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4章 マグエルの外へ2 新たな始まり、新たな出会い
251 浄化魔法 (改)
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スペルド王国の実質トップっぽいゴブトゴさんの協力を得られそうなのはありがたいなぁ。
さて、俺がこの男に聞くべきことはなんだろう?
答えられる範囲で構わないと断ってから、ゴブトゴさんへの質問を開始する。
「俺達の目下の目標は、ラトリアの息子であるシルヴァの行方を追うことだ。それに関して、ゴブトゴさんは何か知っている事は無いかな?」
「……済まないが」
静かに首を振るゴブトゴさん。ハズレか。
それじゃ次は、ルーナ家に現れた案内人の話かな。
「ゴルディアさんとラトリアの呼び出しに使われた書類。その出所と利用した人間の調査は行なったの?」
「ラトリア様からの報告を受けてすぐに調査をしたが、何も見つからなかったのだ。だから何かの間違いか、ラトリア様が偽の書類と見抜けなかったのだと思っていたのだが……」
ゴブトゴさんを疑ったわけじゃないけど、ラトリアの報告を受けてすぐにちゃんと調査をしてくれてはいたらしい。
そしてその調査結果が問題なしだったからこそ、俺とラトリアの話を信じ切れなかったってことなのかな。
「マジックアイテム開発部にまで出入りされているとなれば、本物の書類を使って偽の命令書を作り出すなど容易い事だろうな……」
「だろうね。機密情報なんて全部筒抜けだと思わないと」
「つまり、以前の調査の結果には何の信用も無くなったということだ。悪いが犯人に関しては、全く手がかりも心当たりも無い状況だと思ってくれ」
素直に調査結果を疑う姿勢には好感が持てるな。
ま、今まで敵の存在を認識できていなかったのなら仕方ない。次の話題に移ろう。
「マジックアイテムの開発にエルフ族と魔人族は参加してる? あ、答えれないなら答えなくてもいいよ」
「大丈夫だ。マジックアイテム開発部はエルフと魔人、それとドワーフで構成されている。今のところ戦闘に特化した竜人族と獣人族、あまり種族的特徴の無い人間族を参加させる予定は無いな」
エルフと魔人とドワーフでマジックアイテムを開発してるのか。
人間族さんは本当に安定の人間族さんで、もはや1周回って安心するわぁ。
「魔人族を知っているなら、守人やバロール族という一族に心当たりはないかな? 15年くらい前にスペルドを目指して、その後消息不明の魔人族の部族なんだけど」
「ふむ……? バロール族も守人も聞いたことがないな。開発部に居る魔人族は、自分達の事をタラムの民と名乗っていたはずだ」
「タラム?」
「ダン様。タラム族は聖域の樹海に入らず、スペルド王国と共に生きる選択をした魔人族として、ディロームにも名が伝わっております」
背後のヴァルゴがすかさず補足してくれる。
ヴァルゴが知っているのなら、ゴブトゴさんの言っている事は信用できそうだ。
バロール族に関しては空振りだったけど、とりあえず国とエルフ族が繋がっていた事は確認できた。
なら次に聞くべきことは……。
「以前リーチェがシルヴァの行方を捜した時に、エルフの力で捜索を妨害された疑惑があるんだ」
「……それも初耳だな」
「だから出来ればエルフの里に行って話を聞いておきたい。マジックアイテムの開発現場にはエルフがいるんだよね? その人に直接会えなくても構わないから、エルフの里に入るための協力をお願いできない?」
「そういうことか……。しかし、う~む……」
俺の要請に、ゴブトゴさんは唸りながら腕を組んだ。
この感じだと協力を得るのは難しそうかなぁ。
「シルヴァ殿の捜索に必要なのであれば協力はするが……。エルフは少し独特な価値観を持った種族だからな。結果は約束出来ない。あまり期待しないでくれ」
「了解。出来たらでいいよ」
エルフの価値観については、ティムルが投獄されてた時も聞いた気がするね。
でも俺が会った事のある唯一のエルフであるリーチェは、エロい以外に独特な価値観を感じたことがないので、いまいちピンと来ない話なんだよなぁ。
しかしシルヴァ捜索についても、エルフの里に入ることも、バロール族のことも知らないんじゃ空振りもいいところだよ。
スレイブシンボルの効果が分かったことくらいしか収穫ないんだけど。
ちょっと目線を変えた要望でも出してみるかな。
「俺ってリーパーやってるんだけど、始まりの黒を探索する許可を貰えないかな?」
「それはダメだ。始まりの黒に入れるのは、厳しい審査を潜り抜けた信頼できる者たちだけだからな」
俺の要望は即却下されてしまった。
入るのに審査が要るとか、面倒臭そうなアウターだなぁ。
「今更ダン殿を疑いはしないが、審査には数年単位かかるし、大きな実績も複数必要になる。私の独断でお前たちに許可を出すのは、どう頑張っても不可能だ」
「流石に数年待つのは勘弁して欲しいところだね……」
駄目元のお願いではあったけど、始まりの黒の攻略は諦めるしかなさそうだ。
しかし、う~ん……。別にゴブトゴさんが悪いわけじゃないんだけど、こうも収穫が無いと無駄足感が半端ないな……。
元はと言えば全部ラトリアのせいなんだよなぁなんて思いながら彼女を見ると、慌てて視線を逸らしやがった。今夜お仕置きしてあげないと。
「質問は以上か? それではそろそろブルーヴァたちの取調べに移りたいのだが」
「そう、だね……。取調べをお願いするよ」
こっちからは聞きたいことは、今のところはもう思い浮かばないかなぁ?
