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3章 回り始める物語2 ソクトルーナ竜爵家
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決闘を終えた俺は、その決闘相手のフラッタを膝に乗せたままでもぐもぐと朝ごはん食べている。
ティムルとリーチェにご褒美をあげなきゃって思ってたけど、フラッタも泣きながら頑張ってくれたんだから、ご褒美をあげなきゃいけないよね。
せめて朝食の間くらいは、すりすりと俺に甘えるフラッタの好きにさせてあげるとしよう。
んもー。我が家のお嫁さんはみんな頑張り屋さんなので、ご褒美が追いつかないなぁ。
「でもフラッタ、よく竜化したね? 前にダンが手合わせをお願いした時は、危険すぎるって言ってたのに」
お、ニーナナイス。それ、俺も気になってたんだよね。
実際に手合わせした結果、竜化したフラッタにも対応できたわけだけど、アレだけ竜化を渋っていたフラッタの意識はいったいどこで変わったんだろ?
「んっと、ニーナとティムルは見てなかったかもしれないのじゃが……」
もぐもぐと咀嚼していた食べ物を飲み込んで、少し慎重さを感じる口調で説明するフラッタ。
「ダンがテラーデーモンを倒した時、その動きが妾には見えなかったのじゃ。だからあの時、ダンはもう妾よりも強くなってるんだって思ったのじゃ」
「へ? テラーデーモンを倒した時の動きって……」
フラッタの説明が意外だったせいで、マヌケな声を出してしまった。
でもあの時ってインパクトノヴァを連射したり、フレイムサークルとフレイムフィールドを詠唱したりして、結構時間かかってたと思うんだけどな?
「え、えぇ……? ダンってあの時のこと、そんな感じに思ってたの……?」
「ん? どういうことリーチェ?」
「どういうことも何も、あの時ダンは一瞬で攻撃魔法を連射しながら首を切って、首と胴体を吹き飛ばしながら肉片まで残らず焼き捨てたんだ。全ての動作が瞬きするくらいの間に終わっちゃってたんだよ?」
「えっ、えぇ? そんなわけ……」
リーチェの言葉に逆に驚かされてしまう。
さ、流石に冗談でしょリーチェ? あんな長文詠唱を連射してたのに、そんな一瞬で終わるはずないじゃん……?
「ダンはさっきも魔法を一瞬で連射してたわねぇ。テラーデーモンの右腕を吹き飛ばした時って、インパクトノヴァを何発撃ってたの?」
「へ? ええっと、ちょっと待ってねティムル……」
魔法を受け止める目障りな右腕を吹き飛ばした時は……。
「確か7発……、だったかなぁ? 数えながら撃ってた気がするから」
「な、7発って……。う、嘘でしょ……?」
「え、なんでそんなに驚いてるの? いくら戦闘中だったとは言え、あんなに詠唱の長い魔法、他のみんなだって確認できたんじゃ……」
「ねぇダン。貴方がリーチェに回復魔法を放ってからテラーデーモンの右腕を吹き飛ばすまで、1分も経ってなかったよ?」
「……へ? え、待ってよニーナ、そんなはず……」
だって俺あの時、テラーデーモンを何回斬ったか覚えてもいない。
あれほどの斬撃を浴びせ、あんなに詠唱の長いインパクトノヴァを7発も撃ち込んだっていうのに、その全てが1分もかからず行なわれていただって……?
「ニーナとフラッタが恐慌状態にされた後は、攻撃を再開したと思った瞬間にテラーデーモンが消滅してしまったのじゃ」
こ、攻撃を再開した瞬間にテラーデーモンが消滅したって……。い、いくらなんでも大袈裟すぎるよフラッタ。
だってあの時の俺は、ニーナとティムルを傷つけたあいつを絶対に許せなくて、そりゃもう念入りに殺し尽くしたはずなんだよ……?
