異世界イチャラブ冒険譚

りっち

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4章 マグエルの外へ3 奈落の底で待ち受ける者

278 神殺し (改)

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 ムーリとティムルにご褒美甘々タイムをプレゼントしてあげたら、やっぱりみんなも甘々に甘やかして欲しいと言うので、ひと晩中みんなとキスしながらゆっくり愛してあげた。


 でもやっぱり、みんな上がりすぎた五感にまだ順応できておらず、甘々でも失神しちゃって大変だった。

 ティムルは五感上昇幅が他のみんなよりも少なかったからか、かなり慣れてきてくれたんだけどねぇ。


 うん、でも男としては嬉しいよ。

 職業補正の効果だって分かっていても、俺に触れられると気持ちよすぎて失神してしまうなんて、男冥利に尽きるってものだ。

 みんなの負担にならないように気をつけながら、隅々まで愛してあげないとね。




「いってらっしゃい。みんな気をつけてねー」


 朝食を食べた後に、今日から送迎の必要が無くなったムーリたち3人とお互いにいってらっしゃいのキスをして、奈落11階層に転移する。

 さて、それじゃ今日の奈落探索を始めようか。
 


 魔物の数は多いのにドロップアイテムが貴重品しか出ないので、回収の手間が省けてレベリングが捗る捗る。

 奈落で戦い続けていれば、普通に全員がクルセイドロアまでは習得できてしまいかねないねぇ。


「さて。最深部なのにまだまだ先の見えない奈落だけど、この先どうしようか?」

「どうって?」

「明日は登城しなきゃいけないからね。ここで一旦探索を終わりにするのもありだと思うよ。このまま最深部を確認するまで探索しても、勿論構わないけどね?」

「私は最深部を見てみたいかなぁ。でも明日の登城次第だよねぇ。転職魔法陣の維持・管理が大変だって話だから、それ次第では探索を続けられなくなっちゃうかもー」


 ニーナは少し不安げだ。

 だけど維持管理が大変なら、今回は普通に設置を見送っても良いんだよ。俺達のしたい事を優先すれば良いさ。


「あはー。ほんとボロボロとスキルジュエルが出るわねぇ。流石にこんな数を市場に流すのは混乱を招くだけだから、余ったら魔人族の集落に提供しちゃいましょうか」

「……なるほど」


 ティムルの提案に、思わず感心して声が漏れてしまった。


 守人の魔人族たちはスペルド王国との交流は無いし、今後も聖域の樹海の中で生活し続ける人たちだ。

 いきなり大量のスキルジュエルを配ったとしても、大きな混乱は避けられるだろう。

 守人としての戦力強化にも繋がるし、何より守人たちにはスキルジュエルを自力入手する手段が今のところ無いもんね。


 スキル付与だけならティムル1人に負担させなくても大丈夫だし、悪くない提案かもしれないな。


「喰らうがいいわぁっ! 剛震撃ぃっ!」


 フラッタの振るうドラゴンイーターに切り裂かれた魔物が、切り裂かれたはずなのに爆散してしまっている。


 新たに付与したウェポンスキルである剛震撃は、強振打と比べると攻撃範囲は狭くなっている。

 その代わりに攻撃力は跳ね上がっているらしく、スキルを受けた魔物の中に衝撃が集束し、一瞬後に弾け飛んでしまう。


 分かりやすく言えば、物理攻撃版のインパクトノヴァみたいなものかな? 怖すぎる。


「それにしても……。スポットや竜王のカタコンベだったらとっくにアウターエフェクトが出てきてもおかしくないペースで魔物を狩っているのに、アウターエフェクトが全然出現しないね?」

「確かにね。竜王が出て来てもおかしくないペースで殲滅してる気がするよ」

「アウターエフェクトなんか、今更出てきたとしても瞬殺されちゃうんだけど……。それにしたって全く出ないのは、少し不安になるかな」


 リーチェは少し考え込むように周囲を警戒している。


 スキルの試用でもしない限り、クルセイドロアで1撃だもんね。

 スポット最深部で魔物察知を使って虐殺するよりも、ずっと早いペースで殲滅してるような気はする。


 出てくる魔物からして他のアウターとは少し毛色が違うから、アウターエフェクトの出現システムも他のアウターとは違うのかもしれない。

 もしその場合、出てくる魔物は他のアウターよりも強力ってことになっちゃいそうだけどさ。


「聖域の外に出るまでは疑問に思ったことなど無かったのですけど、アウターとはいったいなんなのでしょうね?」

「アウターの役割ねぇ。今まであまり考えたことなかったかな?」

「聖域の樹海のように明確な役割を持っている場所もあれば、ただひたすらに強力な魔物を生み出し続けるこのような場所も存在する……。アウターとはこの世界に幸福を齎すものなのか、それとも不幸を呼び込んでしまうものなのか……」


