異世界イチャラブ冒険譚

りっち

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6章 広がる世界と新たな疑問3 ホムンクルス計画

455 娘 (改)

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「…………パパ?」


 12歳未満のアウラとは婚姻契約を結べない。


 だからアウラの扱いをどうしようかと話し合っていた矢先にアウラから放たれた、『パパ』という言葉。

 その言葉をどう受け止めるべきか分からず、完全にショートしてしまった俺の思考回路。


 ……この世界に来てからここまで混乱したことって、何気に初めてじゃない?


「パパ……? どうしたのパパ……?」


 首を傾げながら不安そうに、だけど俺に向かってパパと呼びかけてくるアウラ。


 え、なにこの子。なんでもう当然のようにパパ呼びを受け入れてるの?

 流石にもう鬼籍に入られているだろうけれど、お前にはちゃんと両親が居たはずだろ。なんでそんなあっさり俺をパパとか呼んでくるの?


「っ! ダンが混乱してるの! アウラっ、畳み掛けなさいっ! 可愛くえっちにおねだりするのっ!」

「え、ええっと……?」


 ニーナの指示に戸惑いながらも、ぎゅっと正面から抱き付いてきて上目遣いで俺を見詰めてくるアウラ。


「パパ……。えっちなアウラのこと、いっぱい気持ちよくして欲しいの……」

「じゃないからあああああああ!!! なに言わせてんのニーナァァァァ!?」


 大好きなアウラにえっちなおねだりされても、パパ呼びが気になりすぎて混乱の方が勝っちゃうよっ!

 っていうかマジでなに言わせてんだニーナーーーっ!


「娘に手を出す父親なんて最低すぎるでしょ!? 大体アウラにだって両親は居ただろうに、なんでそんなにあっさり俺をパパ呼びしてくるわけ!?」

「あら。ダンには悪いけど、じゃ娘に手を出す父親なんて普通よ?」


 あっさりそんなこと言わないでくれるかなティムル!

 仮にこっちでは普通だったとしても、俺の中じゃ全然普通じゃないんだってばぁっ!


「落ち着くのじゃダンよ。ティムルの言っている事は少し言葉が足りぬのじゃ」


 アウラに抱き締められて混乱の極みにある俺を宥めるように静かに話しかけてくれたのは、根が真面目なフラッタだった。

 フラッタの静かな口調に引っ張られて、俺の興奮も少しだけ治まってくれた。


「……言葉が足りないって?」

「確かにスペルド王国では、娘や息子扱いの子供と愛し合う者はおるのじゃ。しかしそれらは必ずしも親からの一方的な略取では無いのじゃ」


 落ち着いたフラッタの口調が、混乱しきった俺の思考を静めてくれている。

 けど、娘や息子に手を出すことが双方同意の上だったとして、それが問題じゃないと言い切れるのか?


 訝しがる俺の様子を悟ったフラッタが、やはり落ち着いた口調で説明してくれる。


「短命な竜人族などでは特に多いと思うがの。好き合った相手と早く結ばれたい、家族になりたいと思う者は少なくないのじゃ。いつなにが起こるか分からないからのう」

「……いや、フラッタの言ってる事は分かるんだけどさ。愛し合うなら愛し合うでもいいけど、それでわざわざ親子を名乗る意味って何さ? 愛し合いながら12歳を待つって方法だって……」

「そこで問題になってくるのが一般的な収入と、人頭税なのじゃよ」

「収入と人頭税?」


 フラッタの説明が進むほどに、理解が追いつかなくて混乱してしまう。

 なんで男女が愛し合うのに税金の話が絡んでくるんだ?


