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6章 広がる世界と新たな疑問1 蜜月の日々
396 基礎工事 (改)
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「いってらっしゃい。気をつけてねー」
ニーナと愛し合った後に、本日同行する3人ともしっかりと愛し合って、その間に復活したみんなを今度こそ送り出していく。
みんな曰く、俺が自分以外の誰かと抱き合ってる時じゃないと家を出られない、とのこと。
いやぁ返す言葉もありませんねっ! 褒め言葉として受け取っておくよっ!
「う~……。今日はお腹が引っ込むたびに膨らまされちゃいそうねぇ……?」
「こらこらお姉さん。そんなやる気が漲るようなこと言わないの。今日の用事を済ませなきゃ」
「ティムルを嗜めてるように見せて、ティムルの言葉を一切否定しないよこの人ぉ……」
お腹が少し膨らんで足元が覚束ないティムル、リーチェ、ヴァルゴと一緒に、まずはヴィアバタへと転移する。
恐らく間もなく重機ブラックドラゴンによる基礎工事は終了するはずだから、そのことを領主さんに報告しておきたい。
それにシュパイン商会にも協力してもらうわけだから、ティムルと領主さんの顔合わせもしておいた方がいいだろう。
脳内でヴィアバタでの行動計画を立てながら、ヴィアバタの領主邸に足を運んだ。
「おおっ、良く来てくれたねダンさん。本日も工事の話かい?」
寂れてしまったヴィアバタの領主さんは比較的暇な毎日を過ごされているようで、アポ無しで訪れても割と直ぐに対応してくれるからありがたい。
道が完成したら是非とも忙しく過ごしてもらいたいね。
「寂れた街がいつも以上に静かに感じられるのが少し寂しいね。だけどこれは嵐の前の静けさだと思うことにしてるんだ」
現在は職業浸透の為に、ヴィアバタからマグエルに20名弱の住人が出張しているので、街全体が少し寂しく感じられるそうだ。
だけどスポットなら往復のポータル代を稼ぐのもかなり容易で、ちょくちょく顔を見せに戻ってきてくれる人もいるらしい。
まぁ道路建設工事の参加希望者は、全員が村人スタートってわけじゃないからな。
トライラムフォロワーの立ち上げの時よりも、ずっとスムーズに浸透が進みそうだ。
夏前くらいには工事を始めたいと思っている事、それに合わせて出張している人達もヴィアバタに戻ってくるであろうという見通しなども報告しておく。
更には俺の美人奥さんティムルを、工事に協力してくれるシュパイン商会の関係者として紹介しておく。
工事の話をしているとき、領主のおじさんはずっとニコニコと上機嫌だった。
「移動魔法がある以上、輸送路が完成してもヴィアバタが盛り上がるかは不透明だがね。この街の近くに働き口が用意できるだけでもありがたいよ。よろしく頼む」
笑顔で差し出された右手をしっかりと握り返して頷いてみせる。
「あまり無責任なことは言えないですけど、少なくともヴィアバタとは友好的な関係を築ければと思ってます。きっとこれから忙しくなりますから、今のうちにゆっくりのんびりと過ごしててくださいよ」
「ははっ! 私ももう若くないんだからお手柔らかに頼むよっ」
終始にこやかな雰囲気で領主さんとの話は終わった。
次は本工事の開始の時にお邪魔する事になりそうかな? 楽しみにしておこう。
領主さんとの話が終わった後はヴィアバタを出て、輸送路の基礎工事の開始地点に転移する。
森を拓いて山をぶち抜いて、遠目には平坦だけど、近くで見ると拳型のデコボコ模様がオシャレな道がどこまでも続いている。
完成した横幅は約10メートルくらいで、長さは最早見当もつかない。
「はぁ~……。この目で見せられても信じられないわぁ……。まさかグルトヴェーダを徒歩で踏破するための道が完成してるなんてねぇ……」
「まだ基礎工事だし、それも向こう側まで到達もしてないと思うけどね。ティムルお姉さんをびっくりさせられたみたいで嬉しいよ」
ぼーっと道の先を見詰めるティムルを軽く抱きしめてちゅっとキスをして、ついでにリーチェとヴァルゴもそれぞれ抱きしめキスをする。
