異世界イチャラブ冒険譚

りっち

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3章 回り始める物語1 スポットの奥で

157 融合 (改)

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 好色家姉妹の爆誕でモチベーションがデトネイションした俺は、覚えたばかりの魔物察知を駆使して自分から魔物を虐殺して回った。

 そのやる気……いや殺る気のおかげで、凄い勢いで職業浸透が進んでいく。


「白き閃光。不言の万雷。滅紫の衝撃。雷霆響くは界雷の宴。汝、瞬き奔る者よ。サンダースパーク」


 魔導師LV30にて、ようやく上級攻撃魔法を覚えることが出来た。

 新しく習得した攻撃魔法サンダースパークは、自分を中心として円周囲に全範囲雷撃を放つ魔法のようだ。威力も申し分なく、感電効果で魔物の行動を阻害。地中にいようと空中にいようとお構いなしと非の打ち所がない。


 何より特筆すべきは攻撃速度で、一瞬で効果範囲全体に行き渡る高威力の電撃は、最深部の魔物すら1撃で薙ぎ払ってしまう。

 ……もうこれだけでいいんじゃないかな? 魔物察知で見つけた魔物も、サンダースパークで1発で壊滅するんだから。


 次の獲物を探す前にドロップアイテムを回収していると、後方から慌てた様子でみんなも合流してきた。


「こらーっ! 魔物と戦うなら、私とフラッタの職業を変えてからにしなさいっ!」


 ご、ごめんニーナ。むしゃくしゃしてやったことなんだ。


「っていうか今の雷はなんなのっ!? 初めて見たよっ!?」

「今のはニーナとフラッタを好色家に出来た喜びと、そんな2人を艶福家にしてあげられなかった俺の中の理不尽に対する怒りがぶつかり合って、雷となって体の外まで溢れ出しちゃっただけだよ」

「うむっ。言っている事が完全に意味不明なのじゃっ!」


 なんだかんだと俺の胸に飛び込んできてくれた好色家姉妹を捕まえて、ぎゅーっと抱きしめる。

 戦闘終了後のご褒美最高すぎるぅ。よしよしなでなで。


「やれやれ……。アイスコフィンを使えるようになったと思ったら、とうとうサンダースパークまで覚えちゃったかぁ」


 流石建国の英雄にして魔法に強いエルフ族のリーチェは、上級攻撃魔法のことも知っているようだ。


「エルフ族でもサンダースパークまで使える人は、多分そんなにいないと思うな」

「そうなの? エルフって長命種なんだから、いくらでも浸透できそうなのになぁ?」


 リーチェの言葉に首を傾げていると、俺の腕の中の2人が俺の服をくいくいと引っ張ってジトーッとした視線を向けてきていた。

 っとと、まずはニーナたちの転職だったね。


「ごめんごめん。もう落ち着いたよ。それで2人は次になりたい職業はあるの?」

「うむ。ニーナと話し合ったのじゃが、行商人になって荷物を運べるようにしたいのじゃ。いつもダンとティムルにばかり重い物を持たせてしまっているからのぅ」

「所持品の重量軽減補正は、日常生活でも家事仕事でも役に立つからね。それにやっぱりダンに比べて不足している持久力補正を優先したいの」


 なるほど。今だと荷物持ちや水汲み当番が俺とティムルで半固定状態だもんね。

 重量軽減スキルはありとあらゆる場面で効果を発揮してくれるし、持久力補正は2人にとっては1番足りていない部分だ。良く考えられてるね。


「了解。それじゃ2人とも行商人にするね。けど行商人は直ぐに浸透しちゃうと思うから、次に何をするかも決めといてね」


 行商人はLV30で浸透だからね。瞬く間に浸透が済むはずだ。ご休憩日前に浸透が終わってくれる可能性は充分にある。

 よしよしなでなでしながら、職業設定で2人を行商人に設定と。



 行商人LV1
 補正 持久力上昇-
 スキル 所持アイテム重量軽減-



 ふぅむ。このまま2人には荷運び人まで浸透してもらって、持久力補正と重量軽減を極めてもらっても良いんだけど、ここまでくると何を上げてもらっても戦力的にはそんなに変化ないかもなぁ。現時点で過剰戦力過ぎるしぃ。

