異世界イチャラブ冒険譚

りっち

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6章 広がる世界と新たな疑問2 世界の果て

417 残業 (改)

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「それじゃ行くよ。しっかり掴まっててね?」

「勿論です~……。言われなくても絶対絶対離しませんよぉ……。んふー……」


 フワフワした様子のムーリだけど、俺の言葉に応じてぎゅーっと力いっぱい抱き付いてくる。やわこいわぁ。

 ゆるふわムーリを抱っこしたまま、家族みんなでクラメトーラに転移した。




「ここがドワーフの里、クラメトーラかぁ……」

「本当に、命の気配を感じない場所なんですね……」


 ラトリアとターニアはスペルド王国貴族として、知識としてはグルトヴェーダの環境を知っていたようだ。

 けど実際に訪れたのは初めてだそうで、知識と体験の差を埋めるように周囲を興味深そうに見回している。


「グルトヴェーダの手前で呪いを受けた私が、グルトヴェーダを越える事が出来るなんてねぇ……。人生って分からないものなの」

「話には聞いていましたけれど、本当に草木1本生えていない場所なのですね。魔物すら現れない土地があるなど理解が追いつきませんよ」


 感慨深そうなターニアと、不思議そうな様子のラトリア。2人の反応の違いが面白いな。

 今まではそれぞれの都合があるからと、殆ど仕合わせの暴君だけで動いていたけど、やっぱり家族みんなで行動した方が楽しいし、みんなにも喜んでもらえる気がしてきたぞ?


 ただなぁ。ムーリ、ラトリアたちの魔物狩りに同行するのはお互いの成長の妨げになってしまいそうで、ちょっとだけ考えものだ。


「エルフェリア精霊国と違って、クラメトーラは一応スペルド王国扱いされているんですよね? だけど実際に訪れてみると、とても同じ国の光景とは思えませんよ……」

「んー、エルフェリアも今後どうなるかは読めないよねぇ。国民200人規模の国なんて、アルフェッカよりもよっぽど人が少ないもの。スペルドに属しちゃっても構わない気がするなぁ」


 エマとリーチェの会話を聞いて、そう言えばクラメトーラはスペルド王国内という扱いだった事に改めて気付いた。

 ポータルの利用料も銀貨10枚だったから間違いない。


 エルフェリアとクラメトーラの何が違うのかと言えば、単純にスペルドに国として認識されているかどうかの違いくらいしかなさそうだ。

 しかしその1点の違いって結構でかくて、エルフェリア精霊国に属しているエルフたちには人頭税が発生せず、困窮しているクラメトーラの民にはスペルド王国への納税義務が科せられているのだ。


 道が通ったことでクラメトーラも潤ってくれればいいけど、自由に入れるアウターが無いってのが問題なんだよなぁ。

 アウターの外にも魔物が出ないから、ドワーフたちは職業浸透を進めることが出来ないんだよねー。


「なんだか人の匂いが全然しない場所ですねぇ。皆さんと一緒じゃなかったら怖くなってたかもしれないです……」

「みんなと一緒だから怖がらなくて良いんだよムーリ。気の済むまでぎゅーっとしててあげるからね」


 俺にしがみ付いているムーリをよしよしなでなでしてあげて、せっかくなので大きいお尻もよしよしなでなでして楽しんでおく。


 それにしても、豚の獣化で嗅覚が研ぎ澄まされたのは分かるけど、獣化を解除した後も匂いに過敏に反応するようになっちゃってるなぁ。

 これも時間が経てば落ち着くんだろうか?


「ダンさん、1つ確認しておきたいんですけど……」

「んー? んふー?」


 ムーリのお尻を両手で撫で回していたら我慢出来なくなってきて、しがみ付くムーリと熱烈なキスを始めてしまう俺に、ラトリアが少し不安そうに聞いてくる。


「皆さんは既にここを訪れているわけですけど、今回初めて足を運んだ私達が一緒でも問題ないんでしょうか? ポータルでの転移は制限されているみたいですし」

「ぷはぁっ。それは大丈夫。クラメトーラは外部からの支援が無くちゃ生きていけない土地だから、基本的に来る者拒まずの場所なんだ」


 ドワーフ族は排他的な考えを持っていないって冒険者ギルドのお姉さんが言っていたけど、実際は逆なんだよな。

 外部資源に頼らなければ今日明日にも滅びかねないから、余所者を拒む余裕も無いんだ。


「ドワーフたちが警戒しているのは外からの来訪者ではなくて、内からの逃亡者なんだよ。外から来たお客さんに取り入って、ドワーフが里から逃げ出さないように警戒してるんだ」

