の指や過去にまで嫉妬出来る俺だけど、家族同士で好き合う分には嬉しいとしか感じないなぁ。
エロ神リーチェとの舌戦から逃亡し、抱き合うニーナとティムルのほっぺにちゅっちゅっとキスをする。
「ティムルから歩み寄りたいなら構わないけど、ティムルはクラメトーラに興味無いかなって思って一旦保留させてもらったんだー」
「そうねぇ。貴方達と出会う前は故郷を恨んだこともあったけど……」
俺とリーチェとニーナの頭を忙しく撫でながら、思う所は何も無いと言い切るティムル。
故郷に対する恨みや怒りも、懐かしさや親しみでさえ全く残っていないらしい。
「勝手に困窮してるドワーフを馬鹿馬鹿しく思っちゃうけど、嫌ったり憎んだりする気持ちはもう無いかしら? 彼らの視野の狭さを憐れに思うくらいかしらねぇ」
「ティムルは私達と会った時から何でも知ってて視野が広かったのっ! 今日会ってきたドワーフたちと同じ種族だとは思えないくらいティムルは凄くて、大好きなのーっ」
「私も好きー! ニーナちゃん大好きよーっ!」
イチャイチャしているニーナとティムルをよしよしなでなで。
視野の狭さかぁ。クラメトーラに住まう人々の視野って、ある種意図的に狭められてしまっているところがあるからな。
ティムルもそれに思い至っているからこそ、糾弾しきれないのかも。
「種族専用職業である名匠の知識は伝わっているのに、その存在が失われているなんて驚くよ……。エルフ族には種族専用職業って概念は知られてなかったけど、巫術士は全エルフの憧れだったのになぁ」
「エルフェリアと違って、クラメトーラでは色んな要因が重なっちゃってるのよねぇ……」
名匠の情報の扱われ方に驚くリーチェと、クラメトーラなら仕方ないと呆れるティムル。
ティムルにしろカラソルさんにしろ、クラメトーラの地を追われたドワーフの方がクラメトーラを冷静に見ることが出来ているってのは皮肉だなぁ。
「転職魔法陣は限られているし、満足に職業浸透は進められないし、冒険者ギルドも無いからクラメトーラから出ることも容易じゃないし、クラメトーラから出られなければフォアーク神殿にもいけないしぃ。職業浸透という観点から見ると、クラメトーラって完全に詰んじゃってる土地なのよねー」
「転職魔方陣に関しては、魔法使い系の転職魔法陣しか無かったエルフェリアも似たようなものだと思うけど、職業浸透を進め難いのが痛すぎたんだろうねぇ。名匠の知識を持った者が王国で研鑽を積めば名匠になれたかもしれないけど、名匠の存在を伝えられるドワーフほど外には出たがらないかぁ」
互いにほっぺをこすり付けあいながら、ティムルとリーチェはクラメトーラと名匠の関係性について話し合っている。
アウターを占有していたのはエルフェリアもクラメトーラも同じだけど、自由に探索できたかどうかの違いは思った以上に大きかったようだ。
名匠になろうと思っても職業浸透が進められないんじゃお手上げだよねぇ。
まぁ職業浸透はともかくとして、この世界の生活は魔物とアウターによって支えられているのだから、アウターさえまともに機能していればどこでだって生活はできる。
だから多少の時間は必要かもしれないけど、暴王のゆりかごが解放されたクラメトーラの今後はきっと明るいものになるはずだ。
クラメトーラとは逆にアウターを失ってしまったエルフェリアが、やはり心配になってしまうけどね。
呼び水の鏡を使えば、アウターを人工的に生み出す事は恐らく可能だろう。
しかし膨大な魔力が際限なく注ぎ込まれ続ける呼び水の鏡を軽々に扱うのはかなり危険だ。ガルクーザ級の魔物を呼び込みかねない。
各地のアウターって、異界から魔力が流入してくる場所であると同時に、その膨大な魔力をアウターに留める役割も担っている気がするんだよね。
何も無いところに呼び水の鏡で新たなアウターを発生させてしまった場合、留まらずに広まった魔力が世界中で魔物を大量発生させたりする可能性だって考えられなくもないのだ。
だからそう。
ここでやっぱり聖域の樹海の調査に話は戻ってくるんだよ。
世界中に溢れた余剰分の魔力を吸収し、森として還元することで世界の魔力バランスを保っているというレリックアイテム、聖域の樹海。