ゴブトゴさんからも俺達に直接したい話は無いみたいなので、今後何かあればラトリアを通して連絡しあうことを約束して、ブルーヴァたちへの取調べに入る。
「起きろ! 起きんかぁっ!」
「うぅ……。あ……?」
兵隊さんがユッサユッサと肩を揺すってブルーヴァを叩き起こしてくれる。
目が覚めたブルーヴァは、自分の置かれた現状が把握出来ないようで、困惑した様子であたりを見回している。
「フトーク家当主、ブルーヴァ・ノイ・タルフトークよ。貴様には聞きたい事が山ほどあるぞ」
「な!? ゴブトゴ様! こ、これはいったい何事なのですか!?」
鉄格子越しのゴブトゴさんに声をかけられ、本気で焦っている様子のブルーヴァ。
いくら寝惚けた頭でも、鉄格子が目に入れば状況は把握できたようだ。
「せ、説明してくださいっ! いったいどうして私がこのような辱めを受けなければいけないのですっ!?」
全力でキュアライトブローをお見舞いしてやったからなぁ。もしかしたら記憶が飛んでたりするのかも?
ブルーヴァの問いかけに無言で立ち上がったゴブトゴさんは、鉄格子越しにスレイブシンボルを見せ付ける。
「ブルーヴァよ。このマジックアイテムの出所、洗いざらい喋ってもらうぞ」
「なっ!? そ、それはっ……! なっ、なんでゴブトゴ様がそれをっ……!?」
なんでも何もないっての。お前自身が自慢げに見せびらかすからこうなるんだよ。
ゴブトゴさんに問いかけられたブルーヴァは、違うんです違うんですと、往生際悪く何も喋ろうとしない。
こんなのに付き合って帰宅が遅くなるのは嫌だなぁ。
俺もソファーから立ち上がり、鉄格子に近づいていく。
「はいはーいお2人さん。これがなんだか分かるかなー?」
先ほどブルーヴァが自慢げにステータスプレートを見せびらかしたように、ブルーヴァの切断された両手首をプラプラと見せびらかしてやる。
「「……は?」」
言い争っていた2人は黙りこくって、顔面蒼白になってしまった。
いや、黙っちゃったら意味が無いんだよ? そして黙秘なんかに付き会う気も無いんだよ?
「ゴブトゴさん。俺も牢屋に入れてくれないかな?」
「…………なんだって?」
「そしてブルーヴァの仲間も全員叩き起こしてくれる? 俺のフラッタに手を出しておいて、黙秘や誤魔化しが通じると思われるのは不快なんだ」
「……っ」
ゴブトゴさんは返事こそしなかったものの、俺の言葉にコクコクと何度も頷いて、周りの兵士さんたちに目配せをする。
流石は宮仕えの兵士たちは優秀で、指示の言葉がなくてもブルーヴァの連れを叩き起こし、鉄格子の中に俺を招いてくれた。
皆様お疲れ様ですよー。
「さて……」
「あっ!?」
牢屋に入れてもらった俺は、ブルーヴァの前に手首を投げ捨て踏みつける。
するとブルーヴァが血相を変えて、失った両手を突き出しながら詰め寄ってくる。
「き、貴様ぁぁぁっ! 足を、足をどけないかぁぁっ!! それは私の、私の両手なんだぞぉぉっ!! それを貴様如きが「煩い」プベェッ!?」
喚くブルーヴァに、手加減したキュアライトブローをお見舞いして黙らせる。
手加減したおかげで意識を保てているようで何よりだ。
床に蹲るブルーヴァの髪を掴んで、強引に立たせて睨みつける。
「余計なことを喋ったら例外なく殴るぞ。痛い目みたくなかったら必要なことだけを簡潔に口にしろ」
「なっ!? ふざけるギャッ!?」
早速余計なことを口にしたブルーヴァの口に拳を捻じ込み黙らせる。
あがが……と呻くブルーヴァを一旦放置し、ブルーヴァのパーティメンバーにも予告しておく。
「この馬鹿と話を終えたらお前らにも同じことするから。今から全員しっかり覚悟しておけよー?」
「お、俺は関係無い! 全部ソイツがグヘェッ!?」
「しゃ、喋るなんでも喋るから殴らなグハァっ!?」
「おいおい。今はブルーヴァの番だぞ~? 誰がお前らに発言を許可した?」
喚き出した馬鹿どもにキュアライトブローをお見舞いして、気絶しない程度の痛みを与えて黙らせる。
自身の口から漏れ出る悲鳴を必死に押し殺して、コクコクと凄まじい勢いで首肯するブルーヴァの仲間達。
外野が黙ったのを確認して、改めてブルーヴァに向き直る。
「それじゃルール説明な。俺がこれから質問するから、嘘付いたらり黙秘したり、俺が嘘だと感じた事を発言したら殴らせてもらう」
要は『ボクシングしようぜ! お前はサンドバッグな!』ってことだ。
ブルーヴァはサンドバッグ役。ボクサー役と審判役はどっちも俺である。酷いルールだな?