「それじゃ一般の魔物狩りに試してもらう前に、俺達で1度走って踏破してみようか。恐らく今の俺達が整備された道を走っていけば、1日で端まで着けると思うんだよね」
俺の言葉に頷きを返す3人。3人とも特に異論は無さそうかな。
記録に残っている、数ヶ月かけてのグルトヴェーダ徒歩踏破は、職業浸透数が低い人が険しい道を警戒しながら進んだ記録でしかない。
仮に1日での進行距離が30キロメートルだったとしても、その速度は俺達とは比較にならないはずだ。
俺達は全力疾走を数日間続けられるであろう持久力補正も付いているし、敏捷性補正のおかげで恐らく時速100キロメートルを超える速度で走ることも出来ているはずだ。
速度比をイメージするなら、自転車と新幹線くらいの差があってもおかしくない。
確か北海道の南北の直線距離が400~500キロ、本州で1番でかい岩手県の南北の直線距離が200キロ弱くらいだったと思うから、時速100キロペースで走っていけば数時間で到着できると思う。
いくら移動魔法があるとは言え、北海道の広さより離れた場所にドワーフが住んでいるとは思えないからなっ。
「あ、待ってダン。1つだけ確認させて欲しいの」
さて出発しよう……。
そう思ったところでティムルお姉さんから待ったがかかった。
……なんだか物凄く不安げな表情を浮かべているな? 何か見落としがあったっけ。
「……ねぇダン。ニーナちゃんと一緒じゃなくて本当にいいの? あと数日待てばニーナちゃんも一緒なのよ? 走るのはその時でもいいんじゃないかしら……?」
「はは、そういうことか。心配してくれてありがとうお姉さん」
不安げなティムルを抱きしめて、力いっぱいよしよしなでなでする。
いつも俺とニーナのことを気にかけてくれるティムルお姉さんには頭が上がらないよ。
「でも心配要らないよ。ニーナが来たがったらもう1度走ればいいだけだしね」
ニーナは走るのが好きだけど、走っている間に景色とかを楽しむ感じじゃないんだよなぁ。走るというアクション自体を好きなイメージだ。
景色を楽しみながら旅行するなら、乗り物を用意してあげたほうが喜ぶと思う。
「大丈夫。俺もニーナも無理なんかしてないから。ずっとくっついていなくても大丈夫だってくらい、お互いのことを信じられるようになっただけだよ」
「そう……? ならいいんだけど……」
俺の言葉を疑っているわけじゃ無さそうだけど、それでもまだ少し不安そうな表情を浮かべるティムル。
ティムルの前には常にニーナが居たから、ニーナが不在のまま新しいことを始める事に俺以上のストレスを感じてしまっているみたいだなぁ。
「お姉さん、ダンとニーナちゃんの関係性が好きだから、2人にはずっと幸せでいて欲しいのよね……」
「残念だけど、俺とニーナだけで幸せになるつもりはないなぁ。ティムルお姉さんもリーチェもヴァルゴも、一緒に幸せになってくれなきゃ嫌だよ?」
ティムルとキスして、そしてやっぱりリーチェとヴァルゴにもキスをしてから、腕の中からゆっくりとティムルを解放する。
この場にニーナが居ない事にここまでストレスを感じてしまうなんて、ティムルには悪いけど逆に嬉しく感じちゃうよ。
「ティムルは俺とニーナだけで閉じていた頃を知ってるから、今の状況が不安になっちゃったのかもしれないね。だけど俺もニーナも2人だけで完結していた頃よりもずっと幸せだから、安心して?」
「……あ~、お姉さんとしたことがちょっと過保護すぎちゃったかもぉ」
ハッとしたように、ようやく表情を柔らかくするティムル。
自分がニーナよりも先んじて新しい事を始めることで、俺とニーナの関係性にヒビが入ることを恐れたみたいだけど、ティムルの存在だって俺達の幸せの一部分であるという事がようやく伝わってくれたようだ。
「時間取らせちゃってごめんねみんな。ダン、帰ったらいっぱいお仕置きしていいからね?」
「俺とニーナのことを心配してくれたお姉さんに、お仕置きなんてする訳ないでしょー?」
するならご褒美のほうだ。お礼と感謝を込めて、思いっきりご褒美をあげないとなっ。
……内容自体にさしたる変わりはないと思いますけどね?
