異世界イチャラブ冒険譚

りっち

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3章 回り始める物語2 ソクトルーナ竜爵家

190 達人 (改)

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 なんで街中にアウターエフェクトなんて潜んでいたのか。

 なんでアウターエフェクトが竜爵家で長期間暴れもせずに大人しくしていたのか。


 色々な疑問は湧き上がるけど、今は気にしている場合じゃない。今は剣を握り戦う時だ!


「神代より誘われし浄命の旋律。精練されし破滅の鉾。純然たる消滅の一矢。汝、我が盟約に応じ、万難砕く神気を孕め。インパクトノヴァ」


 魔導師の詠唱速度上昇、それと身体操作性補正に敏捷性補正まで乗っけて、マインドロード目掛けて超高速でインパクトノヴァを連射する。

 そして4回目の詠唱が済んだあたりで、ロングソード二刀流のラトリアさんが弾けるように突進してきた。


「っ……!」


 その速度に少し驚きを覚えながらも、竜化フラッタよりも更に1段早い速度で斬りかかってくるラトリアさんの剣を躱す。


 ……うん。ちゃんと見えるし、ちゃんと反応できる。

 ラトリアさんの剣はフラッタよりも洗練されていて無駄が無く、バスタードソードでもないのでフラッタよりも遥かに早い。

 それなのに見えるし避けられる。俺の職業補正と今までの訓練の日々は、ちゃんと俺の魂に浸透して根付いてくれている。


「ダ、ダンっ! 大丈……」

「こっちは任せろ! 2人はマインドロードに集中してくれ!」


 ラトリアさんの放つ双剣を避けながら、心配してくれるリーチェの声を切って捨てる。

 2人の相手だって最強の一角と呼ばれるロード種だ。俺に構ってる余裕なんて無いはずだからな。


 ラトリアさんの剣を受けるのは怖いので、全て回避だけで対応していく。

 重銀って素材は初めて見たけど、恐らくはダマスカスのことだろう。強度で劣るミスリル製ロングソードで受け太刀できるかは自信が無い。

 仮に武器の強度が足りても、竜人族の膂力で押し切られそうだしな。


 ラトリアさんの吹き荒れる剣風を回避しながらも、魔物察知で位置を確認して骨野郎にインパクトノヴァを撃ち込んでいく。
 

 ラトリアさんは支配状態。俺に斬りかかってきているのは本人の意思ではなく、マインドロードの意思によるものだ。

 ガイコツ野郎に俺のことを脅威と思わせておかないと、2人に押されたタイミングでいきなりラトリアさんを2人に嗾けてくる可能性がある。それだけは絶対に阻止しないと。


 何より、被害者でしかないフラッタのお母さんをなるべく攻撃したくない。


「はぁぁっっ!!」


 ラトリアさんの鈴のなるような気合の声と共に、瞬くような剣閃が繰り出されてくる。


 ラトリアさんの剣は本当に美しい。

 片手でロングソードを扱っているのに、その動きに雑な部分は微塵も無く、まるでラトリアさんの美貌のように美しく洗練された技術だ。

 俺もかなり剣術を磨いてきたつもりだけど、まだまだ上には上がいると思い知らされる。できれば同じ装備水準で、思い切り打ち合ってみたいもんだなぁ。

 
 ……だけど、それでも遅い。遅すぎるくらいに遅いんだ。


 俺の中に累積している五感上昇がラトリアさんの動作の動き出しを正確に把握し、敏捷性補正がラトリアさんが制止しているかと思えるほどの速さで動き、身体操作性補正がラトリアさんの剣をミリ単位で見切ってしまう。

 竜化フラッタよりも早い速度で、自分よりも圧倒的に技術が上の相手に2本の剣で斬り付けられながらも、マインドロードにインパクトノヴァを撃ち込めるくらいに余裕がある。


 骨野郎に魔法を撃ち込みながらも、五感補正を最大編に駆使してラトリアさんの剣術に没頭していく。


「……あはっ!」


 ラトリアさんの剣はフラッタの剣の延長線上にある、剣の道の1つの到達点だ。

 恐らく剣の技術だけならリーチェよりも遥かに洗練された、俺が知りうる限りの最高峰の剣の達人の剣を、五感全てで盗んでいく。


 竜人族の剣は剛剣だ。その恵まれた身体能力を最大限に剣に伝え、威力に変換して相手を殺す剣術。

 動作の初速から一瞬でトップスピードまで加速し、全身の膂力を剣先に乗せて振るわれる剣術は、荒々しくも一切の無駄を感じさせない完成された剣術を思わせる。


 脆弱な人間族である俺に、この剣術の極意は活かせない。

 ――――少なくとも、そのままでは。


 フラッタとキスをしながら戦った時に掴んだ感覚を思い出す。流れるような動作の連動を意識する。

 一切の停滞を許さず常に動き続ける事で、俺の中に累積している敏捷性補正を最大限に活かして、目の前のラトリアさんすら置き去りにして無限に加速し続けろ……!


