異世界イチャラブ冒険譚

りっち

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5章 王国に潜む悪意3 世界を呪う者

360 寝顔 (改)

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 再建中の開拓村をアルフェッカと名付ける案について、みんなにも相談してみる。


「ふふ。蒼穹の盟約さん達が守りたかったモノを取り戻したかったんだねー?」

「リーチェが構わないなら良いのではないですか? アルフェッカという名前は伝えられていないようですし」


 ニーナは仕方ないなーとニヤニヤ笑い、王国に住んでいないヴァルゴはあまり感心が無さそうに同意してくれた。

 無事にみんなにも同意が得られたので、正式にゴブトゴさんに申請する事にしよう。


「時間も遅いけど、食事は2人が還ってきてから一緒にしようね」


 完成した料理には手をつけず、リーチェとフラッタを撫でながら、みんなとまったりティムルとラトリアの2人を待った。

 そうして待っていると、ティムルのほうが先に帰ってくる。


「……ねぇねぇ、こんな時間に顔出しちゃって、キャリアさん怒ってなかった?」

「いえ、キャリア様は普通に仕事してたから全然気にしてなかったわよ? 先日の襲撃で持ち出した物資の整理で寝る暇も無いのよーってね」


 良かった。夜中に叩き起こされるキャリアさんなんて居なかったんだ。


 しかし、先日の襲撃で持ち出した物資なぁ。

 複数の都市に同時に襲撃が行われたわけだから、襲撃自体は数時間で終わったけれど消費した物資は少なくなかったのかもしれない。事前準備だってあるし。


「それでグルトヴェーダへの輸送路の話をしたら、そんな話を持ち込まれたら寝れる訳ないでしょーーーーっ! って叫んでたわよ? 次にキャリア様に会う日が楽しみねぇ?」


 いやいや、普通に寝てくださいよキャリアさんってば。

 シュパイン商会に無理させてまでやるようなことじゃないんだってば。


「あはーっ。忙しさじゃなくて、興奮で寝られないって意味に決まってるでしょー?」


 俺の心配はティムルに豪快に笑い飛ばされてしまった。

 でもいくらやる気に満ちてるからって、ちゃんと寝て欲しいんだよ?


「開拓村の開発も多少は落ち着いてきたし、シュパイン商会が陣頭指揮を取る必要性も薄れてきてたから、キャリア様的には新しい目標が見つかったって心境なんじゃないかしら」

「え~……。開拓村の再建だってまだ始めたばっかりだろうにぃ……」


 そう言えばバリバリの上昇志向をお持ちでしたね、キャリアさんは。


 って、今回の襲撃でカリュモード商会が壊滅するだろうから、下手するとシュパイン商会のスペルディア進出も可能だったり……?

 キャリアさんも貴族嫌いっぽいし、スペルディアはあえて避けたりするかもだけど。


「ただいま戻りましたーっ」

「あっ、お帰りなのじゃ母上ーっ」


 ティムルの報告が終わったタイミングで、ようやくラトリアも帰宅した。

 俺に抱っこされたまま笑顔でラトリアを迎えるフラッタが宇宙一可愛い件について。


「お疲れ様ー。ゴブトゴさん怒ってなかった? こんな時間にきやがってー、みたいな」

「いえ、ゴブトゴ様もエルフェリアの行く末が気になって眠れなかったようで、報告に来てもらえてありがたかったそうですよ」

「あ、そうだったわ……」


 エルフェリアに行ったの、ゴブトゴさん経由だったのをすっかり忘れてた。

 今日報告に行かなかったら逆に申し訳ないことをするところだった。結果オーライだね。


「それで輸送路の開発許可と、サークルストラクチャーの追加発注も快く引き受けてくださいました」

「りょーかい。ありがとラトリア」


 サークルストラクチャー30個分の発光魔玉300個は既に渡してきたようだ。

 やっぱりインベントリがあるとおつかいが楽だよなぁ。


「それと断魔の煌きの皆様、そしてマーガレット殿下も無事に帰還されたようです」

「ふ~ん。あの人たちエルフェリアには現れなかったから、直接スペルディアに帰ったのかな?」

「ですが、今回エルフェリア精霊国でマーガレット殿下が起こした騒動を踏まえて、仕合わせの暴君の応対は基本的にゴブトゴ様を通して欲しいとのことですね。直接城に来るのも避けて欲しいと」


 イエス! これで城に赴く回数が激減したぜ! 正に結果オーライ!