 真剣に悩むヴァルゴには少し申し訳ないけれど、俺にとってはこの世界のシステムの1つといった認識でしかなかった。

 アウターとは魔物を生み出し、経験値とドロップアイテムを齎してくれる、この世界のシステムの1つだ。


 だけど聖域の樹海のように明確な役割がある場所もあって、世界の魔力バランスを保っているなんて場所が存在する以上、少し真剣に考えないといけないことなのかもしれない。


 この世界がゲームであるならば、世界の魔力バランスなんて考える意味はない。

 だけれど過剰な魔力を吸収する聖域の樹海、足りなくなった魔力を補充する呼び水の鏡なんて物が存在している以上、魔力というのは何らかのきっかけでバランスを崩し、世界が混乱に陥る可能性というのも無くはないってことなのだ。


 少なくとも面白半分にレリックアイテムを設置されて、この世界の魔力バランスを崩されるわけにはいかないよなぁ。


 魔物を虐殺し続けて入手した、当分インベントリに死蔵されることになるであろう各種ソウルとホーンと竜宝玉、それにスキルジュエルたち。

 いつか陽の目を見るまで、インベントリの中でゆっくりとお休みなさい。


 う~ん……。しっかしウェポンスキルって、本当に出ないもんなんだなぁ。



 職業浸透もどんどん進む。


 俺の竜殺しもLV100を迎え、障壁強化が融合されたのが感じられた。

 対物理、対魔法両方の効果がある障壁を、半径10メートル以内の範囲なら自由に出現させることが可能になったようだ。


 やっぱりもう俺に盾は必要なさそうだね。

 誰かを護りたい時ですら、もう盾に頼る必要はなくなったんだ。


 木の盾とナイフ、皮の靴から始まった俺の魔物狩り生活。

 まともな防具は盾だけだったあの頃、俺の命を何度も救ってくれた盾の存在から、今日正式に卒業することができた。


 ありがとう木の盾。魚鱗の盾。ミスリルシールド。

 ミスリルシールドはせっかく用意したのに、あまり使う機会が無かったなぁ。



 ……なんて現実逃避をしている場合じゃない。なんなんだこの職業は。

 竜殺しが浸透した事によって新しい職業を獲得できたことは喜ばしいことなんだけれど、現れた職業には問題しか感じないんだけど?



 神殺しLV1
 補正 体力上昇+ 魔力上昇+ 物理攻撃力上昇+ 魔法攻撃力上昇+
    敏捷性上昇+ 身体操作性上昇+ 五感上昇+ 装備品強度上昇+
 スキル 対異界生物攻撃力上昇+ 対異界生物防御力上昇+ 決戦昂揚



 ……悪魔を祓って君主を殺して、竜を殺したらとうとう神様まで殺しちゃえるようになっちゃったかー。

 恐らくは、アウターエフェクト討伐職業を3つとも浸透させた事で出てきたんだろうなぁ……。


 勇者と魔王と神殺しって、どれを表示させてても厄介事しかない気がするけど……、比較的にマシなのは勇者かな?

 勇者をメイン職業にして、神殺しは追加職業に設定するしかないね。

 他に上げられる職業、もう残ってないんだよなぁ……。


 スキルの対異界生物って、アウターエフェクトとイントルーダーのことだよね?


 ……いや、アウターエフェクトは不死族、悪魔族、竜族か?

 となると異界生物って、ピンポイントでイントルーダーのことを指しているわけぇ……?


 以前戦った竜王は、竜族であり異界生物でもあるって感じだったのかなぁ?


 そして決戦昂揚だけど、これはどうやら常時発動型、パッシブスキルって奴みたいだ。

 異界生物と対峙すると職業補正にブーストがかかる能力らしい。


 なんでこんなスキルも無しに、イントルーダーを撃破しちゃったんだ俺たちは……。


 まあいいか。ポジティブに考えようポジティブに。

 これで俺は今のところ、全職業の浸透を終えた形になる。

 まだ見ぬ職業が隠れている可能性は低くはないけれど、少なくとも当分は転職について悩む必要もないし、ひたすら勇者で魔王の神殺しを極めていけばいいだけだ。


 職業浸透数はちょうど60個かぁ。キリがいいような悪いような。



 ニーナは付与術士を浸透させて、悪魔祓いに転職。

 狐っ娘悪魔祓い……! なにその属性盛り盛りした感じの魔法少女は……!