 異世界で体験した事の全てが繋がっていくような感覚。

 ラトリアさんのおかげで、俺はまた1歩先に進める気がする。


「あはっ! あははははは!」


 ラトリアさんの発する笑い声を聞きながら2筋の閃光を躱し続け、この世界で1番最初に教わった、フロイさんの言葉を思い出す。


『相手が魔物だろうが人間だろうが、攻撃を受けなきゃいいだけの話なんだよ。防御が無駄とは言わねぇが基本は回避だ』


 なんだかんだ言って、フロイさんの教えは基本であり究極だったね。まさかこんなところでフロイさんの教えが活きてくるとは思ってなかったよっ。


「せいっ!」

「あはっ、あははっ!」


 訓練上に響くラトリアさんの笑い声と、金属同士がぶつかり合う甲高い衝突音。ロングソードを握る手に力を込めて、少しずつラトリアさんと剣を合わせていく。


 まともに受けられないラトリアさんの剣を、いなして流して崩していく。

 ラトリアさんの神速の斬撃を、更に速い速度の剣で打ち落としていく。


「……ん?」


 そうして剣を合わせていると、ラトリアさんの雰囲気が少し変わってきている事に気付く。

 鑑定しても支配状態は抜けていないようだけど、先ほどまでよりも明らかに楽しそうな雰囲気を纏って剣を振り始めるラトリアさん。


 ……まさか脳筋竜爵家の当主夫人、手合わせが楽しくなってきたんじゃないだろうなぁ?


「あはははははははっ!」


 今までよりも更に加速するラトリアさんの剣術。これって間違いなくリーチェよりも速いよね?


 さっきまでの貼り付けたような不気味な笑顔と違って、顔は血色を帯びてきていて凄い楽しそうに剣を振るってんだけど?

 この人、もう支配とか関係なく俺と打ち合ってるでしょ絶対。


「あはーっ! あーっはっはっは!」

「は、やいっ……!」


 加速し続けるラトリアさんの剣撃に、流石にインパクトノヴァを撃ち込む余裕が無くなってきた。

 というかラトリアさんとの打ち合いに学ぶものが多すぎて、骨野郎に構っているのが勿体無い。加速し続けるラトリアさんに、それ以上の速度で応えていく。


 ラトリアさんは俺に技術を見せつけるように何度も打ち込んでくる。

 ここはこうやるんですよ。そこはこの方が良いですよ。

 そんな声が聞こえるような剣術で、本当にこの人支配されてるのかと何度も鑑定してしまう。でもやっぱり支配は解けてないんだよなぁ? おかしいなぁ?


「んーふふふふふ……!」


 バックステップで1度大きく後退したラトリアさん。

 この隙にインパクトノヴァを連射したいところだけど、正面からアウターエフェクトよりも数段濃密な殺気が放たれている為に、ラトリアさんから目が離せない。

 ラトリアさん、コレ絶対支配関係ないでしょ?


「はああああっ……!!」


 目の前のラトリアさんの全身が蒼いオーラのようなものに包まれていく。分かっちゃいたけど竜化を発動してきたようだ。多分支配とは無関係に?

 竜化したラトリアさんは、竜化したフラッタと同じくその瞳は紫に変えて、その頭からは2本の角が生えてきている。


 フラッタと違うのは、背中から巨大な羽が生えてきたことかなー? プレートメイルどうなってんのよ? 装備品凄いな。


「あはぁぁぁぁっ……!」


 ラトリアさんは楽しくて仕方ないとでも言いたげに、俺を殺す気満々の獰猛な笑みを浮かべている。

 その顔には、ここからが本番ですよ、って書いてあるなぁ。


 上等ですお義母さん。フラッタの旦那として受けて立ちましょう!


「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ッ!!」


 楽しそうに叫びながら斬りかかってくるお義母さん。

 その速度は今までの比ではなく、今まで見た中でも最速の剣術だ。


 はっ、や……! わりとついていくのがギリギリくらいの速度なんだけど……!?

 これってもしかして、ムーリの好色家を浸透させに1日スポットに篭ってなかったら、対応できなかった速度じゃね?