ここで起こっている異変を究明し、聖域の樹海の性能と原理を把握することが出来れば、エルフェリアのアウターを再生することも可能になってくるかもしれないのだ。
「俺とニーナは明日もクラメトーラに行く予定だけど、ティムルとリーチェはどうしよっか?」
頬ずりし合っているティムルとリーチェに混ざりながら、2人に明日以降の希望を聞いてみる。
ここでもしもティムルがクラメトーラに顔を出したいと言ったら、今日の俺の言動が全て台無しになりそうではあるなっ。
「2人があっさりフィリングポーションを完成させちゃったから、予定が空いちゃったんだよねー。自由にしてもらっても構わないんだけど、何か希望はあるかなー?」
「んー。なら私はアウラの方についていこうかしらね。職人連中が接触してこない限りはクラメトーラに足を運ぶ理由が無いもの」
やはり予想した通り、ティムルはクラメトーラに行きたがらなかった。
興味も関心も無いみたいだけど、それでもなんとなく足が遠退いちゃう気持ちも分からなくはないな。
「クラクラットでダンとデートできるのは正直羨ましいけどねっ? アウラのこともやっぱりちゃんと責任を持ちたいの」
「ならぼくはダンのほうについていこうかなっ。ニーナにはダンとのデートの邪魔しちゃって申し訳無いんだけど……ダメかなぁ?」
「ぜーんぜんいいのっ! リーチェと一緒にダンとデートすればいいだけなのっ。それに私は大好きなリーチェとももっと沢山デートしたいんだーっ」
「ニ、ニーナ。君、なんかフラッタみたいになってない……? もちろんぼくだってニーナのことも大好きなんだけど、こうも真正面から言われると流石に照れちゃうかな……」
ニーナに正面から行為をぶつけられたリーチェが、赤面しながらしどろもどろになって何とか言葉を返している。
だけどなリーチェ。ニーナにとっては多分こっちが素なんだよ。
普段はみんなのまとめ役として、意識して俺と一定の距離を保ってくれてるんだと思うよ。
さて、お互いの報告も終わったし、ティムルとリーチェのことも充分に抱きしめたし、そろそろ他のみんなとも合流しよう。
「3人とも、そろそろアウラたちの所に行こっか。あっちの進捗状況も確認しとかなきゃ」
「多分まだ聖域の中心には到達してないでしょうけどねー。恐らくは明日くらいまでかかるんじゃないかしらぁ?」
ティムルの見立てに頷きを返して、4人で固まったままフラッタたちの元へ転移した。
転移先ではフラッタとヴァルゴがニコニコと上機嫌で、それとは対照的に地面に大の字になったアウラが悔しそうに唸っているのだった。
クラクラットでの用事が済んだ俺は、ニーナを抱っこしたまま聖域の樹海に転移し、ティムルとリーチェの反応を目指して更にアナザーポータルを使用する。
転移先ではティムルとリーチェがキャーキャーと騒ぎながら、2人で抱きあって飛び跳ねていた。
なんだこの光景。この世の楽園か?
「あっダン! ちょうどいいところに来てくれたわっ! 今ね、頼まれてた魔力回ふ……」
「「ティムル大好きーーっ!」」
俺に気付いて声をかけてくれたティムルの言葉を待たず、ニーナと一緒にリーチェごとティムルを抱きしめる。
2人の女神が談笑する地上の楽園に、ニーナと一緒に突撃だぜっ!
「お姉さん大好きーっ。勿論リーチェも大好きーっ。2人ともいつもありがとう。ちゅっちゅ」
「んふー。ティムル、大好きなのーっ。リーチェも大好きっ。ぎゅー。すりすり」
「えっ、と……? お、お姉さんも2人のことが大好きよー???」
「あはっ! なんだか良く分からないけど、せっかくだしぼくも便乗しちゃえっ。ティムル、いっつもありがとーっ!」
「ワケ分からないのに便乗しないの、もう! 勿論リーチェのことも大好きだからねー?」
呆れたり戸惑ったりと忙しい様子のティムルを、俺とニーナとリーチェの3人でひたすら好き好きと伝えながらぎゅーっとする。
良く考えたらこの3人って、我が家で1番ティムル大好きな3人だったわ。ティムル大好きー。よしよしなでなで。
「んもう、これじゃ話も出来ないわ。落ち着くまで好きなだけ抱きしめてなさい。でもダンには抱きしめてもらうだけじゃ足りないかしらぁ?」
「そういうえっちに積極的なところも含めてお姉さん大好きーっ!」