気を取り直してキスからやり直し、改めてクラマイルを目指して出発する。
「見た目よりも走りやすいですね。ただ馬車や荷車には負担が大きそうですか」
「それでも凄まじいよねぇ……。こんな道を1ヶ月もかからずゼロから作り上げてしまったなんてさぁ……?」
ヴァルゴとリーチェが溢す感想を聞きながら、風を切って疾走する。
普段はあまり意識していないんだけど、今の俺達の移動速度って尋常じゃないんだよなぁ。
なぜか風圧みたいなものも感じないので体感し難いけど、高速道路を走ってる時みたいに次々と景色が流れていく様はなかなかに爽快だ。
ティムルもリーチェもヴァルゴも問題なくついて来れているようなので、このペースを維持して竜王の元に向かおう。
「こうも緑が無くなってくると、随分と殺風景な景色になっちゃうわねぇ~」
変化し始めた周囲の風景に、溜め息交じりにティムルが呟く。
1時間も走らないうちに木々が姿を消していき、代わりに荒々しい岩山が姿を現し始めた。
ここからが人々を阻みドワーフ族を困窮させる天険の地、グルトヴェーダ山脈地帯になる。
「俺達にとっては問題無い場所だと思うけど、間もなく一般の魔物狩りやクリミナルワークスも通る事になる場所だからね。そういった視点を持って見て回ろう」
今回の試走が視察を兼ねている事を改めて言及して、足を止めずにグルトヴェーダに進入した。
グルトヴェーダのなにがそんなに険しいのかと言えば、まず基本的に水場が無い。川や湖みたいな場所が今のところ見つかっていないのだ。
現在であればレインメイカーと発光魔玉を携帯すれば問題ないけど、移動魔法を用いて街で補給しつつ進まなければ、数ヶ月の行軍なんてそもそも不可能な場所なのだ。
水場が無いので緑が無く、緑も水場も無いので基本的に動物もいない。さっきから何度も察知スキルを発動しているけど一切の反応なし。
不毛の地クラメトーラへ続く道に相応しく、山岳地帯全体が死に満ちた不毛の場所だ。
……ここに生息していたマウントサーペントさんは、いったいなにを食って生きていらっしゃったんでしょうね?
表面がナックル柄の素敵な輸送路だけど、徒歩で走る分にはあまり負担は感じない。
でもヴァルゴも感じた通り、荷車とかかなり揺れそうなので、やっぱり整備は必須って感じかなー。
「あー……。まさか熱視を発動しても、何にも見えない場所があるなんてねぇ……」
ティムルに熱視で周囲を見てもらうと、やはりこの付近では大気中に殆ど魔力を見ることが出来ないらしい。
この世界の万物の根源である魔力が少ない地域なんて、ありえるんだろうか?
「あっ」
ひょっとして大気中の魔力が殆ど無い場所に引き篭もってるから、熱視の魔力視については知られてなかったんじゃ……?
確かめる方法なんて思いつかないけど……。
考えても仕方ない事を振り払うように、グルトヴェーダ山岳地帯を駆け抜けた。
「う、うわぁ……。本当に岩山に穴が開けられてるよぉ……」
ドン引きしたリーチェの言う通り、岩山地帯に入ってからは竜王のブレスでぶち抜いたトンネルを幾つも目にするようになる。
体長20メートルくらいありそうな巨大な竜王から放たれるブレスの削岩能力、掘削能力は最高にトンネルボーリングしてくれて、竜王が如何に重機として優れているかを物語っている。
トンネルの内部は思った以上に頑丈みたいだけど……。やっぱ補強しないわけにはいかないよなぁ。
ブレスによるトンネル工事はなかなかに苛酷で、竜王がブレスを放つたびに俺から大量の魔力を引っ張っていくものだから、寝室で奮闘中とかに突然フラッと来たりして大変だった。
我が家のお嫁さんはその隙を見逃してくれるほど甘くないから、竜王に大量の魔力を引っ張られながら嫁には別の物を搾りとられるという謎のプレイを堪能する羽目になってしまった。最高でしたけど?
「ああ、あの時って竜王がブレスを放ってたんだねぇ。道理で簡単に押し倒されると思ったよ」
納得がいったとばかりに、顔の前で軽く両手を合わせるリーチェ。
リーチェは本当に良く搾りとってくれましたもんねぇ! 最高だったから魔力が満タンな時もお願いしますっ!
「あら? 揺れてる……わよね?」
岩山を走り続けること数時間。
なんとなく周囲の山が低くなってきたかなぁなんて思い始めていると、地面から断続的にかすかな振動が伝わってきた。
これって地面殴り代行……、じゃなくて工事の振動かな?
「間もなく工事地点に到着ですか。結局マウントサーペントのような生物は他には居なかったですね?」
「居ない方がありがたいってば。どうやってあんなのが生まれて、どうやって今まで生きていたのかにはちょっと興味あるけどさ」
残念そうなヴァルゴに言葉を返しつつ、そこから更に小さめのトンネルを3つほど抜けた先に、地面を殴る竜王の巨体が確認できた。
結構遠くまで振動が来るんだなぁ。
「それじゃちょっと煩くて申し訳無いけど、みんなちょっとだけここで待っててくれる? 一旦クラマイルに行ってきて、みんなとの距離を確認してくるからさ」
「了解。3人で待ってるわね。でもダン。ここを離れる前にいってらっしゃいのちゅーをしましょうねー?」
ガシッと肩を抑えられ、筋力で勝る3人にこれでもかと口内を蹂躙され、腰砕けになった後は別の場所もたっぷりと執拗に蹂躙されてヘロヘロのメロメロにされてしまった。
うん、家から中々出られないみんなの気持ちが少し分かったんだよ。反撃に3人ともしっかりお腹いっぱいにしてあげたけど?