「祖先から受け継いだこの地を捨てるドワーフは許さないってねー。その癖当時の私みたいに、外部に子供を売り払ってどんどん流出させてるんだから本末転倒なのよね、ドワーフ族って」


 ティムルがため息混じりにドワーフ族を批判する。


 土地を守る為に出奔を許さないのに、奴隷として売却することは率先して行なってるんだもんなぁ。

 口減らしも兼ねてるんだろうけれど、確かに本末転倒と言えるような気がするね。


 片手でティムルを抱き寄せて、お尻を弄りながら軽くキスを落す。


「今日中にクラクラットに潜入したいところだけど、まずはクラマイルに行ってその辺の事情を確認しようか。クラマイルとクラクラットでルールが違う可能性もあるしさ」

「了解です。まずは情報収集ですね」


 ヴァルゴの言葉にみんなが頷いてくれたのを確認して、ムーリとティムルのお尻を玩具にしながらクラマイルの集落に足を運んだ。




「う、わわ……。まるで隠れ住んでた時の生活みたいなの……」

「困窮していたとは聞いていましたが、これほどまでに……」


 クラマイルの集落に到着すると、そのあまりの困窮っぷりに初訪問組がショックを受けたようだ。


 クラメトーラはドワーフ族の本拠地という認識だし、移動魔法のあるこの世界では田舎や中央都市みたいに、場所によって街の発展度合いが変わることは殆ど無い。

 ましてやある程度の文化、生活水準は保証されているはずなんだよね、常識的に考えれば。


 だけどクラマイルの暮らしぶりは村と言うにもおこがましいくらいの困窮っぷりで、貴族として生活してきたラトリア、エマ、ターリアや、マグエルから殆ど出たことがなかったムーリの想像を遥かに超えてしまっていたようだ。


 木材が取れないから住居もボロ布で出来てるし、不衛生で悪臭が漂ってるからね。

 匂いに過敏になってしまったムーリが、俺の首元に顔をつっこんでスーハースーハーし始めるくらいにはキツい臭いだ。


 それでもカラソルさんが頑張って、昔よりも生活水準を向上させた結果がコレらしいんだよなぁ。

 カラソルさんと取引を行なう前は、ボロ布住居すら用意できない住人も少なくなかったらしいし……。


「まずは集落の代表が居る家に行こう。俺達は既に行ったことがあるから場所も分かるしね」

「そうですね。ムーリを抱きかかえている旦那様の存在はトラブルを招きそうですし、クラマイルにはお店などもないので見るべきものもありません。長居する必要は無いでしょう」


 ヴァルゴに促されて代表者の家に向かう。


 閉塞的という意味では、クラマイルのドワーフたちと聖域の魔人族たちの状況は結構似ていると思う。

 しかし似ているのは状況だけで、置かれている環境は正反対に近いと言っていいだろう。


 明確な使命感を持ってアウターに隠れ住んでいたヴァルゴの目には、この土地に居る理由すら忘れて困窮しているドワーフ族たちの生活は、いったいどのように映っているんだろうなぁ。


「おお、これはこれは。わざわざご足労いただきありがとうございます」


 村の代表者を訪ねると、少し大袈裟なくらい歓迎してくれた。

 俺がムーリを抱っこしている事実は、どうやら見なかった事にしてスルーした模様。


 今まで俺達の扱いは『取引先であるカラソルさんの知り合い』という感じでしかなかったけど、ブルーメタル加工の大口依頼を持ちこんだことで、俺達も無事に『大切なお取引先様』として扱ってもらえるようになったらしい。