 などと2人の育成について頭を悩ませていると、ドロップアイテムの回収をしてくれていたティムルから歓声が上がった。


「ダンっ! 出たわっ! 精神異常耐性のスキルジュエル、出てるわよーっ!」

「え、マジかティムルっ!? すぐ行くよ!」


 よしよしなでなでを終了し、急いで散らばったドロップアイテムを回収。白いスキルジュエルを掲げるティムルのところに集まった。

 スキル鑑定を持つティムルが言うんだから間違いないはずだけど、一応自分でも鑑定しておく。



 スキルジュエル
 精神異常耐性



 あ、あれぇ……? 大効果じゃない? これって中効果じゃん……。


 ってそうか。ティムルはスキル鑑定を使ったのは初めてだったかも。+-表記って、見慣れてなかったのかもしれないなぁ。


「うん。間違いなく精神異常耐性のスキルジュエルだね。やっぱり出ちゃったかぁ」


 ティムルからスキルジュエルを受け取る。


 俺に必要な精神異常耐性は大効果。なのにこのタイミングで中効果のスキルジュエルが出る意味。

 ……流石になんの意味が無いとは、もう思えないんだよなぁ。


「これであとはフラッタから1本取るだけだね。ってことで、このスキルジュエルは俺がもらっていいかな?」


 みんなに了承を得て、無事俺が貰っていいことになった。

 魔物察知を発動。まだ敵は近くにはいないな。なら早速やってしまうかぁ。


 静穏の首飾りを外し、スキルジュエルを手にする。

 うん、予感がするよ。俺の考えは外れていないっていう予感が。


「摂理の宝珠よ。神意に従い、加護と恩寵と祝福をここに。スキル付与」


 光に包まれる俺の両手。スキル付与は発動してくれた。後は結果がどうなるか。

 スキルの発動光が収まったあと、手に残った静穏の首飾りを鑑定する。



 静穏の首飾り
 精神異常耐性+ 無し 無し



 ……思った通り、大補正にスキルが成長している。成功だ。


 職業補正もスキルも、同じ物が1つの職業についていたことは今まで1度もなかった。補正は同じでも効果は必ず違っていて、好色家先生や魔導師の補正を見ると、同じ効果の物が複数記載されることは恐らくないのだろうと予想がつく。

 それに加えて、スキルジュエルの希少性と付与成功率の低さから、重複したスキルが打ち消される、なんて可能性は低いと思っていた。

 そしてインベントリや回復魔法などの完全に同じスキルは、重複するとスキルが進化することが分かった。魔玉発光促進やレアドロップ上昇みたいに融合しないスキルも存在するけど。


 つまり今までの色々な経験を踏まえた結果、同じ効果のスキルであればスキル付与でも融合するんじゃないかって思ったのだ。

 仮に失敗しても、俺たちには中効果の精神異常耐性は必要のないものだからね。思い切って試してみた。


 ふぅ、成功してよかった~。これで竜爵家挑戦への条件を1つ達成だ。


「ティムル。見て見て。成功したよー」

「おめでとー……って、あら? スキルの表示が変わってる?」

「うん。今まで職業の補正を教えた時も+とか-って書いたでしょ? -が小効果、何も書いてなければ中効果、+がついてれば大効果ってことなんだよ。だから間違いなく大効果が付与されてるよー」