殴られたくなければ、その対価に情報を差し出せばいいんだよー。
「今殴られて分かったと思うけど、俺の攻撃って痛いだけで怪我しないからさ。安心していつまでもいつまでも黙秘し続けてくれても構わないからね?」
「や、やめろおおおっ! 私はフトーク家当グホッ!」
「勿論余計な口を開いてもこうなるよ」
早速余計な事を口にするブルーヴァの腹に、キュアライトを纏った右拳をめり込ませる。
せっかく丁寧にルール説明をしてあげたのに、未だにルールが理解できないの? そう言えばお前、ラトリアとフラッタの話も理解できてない様子だったね?
「ちなみに怪我するかしないかは俺の気分次第でどうにでも出来るから、自慢の甘いマスクがボコボコになる前に全部喋る事をお勧めするね」
俺の魔力だって無限にあるわけじゃないからなー。
キュアライトは死なない程度に使用を抑える事にするかな。その方が拷問としての効果も高まりそうだし。
「それじゃブルーヴァ。スレイブシンボルはどうやって手に入れたのかな?
「………………」
「はい時間切れー」
「ガハッ!?」
初回なので10発ほど殴りまくって、キュアライトもかけてやらない。
審判役も俺だって言ったろ? いや言ってないか? まぁいいかどっちでも。
どっちにしても俺の気分次第でタイムアウト判定が出るんだから、ブルーヴァ君はもう少し焦ったほうがいいんじゃないかなぁ?
「はい時間切れー」「ギャッ!」
「時間切れー」「ゴハ!」「ギャ!」「ヒィ!」
何度質問しても悲鳴しか返ってこない。
「ギャッ! ガァッ! や、やめっ、やめブホォッ! たっ、助けギャッ!!」
段々質問するのも面倒臭くなってきたので、答えるまでずっと殴ってればいいかと無言でひたすら殴り続ける。
ちょっと前からブルーヴァは泣きながら何か喋ってるけど、聞き取り辛いので失敗判定だな。
「あ……あぁ……」
数分間無言で殴り続けてやると、ブルーヴァは号泣しながら失禁し、目が虚ろになって焦点が合わなくなっている。
ブルーヴァを鑑定すると喪心の状態異常にかかっているようだ。
「……おいおい。そりゃちょっと見通しが甘すぎるんじゃないの?」
鑑定に表示される状態異常。つまりそれは魔法で解除できるってことなんだよ?
浄化魔法のことをゴブトゴさんに知られないほうがいいのかなぁとか細かいことは総スルーして、ブルーヴァに言い聞かせるつもりでゆっくりと詠唱を開始する。
「永久の鹽花。清浄なる薫香。聖なる水と浄き土。洗い清めて禊を済ませ、受けし穢れを雪いで流せ。ピュリフィケーション」
「…………あ、え?」
浄化魔法に包まれたブルーヴァの目の焦点は戻り、喪心のステータス異常も解除されて、無事に思考能力も戻ってきたようだ。
ごめんなブルーヴァ君。この世界には状態異常回復魔法があるんだよ。
浄化魔法が使える俺の前で、精神疾患に逃げ込むことが出来るとは思わないことだね。
「元気になった? さ、質問を続けよっか」
「いやだああああああ!! 誰かっ!! 誰か助けてええええ!!」
萎縮? はいピュリフィケーション。
自我喪失? はいピュリフィケーション。
狂乱? はいピュリフィケーション。
恐慌? はいピュリフィケーション。
なんだかキュアライトよりもピュリフィケーションを使う頻度の方が多いなぁ。
泣き叫んでないでとっとと自白すればいいのに。ばっかだなーこいつ。
「……ラトリア。貴女ももう少しでああなるところだったんだからね? 自分のしたこと、ちゃんと反省しなきゃダメだよ?」
「あーそっかぁ……。ラトリアさんの時はニーナちゃんへの攻撃行為で、今回はフラッタちゃんへの攻撃行為に対する報復攻撃なわけだから、本当に紙一重だったのねぇ」
ニーナがラトリアを窘め、ティムルが納得のいったような様子を見せる。
いやいや、流石にラトリアの場合は本人に悪気が無かったのが分かってるからね?