「本日はどのようなご用件ですか? ご依頼の品でしたら流石にまだご用意できておりませんが、少量であればすぐにでも……」

「違う違う。依頼の方は決めたペースで生産してもらえば問題ないよ。今日足を運んだのは聞きたいことがあるからなんだ」

「聞きたいこと、ですか。私に答えられることであればいいのですが」

「実はクラクラットに入りたいと思っているんだけど、クラクラットに入るのに何か特別な決まり事はあるのかな?」

「クラクラットに、ですか……。失礼ですが彼の地に何の用が……?」


 歓迎ムードが一転、クラクラットと聞いた瞬間に露骨に難色を示す村の代表さん。

 どうやらクラクラットとはあまり良好な関係を築けていないみたいだね。


「俺達は見ての通り、魔物狩りをして生計を立てているんだ。だからこの地にあるというアウター、暴王のゆりかごを探索してみたくてね。俺達でも入れるのかな?」

「ああ、魔物狩りでしたね……。なるほど、アウターの探索ですか。なるほどなるほど……」


 俺の言葉に胸を撫で下ろしている代表さん。

 俺が頼んでる大口の依頼をクラクラットに取られる心配をしていたのかな?


「暴王のゆりかごの管理はクラクラットが行なっておりますから、私から不確かなことを申し上げることは出来ません。ですがクラクラットまでの案内と、皆さんの要望を伝えるくらいはさせていただきましょう」

「それで充分だよ、ありがとう。決まりを破ってまで探索するつもりは無いから迷惑はかけないよ」

「お気遣いありがとうございます。では早速使いの者を走らせますので、少々お時間をいただけますか?」


 代表の人はテキパキと指示を出して、クラクラットに伝令を出したみたいだ。

 使いを走らせるとは言っていたけど、流石に側近の人がポータルで転移していったようだな。


 ってことは、クラクラットまでは俺達もポータルを利用できるんだろうか?


「あとはクラクラットからの返事を待つだけなのですが……。済みません。大変恐縮なのですが、皆様に1つお願いがございましてですね……」


 代表の人がかなり言いにくそうな感じで切り出してくる。

 取り次いで欲しかったら代わりにこれやってくれ、みたいな交換条件にしなかっただけでも良心的かな?


「話を聞いてみないとなんとも言えないね。聞かせてくれる?」

「はい……。昨日皆様に作業場を改善してもらいましたでしょう? あの時渋っていた6つの集落がですね、皆様が改善してくださった作業場を目にして、その、なんと言いますか、虫の良い話ではあるのですが……」

「ああ、残り6つの集落の作業場も環境改善して欲しいってことね」


 この村の作業場は改善済みだけど、俺達への交渉役を任されたこの人は貧乏くじ引かされちゃった形だな。

 環境改善はこちらから提案したことで、クラマイルの人々にお願いして受け入れてもらったって認識だけど、こちらからの善意を突っ撥ねたくせに後になってからゴネ始めた、みたいに悪く取られると思って縮こまっているんだろう。


「いいよ。引き受ける。ポータルで案内を頼めるかな?」

「よっ、宜しいのですか……!? かなり失礼な態度を取ってしまった者も居たかと思いますが……!」

「作業場の環境改善は、そのまま生産性の向上に繋がる。大量生産を発注している俺達にとっても無関係な話じゃないからね。今の劣悪な作業環境をそのまま継続しないでくれて安心したくらいだよ」


 ただでさえ不毛な地で生活しているのに、金属素材の加工場はそれ以上に苛酷な現場だったからね。

 いくら長期的に依頼を発注しても、作業員がバタバタ倒れるようじゃ安定供給すら出来ないっての。


 早速ポータルで案内を……と思ったら、この村には側近の人以外にポータルを使える人間は存在しなかった。

 仕方ないので俺のポータルで代表さんと一緒に別の集落に赴き、そこで事情を話して別の村の冒険者に協力してもらうという二度手間を挟む事になった。




「なるほどっ、これはブレスの出力調整の訓練に最適ですねーーっ!」


 魔力枯渇を起こさないように気をつけながら、ブレスで岩山を掘削していくエマ。


 作業場の加工はブレスが放てるフラッタ、エマ、ラトリアの3人と、ダークブリンガーで岩山を削れるヴァルゴが工事担当。

 そして現場監督のティムルお姉さんという5人体制で行なってくれた。


 戦力外の俺は、ムーリとリーチェを抱きしめながら2人とずーっと唾液を交換し続けて、ニーナとターニアによるよしよしなでなで甘やかし接待を楽しんでしまったぜっ。




「んっ、ここはこれで完成ね。それじゃみんな、次の現場に急ぐわよーっ」

「「「はーいっ」」」


 既に昨日工事を経験しているティムルの指示は的確で、ラトリアとエマという新戦力の投入もあってあっという間に工事は進められていった。

 エアコントローラーやレインメイカーの用意もお姉さんがやってくれるし、マジで俺は戦力外以外の何者でもなかったな。


 俺が乳神様2人とキスをし続けている間に、およそ3時間程度で6箇所の改善工事は終了した。


「5人ともお疲れ様。手伝えなくてごめんよー」

「ふふっ。いいんですよー。その代わりぃ、今晩は期待していいですよねーっ?」


 俺の労いに対して、ご褒美をおねだりしてくるラトリア。

 任せるがいいさっ! ラトリアが逃げ出したくなるくらいめちゃくちゃにしてあげるからねーっ!