「ダンが一刀で首を刎ねたのは分かったのじゃが、その瞬間に頭部も胴体も吹き飛び、燃やし尽くされておったのじゃ」
「ダン。インパクトノヴァ7連射は、5秒もかからず行われていたことなんだよ?」
「…………はぁ!?」
「その後のトドメの連射は、まさに一瞬としか言い表せない刹那の瞬間に行われたことなんだ。テラーデーモンは無防備だったんじゃなくて、君の攻撃が速過ぎて反応できなかったんだ」
ええ……? アイツって確かアウターエフェクトで、魔物の最強格だったんじゃなかったっけ?
そう言えば、あいつの動きを遅いって思った記憶はある、けど……。
「あの時妾は、ダンはとっくに竜化した妾より強くなっていると思えたのじゃ。でも優しいダンは、その優しさこそが危ういとも思っていたのじゃ。だから竜化した妾を打ち倒す事でその甘さを克服してもらいたかったのじゃが……」
「だが、なぁに? フラッタ」
「んふー……。妾はダンの甘々さを見縊っておったのじゃぁ……」
息を吐きながらすりすりと頬ずりしてくるフラッタ。
何だコイツ超可愛い。可愛すぎる。こんな可愛いフラッタの意識を刈り取るなんて出来る訳ないよなー。よしよしなでなで。
心配するなってフラッタ。俺が甘いのは身内にだけだからねー。ぎゅー。
「え、えぇ……? お、お話がよく分かりませんけど、皆さんってデーモン種を討伐されたんですかぁ……!?」
ムーリが凄くビックリしてぶるんっとおっぱいを揺らしている。
フレイムロード……、ロード種のこともみんな知ってたし、デーモン種も一般常識なのかな?
「私たちっていうか、ダンとフラッタとリーチェの3人で倒しちゃった感じかなぁ? 私とティムルはちょっと役に立ってなかったよぅ」
「私とニーナちゃんの戦闘職の浸透数の少なさが目立っちゃったわよねぇ……」
ため息混じりに肩を落すニーナとティムル。
2人だってちゃんと貢献してたけど、ティムルの言う通り戦闘職の浸透数が少ないからね。力不足を感じてしまったようだ。
「私も生産職の浸透は殆ど終わったし、ニーナちゃんも戦闘職の浸透を開始したから、次あたりの遠征に出てたら私達の攻撃も通ったかもしれないんだけどねぇ」
うん。今回の遭遇はちょっとタイミングが悪かったよね。
ニーナを紳商にしたのもティムルを生産職ルートに進ませたのも俺なんだから、大体俺が悪い。ニーナとティムルは何にも悪くないよ。
「あ、ムーリ。デーモン種の討伐は秘密にしておいてね? スポットでデーモン種が出たなんて言われても、誰も信じないかもしれないけどさ」
「ってことは、皆さんがデーモン種を討伐したのは本当なんじゃないですかぁ……! は、半年前は戦士と旅人だったダンさんとニーナさんが、たった半年でそこまで強く……!」
デーモン種の討伐に成功したと聞いて、目を丸くして驚いてくれるムーリ。
だけどさムーリ。俺には鑑定と職業設定って2つのチート能力があって、ニーナっていう絶対に守り抜かなきゃいけない存在と、ティムル、フラッタ、リーチェっていう最高のパーティメンバーがいてくれたからね。他の人に申し訳なくなるくらいにズルしてるんだ。
なんて口にするわけにはいかないよなぁ。ニーナとティムルにメロメロにされちゃうから。
「ま、これで礼拝日にヴァルハールに行くことは決定だ。フラッタ、リーチェ、宜しくな。ニーナ、ティムル、ムーリは留守を宜しくね」
俺の言葉に力強く頷いてくれるみんなが頼もしい。
ズルばかりで申し訳ないけど、みんなのことを守るためには綺麗事なんて言ってられない。めいっぱい活用させてもらうさ。
朝食を食べ終わり、立ち直った無双将軍フラッタは子供達の訓練の指導に、ニーナは庭の管理を、ムーリは教会の仕事をしに戻っていった。
ティムルはお風呂掃除、リーチェは朝食の片付け、俺は大量の洗濯物をゴシゴシと洗っている。
11月頃からベッドに沁みこむ水分が増えちゃって、洗濯の量が半端じゃないんですよね。ごしごしごしごし。
今回フラッタを無事負かすことが出来て、ヴァルハールに行く権利を得た。
精神異常耐性もあるし、装備も最高水準だし……。ヴァルハールに行く前に出来ることはもう無いかなぁ?