悪気が無かったからこそ、ちゃんと自覚してもらわないと困るってのもあって思いきり脅す事になっちゃったけど、キュアライトブローによる無限拷問なんてする予定は無かったってば。
「母上がしたことは非常に危うかったが、今回ダンが出てくる前に陛下を黙らせたのは良かったと思うのじゃ」
「ううう、反省してますよぉ……。反省してるから、陛下とダンさんを引き合わせちゃった責任を取らないとって……」
ラトリアと国王の話がどうでも良かったことは否定しないけど、ボンクラ王のアホな言動を真っ向からひっくり返したのはかっこよかったよラトリア。
実際身から出た錆だったんだけど、それでもフォローに成功したのは間違いないよ。頑張ったね。あ、ピュリフィケーション。
「ステータスプレートに直接干渉して一方的に奴隷契約を成立出来るマジックアイテムなんて、ぼくも想像してなかったよ……」
未知のマジックアイテムの存在とその効果に、軽く身震いしているリーチェ。
スレイブシンボルは国で厳重に管理されている機密情報って扱いだったからね。流石のリーチェも知らなかったようだ。
「これからは、一般には知られていないマジックアイテムを使用されることも警戒しないといけないかな……」
「森の中と違って、単純な武力だけでは解決出来ない事が沢山あるのですね。ステータスプレートを無警戒に提示するのは危険だという事ですか……」
流石に今回の件は例外だと思いたいけどね……。
でも警戒しておくのは悪いことじゃないので、ヴァルゴには声をかけないでおこう。
結局今回の問題点は2つ。
1つはフラッタとラトリアに一方的な婚約解消に対する負い目があった事。
もう1つは、マジックアイテムの存在を知らなかった為に、ステータスプレートをブルーヴァに渡してしまったことだ。
改めて考えるとかなり特殊な状況なので、もう1度スレイブシンボルを使用される機会が訪れるかどうかは分からない。
だけど強制奴隷化のマジックアイテムは初見殺しもいいところだ。
今回問題がなかったのが最高に運が良かっただけで、今後は最大限に警戒しなければいけない要素の1つになっちゃったな。
「知らないっ……! 本当に知らないんですぅ……! 知らないっ! 何も知らないんですぅぅ……!」
「……流石に嘘ではなさそうかな」
ブルーヴァ一行をボコボコにしながら聞きだした話では、スレイブシンボルの出所はブルーヴァ本人も良く分かっていないらしかった。
フラッタとの婚約解消を申し込まれ傷心していたブルーヴァの元に、ある日仮面とローブを身に纏った人間族が会いに来たそうだ。
そこでスレイブシンボルを渡され、奪われたのなら奪い返せばいいと焚きつけられてしまったと。
「仮面とローブの人間族、ね」
来訪者の身元もハッキリしない為、始めは胡散臭いとしか思わなかったブルーヴァ。
だがスレイブシンボルの効果を何度も検証して、マジックアイテムの効果が本当である事が分かると、どうしても衝動が抑えられなくなり今回の犯行に及んだという。
「性別も年齢も、何も分からないんですぅ……! 名前も身元も、本当に何もっ……!」
「はぁ~? 犯人の素性も何も分からないって、ほんっ……とうに使えないなぁお前ら」
もうコイツらから有益な情報を引き出すことは出来なさそうだ。面倒になってきたし、尋問はそろそろ終わりでいいか。
え、これって拷問って言うんですか? 日本語って難しいですね。
「ゴブトゴさん。コイツらの処遇はどうなるのか教えてくれるかな?」
「あ、ああ。王城の内部で自分の意思による狼藉を働いたのだ。最後まで剣を抜かなかったラトリア様の時と違って、実際に犯行に及んだ以上は看過するわけにはいかん」
ラトリアが許された最後の一線って、剣を抜いたかどうかだったのか。
あの時のラトリアって竜化してたから、抜剣するよりもよほど危険な状況だったと思うんだけどね。勿論言いませんよ?
「当主自らの犯行という事でフトーク家は断絶。本人達は取り調べの後処刑する事になろうな」
「しょ……処刑……」
「おっと、駄目駄目」
ゴブトゴさんの死刑宣告を受けて喪心状態に陥るバカどもに、ピュリフィケーションをかけてあげる。俺って最高に優しいなぁ。
お前らは俺からフラッタを奪おうとしたんだよ? それを心を壊して逃げようなんて、俺が許してあげる訳ないじゃないか。
最後まで自分の罪に怯えながら、ガタガタ震えて惨めに死んでいけばいいよ。
さて、俺がこの男に聞くべきことはなんだろう?
