異世界イチャラブ冒険譚

りっち

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5章 王国に潜む悪意1 嵐の前

288 反対 (改)

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 望まれるがままにターニアさんを愛し、3度ほどターニアさんのお腹をいっぱいにしてあげて小休止。

 繋がったままの彼女を優しく抱きしめ、よしよしと頭を撫でる。


「はぁぁ……。ターニアさんを抱いた事に後悔は無いけど、ニーナに断る前に抱いちゃったのはやっぱり少し気まずく感じちゃうよぉ……」


 俺の腕に収まってニコニコしているターニアさんを、今更諦めろと言われても困ってしまう。

 ニーナの嫌がることはしたくないし、ニーナが嫌がるとも思っていないけど……。


 自分の母親と知らない間に肌を重ねられたら、普段と違う反応を見せてもおかしくないと思うんだ。


「ごめんターニアさん。今更ターニアさんの事を手放すことなんてできないから、一緒にニーナに説明してくれる?」

「あははっ。勿論ニーナには私からも説明するけど、ニーナは絶対に喜んでくれるから問題ないのっ」


 俺と違って、ターニアさんは全く不安を抱いていないようだ。

 もぞもぞと俺の腕を抜け出して、ニコニコしながら俺の頬にキスをしたあと、もぞもぞと俺の腕の中に帰ってくるターニアさん。


「心配なのはダンさんじゃなくて、ガレルとニーナの方かなぁ……。ニーナはガレルのことを信じきってたからねー。その信頼が反転して、極端な行動に出なきゃいいんだけど……」

「う~ん……。それこそ大丈夫だとは思うけど……」


 ニーナは報復するより切り捨てるタイプだから、短絡的に騒動を起こしたりはしないと思うけれど、相手が父親ってなると読めないところがあるかもなぁ。


 しっかし、ニーナとターニアさんを捨てたのは自分だろうに、なんでガレルさんは2人にあんなに執着したんだろ?

 商売で更なる成功を収めるために、コネクション的な意味で獣爵家の血縁者が惜しかったとか?


「ううん。ガレルはただ自分が捨てられる側に回るのが許せないだけなの」


 そんな俺の疑問に、俺の腕の中で小さく首を振るターニアさん。


「彼は孤児出身で、親に捨てられた自分にずっと劣等感を抱いて生きてきたの。だから自分は奪って捨ててのし上がるんだっていつも言ってたの」

「その思い自体は、程度の差はあれど普通だね」

「でも自己中心的なガレルは、自分が捨てられる側に回ることが許せなかった。私とニーナを捨てたのはガレルなのに、それでも私が自分の意思で決別を選択する事を、ガレルは許せなかったんじゃないかなー」


 孤児だったから捨てられることに過剰反応を見せたと。


 だけどこの世界の孤児って捨てられたとは限らないんだよなぁ。

 いや、この世界に限らない話か?


 事故や病気、魔物や野盗に殺されて無念の中で子供を手放さざるを得なかった親も沢山いるだろう。

 孤児だから捨てられたに違いない、なんて思うのは安易過ぎる。


 親に捨てられたから自分も他人を捨ててやるなんて、あのトライラム教会の出身者とは思えない考え方だよねぇ。


「自分の幸せの為に他者を利用し成り上がる、ガレルのそんな粗暴なところに当時の私は惹かれちゃったの。私は獣爵家の娘である事に疑問なんて持ったことが無かったからね」


 あー、あれか? 優等生よりヤンキーがモテる理論?