「それじゃ行ってくるよ。と言ってもすぐに戻ってくるけどね」
息も絶え絶えの3人だけど、竜王の傍なら危険もない。
みんなをよしよしなでなでしてから、1人でクラマイルに転移する。
「っと。思った以上に順調に進んでくれたみたいだな」
パーティ所在確認で3人の位置を把握すると、思った以上に近い場所にいる事が分かった。
もしかしたら、ここから10キロも無いんじゃないのか?
クラマイルには向かわずに、ここまでの距離を確かめる為に3人の反応がある方向に向けて走り出した。
「うお、めっちゃ近くまで来てるじゃんっ?」
軽く走ること2分弱。
まだトンネルが作られていない1つ目の岩山を超えると、そこは既に地面殴り工事が行われている場所だった。
造魔による工事は人目に晒せないし、この岩山にトンネルをぶち抜いたら基礎工事は終了かな?
工事現場を通り過ぎて、まだ地面で横になっている3人と合流し、両手をめいっぱい広げて無理矢理3人一緒に抱きしめる。
「ただいまーっ。目の前の岩山をブレスでぶち抜いたら工事は終わりにしよう。そこから先は間もなくクラマイルだったからさ」
「本当にグルトヴェーダを1日で踏破しちゃったんだねぇ。我ながら規格外になっちゃったなぁ……」
少しボーっとした雰囲気でリーチェが零す。
長年独りで旅をしていたリーチェだからこそ、グルトヴェーダの険しさを誰よりも知っていたのかもしれない。
腕の中の3人に甘やかしキスを繰り返して、最後のトンネル工事が終了するまでゆっくりと待った。
「んっ!? ん、ふぅ……」
暫くして、ヴァルゴとねっとり舌を絡めていると、自分の体内からごっそりと魔力が抜け落ちたのを感じた。
まぁここから青い光が見えたからね。竜王がブレスをぶっ放したんだろう。
ヴァルゴと舌を絡めて、ティムルの舌を吸って、リーチェの舌をしゃぶってから立ち上がり、最後のトンネル工事の現場を確認しに向かった。
立ち尽くす竜王の目の前には、ぽっかりと穴が空いた岩山があった。
しかしブレスの痕跡は岩山の向こう側までは続いておらず、竜王のブレス制御の巧みさが窺える。
「はぁ~……。ウルスラグナでもとてもこんなことは出来ません。こと戦闘においては、やはり竜人族は頭1つ飛び抜けているように感じられますよ」
感心した様子で何度も頷きを繰り返しているヴァルゴ。
竜人のブレスは応用しにくい分、強力な攻撃手段だもんねぇ。対魔物、対人の両方で使えるし。
でも竜王のブレスを基準にされたら、フラッタやラトリアですら勘弁してよって言うと思うよ?
「さて、これ以上は造魔で道を作るわけにはいかないからね。竜王たちにはお帰り願おうか」
「あ、ごめんダン。ただ帰すだけならスキルを試させてくれないかしら? 朧逆月もまだ試してないから」
造魔たちを消そうとすると、ティムルからスキルの試し撃ちを提案される。
連日連夜働かされて、最後はスキルで破壊される竜王たちに同情を禁じえないけど、造魔で作った擬似生命体にまで感情移入したって仕方ない。遠慮なく使い倒そう。
「おっけーティムル。粉々にしちゃっていいよー」
「あはーっ。ありがとダンっ。帰ったらいっぱいお礼させてねっ」
……俺達家族の間で、お礼とかお仕置きとかご褒美って言葉に違いはあるんだろうか?
肌を重ねる口実が増えていくだけだよな? 口実なんかなくても肌を重ねるのは間違いないのに。
「よぉし、お姉さんもかっこいいところ見せるわよーっ!」
ティムルは張り切ってグランドドラゴンアクスを取り出し、まずはドラゴンサーヴァントを1体1体砕きにかかった。
ティムルがサーヴァントに切りかかる度に俺から魔力が奪われている気がするんだけど、今は戦うお姉さんの姿を目に焼き付けるとしよう。
造魔を通して俺の魔力が吸収されているのはいいとして、同じく造魔スキルの使い手だったノーリッテは、イントルーダーを通して魔力を吸収された素振りは見せなかったよなぁ?
あれって魂を捧げられたからなんだろうか。
全てのドラゴンサーヴァントを砕き終えたティムルは、1人竜王と対峙する。
長身のティムルが身の丈を超えるほどの巨大な戦斧を持って立つ姿は非常に美しく、もうここだけ切り取って絵画にしたいほどの荘厳さを感じてしまう。
「さぁいよいよお姉さんの新技のお披露目よーっ! 見ててねみんなっ!」
そんな神秘的な見た目なのに、お茶目にはしゃぐお姉さんが可愛すぎる。
言われなくてもお姉さんに釘付けですよー。
そんな風に暢気に構えていた俺だったけど、ティムルの新技をきっかけにちょっとした問題が発覚してしまうことになるのだった。
ニーナと愛し合った後に、本日同行する3人ともしっかりと愛し合って、その間に復活したみんなを今度こそ送り出していく。
みんな曰く、俺が自分以外の誰かと抱き合ってる時じゃないと家を出られない、とのこと。
いやぁ返す言葉もありませんねっ! 褒め言葉として受け取っておくよっ!