 断魔の煌きとは別に対立する気は無いけど、こっちから歩み寄る必要性も感じないんだよなぁ。なんかめっちゃ嫌われちゃってるしさぁ。


 被害者であるはずの俺達のほうが配慮するのはちょっと違う気はするけど、相手は王女様だし仕方ないな。

 この程度の不満をぶつけるよりも、相手の要望を聞いてぶつからない方がマシだ。


 報告も終わったし俺達の消耗も激しいし、余計な事は忘れてゆっくり休もう。


「2人ともありがとう。それじゃまずは食事しようか。ささやかな祝勝会って奴だね」

「あははっ! 誇張でもなんでもなく、本当に世界を救って来たのに、その祝勝会が家族だけってささやか過ぎますってばぁ! とってもダンさんらしいですけどねっ」


 ムーリがおかしくて堪らないといった様子で笑い声を上げ、それを皮切りにみんなもあははと笑い出した。

 規模はささやかでも、みんながニコニコ笑ってくれてるだけで最高の祝勝会になっちゃうんだから参っちゃうよ。


 みんなの笑顔に囲まれて、深夜の賑やかな祝勝会を思い切り楽しんだ。




「ごちそうさま~っ。片付けは明日にして今日は休もう」


 楽しい祝勝会も終わり、あと寝るだけの状態だ。

 今晩は寝る前に、みんなとの大一番が待っているんだと覚悟と期待をしていたわけだけど……。


 リーチェはずーっと俺にくっついたままだし、時間的には深夜を通り越して日の出に近い時間帯。

 みんなとめちゃくちゃになりたい気もするけど、くっつくリーチェを放置するわけにもいかず……。


 そもそも、リーチェとリュートと初めて肌を重ねるのが、明るくなってからでもいいものなのかなぁ?


「ダン。今日はこのまま朝まで休も?」


 しかし俺が悩んでいると、いつも通り我が家の司令官ニーナが容赦なく指示を出してくれる。


「今のリーチェをダンから離すのは可哀想だし、でも私達もダンに触れて欲しいからぁ~……。朝までみんなでくっついて寝るのっ」

「ええ~っ!? 今日はみんなにエロいことしちゃダメなのぉっ!?」


 ……って思ったけど、思ったよりショックじゃないのは何故?

 今日はずっと、みんなとリーチェとリュートの2人を愛してあげたくて仕方なかったはずなのに?


「それはねー。ダンもリーチェを抱くのは今じゃないって思ってるからなんじゃないかなー?」

「そう、なのかな……? う~ん、ニーナの言うこと、自分じゃよく分からないや」


 この極上のエロボディを目の前にして、抱くタイミングとか考えてる余裕は無いはずなんだけどなぁ。


 だけど、みんなと初めて肌を重ねたのは夜が多かったのも事実。

 エマやターニアの時みたいに突発的に愛する事になった時を除いて、みんなと初めて肌を重ねる時はいつも夜だった気がするよね。


 日が落ちてから次の朝を迎えるまでの長い夜の間に、リーチェとリュートを思い切り愛してあげたいという気持ちは確かにあるかもしれない。


「明日の夕食のあとは朝まで2人っきりにしてあげるから、その時に思い切り愛してあげて欲しいのっ。今まで愛してあげられなかった分、思いっきりねっ!」

「了解だよーっ! 細かい事は分からないけど、リーチェを愛するのは任せてよーっ!」


 リーチェを思いっきり愛してねーと言われたら、全身全霊で任務了解するっきゃないよ!

 任せてください司令官殿! 俺は必ずや任務を遂行して見せますからねっ!