あとは1回1回の訓練でどこまで技術を伸ばせるかが鍵になるか。
うーん、職業をどうするかなぁ。殺人者や盗賊にして対人戦闘能力をあげるって手も……って、あら?
何気なく職業設定を開いたら、いつの間にか新しい職業を得ているじゃないですかぁ。
農家LV1
補正 五感上昇- 身体操作性上昇-
スキル ドロップアイテム鑑定 インベントリ
ドロップアイテム鑑定。こんなスキルもあるのかぁ。
鑑定を使える人がいないのにドロップアイテムの名称が正確でおかしいと思ってたんだ。ドロップアイテムの鑑定職もちゃんとあったのね。
ってか農家でこの性能って……。やっぱりこの世界ではドロップアイテムは生産物扱いなのかぁ。
そして、あまり見慣れない職業がもう1つ出現していた。
篤志家LV1
補正 全体体力上昇 全体魔力上昇 全体幸運上昇
スキル 全体物理耐性 全体魔法耐性
魔玉発光促進 稀少品出現率上昇
怒涛の全体補正。艶福家先生ともタメ張れるような補正とスキルだな。補正もスキルも全てパーティ全体に効果が及ぶ物しかなくて、思い切り防御よりだ。
……って、魔玉発光促進くんはもう充分だから。お帰りくださいとは言わないけど。
さて、これって『とくしか』って読むんだったか。意味合い的には、確か慈善家と大して変わりなかったと思う。
慈善家の職業補正は魔力と幸運と全体幸運補正だから、慈善家の上位職業と見て良さそうだけど……、いつ獲得したんだろう?
農家の獲得は普通に考えてディロを収穫した時だと思う。テラーデーモン討伐後に鑑定した時は、間違いなく無かったからな。
慈善家を獲得したのが教会のみんなと関わった時だから、篤志家を得たのもテネシスさんたちと関わったからだとは思うんだけど……。
具体的な転職条件はなんだったんだろう?
恐らく慈善家の浸透は前提条件に入ってると思うけど、今回の遠征の前後で俺と教会の関係性が変わったことってなんだ?
39人の受け入れもあったけど、遠征に行く前に21人の受け入れは決めてあったし、孤児院や井戸の建設だって進めてあったはずだ。
今回の39人で大きく変わったのは……。
……ひょっとして、人頭税? まだ払ってないんだけど? でもまぁ払う気ではいるし、俺自身が心から思ってれば多分これはクリアできるんだろう。
まだ誰の分も払ってないんだけど、遠征前はコットンと7名分の人頭税、総額1000万ちょっとを払う気でいたのが、30人規模になって4500万リーフ近くの税金を負担する事になった。
井戸や孤児院の建設費用、装備品の貸し出し。食費や衣服、寝具なども負担して、恐らく5000万リーフくらいを赤の他人に払うことになるわけだ……。
無償で支払った金額か、救済に関わった人数か、あるいはその両方が転職条件になってるのかもしれないな。
今回の1件で俺と関わった孤児は50人を越える。50人と5000万リーフ……。こじつけだけど、なんとなく辻褄が合う気がする。
確かめる方法の無い転職条件は置いとくとして、職業補正とスキルはかなり強力だ。篤志家の浸透を進めれば、パーティ全体の安全性が大きく向上し、パーティの財政もかなり潤うだろう。
……いや潤うんだろうけど、篤志家になれる人って、もうお金要らなくない? お金があって困ることは無いけどさぁ。篤志家を得られるタイミングが微妙に噛み合ってない気がしてしまうなぁ。
それと何気に重要なのが、農家がインベントリを持っているということだ。
今現在の俺のインベントリの容量は、旅人で30、豪商で50、武器・防具・宝飾・アイテム職人、調剤士が各50、冒険者で50、探索者で100、荷運び人と飛脚でそれぞれ50の、合計LV580だ。
現状で27㎥のインベントリ2つ持ちというアホみたいな容量なんだけど、64㎥のインベントリ、もしかしたら狙えるんじゃ……?
