異世界イチャラブ冒険譚

りっち

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4章 マグエルの外へ1 竜王のカタコンベ

229 異変 (改)

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「なんか微妙に久々感があるなコレ……」


 目が覚めると、ベッドの上で7人がもみくちゃになっていた。


 フラッタとラトリアも言いたいこと言えて、仲直りできたかなぁ?

 今日からラトリアも朝のお勤めに復帰だ。朝からいっぱいにしてあげるね。


「ううう……。ディアには、相手の思惑の裏を読み切って先回りするのが貴族だってよく言われてたんですよね……。でも私、人の心の機微を察するのが苦手で……」


 俺の腕の中でぐったりとしながらも、今まで言えなかったらしい本音を語るラトリア。

 安心したから甘えてくれているのかな?


「苦手意識があるなら無理にこなそうとしない方がいいよ。出来ることを無理なくやっていけばいいだからね?」

「ありがとうございます……。でも、うぅ……。フラッタにも言われましたけど、空回りしてディアには何度も面倒と迷惑をかけちゃったなって……」

「今はシルヴァが見つかるまで、ルーナ家を守ることだけを考えればいい。今の不安定な情勢で下手に動く方が、かえって危険だからね?」


 落ち込むラトリアを抱きしめて、あやすように頭と背中を優しく撫でる。

 ここ数日間は精神ストレスをかけすぎちゃっただろうから、今朝はゆっくり甘やかしてあげるとしよう。


「俺達もフラッタも、お前に守られなきゃ生きていけないほどか弱くないよ。心配し過ぎなくて大丈夫だから」

「す、済みません……。確かに私が守らないとって、そう思ってたかもしれません……」

「ゴルディアさんがいなくなって、家長として母として気を張っているのかもしれないけどさ。ラトリア自身だって傷ついてるんだからね? 無理しちゃ駄目だよ」


 よしよしなでなでしながら、彼女の顔全体に軽いキスを繰り返していく。


「ラトリアこそゴルディアさんを亡くしたばかりで疲弊してるってこと、忘れないで?」

「私も疲弊してる、んですね……」


 今回は俺の意思で、俺が間違いなくラトリアを傷つけたんだ。

 なら彼女の心の傷には責任を負わないといけない。


「俺の方が強いんだって言ってくれたのはラトリアでしょ? フラッタもラトリアもちゃんと俺が守るよ。だから1人で暴走しないで、俺やフラッタをちゃんと頼って欲しいな」

「はぁ、んっ……。頼ってるつもり、だったんですけどねぇ……」


 俺の言葉を体内に染み込ませるつもりで、ラトリアの中を満たしていく。


 ラトリアがニーナに関してやった事についてはかなりマイナスだけど、一応本質ではニーナの解呪の為にやったことだし、ニーナ本人はほぼ気にしてないので水に流そう。

 流石に同じことやったら許せないけど、そうなる前に解呪してやれば憂いもない。聖者の浸透を進めよう。


「あれ? そう言えばゴルディアさんを弔ったりとかってしなくていいのかな?」


 今回ラトリアが暴走した原因の1つは、間違いなくゴルディアさんの死だ。

 愛するご主人を亡くしたばかりのラトリアの心痛を癒す為にも、ゴルディアさんをちゃんと弔うべきなんじゃないのか?