「……でも、リーチェはそれでいいの? 肌を重ねるのが明日の夜になっちゃうんだけど……」

「……うん。ぼくもそれがいいかな。本当は今すぐにでも抱いて欲しいと思うけど、でもダンと初めて過ごす夜が短いのは勿体無いから」


 俺の腕の中でもじもじしながら、少しでも長く愛し合いたいと言ってくれるリーチェ。

 っていうか、やっぱりリーチェも初めては夜のイメージが強いみたいだね。


「でも……。ぼくのせいでみんながダンに愛してもらえないのは、申し訳ないよぅ……」

「なにも申し訳なくなんてないのっ。リーチェは私達の大切な家族なんだからねっ」


 リーチェの謝罪を真っ向から切り捨てたニーナは、優しく微笑みを浮かべてリーチェを諭す。


「リーチェがダンのことをどれだけ好きなのか、私達はみんな知っているの。だから貴女もダンに愛してもらえるようになったのが凄く嬉しい」

「ニーナ……」

「だからこそ初めての夜は、とびっきりの特別な夜を過ごして欲しいって思うのーっ」


 言いながらニーナは俺の腕の中のリーチェに抱きついてくる。

 俺は少しだけ腕を開いてニーナを受け入れて、ニーナごとリーチェを抱きしめる。


「うん……。ありがとうニーナ。いつもいつも、本当にありがとう……」

「リーチェ……?」

「ニーナって、ぼくよりずっと年下のはずなのになぁ……。なんだか、姉さんに抱きしめられてる……みたいだ、よ……」


 ニーナに抱きしめられたリーチェは、安心しきった顔で急速に意識を落とした。

 今日は誓約の破棄から両親の死、エルフ族の滅亡の危機とマグナトネリコ戦と続いて、もしかしたらリーチェが1番疲れきっていたのかもしれない。


「あは、リーチェ寝ちゃったのー」


 眠るリーチェを起こさない様に、優しく頬ずりしているニーナ。


 ……でもねニーナ。

 寝ているリーチェは最高に可愛いから、俺もこのまま寝かせておいてあげたいんだけど……。まだ食堂の椅子に座ったままなんだよ?

 リーチェを起こさないように2階まで上がれるかなぁ?


「ふふ。こんなに穏やかに眠るリーチェ、もしかしたら初めて見たかもしれませんね」


 静かに近付いてきたヴァルゴが、眠るリーチェの頭を優しく撫でる。


「旦那様に縋るように眠っていて、まるで幼い少女のように可愛い寝顔です……」


 これがリーチェの……、というかリュートの素顔なのかもしれないね。

 たった独りで旅に出る前の、家族と過ごしていた時のリュートの顔なのかもしれない。


「ダンー?  お姉さんの親友を起こしちゃダメだからねー? ゆっくり静かに寝室まで行くわよー」


 ティムルが小声で釘を刺してくる。

 分かってるってお姉さん。こんなに気持ち良さそうに眠るリーチェを起こすわけにはいかないよね。


 静かにゆっくり寝室に移動し、大きなベッドの中央に、眠ったリーチェを抱きしめたまま横になる。

 直ぐにニーナもリーチェを抱きしめ、そのニーナをリーチェごとティムルが抱きしめる。


 ……なんだろう。ブレーメンの音楽隊を連想してしまったぞ?


「(お邪魔するのじゃー……)」


 眠るリーチェに配慮したのか、フラッタが小声で断りながら俺の腕の中に入ってきて、リーチェの隣り収まった。

 そのフラッタをこれまたヴァルゴが抱きしめて横たわり、ムーリたち4人もなるべく密着して、みんなでお団子状態になって横になった。


 いつも通りと言えばいつも通りの光景かな。

 いつもと違う点と言えば、全員が着衣状態というだけで。


「ふふ。ごめんねダン。今日は何よりもリーチェのことを大切にしてあげたかったの。明日は私達のことめちゃくちゃにしちゃって良いからねっ」


 リーチェがよく眠っている事を確認してから、ニーナが俺に謝ってくる。

 けどニーナのリーチェに対する想いも、めちゃくちゃにして発言もどっちも嬉しくて仕方ない。


 ニーナは自分が解呪に成功したからこそ、リーチェの誓約の失効を誰よりも強く望んでいたところがあったのかもしれない。

 呪いと誓約の違いはあれど、ステータスプレートに縛られているという点でリーチェに共感を覚えても不思議じゃないから。


「ニーナちゃんの解呪も、フラッタちゃんの家族を助けたことも凄すぎるのに、455年間続いたリーチェの誓約を、出会ってから1年と待たずに解決しちゃうなんて凄すぎるわよぉ」


 リーチェを撫でるティムルの姿は女神そのものにしか見えないなぁ。

 リーチェの事を親友だと断言したティムルは、リーチェの穏やかな寝顔を本当に嬉しそうに眺めている。


「あはーっ。リーチェのこんなに可愛い寝顔が見れるなんて、お姉さん幸せよぉ……」


 ……この2人が険悪だったところって、1回も見たこと無いよな?

 むしろお互いが出会う前、顔を合わせるまでが1番険悪だった気がするんだけど?