「スペルド王国の一般的な年収は、金貨10枚から20枚程度と言われておるのじゃ。つまり裕福な者でも3人家族を賄うので精一杯だったのじゃよ。ダンが来る前まではのう」

「それは確かに聞いた事があるけどさ。そもそもその数字が間違ってない? 俺とニーナって8月くらいの時点で40万リーフ稼いだ記憶があるよ? あまりにも差が……」

「ダンよ。おぬしには想像しにくいやもしれぬが、毎日のように魔物狩りを続ける者などそう多くは無いのじゃぞ? 妾は職業浸透を進める家の方針に倣って戦いに明け暮れておったが」


 脳筋ルーナ竜爵家の事は置いておくにしても、なんで困窮しているのに仕事をしないんだ? 戦えば戦うほどに稼げる世界なのに。

 いや、まずはフラッタの話をちゃんと聞こう。


「話の腰を折ってごめん。それでフラッタ、年収と税金が子供に手を出す事とどう関わってくるのかな?」

「うむ。簡単に言えば納税義務の移譲じゃな。一般的な家庭では子供を沢山作ってしまうと人頭税で破産するのじゃ。けれど意図せず子を授かってしまうことは往々にしてあるものじゃ。だから親はこう思うのじゃよ。相手が決まっているならさっさと家を出よ、とな」

「なっ……!?」


 自分たちの収入では子供の税金を払ってやれないから、望む相手がいるなら成人を待たずに嫁がせる、そういうことなのか……!?

 子供も望まない相手の場所に嫁ぐわけでも無いし、単純に口減らしと断じてしまうのも違うのか……! でも……!


「……コットンのこともそうですが、納税できずに借金奴隷となった子供の末路は悲惨です」


 フラッタの説明に混乱していると、沈んだ声でムーリが口を挟んでくる。

 俺に分かりやすいようにと、あえてコットンの名前を出して説明してくれるみたいだ。


「15で奴隷となった子供の半数以上は命を落とすと言われていますからね。子供の将来を考えるなら、最優先で回避しなければいけないのが税金の滞納なんです」


 奴隷になった子供の半数以上は命を落とす。

 そんな事実を知っていながら子供達を奴隷にするしかなかった教会の人たちは、いったいどんな気持ちで毎年の納税期間を迎えていたんだろう……。


「だからクリミナルワークスの皆さんは、罪を犯してでも家族を守ろうと野盗に身を落としたわけなんですよ。家族を奴隷にするくらいなら、自分が犯罪者になることも厭わないと」

「王国側も庶民の困窮具合は分かっていますからね。当人同士が嫌がっていない限りは養子縁組は簡単に認められるんですよ。実際に私がソクトヴェルナ家の養子になった際にも、手続きは直ぐに終わりましたから」

「そうか。エマも元々は孤児出身だったんだっけ……」


 孤児出身のエマをラトリアつきの従者とするために、ソクトヴェルナ家に養子として迎えられたと言っていた気がする。


 なるほど。人頭税を滞納させれば労せず奴隷を生み出す事は出来るけど、それをしすぎると税収が減ってしまうわけだ。

 だから養子縁組を行いやすくして、お金を持っている家から沢山の税金を搾り取ろうという魂胆か……。


「今までは両親が健在でも子供を教会に預ける例も少なくなかったんですよ。その為教会には孤児が増え続け、そして15歳の奴隷もいつまで経っても減らせなかったんです。ダンさんが来るまでは、の話ですけどねっ」


 声とおっぱいを弾ませたムーリが、俺に笑顔を見せてくれる。


 だけど、両親が健在でも教会に預けられる子か……。

 もしも物心ついたあとにそんなことになったら、大人を信用できなくなるのも無理ないのかもしれない。


 ……ひょっとして、サウザーはそのパターンで孤児になったりしたのかな?


「私も知らなかったけど、この国には不幸が溢れていたんだね……」


 みんなが話してくれたこの王国の現状に、俺だけじゃなくてニーナも驚いているようだ。

 俺達が出会ったマグエルの子供達は、そこまで不幸全開には見えなかったもんなぁ……。


「でもさっきダンも言ってたけど、どうして普通の人たちの収入はそんなに低いの? 仮に他の仕事をしていたとしても、空き時間に魔物を狩ったりするくらい出来るんじゃ?」

「ニーナ。その考えはダンさんの鑑定と職業設定ありきの考え方だよ? 普通の人は気軽に転職することも、職業の加護を正確に把握することも出来ないの」


 ニーナの疑問を即座に切り捨てるターニア。


 確かに俺とニーナの稼ぎは、鑑定スキルと職業設定ありきだったかもしれない。

 けれど、それが無くたって魔物狩り自体は誰にでも可能なはずだ。


 家族を守れないほど困窮しているのに魔物狩りを行わない。その理由はいったいなんだ?