「俺は記憶喪失だから、その辺の事情に疎くてさ。教えてくれる?」

「私も出来れば弔ってあげたいのですが、遺体も装備も残ってなくて……」


 残念そうに首を振るラトリア。

 生贄召喚っぽいことをされて、体も装備も全て消失してしまったんだっけ……。


「それにシルヴァがいない状況でディアの死を喧伝してしまうと、それがまた他家に糾弾される材料になるかなって、少し怖いんです」

「げっ。竜爵家は完全に被害者なのに、それでも糾弾される可能性があるのか……」

「それが貴族という生き物ですから。子供の生まれにくい竜人族にとって、家が潰れるという話は常について回る問題ですし……」

「結局シルヴァを見つけないと何も始まらないってことだね。了解したよ」


 ポイントフラッタでフラッタに出会ってから、ずっと追い続けてきたシルヴァの行方。

 フラッタとラトリアの問題を解決するには、シルヴァの行方を突き止めるしか方法は無さそうだ。


「それじゃシルヴァを見つけて、ゴルディアさんを弔って、シルヴァを当主に据えれば全て解決だな」

「ふふ……。随分簡単に言います、ね?」

「どんなに難しくても、ラトリアとフラッタのためだからね。解決してみせるよ。だからもう少しだけ頑張って、ルーナ家を守って欲しい」


 ラトリアにシルヴァの救出を誓いながらキスをして、本日の朝の語らいは終了した。


 ラトリアが負ってしまった責任を軽くする為にも、さっさと聖者を浸透させてしまわないといけないな。

 昨日とは違う覚悟を胸に、領主邸を後にした。




「ダン。私も明日から魔法使いを浸透させてもらえないかしら?」

「へ? そりゃ構わないけど……。いいのティムル?」


 竜王のカタコンベの最深部でみんなと合流して、本日の魔物狩りを始めようと思ったら、ティムルから声をかけられた。

 種族専用職業である名匠になれてあんなに喜んでいたティムルが、どうやら魔法使いの浸透を始めたいらしいのだ。


「ドワーフの専用職業である名匠を伸ばしてもらってるのもありがたいのに、我が侭言って本当に申し訳ないんだけど……」

「なんにも問題無いよー。だからティムル。そんなに申し訳なさそうに言わなくても大丈夫だから」


 本当に申し訳なさそうな表情を浮かべるティムルを、ぎゅっと抱きしめる。

 俺はもっとみんなを甘やかしたいんだから、もっともっと我が侭とか言ってくれて構わないってば。


「でもさ。名匠になったのも凄く嬉しそうだったのに、なんでこのタイミングで魔法使いになろうって思ったの?」

「最近アウターエフェクトを乱獲してるじゃない? それでちょっと自分の実力不足が気になってね。アウターエフェクトと戦うには、攻撃魔法が絶対に必要だし……」


 う~ん。瞬殺してるアウターエフェクト戦で実力不足を感じてしまったかぁ。

 個人的にはティムルが強くなる必要性が無いって思ってるけど、ティムルからすれば役に立ててないって思っちゃうわけだ……。


「ニーナちゃんもフラッタちゃんも、勿論リーチェだって1人でアウターエフェクトと戦える中で、私1人が足手纏いになるのは耐えられないの……!」

「足手纏いなんてことは全然無いけど、転職は了解したよ。明日からでいいんだね?」

「ええ。やっぱり名匠でいたい気持ちもあるから……。今日1日は名匠のままでいたいのよ」

「いつでも転職できるんだから気軽にね?」


 強張るティムルの頬にキスをする。

 俺みたいに好事家になれていれば、ティムルをここまで悩ませずに済んだんだけどなぁ。


「帰ったら1度魔力枯渇を経験してもらって、明日から浸透開始だね。魔法使いを伸ばして悪い事は無いから、これから頑張ろうねー」

「ええっ! 戦闘面でも役立てるよう、お姉さん頑張っちゃうわよーっ!」


 まったく、ティムルお姉さんは頑張りすぎなんだよー。よしよしなでなで。


 でも、フラッタもうちに加入した時に俺達とお揃いの職業を喜んでたし、リーチェも荷運び人が無くて落ち込んでたんだから、ティムルだけ魔法が使えない現状を悲しむのも分かるよな。

 我が家の嫁はみんな仲がいいので、だからこそ自分だけ出来ないことがある現状に焦ってしまうのかもしれない。


 今日で名匠もLV150を超えるから、ひと区切りとしては悪くないタイミングかもね。


 でもアウターエフェクト戦では装備品ドロップのために名匠にしたい……。

 けどそれやると浸透が遅れちゃうか。諦めよう。ティムルの意志が最優先だっ。



 明日から魔女っ娘ティムルになることが決定したところで、魔物狩りを開始する。

 そして聖者がLV80になった時点で、浄化魔法のピュリフィケーションが使用可能になった。


 お、落ち着け俺……! まだだ。まだ試すには早い……!