むーっと突き出されたティムルの唇に大喜びで唇を重ねる。
そのまま気配遮断を発動して、魔物が乱入してこないよう気をつけながら4人で暫く抱きあった。
「あはーっ。なんだかお姉さんもみんなと離れたくなくなっちゃったから、このままでお話させてもらっちゃうわねー?」
暫くして落ち着いた俺達は、話をするために一旦地面に座り込む。
胡坐をかいた俺を跨いでティムルが正面から抱き付いてきていて、そのティムルの両隣でニーナとリーチェがディムルに抱き付いてすりすりと頬ずりしている。
俺に跨ったティムルは、いつもと違って着衣のままだ。
今はエロい気分よりもティムルが愛しい気持ちの方が大分強い。それにお互い報告もあるからえっちはお預けだ。
ティムルの背中と頭をさすさすと撫でながら、口を突き出せば直ぐに唇が触れ合う距離で見詰め合い、互いに起こったことを報告し合う。
「あはーっ。聞いて驚きなさいっ。ダンに頼まれたマジックアイテム、私とリーチェで無事に開発に成功したわよーっ!」
「流石だね2人とも。ティムルもリーチェもお疲れ様。ぎゅーっ」
俺の腕の中でモゾモゾ動くティムルが取り出したのは、角度によって様々な色に光り輝く液体の入った1本のビンだった。
中の液体は基本的に透明で、だけど赤青黄色と様々な色の煌きを放っている。
真っ暗な聖域の樹海でもこれだけ鮮やかな光を見せてくれるなら、明るいところで見たらもっと綺麗なのかもしれないな。
ティムルからビンを受け取って鑑定してみると、『フィリングポーション』と表示された。
「フィリングポーションか。キラキラしてて凄く綺麗なポーションだね。効果の方はもう確かめたの?」
「あはーっ。それを説明する前にご褒美が欲しいかしらぁ?」
「お安いご用だよ。説明が終わった後もいっぱいご褒美あげるからね」
抱きしめているティムルと情熱的に舌を絡ませ、お互いの唾液をジュルジュルと啜りあう。
そしてティムルを抱きしめたままリーチェと唇を重ねてその甘さを楽しみ、ついでにニーナともキスを交わしてご褒美の支払いを済ませた。
「効果の方は実証済みよ。でも魔力が回復するのは間違いないんだけど、回復量は大したことない感じねぇ」
「実際に服用してみたんだね。具体的にはどうやって検証したの?」
「ぼくが牙竜点星を使って軽い魔力枯渇を起こしたんだよーっ」
まるでしっぽを振る子犬のように、聞いて聞いてと笑顔で捲し立てるリーチェ。
むにゅむにゅ押し付けられる生意気おっぱいの感触を楽しみながら詳しい説明を聞くと、弓のチャージ型ウェポンスキル牙竜点星でリーチェが魔力枯渇を起こし、フィリングポーションを服用する様子をティムルが熱視で観察してくれていたらしい。
……なんだろうな?
その光景を思い描くと、なんかそこはかとなくエロスが漂っている気がするぞぉ?
「それで服用した感じなんだけど、魔力枯渇の症状を一気に緩和するくらいの魔力は回復させてくれるみたいだね。でもぼくたちの魔力を全快させるには程遠い回復量に思えたかな」
「俺達の魔力量で物事を語るのは難しいね。なにはともあれ2人とも、検証お疲れ様ー」
言葉と一緒に労いのキスを贈ろうと思ったら、唇が触れる寸前でリーチェの口が大きく開かれ、そのままリーチェに捕食されてしまった。
んもーエロ女神様ったら。触れるだけのキスじゃ物足りなかったの? ちゅうちゅうれろれろ。
「ダンとリーチェはそのままキスを続けてていいからねー」
キスする俺とリーチェの頭をよしよしなでなでしながら、ニーナがティムルとの会話を担当してくれる。
ニーナに撫でられたリーチェはなんだか凄く嬉しそうに緩みきった笑顔を見せながら、舌だけは情熱的に絡めてくる。
ティムルとは親友関係にあるリーチェだけど、なんかニーナにも特別な感情を抱いている節があるよなー?
「それでティムル。これはどうやって作ったの? 一般に流通させる事は可能なのかな?」
「それがさぁニーナちゃん。作るのは簡単だから流通させること自体は不可能じゃないんだけど、素材から考えるとかなりの高級品になってしまいそうなのよぉ……」
片頬に手の平を当てながら、困ったわねぇとため息を吐くティムル。
お姉さんのその仕草が可愛すぎて、こっちこそ困ったものなんだよ?