答えられる範囲で構わないと断ってから、ゴブトゴさんへの質問を開始する。
「俺達の目下の目標は、ラトリアの息子であるシルヴァの行方を追うことだ。それに関して、ゴブトゴさんは何か知っている事は無いかな?」
「……済まないが」
静かに首を振るゴブトゴさん。ハズレか。
それじゃ次は、ルーナ家に現れた案内人の話かな。
「ゴルディアさんとラトリアの呼び出しに使われた書類。その出所と利用した人間の調査は行なったの?」
「ラトリア様からの報告を受けてすぐに調査をしたが、何も見つからなかったのだ。だから何かの間違いか、ラトリア様が偽の書類と見抜けなかったのだと思っていたのだが……」
ゴブトゴさんを疑ったわけじゃないけど、ラトリアの報告を受けてすぐにちゃんと調査をしてくれてはいたらしい。
そしてその調査結果が問題なしだったからこそ、俺とラトリアの話を信じ切れなかったってことなのかな。
「マジックアイテム開発部にまで出入りされているとなれば、本物の書類を使って偽の命令書を作り出すなど容易い事だろうな……」
「だろうね。機密情報なんて全部筒抜けだと思わないと」
「つまり、以前の調査の結果には何の信用も無くなったということだ。悪いが犯人に関しては、全く手がかりも心当たりも無い状況だと思ってくれ」
素直に調査結果を疑う姿勢には好感が持てるな。
ま、今まで敵の存在を認識できていなかったのなら仕方ない。次の話題に移ろう。
「マジックアイテムの開発にエルフ族と魔人族は参加してる? あ、答えれないなら答えなくてもいいよ」
「大丈夫だ。マジックアイテム開発部はエルフと魔人、それとドワーフで構成されている。今のところ戦闘に特化した竜人族と獣人族、あまり種族的特徴の無い人間族を参加させる予定は無いな」
エルフと魔人とドワーフでマジックアイテムを開発してるのか。
人間族さんは本当に安定の人間族さんで、もはや1周回って安心するわぁ。
「魔人族を知っているなら、守人やバロール族という一族に心当たりはないかな? 15年くらい前にスペルドを目指して、その後消息不明の魔人族の部族なんだけど」
「ふむ……? バロール族も守人も聞いたことがないな。開発部に居る魔人族は、自分達の事をタラムの民と名乗っていたはずだ」
「タラム?」
「ダン様。タラム族は聖域の樹海に入らず、スペルド王国と共に生きる選択をした魔人族として、ディロームにも名が伝わっております」
背後のヴァルゴがすかさず補足してくれる。
ヴァルゴが知っているのなら、ゴブトゴさんの言っている事は信用できそうだ。
バロール族に関しては空振りだったけど、とりあえず国とエルフ族が繋がっていた事は確認できた。
なら次に聞くべきことは……。
「以前リーチェがシルヴァの行方を捜した時に、エルフの力で捜索を妨害された疑惑があるんだ」
「……それも初耳だな」
「だから出来ればエルフの里に行って話を聞いておきたい。マジックアイテムの開発現場にはエルフがいるんだよね? その人に直接会えなくても構わないから、エルフの里に入るための協力をお願いできない?」
「そういうことか……。しかし、う~む……」
俺の要請に、ゴブトゴさんは唸りながら腕を組んだ。
この感じだと協力を得るのは難しそうかなぁ。
「シルヴァ殿の捜索に必要なのであれば協力はするが……。エルフは少し独特な価値観を持った種族だからな。結果は約束出来ない。あまり期待しないでくれ」
「了解。出来たらでいいよ」
エルフの価値観については、ティムルが投獄されてた時も聞いた気がするね。
でも俺が会った事のある唯一のエルフであるリーチェは、エロい以外に独特な価値観を感じたことがないので、いまいちピンと来ない話なんだよなぁ。
しかしシルヴァ捜索についても、エルフの里に入ることも、バロール族のことも知らないんじゃ空振りもいいところだよ。
スレイブシンボルの効果が分かったことくらいしか収穫ないんだけど。
ちょっと目線を変えた要望でも出してみるかな。
「俺ってリーパーやってるんだけど、始まりの黒を探索する許可を貰えないかな?」
「それはダメだ。始まりの黒に入れるのは、厳しい審査を潜り抜けた信頼できる者たちだけだからな」
俺の要望は即却下されてしまった。
入るのに審査が要るとか、面倒臭そうなアウターだなぁ。
「今更ダン殿を疑いはしないが、審査には数年単位かかるし、大きな実績も複数必要になる。私の独断でお前たちに許可を出すのは、どう頑張っても不可能だ」
「流石に数年待つのは勘弁して欲しいところだね……」
駄目元のお願いではあったけど、始まりの黒の攻略は諦めるしかなさそうだ。
しかし、う~ん……。別にゴブトゴさんが悪いわけじゃないんだけど、こうも収穫が無いと無駄足感が半端ないな……。
元はと言えば全部ラトリアのせいなんだよなぁなんて思いながら彼女を見ると、慌てて視線を逸らしやがった。今夜お仕置きしてあげないと。
「質問は以上か? それではそろそろブルーヴァたちの取調べに移りたいのだが」
「そう、だね……。取調べをお願いするよ」
こっちからは聞きたいことは、今のところはもう思い浮かばないかなぁ?