 ティムルは賞金稼ぎ、慈善家、短剣使いを浸透させ、弑逆者の道を歩み始めた。

 もう名匠に戻ってもなんの問題も無いと思うんだけれど、基本的にみんなクルセイドロアの浸透まで目指したいらしい。


 フラッタは荷運び人、飛脚、賞金稼ぎを浸透させて悪魔祓いに。

 エクソシスト姉妹の爆誕だねっ!


 リーチェは飛脚を浸透させて、フォワーク神殿でこれまた悪魔祓いに転職してきた。

 これでヴァルゴ以外の全員が、64㎥のインベントリを使用できるようになってしまったぜっ。


 そのヴァルゴは付与術士を浸透させた後、修道士、司祭、賞金稼ぎ、豪商を経て魔導師になった。


 誠に遺憾ではあるけど、俺が転職させてやった時に修道士になれるようになっていたし、万が一を考えると治療魔法は使えるようにさせておきたい。


 インパクトノヴァの魔導師と、ホーリースパークを覚えつつ物理攻撃をあげられる弑逆者で悩んだけれど、恐らく無属性の攻撃魔法であるインパクトノヴァはどんな相手にも安定して使える攻撃手段だから、やっぱり優先して覚えさせておきたいと思い魔導師になってもらった。


 11階層の出口である11個目の中継地点に到着した時点で、俺は勇者LV159、魔王LV159 神殺しLV16。

 神殺しの浸透速度、遅すぎてビビるわぁ。


 ニーナは悪魔祓いLV38、ティムルは弑逆者LV51。

 フラッタが悪魔祓いLV44でリーチェも悪魔祓いになって、ヴァルゴが現在魔導師LV17だ。


 ヴァルゴ、もう30個も職業浸透してて笑えちゃうなぁ。


「ちょっと早いけど今日はここまでにしよう。奈落の最奥を確認できなかったのは残念だけど、明日は登城が済んだら改めて確認してもいいしね」


 中継地点に到着したので、本日の探索の終了を宣言する。

 帰るにはまだ早い時間だけど、この先に進んだら探索が中途半端になっちゃいそうだからね。


「帰るまでにここで少し手合わせをして、急激に累積した職業補正に慣れていこうか。強くなった自分の実力、しっかりと確かめてみてねー」


 奈落の中継地点は魔物も出ないし、他に辿り着けた魔物狩りも今のところいないらしいから、なんの気兼ねもなく手合わせできる便利な場所だ。

 便利すぎて竜人族の牧場なんて作られていたわけだしなぁ。


「はぁぁぁっ!」

「せぃっ……やぁぁぁっっ!」


 神鉄武器とアウターレア武器がぶつかり合うという、恐らくここでしか聞けない剣戟の音が鳴り響く。


 全員の職業補正が格段に累積されたおかげで、動作が凄まじく早くなっている。

 今まで持て余し気味だった敏捷補正を、五感上昇と身体操作性補正のおかげで遺憾なく利用できるようになったり、敏捷補正こそ足りていなかったティムルが凄まじい速さを発揮したりと、みんなの戦闘力が飛躍的に向上したみたいだ。