そんな可愛いお姉さんにキスをしたいのに、リーチェがちゅぱちゅぱれろれろと俺の舌を捕らえて離さないのも困ったものだけど。リーチェ大好きぃ。
「ヒールポーション、キュアポーション、バイタルポーションの3つに発光魔玉を3つ加えることでフィリングポーションは完成するんだけど……。素材のポーションの方も安くないからぁ……」
「そ、それは高いねぇ……。とても一般の魔物狩りには手が出せないの~……」
フロイさんに飲まされた肉体治療薬の激マズヒールポーションと、毒や病気に効果のあるキュアポーション。
そしてエマやターニアがお世話になった栄養ドリンク、バイタルポーションに更に魔玉まで必要なのか。
バイタルポーションだけでも、1本5万リーフでも買えない代物だからなぁ。
それらを素材とするフィリングポーションの価格は、1本で王金貨に届いてしまうかもしれない。
「他に魔力の回復方法が無いからって、なんだか随分と足元を見られてる感じなの~っ。なんか釈然としないねー?」
「前にダンが言ってた……バランスだっけ? なんか納得しちゃうわよねぇ。フィリングポーションが安価だったら、魔法とウェポンスキルのゴリ押しで大抵のことが出来ちゃうから……」
「仕合わせの暴君のメンバーは特にだよね。フィリングポーションの効果が高ければ、みんなのチャージスキルはおろかダンのヴァンダライズまでノーリスクで発動出来ちゃうから。そう考えると妥当な価値かなぁ?」
価格を考えると、非常用の救済措置として使うのが関の山かなぁ? アウラの魔力補給方法として考えるのは少し心許無い気がする。
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「ふふ。ダンが居なくってもマジックアイテムを開発しちゃうなんて、ティムルはやっぱり最高のドワーフなのっ。ティムルは本当に何でも出来ちゃうのーっ」
「え、ええ? ダンもニーナちゃんもさっきからなんなのぉ? 2人とも可愛過ぎるでしょーっ!」
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「熱視の時にダンが言ってた通りだったのっ! ティムルは始めっから最高のドワーフ族で、クラメトーラでの評価の方が完全に間違ってたんだよーっ」
「あはーっ。あんな奴らの評価なんてどうでもいいわーっ! 大好きなニーナちゃんに褒められる方がよっぽど嬉しいわよーっ!」
「最高のティムルを褒めないなんて無理なのっ! ティムル好きーっ! アッチンで会った時からずっと好きなのーっ」
「ニ、ニーナちゃんが可愛すぎるぅぅ……! こ、このままじゃダンより好きになっちゃいそう……!」
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自分の指や過去にまで嫉妬出来る俺だけど、家族同士で好き合う分には嬉しいとしか感じないなぁ。
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「ティムルから歩み寄りたいなら構わないけど、ティムルはクラメトーラに興味無いかなって思って一旦保留させてもらったんだー」
「そうねぇ。貴方達と出会う前は故郷を恨んだこともあったけど……」
俺とリーチェとニーナの頭を忙しく撫でながら、思う所は何も無いと言い切るティムル。
故郷に対する恨みや怒りも、懐かしさや親しみでさえ全く残っていないらしい。
「勝手に困窮してるドワーフを馬鹿馬鹿しく思っちゃうけど、嫌ったり憎んだりする気持ちはもう無いかしら? 彼らの視野の狭さを憐れに思うくらいかしらねぇ」
「ティムルは私達と会った時から何でも知ってて視野が広かったのっ! 今日会ってきたドワーフたちと同じ種族だとは思えないくらいティムルは凄くて、大好きなのーっ」
「私も好きー! ニーナちゃん大好きよーっ!」
イチャイチャしているニーナとティムルをよしよしなでなで。
視野の狭さかぁ。クラメトーラに住まう人々の視野って、ある種意図的に狭められてしまっているところがあるからな。
ティムルもそれに思い至っているからこそ、糾弾しきれないのかも。
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「エルフェリアと違って、クラメトーラでは色んな要因が重なっちゃってるのよねぇ……」
名匠の情報の扱われ方に驚くリーチェと、クラメトーラなら仕方ないと呆れるティムル。
ティムルにしろカラソルさんにしろ、クラメトーラの地を追われたドワーフの方がクラメトーラを冷静に見ることが出来ているってのは皮肉だなぁ。
「転職魔法陣は限られているし、満足に職業浸透は進められないし、冒険者ギルドも無いからクラメトーラから出ることも容易じゃないし、クラメトーラから出られなければフォアーク神殿にもいけないしぃ。職業浸透という観点から見ると、クラメトーラって完全に詰んじゃってる土地なのよねー」