ゴブトゴさんからも俺達に直接したい話は無いみたいなので、今後何かあればラトリアを通して連絡しあうことを約束して、ブルーヴァたちへの取調べに入る。
「起きろ! 起きんかぁっ!」
「うぅ……。あ……?」
兵隊さんがユッサユッサと肩を揺すってブルーヴァを叩き起こしてくれる。
目が覚めたブルーヴァは、自分の置かれた現状が把握出来ないようで、困惑した様子であたりを見回している。
「フトーク家当主、ブルーヴァ・ノイ・タルフトークよ。貴様には聞きたい事が山ほどあるぞ」
「な!? ゴブトゴ様! こ、これはいったい何事なのですか!?」
鉄格子越しのゴブトゴさんに声をかけられ、本気で焦っている様子のブルーヴァ。
いくら寝惚けた頭でも、鉄格子が目に入れば状況は把握できたようだ。
「せ、説明してくださいっ! いったいどうして私がこのような辱めを受けなければいけないのですっ!?」
全力でキュアライトブローをお見舞いしてやったからなぁ。もしかしたら記憶が飛んでたりするのかも?
ブルーヴァの問いかけに無言で立ち上がったゴブトゴさんは、鉄格子越しにスレイブシンボルを見せ付ける。
「ブルーヴァよ。このマジックアイテムの出所、洗いざらい喋ってもらうぞ」
「なっ!? そ、それはっ……! なっ、なんでゴブトゴ様がそれをっ……!?」
なんでも何もないっての。お前自身が自慢げに見せびらかすからこうなるんだよ。
ゴブトゴさんに問いかけられたブルーヴァは、違うんです違うんですと、往生際悪く何も喋ろうとしない。
こんなのに付き合って帰宅が遅くなるのは嫌だなぁ。
俺もソファーから立ち上がり、鉄格子に近づいていく。
「はいはーいお2人さん。これがなんだか分かるかなー?」
先ほどブルーヴァが自慢げにステータスプレートを見せびらかしたように、ブルーヴァの切断された両手首をプラプラと見せびらかしてやる。
「「……は?」」
言い争っていた2人は黙りこくって、顔面蒼白になってしまった。
いや、黙っちゃったら意味が無いんだよ? そして黙秘なんかに付き会う気も無いんだよ?
「ゴブトゴさん。俺も牢屋に入れてくれないかな?」
「…………なんだって?」
「そしてブルーヴァの仲間も全員叩き起こしてくれる? 俺のフラッタに手を出しておいて、黙秘や誤魔化しが通じると思われるのは不快なんだ」
「……っ」
ゴブトゴさんは返事こそしなかったものの、俺の言葉にコクコクと何度も頷いて、周りの兵士さんたちに目配せをする。
流石は宮仕えの兵士たちは優秀で、指示の言葉がなくてもブルーヴァの連れを叩き起こし、鉄格子の中に俺を招いてくれた。
皆様お疲れ様ですよー。
「さて……」
「あっ!?」
牢屋に入れてもらった俺は、ブルーヴァの前に手首を投げ捨て踏みつける。
するとブルーヴァが血相を変えて、失った両手を突き出しながら詰め寄ってくる。
「き、貴様ぁぁぁっ! 足を、足をどけないかぁぁっ!! それは私の、私の両手なんだぞぉぉっ!! それを貴様如きが「煩い」プベェッ!?」
喚くブルーヴァに、手加減したキュアライトブローをお見舞いして黙らせる。
手加減したおかげで意識を保てているようで何よりだ。
床に蹲るブルーヴァの髪を掴んで、強引に立たせて睨みつける。
「余計なことを喋ったら例外なく殴るぞ。痛い目みたくなかったら必要なことだけを簡潔に口にしろ」
「なっ!? ふざけるギャッ!?」
早速余計なことを口にしたブルーヴァの口に拳を捻じ込み黙らせる。
あがが……と呻くブルーヴァを一旦放置し、ブルーヴァのパーティメンバーにも予告しておく。
「この馬鹿と話を終えたらお前らにも同じことするから。今から全員しっかり覚悟しておけよー?」
「お、俺は関係無い! 全部ソイツがグヘェッ!?」
「しゃ、喋るなんでも喋るから殴らなグハァっ!?」
「おいおい。今はブルーヴァの番だぞ~? 誰がお前らに発言を許可した?」
喚き出した馬鹿どもにキュアライトブローをお見舞いして、気絶しない程度の痛みを与えて黙らせる。
自身の口から漏れ出る悲鳴を必死に押し殺して、コクコクと凄まじい勢いで首肯するブルーヴァの仲間達。
外野が黙ったのを確認して、改めてブルーヴァに向き直る。
「それじゃルール説明な。俺がこれから質問するから、嘘付いたらり黙秘したり、俺が嘘だと感じた事を発言したら殴らせてもらう」
要は『ボクシングしようぜ! お前はサンドバッグな!』ってことだ。
ブルーヴァはサンドバッグ役。ボクサー役と審判役はどっちも俺である。酷いルールだな?