でも篤志家のスキルと同じで、64㎥のインベントリを持つ前に冒険者と探索者の浸透が終わってるから、大容量インベントリの恩恵ってもう殆ど無いんだよな。
ポータルとアナザーポータルがあれば、どんな場所からでも一瞬で街まで戻れるんだもん。
……恩恵が殆ど無いからこその大容量なのかもなぁ。ゲームバランス的な意味で。
農家は性能的に商人か職人からの派生職っぽいので、恐らく最大LVは30か50だと予想がつく。となると、少なくとももう1つインベントリを持つ未発見の職業があるはずだ。
もう俺にとってはこれ以上のインベントリは必要無いけど、ギリギリ届かないって気持ちが悪いから見つけたいところだねぇ。
農家LV50で合計630止め、とかないよね……?
その場合は27㎥のインベントリ2つ、8㎥が1つ、1㎥が1つで、なんとなくキリが良いような気がしないでもないなぁっ!
インベントリの将来に微妙な不安を覚えつつ、大量の洗濯物を干していく。
これこそリムーバーを使って水分をふっ飛ばしてもいい気もするけど、楽に慣れると良くないからな。それに寝具を汚す原因って大体俺だし、その俺が楽をするのはだめだろう、うん。
洗濯も終わったことだし、ヴァルハール遠征に向けて少しでも稽古しておきたいところだ。
そう思ってリーチェを探すも、まだ外には出てきていないね。
何気にティムルと仲いいからな。お風呂掃除の手伝いでもしてるのかも。
家に入って生体察知を発動すると、やはり2人とも浴室にいるみたいだ。誰だよエルフとドワーフの仲が悪いとか言ってる奴。ティムルとリーチェが仲悪かったことなんて1度も無いぞ?
昨日浴槽内で沢山しちゃったから、掃除に手間取ってるんだろうか? だとしたらやっぱり俺のせいなんだから、掃除を手伝った方が良いよね。
2人の反応を追って浴室へ顔を出した。
「ティムルー。リーチェー。洗濯終わったから手伝うよー」
声をかけながら浴室に入るも、掃除は既に終わってるっぽいな?
「ああダン、ありがと。でもお掃除の方はもう終わってるわ。でもちょうど良かったぁ。私も今からダンを呼びに行くところだったの」
「今ティムルとご褒美の相談をしててさ。話がまとまったところだったんだよ」
ほう!? それは随分と興味深いお話をされていたみたいですね! 是非とも詳しく聞かせていただきたいですなっ!
「昨日はニーナとフラッタとムーリの相手ばかりだったからね。可愛くてえっちなお姉さんたちには沢山お世話になったし、俺に出来ることならなんでも聞くよ」
2人を抱き寄せて、ちゅっちゅっとそれぞれに軽いキス。
「たった今洗濯を終えたばかりのダンには申し訳ないんだけど、またいっぱいベッドを汚してもらおうかしらねー」
「えっちなご褒美、いっぱいくれる? ぼくの王子様」
もっちろぉん! 洗濯なんていくらでもしてやるさぁっ! ご褒美だって、もう要らないって言われても押し付けるように返品不可で直送してあげるからねぇっ!
早速寝室に向かおうと、ちょっと自信無かったけどティムルとリーチェを同時に抱き上げる。割と余裕で持ち上がってひと安心。
あ、でもやばいわこれ。ニーナとフラッタの時は気にならなかったけど、ティムルとリーチェだと顔におっぱいがむにゅむにゅと……。
2人のおっぱいの感触を顔面で楽しみながら、2人にご褒美をあげるために寝室に向かう。
……って、既にこのおっぱい抱っこが俺にとってのご褒美過ぎるんだけど?