「転職魔方陣に関しては、魔法使い系の転職魔法陣しか無かったエルフェリアも似たようなものだと思うけど、職業浸透を進め難いのが痛すぎたんだろうねぇ。名匠の知識を持った者が王国で研鑽を積めば名匠になれたかもしれないけど、名匠の存在を伝えられるドワーフほど外には出たがらないかぁ」
互いにほっぺをこすり付けあいながら、ティムルとリーチェはクラメトーラと名匠の関係性について話し合っている。
アウターを占有していたのはエルフェリアもクラメトーラも同じだけど、自由に探索できたかどうかの違いは思った以上に大きかったようだ。
名匠になろうと思っても職業浸透が進められないんじゃお手上げだよねぇ。
まぁ職業浸透はともかくとして、この世界の生活は魔物とアウターによって支えられているのだから、アウターさえまともに機能していればどこでだって生活はできる。
だから多少の時間は必要かもしれないけど、暴王のゆりかごが解放されたクラメトーラの今後はきっと明るいものになるはずだ。
クラメトーラとは逆にアウターを失ってしまったエルフェリアが、やはり心配になってしまうけどね。
呼び水の鏡を使えば、アウターを人工的に生み出す事は恐らく可能だろう。
しかし膨大な魔力が際限なく注ぎ込まれ続ける呼び水の鏡を軽々に扱うのはかなり危険だ。ガルクーザ級の魔物を呼び込みかねない。
各地のアウターって、異界から魔力が流入してくる場所であると同時に、その膨大な魔力をアウターに留める役割も担っている気がするんだよね。
何も無いところに呼び水の鏡で新たなアウターを発生させてしまった場合、留まらずに広まった魔力が世界中で魔物を大量発生させたりする可能性だって考えられなくもないのだ。
だからそう。
ここでやっぱり聖域の樹海の調査に話は戻ってくるんだよ。
世界中に溢れた余剰分の魔力を吸収し、森として還元することで世界の魔力バランスを保っているというレリックアイテム、聖域の樹海。
ここで起こっている異変を究明し、聖域の樹海の性能と原理を把握することが出来れば、エルフェリアのアウターを再生することも可能になってくるかもしれないのだ。
「俺とニーナは明日もクラメトーラに行く予定だけど、ティムルとリーチェはどうしよっか?」
頬ずりし合っているティムルとリーチェに混ざりながら、2人に明日以降の希望を聞いてみる。
ここでもしもティムルがクラメトーラに顔を出したいと言ったら、今日の俺の言動が全て台無しになりそうではあるなっ。
「2人があっさりフィリングポーションを完成させちゃったから、予定が空いちゃったんだよねー。自由にしてもらっても構わないんだけど、何か希望はあるかなー?」
「んー。なら私はアウラの方についていこうかしらね。職人連中が接触してこない限りはクラメトーラに足を運ぶ理由が無いもの」
やはり予想した通り、ティムルはクラメトーラに行きたがらなかった。
興味も関心も無いみたいだけど、それでもなんとなく足が遠退いちゃう気持ちも分からなくはないな。
「クラクラットでダンとデートできるのは正直羨ましいけどねっ? アウラのこともやっぱりちゃんと責任を持ちたいの」
「ならぼくはダンのほうについていこうかなっ。ニーナにはダンとのデートの邪魔しちゃって申し訳無いんだけど……ダメかなぁ?」
「ぜーんぜんいいのっ! リーチェと一緒にダンとデートすればいいだけなのっ。それに私は大好きなリーチェとももっと沢山デートしたいんだーっ」
「ニ、ニーナ。君、なんかフラッタみたいになってない……? もちろんぼくだってニーナのことも大好きなんだけど、こうも真正面から言われると流石に照れちゃうかな……」
ニーナに正面から行為をぶつけられたリーチェが、赤面しながらしどろもどろになって何とか言葉を返している。
だけどなリーチェ。ニーナにとっては多分こっちが素なんだよ。
普段はみんなのまとめ役として、意識して俺と一定の距離を保ってくれてるんだと思うよ。
さて、お互いの報告も終わったし、ティムルとリーチェのことも充分に抱きしめたし、そろそろ他のみんなとも合流しよう。
「3人とも、そろそろアウラたちの所に行こっか。あっちの進捗状況も確認しとかなきゃ」
「多分まだ聖域の中心には到達してないでしょうけどねー。恐らくは明日くらいまでかかるんじゃないかしらぁ?」
ティムルの見立てに頷きを返して、4人で固まったままフラッタたちの元へ転移した。
転移先ではフラッタとヴァルゴがニコニコと上機嫌で、それとは対照的に地面に大の字になったアウラが悔しそうに唸っているのだった。
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※小説家になろうにも掲載しています
◆表紙画像はGirly Dropさんからお借りしました
(旧題:婚約者は愛らしい男爵令嬢さんのほうがお好きなようなので、婚約解消を申し出てみました)
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