殴られたくなければ、その対価に情報を差し出せばいいんだよー。
「今殴られて分かったと思うけど、俺の攻撃って痛いだけで怪我しないからさ。安心していつまでもいつまでも黙秘し続けてくれても構わないからね?」
「や、やめろおおおっ! 私はフトーク家当グホッ!」
「勿論余計な口を開いてもこうなるよ」
早速余計な事を口にするブルーヴァの腹に、キュアライトを纏った右拳をめり込ませる。
せっかく丁寧にルール説明をしてあげたのに、未だにルールが理解できないの? そう言えばお前、ラトリアとフラッタの話も理解できてない様子だったね?
「ちなみに怪我するかしないかは俺の気分次第でどうにでも出来るから、自慢の甘いマスクがボコボコになる前に全部喋る事をお勧めするね」
俺の魔力だって無限にあるわけじゃないからなー。
キュアライトは死なない程度に使用を抑える事にするかな。その方が拷問としての効果も高まりそうだし。
「それじゃブルーヴァ。スレイブシンボルはどうやって手に入れたのかな?
「………………」
「はい時間切れー」
「ガハッ!?」
初回なので10発ほど殴りまくって、キュアライトもかけてやらない。
審判役も俺だって言ったろ? いや言ってないか? まぁいいかどっちでも。
どっちにしても俺の気分次第でタイムアウト判定が出るんだから、ブルーヴァ君はもう少し焦ったほうがいいんじゃないかなぁ?
「はい時間切れー」「ギャッ!」
「時間切れー」「ゴハ!」「ギャ!」「ヒィ!」
何度質問しても悲鳴しか返ってこない。
「ギャッ! ガァッ! や、やめっ、やめブホォッ! たっ、助けギャッ!!」
段々質問するのも面倒臭くなってきたので、答えるまでずっと殴ってればいいかと無言でひたすら殴り続ける。
ちょっと前からブルーヴァは泣きながら何か喋ってるけど、聞き取り辛いので失敗判定だな。
「あ……あぁ……」
数分間無言で殴り続けてやると、ブルーヴァは号泣しながら失禁し、目が虚ろになって焦点が合わなくなっている。
ブルーヴァを鑑定すると喪心の状態異常にかかっているようだ。
「……おいおい。そりゃちょっと見通しが甘すぎるんじゃないの?」
鑑定に表示される状態異常。つまりそれは魔法で解除できるってことなんだよ?
浄化魔法のことをゴブトゴさんに知られないほうがいいのかなぁとか細かいことは総スルーして、ブルーヴァに言い聞かせるつもりでゆっくりと詠唱を開始する。
「永久の鹽花。清浄なる薫香。聖なる水と浄き土。洗い清めて禊を済ませ、受けし穢れを雪いで流せ。ピュリフィケーション」
「…………あ、え?」
浄化魔法に包まれたブルーヴァの目の焦点は戻り、喪心のステータス異常も解除されて、無事に思考能力も戻ってきたようだ。
ごめんなブルーヴァ君。この世界には状態異常回復魔法があるんだよ。
浄化魔法が使える俺の前で、精神疾患に逃げ込むことが出来るとは思わないことだね。
「元気になった? さ、質問を続けよっか」
「いやだああああああ!! 誰かっ!! 誰か助けてええええ!!」
萎縮? はいピュリフィケーション。
自我喪失? はいピュリフィケーション。
狂乱? はいピュリフィケーション。
恐慌? はいピュリフィケーション。
なんだかキュアライトよりもピュリフィケーションを使う頻度の方が多いなぁ。
泣き叫んでないでとっとと自白すればいいのに。ばっかだなーこいつ。
「……ラトリア。貴女ももう少しでああなるところだったんだからね? 自分のしたこと、ちゃんと反省しなきゃダメだよ?」
「あーそっかぁ……。ラトリアさんの時はニーナちゃんへの攻撃行為で、今回はフラッタちゃんへの攻撃行為に対する報復攻撃なわけだから、本当に紙一重だったのねぇ」
ニーナがラトリアを窘め、ティムルが納得のいったような様子を見せる。
いやいや、流石にラトリアの場合は本人に悪気が無かったのが分かってるからね?