 逸る気持ちを抑えながら、魂に浸透した職業スキルを意識して、浄化魔法への理解を深める。


 ……効果は状態異常の回復で間違いないようだ。残る問題は、これが呪いに効果があるかどうか、だな。

 浄化魔法を試すと、成功しても失敗しても探索を続けるのは難しい気がするので、アウターエフェクトをぶっ倒して職業浸透が終わってから試すとしよう。




「魔物さんの追加入りましたーっ! じゃんじゃん持って行きますねーっ!」


 逸る気持ちを抑えつつ、ニーナと2人で魔物を集める。

 ティムル達が魔物を殲滅してくれる度に自身を鑑定し、聖者の浸透具合を確認してしまう。


 しっかし、最近は俺の職業浸透もあまり早く感じないんだよなー。今の俺が上げている職業は、それだけ浸透しにくい職業なんだろうか。

 ティムルの名匠なんてアウターエフェクトをぶっ倒してもLV20も上がらないんだから、これでも早いことは早いんだろうけど。


 ……複業家の取得経験値上昇があってもこれなんだもんな。他の人たちが浸透に年単位の時間をかけるのも納得だねぇ。


「でっ、出た! 出たわよダン! 全状態異常耐性のスキルジュエル……!」


 真っ白なスキルジュエルを見詰めて、ワナワナと震えるティムル。

 魔物狩りを続けて、全状態異常耐性のスキルジュエルが小効果と中効果で1つずつドロップしてくれたようだ。


 ……ピュリフィケーションを習得した直後に出るのがいやらしいわぁ。

 でも逆に、ピュリフィケーションが空振りでも呪いの緩和は確定した。これはこれで明るいニュースだろう。


「これを試すのは探索が終わってからにしようね。これを試しちゃったら、探索どころじゃなくなっちゃうでしょ?」

「うんっ! 私もそう思うっ! でも楽しみだなー! 早く試したいっ!」


 は~、ワクワク顔のニーナ、めちゃくちゃ可愛いなぁ。

 ずっと抱きしめたいけど、それで探索終了が遅れたら可哀想だもんね。ここは軽くよしよしなでなでするだけに留めておこうじゃないか。



「おっ。今日も間もなく終了だね」


 ワクワクニーナと一緒に魔物を集めまくっていたら、やはり昨日よりも早い時間にアウターエフェクトの兆候が起こる。

 魔物察知の反応が無くなり、目の前には漆黒の魔法陣が……。


「……あれ?」


 おかしいな? いつまで経っても魔法陣が出てこないぞ?

 いつもならもうドロップアイテムを回収し終わってるくらいに時間が経っても、魔法陣が出現しない。ひょっとして、打ち止めとかあるの?


 そんなことを思った瞬間、空間全体が小さく振動し始めた。


「……っ!? なんだ……!?」

「い、今までと違う反応なのじゃ……!」


 今までと違う演出に嫌な予感がして、警戒心を1段階強める事にする。


「祓い清めて穢れを落せ。破邪の燐光纏いて踊れ。其は聖霊に律動を捧ぐ者。アニマライザー。拒絶の盾。隔絶の庭。断絶の崖。降り注ぐ厄災、その全てを否定せよ。プロテクション」


