異世界イチャラブ冒険譚

りっち

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4章 マグエルの外へ3 奈落の底で待ち受ける者

266 奈落探索 4階層~5階層 (改)

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 朝の燃料注入も済ませ、ムーリ達を送り届けたら奈落の探索を再開する。


「さぁて。今日中に奈落の探索記録を更新しちゃおう」


 アナザーポータルで3つ目の中継場所まで転移し、昨日と同じ2チームに分かれて調査開始だ。


 4階層の魔物はLV35~50くらいといったところで、スポット最深部よりもちょっと弱い程度の魔物が出現する。

 出来れば殲滅しながら探索したいんだけど、今は我慢して探索を優先だ。

 何かがある可能性の高い5階層から先は、多少時間がかかっても分断せずに固まって調査をしていくべきだろうしね。


 この階層ではトラップ遭遇頻度も上がるし魔物のレベルも上がるしで、俺たち以外に探索している魔物狩りは3組しか見つけられなかった。

 全身は無理でも、武器や体防具はミスリルや精霊銀を用意していて、一流の魔物狩りが活動している階層といった感じだね。



 丸1日を費やして隈なく探索してみたものの、結果は空振りだった。


「本命は明日だからね。気を抜かずに調査を進めよう」


 口では真面目なことを言いながら、俺の両手は5人のおっぱいの先端を代わる代わるつんつんぷにぷにしている模様。


 現在確認されている中継地点はここまでだそうだから、5階層に何もなければ奈落には何もないのかもしれない。

 ま、何もなかったとしても、職業の浸透は進むんだからマイナスってわけじゃない。何も無くても最深部までは確認することにしようか。



 宿に帰ってみんなと散々イチャイチャして眠りにつき、目覚めてからもしつこくイチャイチャしてから5階層の探索を開始した。


「今日からが調査本番だよ。みんなよろしくね」


 4つ目の中継地点でみんなにちゅっちゅとキスをして気合を入れ直し、改めて奈落5階層に足を踏み入れる。


 外観的には特に代わり映えしないなぁ。通路が更に広くなったくらい?

 5階層からは全員で固まって探索をするため、5階層は2日間くらいかけて探索する予定を立てる。

 出現する敵のレベルも50~75と跳ね上がっているので、職業浸透も進めながら5階層の調査を行う事にした。


 スポットの最深部よりも魔物の平均レベルは高くなっているけれど、魔物の密度はスポットの最深部の方が濃い印象だ。

 奈落5階層では規模の小さめな魔物の群れに何度もエンカウントするという、ロールプレイングゲームだったらエンカウント率ミスってんじゃないの!? とクレームを入れたくなる頻度で魔物と遭遇する。