「職業も装備品も無い状態での魔物狩りの危険性は、今更語るまでも無いでしょう?」


 混乱する俺とニーナに説明を続けてくれたのは、自身も閉鎖された環境で育ったはずのヴァルゴだった。

 ヴァルゴだって人頭税を払った経験も無いはずなのに、俺やニーナよりも王国の困窮具合を正確に理解しているようだった。


「旦那様すら賞賛してくださった守人たちの槍の技術。あそこまで磨いた槍ですら、職業と装備品の加護無しには集団での投石に劣る威力しか発揮できなかったのですから。旦那様が考えるほど、魔物狩りというのは簡単に始められる生業ではないのです」


 ヴァルゴは言外に、俺とニーナの認識の甘さを指摘してくる。

 ゼロから魔物狩りを始めるということのハードルの高さを甘く見すぎていると。


 対人戦ならともかく、対魔物戦では職業補正の乗らない武器は無力に等しい。

 刃物だろうが投石だろうが、同じ威力でしかHPを削れない。


 だからあれほどの技を身につけていた魔人族たちが、魔物の群れに過剰に怯えていたんだ。


「ヴァルゴの言う通り、始めの転職で戦闘職を選ばなかった人が魔物狩りを始めるのは難しいんだよ。初めから知り合い同士で組めるトライラムフォロワーみたいな例は稀で、大抵の魔物狩りはたった1人で仲間集めからしなきゃいけないわけだしさ」


 リーチェの言葉に、自分がこの世界に来た時の事を思い返す。


 そう言えば転職に失敗すると、同じギルドで無料の転職は出来ないと説明された覚えがある。

 困窮しているからと焦って戦士になろうとして、しかし村人のレベルが足りずに戦士になれなかった。そんな例があるのかもしれない。


「そもそも装備品が高いでしょ? だから駆け出しの頃が1番大変なんだよ魔物狩りって。安全性を重視して大勢と一緒に組んじゃうと、今度は浸透も魔玉発光も進まないからね」

「多くの魔物狩りが駆け出しの頃に命を落すわ。そして運良く駆け出しの頃を抜け出しても、常に命の危険がある魔物狩りって結婚相手としては不評なの。だから普通の人は魔物狩りは出来るだけしたくないって思っちゃうのよねぇ」


 ティムルが現実を嘆きながらため息を零す。


 ステイルークの防具屋でも、駆け出しの頃が1番大変だと言われた気がするな。

 そんな始めの段階で篩にかけられてしまうのか、この世界の魔物狩りって。


 そう言えばムーリを手篭めにしようとしていたエロ神父ガリアも、俺が魔物狩りだと名乗ると途端に強気になった気がするな。

 稼げる魔物狩りというのは本当に数が少なかったんだろう、今までは。


「ダンさんが何をお悩みなのかは分かりませんけど、アウラちゃんを娘にして愛する事はスペルドでは一般的なことなんですよ。人間族のダンさんが10歳のドワーフ族の少女を娘と呼んで愛しても、何にも問題ないんです」


 大丈夫ですよと諭すように語り掛けてくるラトリア。

 現代日本の倫理観で物事を判断するのが間違っているのは分かるけど……!