「う~……。今日はお腹が引っ込むたびに膨らまされちゃいそうねぇ……?」
「こらこらお姉さん。そんなやる気が漲るようなこと言わないの。今日の用事を済ませなきゃ」
「ティムルを嗜めてるように見せて、ティムルの言葉を一切否定しないよこの人ぉ……」
お腹が少し膨らんで足元が覚束ないティムル、リーチェ、ヴァルゴと一緒に、まずはヴィアバタへと転移する。
恐らく間もなく重機ブラックドラゴンによる基礎工事は終了するはずだから、そのことを領主さんに報告しておきたい。
それにシュパイン商会にも協力してもらうわけだから、ティムルと領主さんの顔合わせもしておいた方がいいだろう。
脳内でヴィアバタでの行動計画を立てながら、ヴィアバタの領主邸に足を運んだ。
「おおっ、良く来てくれたねダンさん。本日も工事の話かい?」
寂れてしまったヴィアバタの領主さんは比較的暇な毎日を過ごされているようで、アポ無しで訪れても割と直ぐに対応してくれるからありがたい。
道が完成したら是非とも忙しく過ごしてもらいたいね。
「寂れた街がいつも以上に静かに感じられるのが少し寂しいね。だけどこれは嵐の前の静けさだと思うことにしてるんだ」
現在は職業浸透の為に、ヴィアバタからマグエルに20名弱の住人が出張しているので、街全体が少し寂しく感じられるそうだ。
だけどスポットなら往復のポータル代を稼ぐのもかなり容易で、ちょくちょく顔を見せに戻ってきてくれる人もいるらしい。
まぁ道路建設工事の参加希望者は、全員が村人スタートってわけじゃないからな。
トライラムフォロワーの立ち上げの時よりも、ずっとスムーズに浸透が進みそうだ。
夏前くらいには工事を始めたいと思っている事、それに合わせて出張している人達もヴィアバタに戻ってくるであろうという見通しなども報告しておく。
更には俺の美人奥さんティムルを、工事に協力してくれるシュパイン商会の関係者として紹介しておく。
工事の話をしているとき、領主のおじさんはずっとニコニコと上機嫌だった。
「移動魔法がある以上、輸送路が完成してもヴィアバタが盛り上がるかは不透明だがね。この街の近くに働き口が用意できるだけでもありがたいよ。よろしく頼む」
笑顔で差し出された右手をしっかりと握り返して頷いてみせる。
「あまり無責任なことは言えないですけど、少なくともヴィアバタとは友好的な関係を築ければと思ってます。きっとこれから忙しくなりますから、今のうちにゆっくりのんびりと過ごしててくださいよ」
「ははっ! 私ももう若くないんだからお手柔らかに頼むよっ」
終始にこやかな雰囲気で領主さんとの話は終わった。
次は本工事の開始の時にお邪魔する事になりそうかな? 楽しみにしておこう。
領主さんとの話が終わった後はヴィアバタを出て、輸送路の基礎工事の開始地点に転移する。
森を拓いて山をぶち抜いて、遠目には平坦だけど、近くで見ると拳型のデコボコ模様がオシャレな道がどこまでも続いている。
完成した横幅は約10メートルくらいで、長さは最早見当もつかない。
「はぁ~……。この目で見せられても信じられないわぁ……。まさかグルトヴェーダを徒歩で踏破するための道が完成してるなんてねぇ……」
「まだ基礎工事だし、それも向こう側まで到達もしてないと思うけどね。ティムルお姉さんをびっくりさせられたみたいで嬉しいよ」
ぼーっと道の先を見詰めるティムルを軽く抱きしめてちゅっとキスをして、ついでにリーチェとヴァルゴもそれぞれ抱きしめキスをする。
「それじゃ一般の魔物狩りに試してもらう前に、俺達で1度走って踏破してみようか。恐らく今の俺達が整備された道を走っていけば、1日で端まで着けると思うんだよね」
俺の言葉に頷きを返す3人。3人とも特に異論は無さそうかな。
記録に残っている、数ヶ月かけてのグルトヴェーダ徒歩踏破は、職業浸透数が低い人が険しい道を警戒しながら進んだ記録でしかない。
仮に1日での進行距離が30キロメートルだったとしても、その速度は俺達とは比較にならないはずだ。
俺達は全力疾走を数日間続けられるであろう持久力補正も付いているし、敏捷性補正のおかげで恐らく時速100キロメートルを超える速度で走ることも出来ているはずだ。
速度比をイメージするなら、自転車と新幹線くらいの差があってもおかしくない。
確か北海道の南北の直線距離が400~500キロ、本州で1番でかい岩手県の南北の直線距離が200キロ弱くらいだったと思うから、時速100キロペースで走っていけば数時間で到着できると思う。
いくら移動魔法があるとは言え、北海道の広さより離れた場所にドワーフが住んでいるとは思えないからなっ。
「あ、待ってダン。1つだけ確認させて欲しいの」
さて出発しよう……。
そう思ったところでティムルお姉さんから待ったがかかった。
……なんだか物凄く不安げな表情を浮かべているな? 何か見落としがあったっけ。