 でもアウターエフェクトをそれぞれが単独で倒せると思われるうちのメンバーの相手にはならず、出会った瞬間即殲滅、何の障害にもならない模様。


「ニーナ。探索者の浸透が終わってるよーっ」


 探索を続けていて、まずはニーナの探索者が浸透完了。

 予定通り、次の職業は賞金稼ぎを選択してもらう。



 賞金稼ぎLV1
 補正 敏捷性上昇
 スキル 対人防御力上昇



「あははっ! 移動阻害の呪いを受けてた私が、移動魔法を極めちゃったのーっ」


 痛快に笑うニーナをぎゅっと抱きしめてから、5階層の調査を再開する。


 ニーナの次に浸透を終えたのは、ヴァルゴの槍手だ。


「ダン様、ヴァルゴは兵士になろうと思います。宜しいでしょうか?」

「勿論オッケーだよ。兵士ね、りょーかいっ」


 今回から転職先を自分で選ぶヴァルゴが、槍手の次に選んだのは兵士だった。

 兵士は体力、敏捷性、装備品強度補正がかかる上に、全体補正上昇スキルまで持っている、ヴァルゴに足りない補正を一気に補ってくれるような職業だね。



 兵士LV1
 補正 体力上昇- 敏捷性上昇- 装備品強度上昇-
 スキル 全体補正上昇-



 ヴァルゴはこのまま聖騎士まで上げてから別のルートにいくのが無難かもしれないなぁ。


「ありがとうございます。これでまた皆さんのお役に立てそうです」

「あ、ヴァルゴの兵士が終わったら、リーチェの狩人も浸透が終わると思うからねー」

「了解だよっ。ヴァルゴの浸透が終わったらフォアーク神殿に行ってくるねっ」


 決意に燃えるヴァルゴと笑顔のリーチェにキスをして、調査再開だ。


 次に終わるのはフラッタの魔導師かなーと思っていたんだけど、その前にニーナの賞金稼ぎがサクッと浸透してしまった。

 最大LV30の職業はあっという間に浸透しちゃうねぇ。


「それじゃ予定通り、私は犯罪職を上げていくのーっ」

「うんうん。ニーナの可愛さは犯罪的だね。ぎゅーっ」


 賞金稼ぎが浸透すると、ニーナも悪魔祓い、弑逆者、竜殺しの転職条件を満たせたようだ。

 だけど次の職業は盗賊なんだよねー。



 盗賊LV1
 補正 敏捷性上昇
 スキル 小型武器使用時敏捷性上昇



 ダガー使いのニーナなら盗賊の能力をフルに発揮できるはず。

 この先に獣人族の種族専用職業があると信じて、怪盗ニーナの出陣である。


 俺の心は盗まれる前に全部差し出し済みですが?


「あや、マジかぁ……」


 LV30では浸透してくれなかった俺の奴隷商人が、なんとLV50も通り過ぎてLV51を迎えてしまった模様。

 奴隷解放を経験すれば転職条件を満たせるっぽいのに、天井が随分高い職業なんだなぁ? まるで犯罪職みたいな扱いだ。


「5つ目の中継地点に、とうちゃーっく!」


 ニーナがピョンっと飛び跳ねて、両足を揃えて中継地点に着地する。

 流石は怪盗ニーナ。どこまで俺の心を盗めば気が済むのかな? よしよしなでなで。


 丸1日探索して、なんの問題も無く5つ目の中継地点に到着してしまった。

 だけど5階層の探索は半分ほどしか終わっていないので、残った範囲を明日もう1度回ってみないといけない。

 それとフラッタの魔導師が間もなく浸透するので、そこまで浸透させてから帰ろうね。




「え? 修道士? 別に構わないけど」


 魔導師が無事に浸透したフラッタは予定通り射手になるのかと思ったら、奈落にいるうちに修道士と司祭を浸透させたいと言うので、修道士になってもらった。


「奈落にいる間はダンともニーナとも一緒じゃからな。察知スキルの優先度を下げたのじゃー」

「うんうんフラッタ! ずーっと一緒なのーっ!」


 ニコニコと一緒だよと宣言するフラッタに、陥落してしまったニーナが全力で抱き付いて頬ずりしている。


 聖騎士と回復魔法士を浸透させてる時点で全体回復魔法は使えるだろうに、万が一に備えて治療魔法も使えるようになっておきたいらしい。

 感電をキュアライトで回復できたのが衝撃的だったのかな?