本当に2人にご褒美あげられてる? 俺だけ一方的にご褒美貰いまくってないかなぁ?
ティムルとリーチェにご褒美をあげなきゃって思ってたけど、フラッタも泣きながら頑張ってくれたんだから、ご褒美をあげなきゃいけないよね。
せめて朝食の間くらいは、すりすりと俺に甘えるフラッタの好きにさせてあげるとしよう。
んもー。我が家のお嫁さんはみんな頑張り屋さんなので、ご褒美が追いつかないなぁ。
「でもフラッタ、よく竜化したね? 前にダンが手合わせをお願いした時は、危険すぎるって言ってたのに」
お、ニーナナイス。それ、俺も気になってたんだよね。
実際に手合わせした結果、竜化したフラッタにも対応できたわけだけど、アレだけ竜化を渋っていたフラッタの意識はいったいどこで変わったんだろ?
「んっと、ニーナとティムルは見てなかったかもしれないのじゃが……」
もぐもぐと咀嚼していた食べ物を飲み込んで、少し慎重さを感じる口調で説明するフラッタ。
「ダンがテラーデーモンを倒した時、その動きが妾には見えなかったのじゃ。だからあの時、ダンはもう妾よりも強くなってるんだって思ったのじゃ」
「へ? テラーデーモンを倒した時の動きって……」
フラッタの説明が意外だったせいで、マヌケな声を出してしまった。
でもあの時ってインパクトノヴァを連射したり、フレイムサークルとフレイムフィールドを詠唱したりして、結構時間かかってたと思うんだけどな?
「え、えぇ……? ダンってあの時のこと、そんな感じに思ってたの……?」
「ん? どういうことリーチェ?」
「どういうことも何も、あの時ダンは一瞬で攻撃魔法を連射しながら首を切って、首と胴体を吹き飛ばしながら肉片まで残らず焼き捨てたんだ。全ての動作が瞬きするくらいの間に終わっちゃってたんだよ?」
「えっ、えぇ? そんなわけ……」
リーチェの言葉に逆に驚かされてしまう。
さ、流石に冗談でしょリーチェ? あんな長文詠唱を連射してたのに、そんな一瞬で終わるはずないじゃん……?
「ダンはさっきも魔法を一瞬で連射してたわねぇ。テラーデーモンの右腕を吹き飛ばした時って、インパクトノヴァを何発撃ってたの?」
「へ? ええっと、ちょっと待ってねティムル……」
魔法を受け止める目障りな右腕を吹き飛ばした時は……。
「確か7発……、だったかなぁ? 数えながら撃ってた気がするから」
「な、7発って……。う、嘘でしょ……?」
「え、なんでそんなに驚いてるの? いくら戦闘中だったとは言え、あんなに詠唱の長い魔法、他のみんなだって確認できたんじゃ……」
「ねぇダン。貴方がリーチェに回復魔法を放ってからテラーデーモンの右腕を吹き飛ばすまで、1分も経ってなかったよ?」
「……へ? え、待ってよニーナ、そんなはず……」
だって俺あの時、テラーデーモンを何回斬ったか覚えてもいない。
あれほどの斬撃を浴びせ、あんなに詠唱の長いインパクトノヴァを7発も撃ち込んだっていうのに、その全てが1分もかからず行なわれていただって……?
「ニーナとフラッタが恐慌状態にされた後は、攻撃を再開したと思った瞬間にテラーデーモンが消滅してしまったのじゃ」
こ、攻撃を再開した瞬間にテラーデーモンが消滅したって……。い、いくらなんでも大袈裟すぎるよフラッタ。
だってあの時の俺は、ニーナとティムルを傷つけたあいつを絶対に許せなくて、そりゃもう念入りに殺し尽くしたはずなんだよ……?