 同胞であるドワーフ族に売り飛ばされたティムルにとって、エルフ族に追放されたリーチェのことは他人事に思えなかったのかもしれない。


「はぁ……。ダンにプロポーズされた時もリーチェと一緒に眠ったのを思い出すのじゃぁ」


 リーチェの肩にすりすりと頬ずりするフラッタ。

 そう言えば始めはフラッタのこと、猫みたいだなぁって思ったなぁ。


「ふふ。ようやくリーチェも一緒に愛してもらえると思うと、なんだか色々思い出してしまうのぅ……」


 フラッタとリーチェは2人で寝た日もあったもんね。

 もしかしたら家族の中で1番リーチェと共に時間を過ごしているのがフラッタなのかもしれない。


 フラッタとリーチェも貰うと決めた頃は、なんだか2人のことをワンセットで考えていた気がするよ。


 ……嫁に貰う前から、ワンセットで2人の乳首を弄り倒してあげたんだけどさ。


「旦那様に出会えて本当に幸せですよ。バロール族が協力を求めたスペルド王国は盟友でも何でもありませんでしたけれど、旦那様たち仕合わせの暴君は守人が思い描いていた盟友の姿そのものでしたから……」


 フラッタの銀髪を手で弄びながら、柔らかく微笑むヴァルゴ。


 かつての英雄だった蒼穹の盟約が忘れ去られ、スペルド王国は簒奪者の国だった。

 そんな中で異種族が混成された仕合わせの暴君こそが魔人族が求めた盟友の姿に見えたのは、ある意味当然だったのかもしれないね。


「初めて会った時のダンさんとニーナさんって、スポットに日帰りで潜るのがやっとって感じでしたのに……。1年も経たずに世界を救ってしまうなんて凄すぎますよっ」


 ムーリには俺とニーナの1番弱かった時期を見られてるから、ちょっとだけ気恥ずかしいね。

 でも、俺達の成長をいつもサポートしてくれてありがとうムーリ。


「ふふ。ワンダ達が焦るわけです。追い掛けるほどにダンさんたちの背中が遠ざかっているように思ってるんじゃないかなぁ、あの子たちは」


 ワンダ達は焦る必要なんて全然無いんだけどなぁ。

 俺の成長速度は、鑑定と職業設定という超チート能力があってこそだったんだから。


 幸福の先端のほうが、よっぽど真っ当に強くなってるよ。


「ダンさんに惹かれたのは、その戦闘力の高さが理由だと思ってましたけど……。ダンさんの強さの本質って、実は戦闘力じゃないんですよねぇ……」


 ヴァルゴの背中にくっついたラトリアが、フラッタの頭を撫でながらしみじみと呟いた。


「相手を打ち倒す強さじゃなくて、不幸そのものを打ち破る力。竜人族が信じて目指してきた強さとはあまりにもかけ離れた、その強さの果て……」


 ……ううんラトリア。

 ラトリアやヴァルゴみたいに、時間をかけて研鑽した強さこそが本当の強さだと思うんだ。

 俺の強さは、どこまでも職業補正に頼りきったものだからね。


 ……俺はただ、我が侭だっただけだ。


 どうしてもみんなが不幸になるのだけは許せなかったから……。

 ただそれだけの理由で辿り着いた、真っ当な人間が手に入れるべきではない歪んだ強さ。


「ラトリア様にお仕えして、ラトリア様と過ごした時間を心から幸福だと思っていたのに。幸せな日々っていうのは限りがないものなんだって、体の隅々にまで思い知らされましたよぉ……」


 ラトリアに仕える日々が幸福だったのはいいことじゃないの。

 でも俺はもっともっとエマを幸せにしてあげたかったから、満足なんてさせてあげたくなかったんだ。


 昨日より今日、今日より明日はもっとエマに幸せになってもらいたいから、エマの隅々まで愛したくなっちゃうんだよねぇ。


「ダンさんって、自分と出会う前に失くした物まで取り戻しちゃうのが信じられないの。本当のリーチェさんと、お姉さんのことが大好きだったリュートさんの素顔まで取り戻しちゃうなんて」


 ターニアが呆れたように俺を賞賛してくれる。

 けどこれ、絶対褒めてないよね?


「すぅ……。すぅ……」

「ほら見てダンさん。リーチェさんのこの寝顔が、ダンさんが取り戻してくれた宝物なの……」


 ターニアは、まるで娘を見るような眼差しをリーチェに向けている。

 餓死寸前まで娘のニーナを待ち続けたターニアにとって、実の両親にその存在を否定されたリーチェとリュートの姉妹は、放っておけない存在だったのかもしれないなぁ。


「……ははっ。この寝顔が報酬なんて上手いこと言うじゃない」


 ターニアの言葉に、眠るリーチェへの愛しさが溢れて止まらない。


 それじゃ、今日はこの宝物を抱きしめて眠るとしましょうかねぇ。

 明日目が覚めたら、この宝物を隅々まで愛してあげなきゃいけないからねっ。
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