 修道士LV1
 補正 魔力上昇- 幸運上昇-
 スキル 回復魔法



「おつかれさまー。それじゃ帰ろっか」


 今日の探索を終えて、俺は奴隷商人LV62、法王と救世主がLV77に。

 ニーナは探索者と賞金稼ぎを浸透させた上で盗賊LV24、ティムルは魔導師LV34になってサンダースパークを習得した。

 フラッタは魔導師を浸透させて修道士LV1に、ヴァルゴは槍手を浸透させて兵士LV24になった。

 明日の探索中に、リーチェの狩人の浸透も間違いなく終わるだろうね。


 奈落を脱出してムーリを迎えにマグエルにいくと、ターニアさんに呼び止められる。


「ダンさんダンさん。私の商人とムーリちゃんの戦士、そろそろ浸透終わってないかな?」

「ん、ちょっと待ってねー」


 聞かれたので確認すると、2人ともしっかりLV30になっていた。

 考えて見ればもう2月も終わるんだもんな。2人とも毎日スポットに通ってたんだろうし、もしかしたらもっと早く浸透してたかも。


「うん。2人とも、間違いなく浸透が終わっているよー」

「よぉっし! それじゃ私はまず冒険者に転職して、トライラムフォロワーの移動要員として活躍しちゃうよーっ!」
 

 両腕を胸の前で握り締めてガッツポーズを取った後、その手を開いて自分の胸を叩きながら冒険者になることを宣言するターニアさん。

  
「探索者まで浸透させたら、探索魔法士まで浸透させたいと思ってるから、ダンさんには早めにエルフの里を利用できるようにして欲しいなーっ」

「……それはゴブトゴさんに言って欲しいんだよねー」


 俺だって早くエルフの里に行きたいのに、ゴブトゴさんの事情で待たされてるんだからさー。

 仮にエルフの里に行かなくてもリーチェと最後までいけちゃうなら、エルフの里なんて永遠に行かなくても構わないんだけどさー。


「私は魔法使いになろうと思うんですよね。槍の訓練もしてますけど、そっちは自衛ができれば充分かなって」

「ムーリは魔法使いね。既に修道士も浸透してるから悪くないチョイスだと思うよ」

「ええ、ターニアさんが冒険者と探索者を進める予定なので、私が先に探索魔法士まで補えればバランスがいいかと思いまして」


 ムーリはあまり魔物狩りとして活動していく気が無いのかと思っていたけど、傾国の姫君のパーティバランスまで考えるようになってくれたんだなぁ。


 ムーリは現在トライラムフォロワー用の装備品を無料で貸し出して使わせているけど、ターニアさんとお金を稼いで専用の装備品を買いたいと頑張っているみたいだ。

 明日からターニアさんがポータルを使えるようになるから、探索の効率が上がって稼ぎやすくなるんじゃないかな。


「しっかし……。随分と立派な物を建ててくれちゃったもんだなぁ……」


 俺達がマグエルを離れている間に、自宅の後ろに自宅の屋敷と同じくらいの大きさの離れが出来ていた。

 ターニアさんはもうそっちで寝泊りをしているようだ。


 後宮みたいで我ながら引くなぁ。ターニアさんとは関係を持ってないけどさぁ。


 関係を持っているほうの母親であるラトリアたちと合流して、パールソバータの宿で夕食を取って、傾国の姫君の活動について共有する。


「40歳を過ぎてもう余生を過ごすだけだなんて思っていましたけど……。私たちは少し甘えていたような気がしますね」

「ん? どうしたのラトリア?」


 ポツリと零れたラトリアの言葉に、思わず首を傾げてしまった。

 傾国の姫君の今後の予定を聞いたラトリアには、少し思うところがあったようだ。


「ムーリさんやターニア様の話を聞いて目が覚める思いですよ。探索魔法士や冒険者を浸透させて私たちも出来ることを増やしていかないと、皆さんに置いていかれてしまいそうです」

「私達がポータルを使えるようになれば、ダンさんに迎えに来てもらう必要も無くなりますしね。ダンさんに迎えに来てもらうのもとても幸せなんですけれど、負担にはなりたくないですし」


 エマの事を負担になんて思うわけないじゃないかー。よしよしなでなで。

 でもポータルはめちゃくちゃ便利なんだから、使えるようになっておいて損はないよ。


「んー……。いっそターニアさんも誘って、みんなで奈落の探索をしてみるとかどう?」

「あー……。物凄くありがたい申し出なんですけれど、今ちょっとヴァルハールを離れるのは難しいんですよね。ブルーヴァが失脚したおかげで、私の仕事が増えちゃって……」


 そっか、ラトリアは忙しくて参加は無理かぁ、残念。

 ブルーヴァのやらかしでフトーク家は断絶。竜人族の貴族家が1つ減ってしまったことで、他の竜人族貴族の仕事が少し増えてしまっているらしい。


「私も実力が伴わないのに浸透だけ進めるのは危険だと思いますので、ターニアさんと一緒に自力で地道に浸透を進めていきたいと思ってます」

「ムーリも不参加ね。了解だよー」

「私も大好きなダンさんと一緒にいたいですし、私と一緒に居たいと思ってくれるダンさんの気持ちは嬉しいですけど……。今は私の我が侭を許してくれると嬉しいです」


 我が侭だなんてとんでもない。気にしなくていいよムーリ。

 お前の我が侭も我が侭ボディも全部大好きだから、もっと我が侭を言ってくれてもいいくらいだからね?