 聖属性付与魔法のアニマライザーと、防御補正上昇魔法のプロテクションを使用し、更には攻撃力補正が上昇する鼓舞までばら撒く。


「ダン……。いったい何が起きてるの……?」

「ニーナストップ。まずは全員俺の後ろに集合。なんか今までとは違うことが起きそうだ」


 戸惑うニーナを俺の背後に誘導し、対物理、対魔法障壁をいつでも展開できるように構えておく。


「地面もだけど、竜王のカタコンベその物が揺れてるみたいなの。なにが起こるにしても、いい予感はしないかな……」

「アウターエフェクトって、人類への対抗措置だとされてるんだっけ? そのアウターエフェクトを乱獲してたら、そりゃもっと強い対抗手段をってなるわよねぇ……」


 ニーナとティムルの会話が耳に届く。

 つまりこれがアウターエフェクト乱獲によって起きたことならば、これから出てくる存在はまず間違いなくデーモン種やロード種よりも強力な存在って事になるねぇ。


 ……最近ちょっと余裕過ぎたもんねぇ。調子に乗りすぎたかぁ。


「そう考えるとティムルが転職する前で良かったのう」

「……そうね。フラッタちゃんの言う通りだわ」

「今の妾達は最高のパフォーマンスを発揮できるはずなのじゃ。じゃからなにが現れようとも、返り討ちにしてくれるのじゃーっ!」


 頼りにしてるよ無双将軍フラッタ。こいつをぶっ倒して、みんなで魔法使いになろうな。


 とここで、フラッタの後ろに立っていたリーチェの姿が目に入る。


「リーチェ? どうした?」

「…………っ」


 俺の問いかけに、リーチェは反応を返してはくれなかった。

 リーチェの表情には隠しれないほどの恐怖が滲んでおり、褐色の肌が真っ青になっている。


 前方から視線を外さないよう気をつけながら、リーチェに可能な限りの穏やかな声色で問いかける。


「リーチェ。心当たりがあるの? なら教えて欲しいんだけど……」

「…………ごめん。ぼくも、詳しくは知らないん、だ……」


 俺の言葉に何とか反応したリーチェだけど、その反応は明らかに鈍い。


「でも……。多分これ……、イントルーダー……の、出現予兆だと、思う……」

「イントルーダー?」


 聞き慣れない単語に思わず聞き返す。

 リーチェ以外のみんなも知らない言葉だったようで、みんなもリーチェに注目する。


「アウターエフェクトの中でも、特に強い力と悪意を持ってこの世界を積極的に滅ぼそうとする存在を、イントルーダーって呼ぶらしいんだ」

「つまり、アウターエフェクトの上位種ってわけか……」

「その力は凄まじくて……。当時暴れ回っていたガルクーザもイントルーダーと呼ばれていた……って言えば、分かりやすい、かな……」

「……ふぅん。ガルクーザと同格、ね」


 つまりこれから出てくる相手は、古の邪神レベルの化け物ってことか。

 ちょうどいい。イントルーダーを倒せれば、リーチェの問題を解決する戦闘力は伴ったってことになる。なにが出てこようとも、絶対に滅ぼしてやるよ。


 自惚れてるわけじゃないけど、建国の英雄達よりも今の俺達のほうが職業浸透が進んでいる自信がある。リーチェ本人ですら、500年前よりも浸透が進んでるし腕も上げているはずだ。

 なら古の邪神如きに、負けてやるわけにはいかないねぇ!



「なっ、なんと巨大な……!」


 暫く竜王のカタコンベ全体が鳴動したかと思うと、目の前の地面と天井に巨大な漆黒の魔法陣が出現する。

 驚愕するフラッタの声に合わせてもう1度支援魔法とスキルをかけ直し、敵の出現を待つ。


「こ、これは……。なかなか雰囲気あるじゃない……」


 ゴクリと息を飲むティムルの目の前で、上下の魔法陣から放たれた黒い稲妻が衝突する。


 稲妻がぶつかりあった場所から黒い球体が発生するが、未だに鑑定には反応がない。

 次第にその黒い球体は魔法陣の円周よりも大きくなって、今なお肥大し続けている。

 球体が大きくなるほどに、この場の魔力が重くなっていくようなプレッシャーを感じる。既にデーモン種やロード種以上の殺意をビンビンに感じてしまう。


「とまっ……た?」


 ニーナの小さな呟きが、静まり返る最深部に妙に響く。


 やがて魔法陣からの稲妻が止まり、球体の肥大化も終わる。

 すると黒い球体は1滴の水滴が落ちるかのように地面に落下し、アウターの地面に溶けて消えていった。


 ……演出長いなぁ。どんな魔物が出てくるんだっての。



「ひっ……!」


 リーチェの短い悲鳴と共に、突如地面から白くて大きな物体が突き出てくる。

 よく見ずともそれが白い骨であることが分かり、一瞬ロード種と同じような外見なのかなと思ってしまったけれど、現れた手は人の物ではなく、昔図鑑で見た恐竜の骨を思わせる外見だった。


「なんだぁ……? いったいどんだけ出てくるんだよ……?」


 と思ったら次から次へと白い骨がわらわらと突き出てきて、ティラノサウルスの骨格標本みたいなのが無数に地面から湧き出てきた。

 なのに未だに鑑定に反応が無いし攻撃対象指定も出来ないので、先制攻撃することも出来やしない。


 ……周囲のプレッシャーも放たれる殺気もどんどん濃くなってきてるから、これから出てくる奴がイントルーダーの本命ってことだけは直感で理解できるけど。


「で……っか……!」

「こ、此奴が本体……か!?」


 驚愕の声をあげるニーナと、警戒心を顕わにするフラッタ。


 数十体、下手すると100体近いティラノサウルスの白骨が出現すると、その背後からひと際でかい骨の腕が地面から這い出てくる。

 周りのスケルトンレックスたちも5メートルくらいはありそうなのに、その背後から出てきた奴は少なく見積もっても10メートルオーバー。下手すりゃ20メートル級か?