 やっぱりトライラム様が俺を心配して、ムーリに悪戯させてくれたんだろうか? いやそんなわけあるかい。


 今まで色々なご都合主義は、神様が俺を誘導してくれているのかと思っていた。

 でもよくよく考えると、俺を導いていたのはいつだってエロい事だった。


 ニーナとエロい事がしたくてマグエルを目指し、ティムルとエロい事がしたくてネフネリさんの犯行を暴き、フラッタとエロい事がしたいから竜爵家に乗り込み、リーチェとエロい事がしたいから最強を目指し、ムーリとエロい事がしたいから教会の孤児たちの現状を変えた。

 強くなったのだって、いつもエロ絡みだ。集中の仕方も補正の活かし方も、スキルの応用の仕方まで全てエロ絡みで強くなってしまった。

 自分で振り返ってみても、誠に遺憾である。


 ニーナには考えすぎだと本当に何度も言われ続けてきたけど、確かに俺は考えすぎだったのかもしれない。結局俺はみんなとエロい事がしたいだけで行動し、エロいことに導かれてここまで来たんだ。

 作為的とか考えるのも馬鹿馬鹿しい。単に俺がエロいから、色々な問題に関わってしまったというだけだった。


 なんか都合の良い流れを感じる度に神様を疑ってしまったけど、神様には疑念など抱かずに、感謝だけしておけば良さそうだ。

 他の流れは大体、俺のエロい思考が呼び込んだものなんだから。



 最早神速を超えて光速かと思えるような剣閃。

 だけど今までお義母さんが教えてくれた技術の上乗せのおかげで、今の俺には対応出来てしまうようだ。


 俺と打ち合えるのが楽しくて仕方ないお義母さんは、2本の剣にどんどん殺意を込めていく。

 これで俺がフラッタの旦那ですって言ったら、殺意は増えてしまうんだろうか? ちょっと興味あるけど、美しい剣術に雑念が入りそうなのでやめておこう。


「んふふっ! あははははははっ!」


 さて、ここからどうやって決着をつけるべきか。

 支配状態の詳細が分からないので、魔力枯渇で止まってくれる保証も無い。でも支配状態だから、完全に拘束しないと止まってくれないよなぁ?

 ラトリアさんを止めるには完全に拘束するか、意識を落としてやる必要があるわけかぁ。


「……あはぁ」


 その時、ウッキウキで剣を振るっているラトリアさんの笑みが更に深くなった気がした。

 相変わらず光速で剣を操りながらも、ラトリアさんの2本の角が青い光に包まれていく。


 ……うん、ラトリアさん。コレはどうですか? じゃないんだよ。

 詠唱を伴わない、竜化した状態で出来る特殊能力。初めて見るけど、これって絶対ブレスの兆候だよねぇ?

 おい支配。お前ちゃんと仕事しろよ。ラトリアさん、全然支配されてないんだけど?
 

 ラトリアさんの剣を回避しつつ、生体察知で確認して俺の背後には誰もいないように調整する。これでラトリアさんも遠慮なくブレスをぶっ放してくれることだろう。


 ブレスの威力がどんなものかは不明だけど、地下に生き埋めになったりしないだろうなぁ……?

 でもこんな楽しそうなラトリアさんを見て、ブレスの発動を潰すわけにもいくまいよ。


「シィッ!」


 ラトリアさんの渾身の袈裟斬りを回避した瞬間、ラトリアさんはその小さな口を俺のほうに向けて大きく開く。

 フラッタにそっくりなその喉奥に注目していると、恐らく魔力で構成されている青い光が、体の内側から立ち昇ってきた。


「ヴ゙ァ゙ア゙ア゙ア゙ア゙ッ!!」


 ラトリアさんの口から咆哮と共に放たれる、魔力が圧縮された蒼い閃光。 


 竜人族の切り札である竜化。

 その状態でしか放てない正真正銘の切り札であろうブレスの威力は凄まじく、地下訓練場の壁をぶち抜いて、どこまでも続く大穴を空けてしまった。


 これがドラゴンブレス……。まるでレーザー兵器そのものだな。

 まぁ普通に回避しましたけどね?


 ラトリアさんの神速の剣とだって打ち合えるのに、こんなにモーションのでかい攻撃を食らってはやれないよ。だからこそ剣戟に混ぜて放ってきたんだろうけど。


「はぁっ……! はぁっ……! あ、はっ……はぁっ……!」


 ブレスを放ったラトリアさんは、竜化が解除されて顔面蒼白状態だ。

 流石にあれほどの威力の魔力の塊を放ってしまったら、一気に魔力枯渇を起こしてしまうんだろう。まさに切り札中の切り札だね。

 しかしそれでも支配状態は解けなかったらしく、魔力枯渇の地獄の苦しみを味わいながらも、剣を手放さないラトリアさん。


 うん。この状態ならどうとでも出来るかな? いくら成人した竜人族とはいえ、魔力枯渇状態では出来ることも限られるはずだ。決着といこうか。


 インパクトノヴァを骨野郎に叩き込みながら、肩で息をしているラトリアさんの背後に回りこみ、ぜぇぜぇと苦しそうに呼吸する為に大きく開かれた口の中に右手を突っ込み、指で舌を摘みあげる。