「ダンが一刀で首を刎ねたのは分かったのじゃが、その瞬間に頭部も胴体も吹き飛び、燃やし尽くされておったのじゃ」
「ダン。インパクトノヴァ7連射は、5秒もかからず行われていたことなんだよ?」
「…………はぁ!?」
「その後のトドメの連射は、まさに一瞬としか言い表せない刹那の瞬間に行われたことなんだ。テラーデーモンは無防備だったんじゃなくて、君の攻撃が速過ぎて反応できなかったんだ」
ええ……? アイツって確かアウターエフェクトで、魔物の最強格だったんじゃなかったっけ?
そう言えば、あいつの動きを遅いって思った記憶はある、けど……。
「あの時妾は、ダンはとっくに竜化した妾より強くなっていると思えたのじゃ。でも優しいダンは、その優しさこそが危ういとも思っていたのじゃ。だから竜化した妾を打ち倒す事でその甘さを克服してもらいたかったのじゃが……」
「だが、なぁに? フラッタ」
「んふー……。妾はダンの甘々さを見縊っておったのじゃぁ……」
息を吐きながらすりすりと頬ずりしてくるフラッタ。
何だコイツ超可愛い。可愛すぎる。こんな可愛いフラッタの意識を刈り取るなんて出来る訳ないよなー。よしよしなでなで。
心配するなってフラッタ。俺が甘いのは身内にだけだからねー。ぎゅー。
「え、えぇ……? お、お話がよく分かりませんけど、皆さんってデーモン種を討伐されたんですかぁ……!?」
ムーリが凄くビックリしてぶるんっとおっぱいを揺らしている。
フレイムロード……、ロード種のこともみんな知ってたし、デーモン種も一般常識なのかな?
「私たちっていうか、ダンとフラッタとリーチェの3人で倒しちゃった感じかなぁ? 私とティムルはちょっと役に立ってなかったよぅ」
「私とニーナちゃんの戦闘職の浸透数の少なさが目立っちゃったわよねぇ……」
ため息混じりに肩を落すニーナとティムル。
2人だってちゃんと貢献してたけど、ティムルの言う通り戦闘職の浸透数が少ないからね。力不足を感じてしまったようだ。
「私も生産職の浸透は殆ど終わったし、ニーナちゃんも戦闘職の浸透を開始したから、次あたりの遠征に出てたら私達の攻撃も通ったかもしれないんだけどねぇ」
うん。今回の遭遇はちょっとタイミングが悪かったよね。
ニーナを紳商にしたのもティムルを生産職ルートに進ませたのも俺なんだから、大体俺が悪い。ニーナとティムルは何にも悪くないよ。
「あ、ムーリ。デーモン種の討伐は秘密にしておいてね? スポットでデーモン種が出たなんて言われても、誰も信じないかもしれないけどさ」
「ってことは、皆さんがデーモン種を討伐したのは本当なんじゃないですかぁ……! は、半年前は戦士と旅人だったダンさんとニーナさんが、たった半年でそこまで強く……!」
デーモン種の討伐に成功したと聞いて、目を丸くして驚いてくれるムーリ。
だけどさムーリ。俺には鑑定と職業設定って2つのチート能力があって、ニーナっていう絶対に守り抜かなきゃいけない存在と、ティムル、フラッタ、リーチェっていう最高のパーティメンバーがいてくれたからね。他の人に申し訳なくなるくらいにズルしてるんだ。
なんて口にするわけにはいかないよなぁ。ニーナとティムルにメロメロにされちゃうから。
「ま、これで礼拝日にヴァルハールに行くことは決定だ。フラッタ、リーチェ、宜しくな。ニーナ、ティムル、ムーリは留守を宜しくね」
俺の言葉に力強く頷いてくれるみんなが頼もしい。
ズルばかりで申し訳ないけど、みんなのことを守るためには綺麗事なんて言ってられない。めいっぱい活用させてもらうさ。
朝食を食べ終わり、立ち直った無双将軍フラッタは子供達の訓練の指導に、ニーナは庭の管理を、ムーリは教会の仕事をしに戻っていった。
ティムルはお風呂掃除、リーチェは朝食の片付け、俺は大量の洗濯物をゴシゴシと洗っている。
11月頃からベッドに沁みこむ水分が増えちゃって、洗濯の量が半端じゃないんですよね。ごしごしごしごし。
今回フラッタを無事負かすことが出来て、ヴァルハールに行く権利を得た。
精神異常耐性もあるし、装備も最高水準だし……。ヴァルハールに行く前に出来ることはもう無いかなぁ?