「……ねぇダン。ニーナちゃんと一緒じゃなくて本当にいいの? あと数日待てばニーナちゃんも一緒なのよ? 走るのはその時でもいいんじゃないかしら……?」
「はは、そういうことか。心配してくれてありがとうお姉さん」
不安げなティムルを抱きしめて、力いっぱいよしよしなでなでする。
いつも俺とニーナのことを気にかけてくれるティムルお姉さんには頭が上がらないよ。
「でも心配要らないよ。ニーナが来たがったらもう1度走ればいいだけだしね」
ニーナは走るのが好きだけど、走っている間に景色とかを楽しむ感じじゃないんだよなぁ。走るというアクション自体を好きなイメージだ。
景色を楽しみながら旅行するなら、乗り物を用意してあげたほうが喜ぶと思う。
「大丈夫。俺もニーナも無理なんかしてないから。ずっとくっついていなくても大丈夫だってくらい、お互いのことを信じられるようになっただけだよ」
「そう……? ならいいんだけど……」
俺の言葉を疑っているわけじゃ無さそうだけど、それでもまだ少し不安そうな表情を浮かべるティムル。
ティムルの前には常にニーナが居たから、ニーナが不在のまま新しいことを始める事に俺以上のストレスを感じてしまっているみたいだなぁ。
「お姉さん、ダンとニーナちゃんの関係性が好きだから、2人にはずっと幸せでいて欲しいのよね……」
「残念だけど、俺とニーナだけで幸せになるつもりはないなぁ。ティムルお姉さんもリーチェもヴァルゴも、一緒に幸せになってくれなきゃ嫌だよ?」
ティムルとキスして、そしてやっぱりリーチェとヴァルゴにもキスをしてから、腕の中からゆっくりとティムルを解放する。
この場にニーナが居ない事にここまでストレスを感じてしまうなんて、ティムルには悪いけど逆に嬉しく感じちゃうよ。
「ティムルは俺とニーナだけで閉じていた頃を知ってるから、今の状況が不安になっちゃったのかもしれないね。だけど俺もニーナも2人だけで完結していた頃よりもずっと幸せだから、安心して?」
「……あ~、お姉さんとしたことがちょっと過保護すぎちゃったかもぉ」
ハッとしたように、ようやく表情を柔らかくするティムル。
自分がニーナよりも先んじて新しい事を始めることで、俺とニーナの関係性にヒビが入ることを恐れたみたいだけど、ティムルの存在だって俺達の幸せの一部分であるという事がようやく伝わってくれたようだ。
「時間取らせちゃってごめんねみんな。ダン、帰ったらいっぱいお仕置きしていいからね?」
「俺とニーナのことを心配してくれたお姉さんに、お仕置きなんてする訳ないでしょー?」
するならご褒美のほうだ。お礼と感謝を込めて、思いっきりご褒美をあげないとなっ。
……内容自体にさしたる変わりはないと思いますけどね?
気を取り直してキスからやり直し、改めてクラマイルを目指して出発する。
「見た目よりも走りやすいですね。ただ馬車や荷車には負担が大きそうですか」
「それでも凄まじいよねぇ……。こんな道を1ヶ月もかからずゼロから作り上げてしまったなんてさぁ……?」
ヴァルゴとリーチェが溢す感想を聞きながら、風を切って疾走する。
普段はあまり意識していないんだけど、今の俺達の移動速度って尋常じゃないんだよなぁ。
なぜか風圧みたいなものも感じないので体感し難いけど、高速道路を走ってる時みたいに次々と景色が流れていく様はなかなかに爽快だ。
ティムルもリーチェもヴァルゴも問題なくついて来れているようなので、このペースを維持して竜王の元に向かおう。
「こうも緑が無くなってくると、随分と殺風景な景色になっちゃうわねぇ~」
変化し始めた周囲の風景に、溜め息交じりにティムルが呟く。
1時間も走らないうちに木々が姿を消していき、代わりに荒々しい岩山が姿を現し始めた。
ここからが人々を阻みドワーフ族を困窮させる天険の地、グルトヴェーダ山脈地帯になる。
「俺達にとっては問題無い場所だと思うけど、間もなく一般の魔物狩りやクリミナルワークスも通る事になる場所だからね。そういった視点を持って見て回ろう」
今回の試走が視察を兼ねている事を改めて言及して、足を止めずにグルトヴェーダに進入した。
グルトヴェーダのなにがそんなに険しいのかと言えば、まず基本的に水場が無い。川や湖みたいな場所が今のところ見つかっていないのだ。
現在であればレインメイカーと発光魔玉を携帯すれば問題ないけど、移動魔法を用いて街で補給しつつ進まなければ、数ヶ月の行軍なんてそもそも不可能な場所なのだ。
水場が無いので緑が無く、緑も水場も無いので基本的に動物もいない。さっきから何度も察知スキルを発動しているけど一切の反応なし。
不毛の地クラメトーラへ続く道に相応しく、山岳地帯全体が死に満ちた不毛の場所だ。
……ここに生息していたマウントサーペントさんは、いったいなにを食って生きていらっしゃったんでしょうね?