「はっ!? はぁぁぁぁぁ!?」


 戸惑うラトリアさんを無視して、摩擦で火を起こすくらいの勢いでラトリアさんの舌を扱く。


「はっ、はぅんっ……!?」


 だって拘束しようにもロープも何も持ってきてないし、筋力で大幅に劣る俺がラトリアさんを拘束なんて出来るはずもない。首筋にトンッ、とやるだけで意識を落す方法も知らないし?

 だからここは俺らしく、エロい方法で責めようじゃないか。

 脆弱な人間族さんでも他種族のみんなを圧倒する力。快楽による拘束だ。


 流石に万全の状態のラトリアさんにこんな方法が通じるとは思えないけど、今はマインドロードの支配下にあり、更には魔力枯渇中だ。

 それに舌への愛撫なんて、恐らく多くの人は体験したことがないハズだ。防ぎようが無かろうよ。


 竜人族のフラッタでさえ逃げ惑う俺の全力の指捌き、どうぞお楽しみくださいお義母さん。


 右手でお義母さんの舌を高速でくちゅくちゅと扱きながら、左手でインパクトノヴァをマインドロードに撃ち込んでいく。

 五感上昇で詠唱を把握し、敏捷性補正で口を高速で動かし、身体操作性補正で舌を操り連射する。


 アウターエフェクトだかなんだか知らないけど、お前もう帰っていいよ。


「神代より誘われし浄命の旋律。精練されし破滅の鉾。純然たる消滅の一矢。汝、我が盟約に応じ、万難砕く神気を孕め。インパクトノヴァ」


 1秒間に何発放っているのか自分でも分からないけど、マインドロードっていうだけあって、物理より魔法に強かったりするのか、なかなかHPを削りきれない。

 リーチェとフラッタも苛烈に攻撃してくれているのに、明らかにテラーデーモンよりタフのようだ。


 その間ずっと右手はラトリアさんの口の中でくちゅくちゅという音を立てていて、殆ど無抵抗で為すがままのラトリアさんを抱きかかえながらアウターエフェクトにインパクトノヴァを連射していく。


 しかし、インパクトノヴァを放ち始めて5秒を越えた辺りで、マインドロードの左腕が吹き飛んだ。どうやらようやくHPを削りきったらしい。

 でもコイツらには発狂モードがあるっぽいので、完全に消し去るまではインパクトノヴァを連射し続ける。


 ドロップアイテムが出るまで、インパクトノヴァをやめないっ!


 しかし、マインドロードの体が粉々に吹き飛んでしまうと、インパクトノヴァの対象指定が出来なくなってしまう。

 ならばフレイムフィールドを展開して、欠片1つ残さず消し去ってくれよう。


「……あれ? どういうことだ?」


 この世界の絶対の討伐証明であるドロップアイテム。つまりドロップアイテムが出現するということは戦闘終了を意味する……んだけど。


 いつまで経ってもドロップアイテムが出ないなー? アウターエフェクトにドロップアイテムがあるのはテラーデーモンが証明してくれてるのに。

 ドロップアイテムが早く出てくれないと、ラトリアさんが大変な事になってるんだけどー?


 魔物察知にも生体察知にもマインドロードの反応は無い。

 訓練場のどこも攻撃魔法の対象に指定出来ないし、完全に倒したとは思うんだけど……。なんでドロップアイテムが出てこないんだ?


「ダンーっ! もうやめるのじゃっ! 母上が、母上が大変なことにーっ!」

「そうだ。ラトリアさんはどうなった?」


 フラッタの声でラトリアさんに意識を戻す。

 未だ舌を扱かれ続けている彼女を鑑定してみると、無事に支配の状態異常が解除されているようだ。


 ってことはマインドロードは間違いなく倒したのか……? ならなんでドロップアイテムが出てこない……?


「ダンーっ! 考え事はあと! あとにしてあげてぇぇぇっ! フラッタのお母さん、大変な事になっちゃってるからぁっ!」

「あっと、支配が解けてるならもういいのか」


 ドロップアイテムが出ないせいでなんとなく釈然としないものの、ビクンビクンと仰け反っているラトリアさんの口から右手を抜いて、訓練場の床に静かに寝かせてあげるのだった。

 ……うん。妻の母親である女性にちょっとやりすぎちゃったかもしれないなっ?
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