「胸を借りるのじゃっ、ヴァルゴーーっ!」

「それはこちらのセリフですよフラッタ! 参りますっ!」


 ヴァルゴとみんなの手合わせはお互いに得る物が多いみたいで、積極的に打ち合っている。


 職業補正ありの速度域にまだ不慣れなヴァルゴ、五感上昇でヴァルゴの技術を体感しながら、身体操作性補正で自分の動きに取り入れていく他のみんな。

 お互いが上手く噛み合って、急速に腕を上げているようだ。


「ふふ。俺も負けてられないね」


 みんなの手合わせを見ながら、俺も自分の訓練を始める。

 ヴァルゴの魔迅を参考に、竜王の応用ブレスを参考に、職業補正を魔力として捉えて、体の必要な場所に必要な分だけ流していく。


 俺の職業補正は多すぎて、恐らく俺も全力全開で利用出来ていない。

 俺の常識が職業補正を無意識にセーブしているんだと思う。

 いくら竜化していたとは言え、職業浸透数が10にも満たないラトリアに速度で追い縋られたのは、俺が職業補正を扱いきれていない何よりの証拠だろう。


「シッ!」


 職業補正を少しずつ体中に流していき、剣を振りながら少しずつ速度を上げていく。

 五感と身体操作性を駆使して剣の動きに無駄を無くし、無駄のない動きを再現しながら動きだけを早めていく。


 全身の神経に補正を乗せて、それが無理なく発揮できるよう血流や筋繊維にまで身体操作を乗せて、自然な動きを探っていく。

 補正に頼り切るのではなく、全開の補正を乗せても耐えられるように、自身の体も意識して動かさないといけない。


 音も呼吸も置き去りにし、ただひたすらに剣を振るっていると、気付いたらみんなが手合わせを終えて俺の事をじっと見ていた。

 もう帰還する時間になったのかな? 集中してて気付かなかった。


「みんな、おつか……」

「「ダンーッ!!」」

「おおっとっ!?」


 手を止めて剣を収納した途端に、ニーナとフラッタが胸に飛び込んできてくれた。


 ええっ、なになに2人ともっ?

 飛び込んでくるならぎゅーってしちゃうよぉ? ぎゅーっ。よしよしなでなで。


「今のなぁにーっ? ダンの動き、ぜんっぜん見えなかったよーっ!」

「妾にも全然見えなかったのじゃーっ! ダンはどれだけ早く動いていたのじゃーっ!」

「何って言われても、職業補正を乗せて剣を振ってただけだよーっ?」


 もう2人とも、ニコニコしながら抱きついてくるの可愛すぎるってばぁ。ぎゅーっ。


「なんだかダンの動きだけ、他の人たちとは違う感じがするのよねぇ……? 浸透している職業が多いってだけじゃ、説明がつかない気がするわぁ」

「うん。ぼくもティムルと同意見だよ。ダンの職業補正の認識、他の人とちょっと違うんじゃないかなって思うんだ」


 ティムルとリーチェのお姉さんコンビがなにか真面目な口調で話し合っているけど、ニーナとフラッタが可愛すぎて頭に入ってこないんだよ?

 んもーっ! エクソシスト姉妹可愛すぎでしょーっ! よしよしなでなで。


「いくらなんでも強くなるのが早すぎるよ。……というかぼくよりも全然職業浸透が進んでいない時ですら、ダンはぼくの剣を砕いたことがあったんだよねぇ……」

「動きの速さも驚きですが、あれほどの速さで動いても剣が全くブレないのも凄まじいですね……」

「うんうん。剣線が閃光みたいに瞬いて見えちゃうねぇ」

「私達ですら目で終えないほどの速さで動いているのに、その速さでも旦那様は自分の動きを完全に制御できているという事になりますよ……! これが本当に信じられません……!」

「う~ん。なんて言えばいいんだろうなぁ?」


 慄くリーチェとヴァルゴの為に自分の動きを言語化したいんだけど、上手い説明が思いつかないなぁ。


 この世界の人たちって、職業補正を常時発動型のパッシブスキルみたいに捉えているところがあるじゃん?

 でも職業補正も魔力で齎されている恩恵なんだから、魔力操作で補正そのものを操作することだって可能だと思うんだよね。


 職業補正は確かにパッシブスキルと言ってもいい存在だと思うけれど、そこで完結しないでもっと突き詰めて利用してるって感じなのかなぁ?


「「「う~ん……???」」」


 みんなに説明しても、ことがまずピンと来ないらしい。

 魔迅を使えるヴァルゴですら、職業補正を魔力と捉えて操作するという発想が出来ない。


 俺みたいに職業補正が可視化されてるからこその発想なのか。

 それともシステム的な発想って、この世界の人にはなかなか理解できないことなのかなぁ?


 ま、いいや。訓練が終わったなら帰ろう。

 明日は登城だし、今夜はいっぱいイチャイチャしておかないとねっ。


「お帰りなさいダンさんっ。みんな待ってましたよーっ」


 奈落から脱出してパールソバータの宿に戻ると、ムーリとエマとラトリアが俺に抱いてもらう為にちゃんと宿に来てくれていた。

 んもうっ! お前らみんな可愛すぎるよぉ! ちゃんと可愛がってあげないとなっ!


 明日の登城に向けて、今夜は全力で英気を養っておかないといけないからさ。

 今夜もゆっくりじっくり、甘々でイチャイチャでラブラブして過ごそうね。
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