 貴族令嬢だったターニアさんは、他人を蹴落としてでものし上がろうとするガレルさんのギラついた野心に惹かれたのかもなぁ。


「ガレルは孤児である事にコンプレックスを感じていたからこそ、家族や仲間にはとても深い愛情を注いでくれる人だったから、彼を愛した事を今でも後悔はしてないかな」


 ガレルさんとはきっぱり決別していたターニアさんだけど、彼と共に過ごした日々を否定する気は無いようだ。

 ニーナもガレルさんのことは心から尊敬していたし、彼が家族に注いだ愛情は本物だったんだろうね。


「はは。俺の腕の中にいるのに他の男を愛した話をするなんて、ターニアさんは悪い女だなぁもう」

「あはっ。ごめんダンさん。でもガレルと過ごした日々は、もう私に根付いちゃってるの」


 そりゃそうか。今ターニアさんは33歳。ほぼ人生の半分をガレルさんと共に歩んできたんだから。

 いや、2人が婚姻を結ぶ前から知り合っていたとするなら、もっと長い付き合いになるのか。


「……ターニアさんが呪いを受けることがなければ、ガレルさんとターニアさんは今も幸せに愛し合っていたのかもしれないね」

「うん。まさにそこなんだと思うの」

「ん? なにが?」

「私だって呪いを受けてから、呪いさえなければって思わない日は1度もなかった。だけど私とニーナには呪いから逃れる術は無かったから、受け入れて諦めるしかなかったの」


 呪いさえなければ――――。


 これはターニアさんたちの17年間に、ずっと付き纏っていた言葉なんだろうと思う。


 呪いさえなければ。


 全ての不幸と理不尽は、移動阻害の呪いのせいだと思って過ごしてきたはずだ。


「でもガレルは違った。彼には呪いから逃れる簡単な手段があった。そして呪いさえなければ、子供の頃から憧れ続けていた成功者の道は約束されていた」


 直接呪いを受けたターニアさんと、先天的に呪いを引き継いでしまったニーナは、呪いをどれほど憎んでも呪いと共に生きていく道しかなかった。

 だけど、ガレルさんはそうじゃなかった……。


 突き詰めれば、ガレルさんだって呪いの被害者だったことは間違いない。

 呪いさえなければターニアさんとニーナの3人で、今も笑って過ごせていたのかもしれない。


 だけど、ターニアさんとニーナを手放したのはガレルさんの意思なんだ。

 妻と娘には選択権が与えられていないことを知りながら、それでも自らの意思で2人を切り捨てた事実は、もうどうやっても取り繕いようがない。


「彼に切り捨てられたと知った時に思い至っちゃったの。今までも彼に利用され捨てられてきた人たちには、彼に捨てられたら生きていけない人もいたんじゃないかって……」


 ターニアさんはガレルさんのような対応の方が当たり前だと言った。

 だから、かつて共に過ごしたガレルさんには感謝しかしていないとも言った。


 だからと言って、ガレルさんに捨てられたら生きる術が無い2人を、その事実を誰よりも理解しながらも切り捨てたガレルさんと、もう1度共に歩もうなんて思えるはずがないか。


「自分自身がどれだけ不幸な境遇に生まれても、それを言い訳に他者を食い物にすることが果たして正しいことなのかなって、ガレルに疑問を抱くようになっちゃったの」


 ……難しいなぁ。ガレルさんの考えだって完全には否定出来ない。


 自分が不幸になってでも他人を気遣えなんて、そんなこと誰に言える?

 この世界が有限である限り、人の幸福の総量だって有限だろう。

 自分が幸福になる為に他者の幸福を奪うしかない人だっているだろう。


 というか人生って結局は、限られた幸福の奪い合いで成り立ってるようなものだと思う。


「あははっ。ダンさんが誰の幸せを奪ったって言うのー?」


 ガレルさんの行動に頭を悩ませる俺を、ターニアさんが笑い飛ばしてくれる。

 やっぱりターニアさんはニーナの母親なんだね。俺が悩むと直ぐに笑い飛ばしてくれるところなんてそっくりだよ。


「ニーナがね。私と別れて独りぼっちになったあと、ステイルークでダンさんと会った時の事を、何度も何度も私に笑顔で話してくれたのっ」

「へぇ、そうなんだ? ニーナと初めて会った頃かぁ。懐かしいなぁ」

「自分だって余裕が無いのに、自分もステイルークにいられなくなるのに、村人のままで装備も整わず、呪われたニーナを伴って旅立つ事の苛酷さとか、来年の自分の納税の目処も立っていないくせに、なにも考えずにただ自分の手を握ってくれたんだって」

「改めて羅列されると、本当に酷いな当時の俺はっ!」


 当時はこの世界の事を何も知らなかったわけだけど、今となってはめちゃくちゃなことをしたもんだと思うよ。

 たとえこの世界の常識を知っていたとしても、ニーナの手を取る道を選んでいたとは思うけど。


「ダンさんはこの世界でたった独りになって、お金も頼れる人もなく、職業浸透だって全く進んでいなかった。それなのにニーナが捨てられていくのをたった1人阻止したのは、貴方だけだった」

「……綱渡りもいいところだったけどね。大分運も良かったよ」

「貴方は自分とニーナが過酷な運命に翻弄されても、それを決して受け入れることなく、自分の意思と覚悟で不幸をねじ伏せてしまったの」

「ターニアさん。それは違うよ。俺だって独りのままだったら潰れてたと思う。俺はニーナに支えてもらえたから頑張れたんだし、ニーナも俺が居たから自分の足で歩み出すことが出来たんだ」