「ラトリアとエマもブレスの出力調整が出来るようになったんだねぇ? 器用だなぁ」
 
「フラッタに教えてもらいながら練習中なんです。まだ威力を絞りきれないんですけど」

「ブレスは強力ですけど、その分リスクも非常に大きいですからね。魔力枯渇のリスクを大幅に減らせる威力調整は、竜人族にとってはまさに革命的な技術だと思いますよっ」


 ラトリアとエマには疲労の色が窺えたけれど、練習中の制限ブレスを思う存分放つことが出来て満足そうにしている。


 ブレスを放ったら魔力枯渇が起こってしまう。それが今までの常識だった。

 しかし竜王によって、この常識を根底から覆すブレス制御技術が発見されてしまったのだ。


 ……ヤバいな。ただでさえ戦闘力特化の脳筋竜人族が、更に戦闘に特化してしまいそうだ。


 工事を担当してくれた5人と、報酬の前払いとしてたっぷりとキスを交わす。ついでに工事を担当していなかった4人ともたっぷりキスをする。

 ああもう今晩も楽しみだなぁっ! せっかくだからスペルディアの夢の一夜亭でも利用しちゃおうかなっ。


 工事を終えてウキウキワクワクしながら始めの村に戻ると、既にクラクラットから連絡が届いていた。


「皆さんお疲れ様でした。皆さんがクラクラットに立ち入っても何の問題も無いそうですよ」


 クラクラットへの出入りは自由。ただし始めはポータルではなく徒歩で来ることが立ち入りの条件だそうだ。

 暴王のゆりかごの探索については、クラクラットで改めて話をすることになるらしい。


「ポータルが使えないとなると、移動に半日程度は見てもらわないといけませんなぁ。これからだと陽も落ちてしまいますし、日を改めますか?」

「いや。仮に日を改めるにしても、今日中に1度足を運んでおいたほうが後々楽になると思う。案内の人には申し訳無いけど、今から案内してもらえる?」

「畏まりました。では直ぐに手配致しますね」


 1度訪問してしまえば、以後は自前のポータルで行き来できるからな。今日中にクラクラットまで足を運んでおきたいところだ。

 案内のドワーフと共に、ムーリを抱っこしたままクラマイルを後にした。


「はぁっ、はぁっ。み、皆さん凄いですね……? これでも自分は体力に自信があったんですが……」

「これでも暴王のゆりかご目当てにクラメトーラに来た魔物狩りだからね。俺達も体力にはそれなりに自信があるんだ」


 案内の人にペースに合わせて、小走りでクラクラットに向けて出発する。


 方向だけ教えてもらって俺達だけで移動する方法も提案したんだけど、それはクラクラット側から拒否されたっぽい。

 必ずクラマイルの仲介を挟むように言われたそうだ。面倒臭い。面倒臭いけど仕方ない。


「はぁっ。はぁっ。あ、貴方人間族ですよね……!? はぁっ。はぁっ」

「人間族さんですよー? ただし、複数のアウターを制覇してきた人間族さんなんですよー」


 職業浸透の進んでいる俺たちにとって、案内人の移動ペースは眠くなる速度だった。

 なのでムーリとリーチェを抱き上げて、2人のおっぱいを揺らしながら走ることで何とか退屈を紛らわせる。


 この2人を一緒に抱っこすると、2人のおっぱいで頭を挟み込んでくれるから困っちゃうんだよなぁっ。柔らかいよぉ。


「み、見えてきましたっ……。あ、あそこがクラク、ラットですぅ……」


 息も絶え絶えの案内人が、ようやく見えたゴールを指さし安堵の表情を浮かべている。


 小走りで走ること3時間ちょっと。

 とうとう俺達はクラメトーラの中心地であるクラクラットに足を踏み入れたのだった。
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