 そう言えば俺も初めて鑑定した時は、村人のスキルを見て、経験値が吸い取られるのかと思ったもんねぇ。鑑定スキルが使えないと、スキル効果の大小なんて知る由も無いのだ。


「へ? じゃあさっきのは中効果だったの? え? でもその首飾りには大効果がついてるわよ? え? え?」

「インベントリと一緒だよ。同じ効果のスキルが融合して強化されたってワケさ」

「なんだってっ!? スキルが、融合したっ……!?」


 おおうびっくりしたぁ。いきなり大声出さないでよ、リーチェってばぁ。

 インベントリの融合を知ってるくせにびっくりしすぎでしょ。元々インベントリの融合を俺に解説してくれたのってリーチェなのにさ。


「インベントリとか回復魔法とか、融合して強化されたじゃん? だから同効果のスキル同士ならくっ付くんじゃないかと思ったんだよ」

「そんなばかなっ!? そんな事例、聞いたことがっ……!」


 リーチェの反応的に、スキル付与を用いたスキルの合成は常識外れの行ないだったらしい。

 でもインベントリや回復魔法の融合は知ってるっぽかったのになぁ? その延長線上と考えれば、そこまで常識破りってこともないと思うんだけど……。


「今までだって、それを試されたことは絶対にあったはずだ……。でもそんな話、聞いたこと、ないよ……?」


 言われてみれば、あまり使い道のない小効果のスキルなんかは合成を試した奴がいてもおかしくはないよなぁ? ならば何故スキルジュエル合成が知られてないんだ? 


 ……って、ここで邪魔になるのがスキル付与の失敗かぁ。

 ひょっとして、スキル合成には一定以上のレベルが必要だったり、もしくは付与成功率が下がったりする可能性もある?

 超高価なスキルジュエルを用いた検証なんて、そう何度も行うわけにはいかない。だから検証が足りてなかったとか?
 

 ……まぁいいや。重要なのはスキルジュエルは小効果でも無駄にならないってことと、付与術士が浸透しきった俺なら、恐らく確実に付与も融合も成功するであろうってことだけだ。


「リーチェ。もしかしたらスキル付与の成功率って浸透具合に左右されるのかも。完全に付与術士が浸透した俺とそうでない付与術士には、明確な差があるのかもしれないよ」

「浸透具合に左右される……? そう言えばスキル付与の成功率は、経験を積んだ付与術士ほど信頼が出来ると言われているね……。経験とはスキル付与の試行回数ではなく、付与術士の浸透具合の差のことだった……?」


 スキルジュエル自体がアホみたいに稀少だからなぁ。スキル付与の経験数で成功率が上がるんじゃ、新人の付与術士にスキル付与の依頼なんて来ないよね。

 付与術士の浸透具合によって成功率が変わるなら、新人付与術士は浸透を頑張ってから開業すれば良い。


「さて、時間的にもちょうどいいし、スキルジュエルでいい区切りになったし一旦出ようか」


 ニーナとフラッタの行商人が浸透するかもーなんて言っちゃったけど、スキル合成のおかげでなんとなく気が抜けた感じが否めない。無理せず仕切りなおすとしよう。


「俺も魔物察知が出来るようになったからね。次回からは魔物を集める必要も無くなったから、このまま無理して魔物狩りを続ける必要は無いよ」

「魔物察知? 魔物の居場所を探すことが出来るの? そんなスキルあるんだ? ふふ。なんだかもう、ダン1人でもスポットの最深部で戦えちゃいそうだねっ」


 終わりと聞いて、ニーナが嬉しそうに腕を絡めてくれる。

 はぁ~……。今回の遠征は大成功だよぉ。ニーナが甘々のぽわぽわ様態になってくれただけで100%成功だわぁ。


「了解。それじゃこのまま出ましょっ」


 腕を組んだ俺とニーナの頭を優しく撫でながら、ティムルが撤退の音頭を取ってくれる。


「食事したらまた、フラッタちゃんとリーチェと3人で荷物を処分してくるわ。アナザーポータルのおかげで補給に戻れるようになったし、水も節約しなくていいのは嬉しいわねぇ」