「……なぁ。これってどう考えても、ドラゴンって奴だよね?」

「竜王の、地下墓地カタコンベ……。つまり此奴こそが……!」


 太古の恐竜も大きいのは大きかったんだろうけど、このでかい奴は俺のイメージでは怪獣に近いなぁ。

 巨大恐竜はティラノサウルスの骨格標本みたいな外見に、背中から2本の長い腕と4枚の翼が生えていて、頭部から2本の巨大な角が突き出ているのが特徴的だ。


 目の前の相手から視線は外さず、背後のみんなに声をかける。


「竜人族がいるからドラゴンもいるとは思ってたけど……。実際目の当たりにすると、驚くねぇ……」

「大きいのだけでも厄介そうなのに、小さいのも数が多くて大変だね……。小さいって言っても、うちで1番身長の高いティムルより倍以上大きいけど」

「名匠のうちに遭遇できたのは不幸中の幸いね……。それに不死族っぽいから、アニマライザーとミスリル装備で特効が付くのもありがたいわ」


 テラーデーモン戦では恐慌に陥ったニーナもティムルも、イントルーダーを前にちゃんと落ち着いているね。

 HP制だし即死は無いはず。巨大さにビビる必要なんか無いよな。


「竜王のカタコンベ。そこから出てきた巨大ドラゴンのアンデッド。ふははーっ! 竜王に挑めるなぞ、竜人族として最高の誉れなのじゃーっ!」

「……ふぅ。ぼくも怯えている場合じゃないね。こんなのを外に放つわけにはいかない。絶対に負けるわけにはいかないよ……!」


 やる気満々の無双将軍と、静かに弓を携えるリーチェ。

 2人の顔に気負った部分も怯えた部分もなく、心配する必要は全くなさそうだ。


 未だに地面から体が現れきっていないためか、攻撃判定も無くて襲ってくる気配もない。今のうちに簡単に打ち合わせをしておこう。


「ドラゴンならブレスを放ってくる可能性は低くない。基本は回避優先だけど、もし避けきれない場合は俺の障壁を盾にするよ」

「いくら竜王とはいえ、不死族にブレスが放てるとは思えぬがの……」

「ニーナとフラッタは竜化と獣化を使ってもいいけど、魔力枯渇を起こさないように気をつけて。今目の前にいる奴らで全部かどうかも、現時点では分からないからね」

「「了解」なのじゃっ」


 ボス戦と考えるなら、雑魚は無限湧きだと思ったほうがいいだろう。

 でもこっちは魔力吸収もあるし全体魔力自動回復もある。長期戦上等だ。


『ヴォオオオオオオオオオッッ!!』

「っ……! うる、さいなっ……!」


 巨大恐竜が開いた口から、まるで大型船の汽笛のような重低音の叫び声が轟いた瞬間。

 目の前の骨恐竜全部が動き出し、それと同時に鑑定が通るようになった。



 ブラックカイザードラゴン


 ドラゴンサーヴァント


 
 ……ブラックカイザードラゴンって、白骨化してるから白いんですけど?

 でも、カイザードラゴンね。竜王ってのもあながち間違いじゃなさそうだ。


「相手はブラックカイザードラゴンと、ドラゴンサーヴァント。フラッタの言う通り、相手は竜王様ご一行のようだよ」

「相手にとって不足無し! 胸を借りさせてもらうのじゃっ、竜王ーーーっ!」


 ガチャガチャと、骨同士がぶつかり合う不快な音を撒き散らしながら襲い掛かってくる、竜王様ご一行。気合の咆哮を放つフラッタ。


 何の準備も無く、なし崩し的に始まる対竜王戦。

 こうして俺達の初のイントルーダー戦の火蓋が、今切って落とされたのだった。
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