表面がナックル柄の素敵な輸送路だけど、徒歩で走る分にはあまり負担は感じない。
でもヴァルゴも感じた通り、荷車とかかなり揺れそうなので、やっぱり整備は必須って感じかなー。
「あー……。まさか熱視を発動しても、何にも見えない場所があるなんてねぇ……」
ティムルに熱視で周囲を見てもらうと、やはりこの付近では大気中に殆ど魔力を見ることが出来ないらしい。
この世界の万物の根源である魔力が少ない地域なんて、ありえるんだろうか?
「あっ」
ひょっとして大気中の魔力が殆ど無い場所に引き篭もってるから、熱視の魔力視については知られてなかったんじゃ……?
確かめる方法なんて思いつかないけど……。
考えても仕方ない事を振り払うように、グルトヴェーダ山岳地帯を駆け抜けた。
「う、うわぁ……。本当に岩山に穴が開けられてるよぉ……」
ドン引きしたリーチェの言う通り、岩山地帯に入ってからは竜王のブレスでぶち抜いたトンネルを幾つも目にするようになる。
体長20メートルくらいありそうな巨大な竜王から放たれるブレスの削岩能力、掘削能力は最高にトンネルボーリングしてくれて、竜王が如何に重機として優れているかを物語っている。
トンネルの内部は思った以上に頑丈みたいだけど……。やっぱ補強しないわけにはいかないよなぁ。
ブレスによるトンネル工事はなかなかに苛酷で、竜王がブレスを放つたびに俺から大量の魔力を引っ張っていくものだから、寝室で奮闘中とかに突然フラッと来たりして大変だった。
我が家のお嫁さんはその隙を見逃してくれるほど甘くないから、竜王に大量の魔力を引っ張られながら嫁には別の物を搾りとられるという謎のプレイを堪能する羽目になってしまった。最高でしたけど?
「ああ、あの時って竜王がブレスを放ってたんだねぇ。道理で簡単に押し倒されると思ったよ」
納得がいったとばかりに、顔の前で軽く両手を合わせるリーチェ。
リーチェは本当に良く搾りとってくれましたもんねぇ! 最高だったから魔力が満タンな時もお願いしますっ!
「あら? 揺れてる……わよね?」
岩山を走り続けること数時間。
なんとなく周囲の山が低くなってきたかなぁなんて思い始めていると、地面から断続的にかすかな振動が伝わってきた。
これって地面殴り代行……、じゃなくて工事の振動かな?
「間もなく工事地点に到着ですか。結局マウントサーペントのような生物は他には居なかったですね?」
「居ない方がありがたいってば。どうやってあんなのが生まれて、どうやって今まで生きていたのかにはちょっと興味あるけどさ」
残念そうなヴァルゴに言葉を返しつつ、そこから更に小さめのトンネルを3つほど抜けた先に、地面を殴る竜王の巨体が確認できた。
結構遠くまで振動が来るんだなぁ。
「それじゃちょっと煩くて申し訳無いけど、みんなちょっとだけここで待っててくれる? 一旦クラマイルに行ってきて、みんなとの距離を確認してくるからさ」
「了解。3人で待ってるわね。でもダン。ここを離れる前にいってらっしゃいのちゅーをしましょうねー?」
ガシッと肩を抑えられ、筋力で勝る3人にこれでもかと口内を蹂躙され、腰砕けになった後は別の場所もたっぷりと執拗に蹂躙されてヘロヘロのメロメロにされてしまった。
うん、家から中々出られないみんなの気持ちが少し分かったんだよ。反撃に3人ともしっかりお腹いっぱいにしてあげたけど?