 俺もニーナも、お互いがいなかったらとっくに死んでるんだ。

 どっちが助けたとかって話じゃなくて、俺とニーナは2人じゃなければ生きていけなかったんだと思う。


「ターニアさんだって呪われた生活の中でも、ニーナが居たから17年も幸せを諦められなかったでしょ。ニーナと別れた後も、ニーナのことだけが心配でギリギリまで耐えてくれたんでしょ?」

「……そうだね。私も同じだったのかなぁ」

「呪われていても、世界中が敵だったとしても、この世界に放り出されてしまったとしても……。誰か1人でも寄り添ってくれる人がいたなら、苛酷な運命の中でも笑って過ごせるんだよ、きっとさ」


 かつてガレルさんとターニアさんとニーナの3人が、あの家で笑って過ごしていたみたいにさ。


「……うん。だからね、そんな私達の手を振り払ったガレルとは、もう絶対に一緒にはいたくないの」


 ターニアさんの口から零れる強い拒絶の言葉。

 感情の感じられないその言葉を聞いた俺は、思わずターニアさんをぎゅっと抱きしめてしまった。


 かつて愛した男性をここまで嫌わなければならないなんて、そんなの可哀想過ぎるよ……。


「ガレルには感謝してるし、かつて愛したことも後悔していないの。だけどニーナはいつもお腹を空かせていたのに、自分は商人として大成していたなんて……!」


 かつての寄り添った日々は否定しない。

 でもだからこそ、捨てられた後に互いが過ごした日々を許すことは出来ないのか。


 俺の体に抱きつきながら、自分の感情を押さえ込むように言葉を続けるターニアさん。


「ニーナはあの日動くこともできずに、目前に迫った死の恐怖にただ怯えることしか出来なかったのに……。自分はその時別の家族と幸せに過ごしていたなんて……。許せるはずが、ないじゃない?」

「……あー、そうだね。ターニアさんはその時の極限状態のニーナと、ずっと一緒にいたんだったね……」


 いくらガレルさんも被害者だと言っても、ニーナは本当に死ぬ寸前だったんだった。

 そしてターニアさん自身も、死ぬ寸前まで追い込まれていた。

 その時既に商人として成功を収めていたガレルさんには、殆ど負担なく2人を養えるくらいの財力があったはずなのに、だ。


 富や名声の為に娘であるニーナを捨てたガレルさんと、偶然とは言えニーナを助けて共に歩んできた俺は、ターニアさんの目に本当に正反対に映ったのかもしれない。


「ニーナを助けてくれたダンさんには本当に感謝してるの。命を助けてくれただけじゃなくあんなに幸せにしてくれるなんて、本当に信じられないの」

「ふふ。俺もニーナに信じられないくらい幸せにしてもらってるから、お互い様だね」

「ニーナを幸せにしてくれた上、私のことまで助けてくれて……。こうしてニーナと一緒に幸せに過ごさせてくれて、本当に感謝してる。……でもね?」


 俺の腕の中でもぞもぞ動き、潤んだ目で見上げてくるターニアさん。

 ニーナそっくりのその美貌はかすかに上気していて、とても魅力的な女性だと改めて思った。


「ダンさんへの想いはもう、感謝だけじゃないの」

「……うん。ターニアさんの気持ち、受け取ったつもりだよ」


 静かに目を閉じたターニアさんと、触れるだけのキスを交わす。


「……ガレルへ疑問を抱くたびに、ダンさんのことが頭をよぎっちゃうのよねぇ。ガレルが私とニーナにしたことの全く反対の事を、ダンさんはしてくれるんだもん」

「俺は富も名声も興味無いからね。俺が欲しいのはみんなのエロい体と心だけだから」

「あはっ。捨てられた人を見捨てず、幸福を分け与え、関わった人みんなを笑顔にしちゃうダンさんはかっこよすぎるよぉ。娘の旦那さんだって分かってても、好きになっちゃうくらいにね?」


 告白と共にキスをしてくるターニアさん。積極的だなぁ。


 ニーナもムーリもターニアさんも、えっちなことにはかなり積極的だと思う。

 ひょっとして獣人族の種族的な特徴だったりするんだろうか?