 ってそうだよ。これって現在のスペルド王国の価値観なんだよ。455年前に生きていたアウラの常識では絶対にないはずだ。

 なのになんでアウラはこうもあっさり……。


「……なぁアウラ。お前はどうしてこうもあっさり俺のことをパパなんて呼ぶんだ? お前にはちゃんと両親が居たはずだろ?」

「……っ」


 俺にしがみ付いているアウラの体が強張ったのが分かった。

 言い方が不味かったかもしれない。これじゃアウラを拒絶してるみたいに聞こえちゃうか。


「あっと、ごめんごめん。アウラを娘にしたくないって思ってるわけじゃないからね ただ単純に疑問なんだ」


 アウラの事を大切に想っている事が伝わるように、ぎゅっと抱きしめてよしよしなでなでしてあげる。

 娘でもお嫁さんでも構わないよ。どっちにしたってアウラの事は大好きだから。


 だけど本当のご両親を差し置いて、俺が勝手に父親を名乗るわけにはいかないよ。たとえご両親が既にこの世を去っているにしても。


「大好きだよアウラ。俺達はもう家族で、ずっとずっと一緒だよ。だからアウラの気持ちも教えて欲しいな。どうして俺の事をこんなにあっさりパパなんて呼んでくれたの?」

「…………だって、だってみんなの方がよっぽど私のことを大切にしてくれるんだもん……」


 安心させたくて撫でてあげているのに、アウラの体は逆に硬くなってしまった。

 しかし硬くなりながらも、俺に縋りついたままで搾り出すように続きを語るアウラ。


「私、死にたくなんかなかったのに……。家族だから一緒に逝こうって。止めてって、イヤだって言っても聞いてもらえなくて……」


 死にたくなかった? 家族だから一緒に?

 それってつまり、アウラの両親は、アウラを道連れにして無理心中を図ったってことか……!?


「あの頃はみんなおかしくなっちゃってたけど、父さんと母さんは特に酷くて……。ドワーフ族の誇りを胸にディラン様の礎になるんだって……」

「ディランさんの礎……? それってまさか、ガルクーザの……!?」


 俺にはアウラの言っていることが理解しきれていなかったけれど、アウラの言葉を聞いたリーチェが戦慄している。

 そんなリーチェを一瞥し、小さく頷いたアウラ。


「そんな馬鹿な事が!? アウラは当時10歳未満だったんでしょ!? なら参加は認められてなかったはずだっ!」

「私、小さかったから……。樽に入れられて無理矢理連れてかれたの……」

「……なんて、ことだ。そんなの、許されないじゃないか……!」


 やり場のない怒りに身を震わせているリーチェ。

 当時のアウラにはいったい何が起こったんだろう。簡単に聞いていいことなんだろうか?


「……でも少しだけ分かったよ。だから姉さんはアウラを引き取ったんだね」

「うん。リーチェお姉ちゃんだけじゃなくてね? ラスタもディランもヴァハクも、レオもジーニも凄く可愛がってくれたんだ。私を家族って言ってくれたのはリーチェお姉ちゃんだけだったけど」

「今アウラが挙げた名前は、蒼穹の盟約のメンバーのことだよ、ダン」


 話についていけない俺にリーチェが補足してくれた。

 正直疑問はそこだけじゃないから、もう少し詳しく説明して欲しいんだけど……。


 だけど今は、アウラとリーチェの会話を邪魔するわけにはいかないか。


「だからね? ダンが、皆が家族だよって言ってくれたの、すっごく嬉しかったの……。ティムルに娘にすればって言われて嬉しかったんだ……」

「アウラ……」


 アウラの話を聞いて、思わず彼女を抱きしめてしまう。

 しかしアウラはやんわりと俺の拘束を解き、俺を真っ直ぐに見上げて言った。


「ダンのこと、パパって呼んじゃ駄目……? まだダンのお嫁さんになることは出来ないなら、私は娘でいい。私はパパの娘になりたいよぅ……!」


 懇願するアウラの瞳の真剣さに思わず呑まれてしまう。彼女の必死さに気圧されてしまう。


 娘に手を出すことがこの世界では一般的なら、アウラがこれほどまでに望んでくれているなら受け入れよう。

 俺の倫理観なんかよりもアウラのほうがずっとずっと大切だから。


 ただ今後アウラを愛する場合に、毎回微妙な気分にされそうだけど……?


「……俺の負けだよアウラ。好きに呼んでくれ。俺がアウラを大好きな事は変わらないからね」

「ほんとっ!? パパっ、だーいすきっ! これからいっぱいえっちなことしようね、パパ!」


 ええい! えっちなおねだりの時にパパって言うのはやめなさいっ!

 わざとか!? もしかしてわざとおねだりする時にパパって口にしてるのかこの娘はっ!?


「あはっ。突然こんな大きな娘が出来ちゃったの! 私達のこともママって呼んでいいからね、アウラっ!」


 あ、やっばい。ニーナに変なスイッチが入っちゃったみたいだぞぉ?

 まったくもう、こんなにえっちで大きい娘を育てた覚えはないんだけどなぁ?


 俺たちの娘がえっちに育つのは、両親の性欲的にも家庭環境的にも仕方ないのかもしれないけどぉ?
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