あとは1回1回の訓練でどこまで技術を伸ばせるかが鍵になるか。
うーん、職業をどうするかなぁ。殺人者や盗賊にして対人戦闘能力をあげるって手も……って、あら?
何気なく職業設定を開いたら、いつの間にか新しい職業を得ているじゃないですかぁ。
農家LV1
補正 五感上昇- 身体操作性上昇-
スキル ドロップアイテム鑑定 インベントリ
ドロップアイテム鑑定。こんなスキルもあるのかぁ。
鑑定を使える人がいないのにドロップアイテムの名称が正確でおかしいと思ってたんだ。ドロップアイテムの鑑定職もちゃんとあったのね。
ってか農家でこの性能って……。やっぱりこの世界ではドロップアイテムは生産物扱いなのかぁ。
そして、あまり見慣れない職業がもう1つ出現していた。
篤志家LV1
補正 全体体力上昇 全体魔力上昇 全体幸運上昇
スキル 全体物理耐性 全体魔法耐性
魔玉発光促進 稀少品出現率上昇
怒涛の全体補正。艶福家先生ともタメ張れるような補正とスキルだな。補正もスキルも全てパーティ全体に効果が及ぶ物しかなくて、思い切り防御よりだ。
……って、魔玉発光促進くんはもう充分だから。お帰りくださいとは言わないけど。
さて、これって『とくしか』って読むんだったか。意味合い的には、確か慈善家と大して変わりなかったと思う。
慈善家の職業補正は魔力と幸運と全体幸運補正だから、慈善家の上位職業と見て良さそうだけど……、いつ獲得したんだろう?
農家の獲得は普通に考えてディロを収穫した時だと思う。テラーデーモン討伐後に鑑定した時は、間違いなく無かったからな。
慈善家を獲得したのが教会のみんなと関わった時だから、篤志家を得たのもテネシスさんたちと関わったからだとは思うんだけど……。
具体的な転職条件はなんだったんだろう?
恐らく慈善家の浸透は前提条件に入ってると思うけど、今回の遠征の前後で俺と教会の関係性が変わったことってなんだ?
39人の受け入れもあったけど、遠征に行く前に21人の受け入れは決めてあったし、孤児院や井戸の建設だって進めてあったはずだ。
今回の39人で大きく変わったのは……。
……ひょっとして、人頭税? まだ払ってないんだけど? でもまぁ払う気ではいるし、俺自身が心から思ってれば多分これはクリアできるんだろう。
まだ誰の分も払ってないんだけど、遠征前はコットンと7名分の人頭税、総額1000万ちょっとを払う気でいたのが、30人規模になって4500万リーフ近くの税金を負担する事になった。
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無償で支払った金額か、救済に関わった人数か、あるいはその両方が転職条件になってるのかもしれないな。
今回の1件で俺と関わった孤児は50人を越える。50人と5000万リーフ……。こじつけだけど、なんとなく辻褄が合う気がする。
確かめる方法の無い転職条件は置いとくとして、職業補正とスキルはかなり強力だ。篤志家の浸透を進めれば、パーティ全体の安全性が大きく向上し、パーティの財政もかなり潤うだろう。
……いや潤うんだろうけど、篤志家になれる人って、もうお金要らなくない? お金があって困ることは無いけどさぁ。篤志家を得られるタイミングが微妙に噛み合ってない気がしてしまうなぁ。
それと何気に重要なのが、農家がインベントリを持っているということだ。
今現在の俺のインベントリの容量は、旅人で30、豪商で50、武器・防具・宝飾・アイテム職人、調剤士が各50、冒険者で50、探索者で100、荷運び人と飛脚でそれぞれ50の、合計LV580だ。
現状で27㎥のインベントリ2つ持ちというアホみたいな容量なんだけど、64㎥のインベントリ、もしかしたら狙えるんじゃ……?