 パワーレベリングの危険性は俺も理解してるし、今回の提案はお流れかな。

 そう思った時に、ラトリアがなぜか恐る恐る魅力的な提案をしてくれた。


「エマだけ同行させて、冒険者になれるまで浸透を進めさせてもらったりとか……、ダメですかね?」

「えっ!? わ、私だけみなさんに同行するんですかっ!?」

「ナイスラトリア! ラトリアとエマがいいならそれで行こう!」


 アタフタするエマを捕まえて、力いっぱい抱き締める。

 それじゃ明日からエマも一緒に行こうね。ぎゅーっ。


 エマが冒険者、探索者、探索魔法士まで浸透させられれば、ラトリアと2人で竜王のカタコンベに潜ることも可能になるから、2・3日頑張ろうねー。よしよしなでなで。


 その日もたっぷりみんなと愛を確かめ合って眠りについた。




「ニーナたちはもう少し休んでていいけど、ムーリとエマとラトリアは身支度をしてねー」


 翌朝のデリバリータイムは少し短めにして、少し早めにムーリ達を送り出す。エマの探索準備があるためだ。


「それじゃエマ。あとで迎えに来るからね」

「は、はいっ……! 今日からよろしくお願いしますっ……!」


 恐縮して緊張しているエマと、そんなエマを微笑ましく見守るラトリアを抱き締め、2人にたっぷりキスをする。

 エマとラトリアをヴァルハールの領主邸に送った後、エマが奈落探索の準備を整えている間に魔人族の集落と開拓村に視察に行って、それぞれの職業浸透の進み具合を確認してみる。


 魔物狩りよりも住居や各種施設の建設の方が優先されているためか、開拓村ではあまり職業浸透が進んでいないようだな。

 それでも浸透が終わっていた数名に転職を命じて、魔人族の村を見て回る。


 戦士の浸透が終わっている者たちを半数ずつ旅人と商人に転職させて、ドロップアイテムは可能な限り俺達に回収させて欲しい旨を伝える。

 経済活動も無く各種生産職も居ない今の魔人族に、ドロップアイテムはあまり意味が無いからな。俺達で加工してしまうべきだ。


 転職と連絡を済ませたら、直ぐにヴァルハールにとんぼ返りだ。


「準備は出来ております。改めてよろムグゥ!?」


 真面目な顔のエマの挨拶を遮って唇を奪う。

 そして既に仕事中という理由で来なかったラトリアを執務室まで追いかけて、生体察知と気配遮断全開でラトリアの母乳をしゃぶり尽くす。


「仕事中におっぱいが垂れてこないよう、念入りに吸い尽くしてあげるよ。ちゅううううううううう」

「ふーっ! ふーっ!」


 気配遮断の効果を切らさないように、必死に自分の口を押さえて嬌声を我慢するラトリア。

 そんなラトリアのおっぱいを背後からエマにもにゅもにゅと搾らせて、なかなか止まらないラトリアの母乳を全力で吸い続けた。




「うん。流石に出が悪くなってきたね。これなら夜まで平気かな?」

「だ、だからぁ……。ダンさんが吸うせいで……出易くなっちゃうんですってぇ……」


 つまりラトリアのおっぱいを吸えば吸うほど、ラトリアのおっぱいをしゃぶる必要性が高まるということだなっ。夢のような話だよぉ。


 執務室の床に大の字になっているラトリアの乳首を、大きな動きでべろんべろんと舐めあげる。 

 毎日出なくなるまでしゃぶってあげるからね。遠慮しないでどんどんおっぱい出易くなっていいからねー?


 ラトリアが復活するまでドレスから零れた乳首をひたすら舐め回し、ようやくエマと一緒に奈落でみんなと合流した。


「あははっ! 朝からお疲れ様だよーっ!」

「ただいまニーナ。待たせてごめんねー」

「うん、確かに今のままじゃダンの負担が大きすぎるね。みんなでもうちょっと頑張らなきゃだめだねっ」


 笑いながらも労ってくれるニーナをよしよしなでなで。

 魔人族に探索者と職人が増えてくれたら、一気に楽になると思うんだけどねー。守人の集落周辺で装備品の素材が回収できるのは確認できたからさ。


 さ、ちょっと時間を取っちゃった分、少し急ぎ目に回っていこうか。

 ヴァルハールでお腹いっぱいになっちゃったし、腹ごなしも兼ねて?


 昨日は中継地点から見て左半分の地域を調査して回ったので、残り半分の右側地域を少し駆け足気味に回っていく。


 エマは流石ゴルディアさんやラトリアと同じパーティで戦ってきただけあって、戦闘技術はかなり高い方だと思う。

 奈落5階層の魔物相手にもまったく引けをとらずに戦えているようだ。


 職業浸透さえ進めば、普通にアウターエフェクトを倒せる実力の持ち主だね。

 個人的には、43年間も誰かに尽くして生きてきたんだから、後はゆっくり過ごして欲しいなぁなんて思うんだけどさ。





「ダンーっ! 回復魔法が全体化したのじゃーっ!」

「了解。次はそのまま司祭だったねー。よしよしなでなで」


 まず真っ先に浸透が終わったのは、フラッタの修道士。

 治療魔法を覚える為に、フラッタはそのまま司祭に設定する。



 司祭LV1
 補正 体力上昇 魔力上昇 幸運上昇 魔法攻撃力上昇-
 スキル 治療魔法



 さぁこの調子でどんどんいくよーっ。


 フラッタの次に浸透が終わったのは、ヴァルゴの兵士。

 やはりヴァルゴにも好事家は出現しなかったので、そのまま本人の希望通り騎士になってもらう。



 騎士LV1
 補正 体力上昇 魔力上昇- 物理攻撃力上昇 物理防御力上昇
    敏捷性上昇 身体操作性上昇 五感上昇 装備品強度上昇
 スキル 全体補正上昇 対人攻撃力上昇 対人防御力上昇