「それじゃ行ってくるよ。と言ってもすぐに戻ってくるけどね」
息も絶え絶えの3人だけど、竜王の傍なら危険もない。
みんなをよしよしなでなでしてから、1人でクラマイルに転移する。
「っと。思った以上に順調に進んでくれたみたいだな」
パーティ所在確認で3人の位置を把握すると、思った以上に近い場所にいる事が分かった。
もしかしたら、ここから10キロも無いんじゃないのか?
クラマイルには向かわずに、ここまでの距離を確かめる為に3人の反応がある方向に向けて走り出した。
「うお、めっちゃ近くまで来てるじゃんっ?」
軽く走ること2分弱。
まだトンネルが作られていない1つ目の岩山を超えると、そこは既に地面殴り工事が行われている場所だった。
造魔による工事は人目に晒せないし、この岩山にトンネルをぶち抜いたら基礎工事は終了かな?
工事現場を通り過ぎて、まだ地面で横になっている3人と合流し、両手をめいっぱい広げて無理矢理3人一緒に抱きしめる。
「ただいまーっ。目の前の岩山をブレスでぶち抜いたら工事は終わりにしよう。そこから先は間もなくクラマイルだったからさ」
「本当にグルトヴェーダを1日で踏破しちゃったんだねぇ。我ながら規格外になっちゃったなぁ……」
少しボーっとした雰囲気でリーチェが零す。
長年独りで旅をしていたリーチェだからこそ、グルトヴェーダの険しさを誰よりも知っていたのかもしれない。
腕の中の3人に甘やかしキスを繰り返して、最後のトンネル工事が終了するまでゆっくりと待った。
「んっ!? ん、ふぅ……」
暫くして、ヴァルゴとねっとり舌を絡めていると、自分の体内からごっそりと魔力が抜け落ちたのを感じた。
まぁここから青い光が見えたからね。竜王がブレスをぶっ放したんだろう。
ヴァルゴと舌を絡めて、ティムルの舌を吸って、リーチェの舌をしゃぶってから立ち上がり、最後のトンネル工事の現場を確認しに向かった。
立ち尽くす竜王の目の前には、ぽっかりと穴が空いた岩山があった。
しかしブレスの痕跡は岩山の向こう側までは続いておらず、竜王のブレス制御の巧みさが窺える。
「はぁ~……。ウルスラグナでもとてもこんなことは出来ません。こと戦闘においては、やはり竜人族は頭1つ飛び抜けているように感じられますよ」
感心した様子で何度も頷きを繰り返しているヴァルゴ。
竜人のブレスは応用しにくい分、強力な攻撃手段だもんねぇ。対魔物、対人の両方で使えるし。
でも竜王のブレスを基準にされたら、フラッタやラトリアですら勘弁してよって言うと思うよ?
「さて、これ以上は造魔で道を作るわけにはいかないからね。竜王たちにはお帰り願おうか」
「あ、ごめんダン。ただ帰すだけならスキルを試させてくれないかしら? 朧逆月もまだ試してないから」
造魔たちを消そうとすると、ティムルからスキルの試し撃ちを提案される。
連日連夜働かされて、最後はスキルで破壊される竜王たちに同情を禁じえないけど、造魔で作った擬似生命体にまで感情移入したって仕方ない。遠慮なく使い倒そう。
「おっけーティムル。粉々にしちゃっていいよー」
「あはーっ。ありがとダンっ。帰ったらいっぱいお礼させてねっ」
……俺達家族の間で、お礼とかお仕置きとかご褒美って言葉に違いはあるんだろうか?
肌を重ねる口実が増えていくだけだよな? 口実なんかなくても肌を重ねるのは間違いないのに。
「よぉし、お姉さんもかっこいいところ見せるわよーっ!」
ティムルは張り切ってグランドドラゴンアクスを取り出し、まずはドラゴンサーヴァントを1体1体砕きにかかった。
ティムルがサーヴァントに切りかかる度に俺から魔力が奪われている気がするんだけど、今は戦うお姉さんの姿を目に焼き付けるとしよう。
造魔を通して俺の魔力が吸収されているのはいいとして、同じく造魔スキルの使い手だったノーリッテは、イントルーダーを通して魔力を吸収された素振りは見せなかったよなぁ?
あれって魂を捧げられたからなんだろうか。
全てのドラゴンサーヴァントを砕き終えたティムルは、1人竜王と対峙する。
長身のティムルが身の丈を超えるほどの巨大な戦斧を持って立つ姿は非常に美しく、もうここだけ切り取って絵画にしたいほどの荘厳さを感じてしまう。
「さぁいよいよお姉さんの新技のお披露目よーっ! 見ててねみんなっ!」
そんな神秘的な見た目なのに、お茶目にはしゃぐお姉さんが可愛すぎる。
言われなくてもお姉さんに釘付けですよー。
そんな風に暢気に構えていた俺だったけど、ティムルの新技をきっかけにちょっとした問題が発覚してしまうことになるのだった。
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