「そろそろ奈落に向かわないといけないからこれで最後だよ」

「ふふ、アレだけしたのにもう1度してくれるなんて嬉しいのっ」

「続きはみんな揃って、パールソバータの宿でしようね? ニーナも一緒にさ」


 改めてターニアさんに圧し掛かり、最後の仕上げと言わんばかりに激しく突きあげ注ぎ込んだ。


 お腹をぽっこりさせたターニアさんの頭を撫でて、迎えに来るからそれまで休んでいてねとキスをして部屋を出る。

 仕込んであった献上品を持って、奈落で待つみんなの元に転移した。





「甘ーい! 冷たーい! 美味しーい! なにこれーっ!?」


 献上品をひと口食べたニーナが、驚きに目をぱちくりさせている。

 ほんの数分前まで肌を重ねていたターニアとそっくりなその顔に、なんだか物凄く興奮してしまうなっ。


「これはアイスクリームっていうお菓子だよ。アイスコフィンが使えるようになってから何度か試作してたんだ」


 生クリームやバニラエッセンスが無いので個人的には物足りないけど、氷が自由に使えると作れるお菓子が増えて楽しい。

 でも上半分と下半分の食感が変わっちゃってるし、個人的にはまだ失敗作から抜け出せてない水準かなぁ。


「ダンのもと居た世界は凄いのう。これでも凄く美味しいのに、これで失敗作なんて信じられないのじゃーっ」


 ねーっ? と仲良くアイスを頬張る好色家姉妹が可愛すぎる。


 そしてこの2人の母親を両方抱いてしまった事実に、なぜか物凄く興奮を覚えてしまいますねっ。

 アイスを食べてクールダウンだっ! ……やっぱり不満が残るなぁ。


 現代日本の食品水準を知る俺には失敗作に感じるけれど、それを知らないみんなにはとても好評だ。

 病気耐性があるからお腹を壊したりもしないだろうけど、食べ過ぎ注意だからねっ。


「んー。作り方自体は難しくないみたいだけど、アイスコフィン必須じゃ流通させられないわねぇ……」

「凄いなー。元々料理したことなかったって言う割に、ダンが作るものはいっつも美味しいんだもん」

「こっ、これはぁ……!? こんなに甘くて冷たくて美味しいものが、この世界に存在しているなんてぇ……!」


 どうしても商売っけが抜けないティムル、頭をキーンとさせながらも、それを無視してもぐもぐアイスを頬張るリーチェ、リアクション芸人と化しているヴァルゴを見ているのは楽しいなぁ。

 ニコニコとアイスを頬張るみんなを鑑定すると、全員の職業浸透が間違いなく完了しているようだった。


 奈落の12階層って最高の狩場だなぁ。

 世に出せない素材とスキルジュエルが俺のインベントリに積みあがっていくことを除けば、何も不満がないレベルの狩場だよ。

 アウターエフェクトやイントルーダーが出ないのも素晴らしいね。


「う~ん……。他にも浸透させるべき職業があるのか……?」


 フラッタは英雄を浸透させたけど、新しい職業が出てこないなぁ。

 守護者や救世主なんかは、英雄の先にあると思ってたんだけど……。上位職じゃなくて複合職だった?


 アイスを食べ終わってご満悦のみんなに、次になりたい職業のアンケートを取る。


「それじゃ私とフラッタは分析官になろうかなっ。職業補正も強力だしねっ」

「分析官が終わったら犯罪職をあげて、その後竜殺しまで浸透させたら竜騎士になるのが良いかのう?」

「うん。敵が攻めてこないうちに、全員種族専用職業までは浸透を進めておきたいところよね。私は予定通り盗賊でいいわ」

「旦那様。私も予定通り悪魔祓いでお願いします」

「ぼくは侠客からの英雄かな。犯罪職もあげておきたいけど、フォアーク神殿で犯罪職になるのはちょっと危険だよね。犯罪職になっちゃうと転職を禁じられちゃうし」


 ニーナとフラッタが分析官姉妹に、ティムルが盗賊で怪盗お姉さんに、ヴァルゴが悪魔祓い巫女に変身と。


 リーチェは建国の英雄なのに、まだ英雄を浸透させてなかったんだね。

 職業設定が使えない状態で犯罪職になるのはちょっと怖いねぇ。犯罪職は補正が強力だから浸透を進められないのは結構痛いけど、今回は見送るべきじゃない?


「……あー! もしもなれるんであれば、好色家を狙ってみようかなっ!?」

「……どうしてもって言うなら止めないけど、大スキャンダルにならないように気をつけろよ?」


 建国の英雄が好色家になるとか、ある意味犯罪職よりも危険だからな?