「騎士。いいですね。護り手である私に相応しい職業でしょうっ」


 この世界の騎士は身分じゃなくて、職業の加護の話なんだけどねー。

 騎士に誰かを守るイメージを抱くのは、異世界でも同じ模様。


 騎士はほぼ全ての補正効果が乗る強力な職業だ。

 身体操作性と五感上昇は今のヴァルゴに最も必要な補正だと思うので、どんどん浸透させていきましょうねー。


「それじゃ探索が終わったら、1度フォアーク神殿に行ってくるねっ」


 ニコニコと上機嫌に転職を宣言するリーチェ。


 ヴァルゴの兵士が終わったってことは、リーチェの狩人も浸透が終わったってことだもんね。

 リーチェも今日の探索を終えたら斥候になって、魔物察知を使えるようになるかもしれない。


「わ、分かってはいましたけど、皆さん凄まじい速度で魔物を殲滅されてらっしゃるんですねぇ……」


 エマがどん引きしているけれど、俺達とエマの大きな違いは職業浸透の数だけなんだよ。

 エマは5つ、ターニアさんは6つ、ラトリアでさえ7つしか職業浸透してないんだもの。


 ヴァルゴでさえ10個、他のメンバーは全員が20以上、俺に至っては50以上も浸透してるんだから、単純に比較しちゃダメなんだって。



 5階層の探索を再開し、魔物の群れを殲滅していく。

 魔物のLVが50を超えているんだからスキルジュエルが出ないものかなぁって期待していたんだけど、全く出る気配がないんだよなぁ。

 やっぱり魔物のレベルじゃなくて、最深部の魔物を倒さないとスキルジュエルはドロップしないのかなぁ。


 んー、エマは聖騎士のせいもあってか、職業の浸透が遅いなぁ。今日中に転職するのは難しいかな?

 俺の奴隷商人は今日中に終わりそうだけど、ニーナの盗賊は微妙な感じだね。

 フラッタの司祭も終わるかどうかギリギリって感じの浸透速度だ。




「……これは」


 そして俺の奴隷商人がLV100に到達する。

 職業設定を開くと新たな職業が現れているので、どうやら浸透しきってくれたみたいだね。



 魔物使いLV1
 補正 魔力上昇 魔法攻撃力上昇 
 スキル 従属魔法



 うん。やっぱりあったよテイマー職。

 この職業の存在は、帰還してからラトリアも交えてするべきだ。今は黙っておこう。


 従属魔法は今のところ変化無いけれど、職業浸透が終われば融合するんだろうね。

 この先があるかも確認しなきゃいけないから、奴隷商人からそのまま魔物使いに設定する。



 5階層の残りのエリアも探索したけど、やはり何も見つからなかった。

 鍵はやはり現在未踏の領域になってしまっている6階層以降にありそうだね。


 さて、帰る前にニーナ、フラッタ、ヴァルゴの浸透がもうちょっとなので、少し無理して終わらせてしまおうか。

 探索から殲滅優先に切り替えればすぐに終わるでしょ。




「あ、こういうシステムなんだ、犯罪職って……」


 ニーナの盗賊がLV100になると、そのタイミングで殺人者の職業がニーナに出現した。

 人を殺めていなくても、盗賊を浸透させれば上級犯罪職として殺人者の職業を得ることが出来るのかぁ。


 ……上級犯罪職ってなんだよって言うね。


 なんにしても、殺人者まで浸透させれば暗殺者も出現すると思うし、獣人族の専用職業は暗殺者の先にある気がするんだよね。

 ということで、ニーナに俺の考えを説明して殺人者になってもらう。


「あははっ。そんなに気を遣わなくったっていいよ。ただの職業名なんだからねっ」


 ……うん。むしろニーナこそ気を遣ってくれてありがとう。

 それじゃもうちょっとだけ犯罪職の浸透を進めてもらうからね。



 殺人者LV1
 補正 敏捷性上昇 敏捷性上昇-
 スキル 対人攻撃力上昇



 ああもう、ただの職業名って分かってても嫌な名前だよぉ。


 そしてフラッタの司祭が浸透し、今度こそ予定通り射手に変更。

 その後すぐにヴァルゴの騎士も続いて、ヴァルゴが聖騎士になって今日の探索は終了かな?