悪気が無かったからこそ、ちゃんと自覚してもらわないと困るってのもあって思いきり脅す事になっちゃったけど、キュアライトブローによる無限拷問なんてする予定は無かったってば。
「母上がしたことは非常に危うかったが、今回ダンが出てくる前に陛下を黙らせたのは良かったと思うのじゃ」
「ううう、反省してますよぉ……。反省してるから、陛下とダンさんを引き合わせちゃった責任を取らないとって……」
ラトリアと国王の話がどうでも良かったことは否定しないけど、ボンクラ王のアホな言動を真っ向からひっくり返したのはかっこよかったよラトリア。
実際身から出た錆だったんだけど、それでもフォローに成功したのは間違いないよ。頑張ったね。あ、ピュリフィケーション。
「ステータスプレートに直接干渉して一方的に奴隷契約を成立出来るマジックアイテムなんて、ぼくも想像してなかったよ……」
未知のマジックアイテムの存在とその効果に、軽く身震いしているリーチェ。
スレイブシンボルは国で厳重に管理されている機密情報って扱いだったからね。流石のリーチェも知らなかったようだ。
「これからは、一般には知られていないマジックアイテムを使用されることも警戒しないといけないかな……」
「森の中と違って、単純な武力だけでは解決出来ない事が沢山あるのですね。ステータスプレートを無警戒に提示するのは危険だという事ですか……」
流石に今回の件は例外だと思いたいけどね……。
でも警戒しておくのは悪いことじゃないので、ヴァルゴには声をかけないでおこう。
結局今回の問題点は2つ。
1つはフラッタとラトリアに一方的な婚約解消に対する負い目があった事。
もう1つは、マジックアイテムの存在を知らなかった為に、ステータスプレートをブルーヴァに渡してしまったことだ。
改めて考えるとかなり特殊な状況なので、もう1度スレイブシンボルを使用される機会が訪れるかどうかは分からない。
だけど強制奴隷化のマジックアイテムは初見殺しもいいところだ。
今回問題がなかったのが最高に運が良かっただけで、今後は最大限に警戒しなければいけない要素の1つになっちゃったな。
「知らないっ……! 本当に知らないんですぅ……! 知らないっ! 何も知らないんですぅぅ……!」
「……流石に嘘ではなさそうかな」
ブルーヴァ一行をボコボコにしながら聞きだした話では、スレイブシンボルの出所はブルーヴァ本人も良く分かっていないらしかった。
フラッタとの婚約解消を申し込まれ傷心していたブルーヴァの元に、ある日仮面とローブを身に纏った人間族が会いに来たそうだ。
そこでスレイブシンボルを渡され、奪われたのなら奪い返せばいいと焚きつけられてしまったと。
「仮面とローブの人間族、ね」
来訪者の身元もハッキリしない為、始めは胡散臭いとしか思わなかったブルーヴァ。
だがスレイブシンボルの効果を何度も検証して、マジックアイテムの効果が本当である事が分かると、どうしても衝動が抑えられなくなり今回の犯行に及んだという。
「性別も年齢も、何も分からないんですぅ……! 名前も身元も、本当に何もっ……!」
「はぁ~? 犯人の素性も何も分からないって、ほんっ……とうに使えないなぁお前ら」
もうコイツらから有益な情報を引き出すことは出来なさそうだ。面倒になってきたし、尋問はそろそろ終わりでいいか。
え、これって拷問って言うんですか? 日本語って難しいですね。
「ゴブトゴさん。コイツらの処遇はどうなるのか教えてくれるかな?」
「あ、ああ。王城の内部で自分の意思による狼藉を働いたのだ。最後まで剣を抜かなかったラトリア様の時と違って、実際に犯行に及んだ以上は看過するわけにはいかん」
ラトリアが許された最後の一線って、剣を抜いたかどうかだったのか。
あの時のラトリアって竜化してたから、抜剣するよりもよほど危険な状況だったと思うんだけどね。勿論言いませんよ?
「当主自らの犯行という事でフトーク家は断絶。本人達は取り調べの後処刑する事になろうな」
「しょ……処刑……」
「おっと、駄目駄目」
ゴブトゴさんの死刑宣告を受けて喪心状態に陥るバカどもに、ピュリフィケーションをかけてあげる。俺って最高に優しいなぁ。
お前らは俺からフラッタを奪おうとしたんだよ? それを心を壊して逃げようなんて、俺が許してあげる訳ないじゃないか。
最後まで自分の罪に怯えながら、ガタガタ震えて惨めに死んでいけばいいよ。
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