でも篤志家のスキルと同じで、64㎥のインベントリを持つ前に冒険者と探索者の浸透が終わってるから、大容量インベントリの恩恵ってもう殆ど無いんだよな。
ポータルとアナザーポータルがあれば、どんな場所からでも一瞬で街まで戻れるんだもん。
……恩恵が殆ど無いからこその大容量なのかもなぁ。ゲームバランス的な意味で。
農家は性能的に商人か職人からの派生職っぽいので、恐らく最大LVは30か50だと予想がつく。となると、少なくとももう1つインベントリを持つ未発見の職業があるはずだ。
もう俺にとってはこれ以上のインベントリは必要無いけど、ギリギリ届かないって気持ちが悪いから見つけたいところだねぇ。
農家LV50で合計630止め、とかないよね……?
その場合は27㎥のインベントリ2つ、8㎥が1つ、1㎥が1つで、なんとなくキリが良いような気がしないでもないなぁっ!
インベントリの将来に微妙な不安を覚えつつ、大量の洗濯物を干していく。
これこそリムーバーを使って水分をふっ飛ばしてもいい気もするけど、楽に慣れると良くないからな。それに寝具を汚す原因って大体俺だし、その俺が楽をするのはだめだろう、うん。
洗濯も終わったことだし、ヴァルハール遠征に向けて少しでも稽古しておきたいところだ。
そう思ってリーチェを探すも、まだ外には出てきていないね。
何気にティムルと仲いいからな。お風呂掃除の手伝いでもしてるのかも。
家に入って生体察知を発動すると、やはり2人とも浴室にいるみたいだ。誰だよエルフとドワーフの仲が悪いとか言ってる奴。ティムルとリーチェが仲悪かったことなんて1度も無いぞ?
昨日浴槽内で沢山しちゃったから、掃除に手間取ってるんだろうか? だとしたらやっぱり俺のせいなんだから、掃除を手伝った方が良いよね。
2人の反応を追って浴室へ顔を出した。
「ティムルー。リーチェー。洗濯終わったから手伝うよー」
声をかけながら浴室に入るも、掃除は既に終わってるっぽいな?
「ああダン、ありがと。でもお掃除の方はもう終わってるわ。でもちょうど良かったぁ。私も今からダンを呼びに行くところだったの」
「今ティムルとご褒美の相談をしててさ。話がまとまったところだったんだよ」
ほう!? それは随分と興味深いお話をされていたみたいですね! 是非とも詳しく聞かせていただきたいですなっ!
「昨日はニーナとフラッタとムーリの相手ばかりだったからね。可愛くてえっちなお姉さんたちには沢山お世話になったし、俺に出来ることならなんでも聞くよ」
2人を抱き寄せて、ちゅっちゅっとそれぞれに軽いキス。
「たった今洗濯を終えたばかりのダンには申し訳ないんだけど、またいっぱいベッドを汚してもらおうかしらねー」
「えっちなご褒美、いっぱいくれる? ぼくの王子様」
もっちろぉん! 洗濯なんていくらでもしてやるさぁっ! ご褒美だって、もう要らないって言われても押し付けるように返品不可で直送してあげるからねぇっ!
早速寝室に向かおうと、ちょっと自信無かったけどティムルとリーチェを同時に抱き上げる。割と余裕で持ち上がってひと安心。
あ、でもやばいわこれ。ニーナとフラッタの時は気にならなかったけど、ティムルとリーチェだと顔におっぱいがむにゅむにゅと……。
2人のおっぱいの感触を顔面で楽しみながら、2人にご褒美をあげるために寝室に向かう。
……って、既にこのおっぱい抱っこが俺にとってのご褒美過ぎるんだけど?
本当に2人にご褒美あげられてる? 俺だけ一方的にご褒美貰いまくってないかなぁ?
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【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
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【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
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"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
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