 射手LV1
 補正 身体操作性上昇- 持久力上昇-
 スキル 射撃時攻撃力上昇-


 聖騎士LV1
 補正 体力上昇+ 魔力上昇 物理攻撃力上昇+ 物理防御力上昇+
    敏捷性上昇+ 身体操作性上昇+ 五感上昇+ 装備品強度上昇+
    全体幸運上昇+
 スキル 全体補正上昇+ 対人攻撃力上昇+ 対人防御力上昇+
     対不死攻撃力上昇+ 物理耐性+ 魔法耐性+
     聖属性付与魔法 回復魔法



「か、回復魔法とはいえ、とうとう私も魔法を使えるように……!」


 魔法の力に強い憧れを抱いていたヴァルゴが、ヒールライトを詠唱しては感動に身を震わせている。


 聖騎士って今のところ、全職業中最も補正とスキルの数が多い職業なんじゃないかな?

 攻めも守りも、対人戦も対魔物戦も全く隙の無い性能過ぎてビビるよ。

 普通の人であれば、聖騎士になれたらもう転職する気が無くなるだろうなぁ。


 俺は魔物使いLV21、法王と救世主がLV89になった。順当に行けば、明日の探索で法王と救世主は浸透を終えてくれるだろう。

 ニーナは盗賊を浸透させて殺人者LV17に、ティムルは魔導師LV62でドラゴンズネストを使用可能になった。

 フラッタは修道士と司祭を終えて射手LV4、ヴァルゴは騎士を浸透させて聖騎士LV1になった。

 今日の探索でリーチェの狩人も浸透したはずだ。


 エマの聖騎士はLV61からスタートして、今日1日でLV84まで上がっている。

 恐らく明日1日あれば聖騎士の浸透を終えて、旅人や商人の浸透を進めさせることが出来るはずだ。


「みんなお疲れ様。今日の探索はこれで終わりにしよう」


 きりよくフラッタとヴァルゴの転職が済んだところで、探索の終了を宣言し、みんなにちゅっちゅとキスをして戦闘モードを解いていく。

 今から日常エロモードに移行してもらって、宿で思いっきり楽しもうねっ。


「それじゃせっかくだから、現在誰も到達していないらしい次の中継地点を覗いてから帰ろうか」

「え、えええ……。そんなあっさり未踏破エリアに侵入しちゃっていいんですかっ……!?」


 はーいと軽く返事してくれる仕合わせの暴君メンバーと違って、1人であわあわと慌てているエマ。


 いいんですよー。別に行っちゃいけないってルールがあるわけじゃないしね。

 それにエマの職業浸透速度を上げる為にも、なるべく深い階層で探索したいのよ。


 5階層の出口、5つ目の中継地点に足を踏み入れる。

 他の中継地点と同じで、大きな岩がくりぬかれたような広い大部屋だった。

 階層を進むごとに、中継地点の広さも少しずつ大きくなってはいるのかな?


「特に何も無いね? これが未踏破エリアなの?」

「んー。ここまで来れる探索者が居ないのかしら? パールソバータの魔物狩りの実力的には、ここまで到達してても良さそうなのにねぇ?」

「ま、話は戻ってからにしようよっ。ぼくも転職に行かなきゃいけないしさっ」

「だね。それじゃリーチェの言う通りさっさと帰……って、なに?」


 代わり映えしない景色の5つ目の中継地点でみんなと話をしていると、殆ど無意識レベルで使用している魔物察知に反応があった。

 中継地点に居るはずの俺達に、6階層側から5体ほど魔物が向かって来ているっぽい。


 え、中継地点ってセーフティエリアじゃなかったのかな?

 今まで魔物に襲われなかったのは、ただ運が良かっただけだったとか?


「なっ!? こ、こいつらは……!?」

「んー? なんでお前らがここにいるわけぇ?」


 驚愕するエマを背に庇いながら、1度仕舞った神鉄のソードを構える。

 安全なはずの中継地点で俺の目の前に姿を現したのは、ロード種とデーモン種で構成された、5体ものアウターエフェクトの群れだった。
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