 しっかしリーチェって、まだ好色家を浸透させてなかったんだったなぁ。

 最後まで繋がってないとはいえ、よく毎晩の営みについてきてくれてるものだよ。



 分析官 最大LV100
 補正 体力上昇+ 魔力上昇+ 敏捷性上昇+ 五感上昇+ 幸運上昇+
    身体操作性上昇+ 装備品強度上昇+
 スキル 人物鑑定 魔物鑑定


 盗賊 最大LV100
 補正 敏捷性上昇
 スキル 小型武器使用時敏捷性上昇


 悪魔祓い 最大LV100
 補正 体力上昇 全体魔力上昇+ 魔法攻撃力上昇+ 
    五感上昇+ 全体幸運上昇+ 装備品強度上昇+
 スキル 対不死攻撃力上昇+ 対悪魔攻撃力上昇+
     全体魔法耐性+ 聖属性魔法 対魔法障壁


 侠客 最大LV50
 補正 物理攻撃力上昇 物理防御力上昇 体力上昇- 魔力上昇- 幸運上昇
 スキル 陽炎



「それじゃいっくよー。今日は色々考えてきたから覚悟してよー?」


 職業設定とアイスクリームの試食会が終わったら、竜王を呼び出しての手合わせだ。


 昨日は自分と竜王を別々に操作しようとして、かえってチグハグになってしまった。

 なので今日はその反省を活かして、戦闘フィールド全体を1つの要素として捉える事にする。


 五感補正と察知スキルを最大限に活かして、戦闘フィールドを俯瞰で把握する。

 イメージ的には、戦闘フィールド全体をひっくるめて1つのゲーム画面として認識する感覚かな。


 自分自身はプレイヤーキャラクターとして操作し、竜王はお助けNPCとして認識する。

 竜王を操作するのではなく、オートパイロットの竜王の動きを把握して戦闘に組み込んでいくイメージだ。


「む……! 旦那様と竜王の動きが、先日とは明確に……!」


 仕合わせの暴君の超高速の戦闘速度で自分と竜王を精密操作しようなんて普通に無理なので、竜王を自由に動かしながらその竜王の動きを活かす方が戦いやすい。


 竜王の巨体を武器に使い、盾に使い、遮蔽物として利用する。

 視線を遮った瞬間に気配を遮断し、みんなの意識を翻弄する。


「くぅ……! こういう相手の嫌がる動きは、ダンの得意中の得意なのじゃ……!」

「竜王の操作を諦めて、勝手に動く竜王を状況に応じて利用している感じだね……! 竜王を遮蔽物として使われるとかなり厄介だよ……!」


 うん。竜王には悪いけど、敬意を払って活かそうとするのではなく、道具と認識して使い倒そうとした方が扱いやすいな。


 これは俺が生み出した擬似竜王に過ぎない。竜王と共に戦っているわけじゃないのだ。

 あくまで竜王を模した道具であり、道具であるなら使いこなして戦うだけだ。


「んもーっ! 結局ダンに自由に動かれたら追いつけないじゃないのよーっ!」


 造魔竜王の認識を変えただけだけど、今日は何とか帰還予定時間まで竜王を破壊されずに済んだ。


「あーもう倒しきれなかったよぅ! 私達の負けなのーっ!」


 俺としては新しい何かを掴めた手応えを感じられたけど、竜王を倒しきれなかったみんなは大変悔しそうです。


「さぁダンっ! 負けた私達を好き勝手にしちゃっていいよーっ!」


 武装解除して両手を広げるニーナ。敗者感ゼロっすね!


 好きにしちゃって良いと言われたので、両手を広げて待ち受けるニーナを正面からぎゅっと抱きしめる。

 そのハグが予想外だったのか、目をパチクリさせるニーナが可愛い。


「ダンー? もっとえっちなことしてもいいんだよー?」

「勿論えっちなこともするけど、その前にみんな揃って話したい事があるんだよ。ニーナにとってとても重要な話題が2つもあるんだ」

「お話ー? 私に関係のあることなのー?」

「うん。ニーナに嫌われるとは思ってないけど、それでもニーナに話すのがちょっと不安でさ。もうちょっとだけぎゅーっとさせてくれる?」

「んー? ぎゅーっとするのは構わないけど、私がダンを嫌うことなんてないよー? あー、もしかして母さんを抱きたくなっちゃったとか? 母さんが嫌がってないなら全然構わないよ?」


 ……ニーナって、エロい事に対するハードルが家族の誰よりも低くないかなぁ?
 

 ターニアさんを抱いたことを怒られるとも思ってないし、俺とターニアさんから離れてガレルさんを選ぶとも思ってないけど。

 だけど、もうちょっとだけぎゅーっとさせてね。


 ニーナの吐息と鼓動、もうちょっとだけ感じていたいからさ。
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