 水も節約しなくていいし、大量の物資を持ち運ぶ必要も無くなったからねぇ。ニーナとフラッタが行商人を浸透してくれるけど、遠征ではもうあまり出番はないかもなぁ。

 ま、行商人は日常生活でも大活躍してくれるから問題ないか。フラッタも礼拝日の荷物運びで無双してくれそうだ。


 次の魔物が現れないうちに最深部から脱出。

 緩衝地帯で火を起こし、リーチェに野営の時の手を抜いた調理方法を教えながら食事の用意をする。


「す、凄いねみんな……。適当とか大体って感覚で、こんな美味しいもの作ってるんだ……?」


 俺、ニーナ、ティムルの大雑把な調理を見ながら感心しきりのリーチェ。

 勿論経験込みでの適当って感覚だよ。リーチェも最近は積極的に食事作りに参加してくれてるから、すぐに出来るようになるさ。


「妾から見たら、既にリーチェも充分な腕に見えるがのう? う~む、妾はどうしても料理が上手くいかないのじゃ~」


 完全に食う専門なんだよなぁフラッタは。

 でも1人くらいそんな奴がいたっていいさ。全員が同じことを出来るようになる必要はないよ。


「個人的にはこのスポットでやるつもりだったこと、昨日までで全部こなし尽くした感じなんだよね。装備も更新したし、ニーナの移動制限も緩和させることが出来たし、ルーナ竜爵家に向かう前提条件はクリアしたしさ」

「うんうん。フラッタとの仕合は遠征が終わってからって話だもんね」

「だから最後のアタックは、どこまで全員の浸透を伸ばせるかって感じだよ。出来れば帰る前に、ティムルの好色家まで浸透させてしまいたいねっ」


 させてしまいたいけど、実際できるかどうかは五分五分だなぁ。付与術士はやっぱり上がりにくいし、流石に付与術士を外してまで好色家を優先するわけにもいかないし……。

 
 現在俺は魔導師LV32。斥候LV28がで荷運び人LV22だ。

 ニーナとフラッタは転職直後だから行商人LV1で、ティムルの付与術士がLV12なんだよねぇ。


 次回からは魔物察知を使って、スポット内の魔物を皆殺しにしていきましょうね~。


「私は今回の遠征には大満足だよぅ。まさか16歳のうちにこんなに目に見える変化があるなんて、思ってなかったからっ」


 俺もニーナも、年内にスポットの最深部に来れるって思ってなかったもんね。フラッタとリーチェの加入で、凄まじいブースト効果を受けることが出来たよ。


「私は今回付与術士になれたし、前回もいっぱい愛してもらっちゃったし、スポットの遠征はホント楽しませてもらってるわねぇ。真面目に商人やってた頃よりも稼げちゃってるのは、ちょっとだけ複雑だけどね?」


 勿体無いよねぇ。ティムルの能力なら、シュパイン商会でも辣腕ぶりを発揮できたはずなのにさぁ。
 
 でもどんなに凄い人でも、身内に足を引っ張られちゃうとどうしようもないよなぁ。


「ダンよ。絶対に負けてやるつもりはないが、絶対に勝ってくれると信じておるのじゃ。だから妾も可能な限り、次の最深部狩りでは浸透を進めるつもりなのじゃ」


 俺を真っ直ぐに見詰めるフラッタの瞳に悲壮感は無い。俺に絶対の信頼と期待だけを込めて、赤い瞳を燃やしている。

 当然だ。無双将軍なんて余裕で倒してやるさ。可愛い可愛いフラッタのためにね。ぎゅー。よしよしなでなで。


「凄いねぇ。最深部に来る前は、浸透が早すぎて別の部分が追いついてないって思ったのにさぁ。今じゃ装備も技術も戦闘経験も積み重なって、浸透こそが遅れてるように感じるよ」


 ホントだよ。ティムルの好色家も浸透できるか怪しいし……。

 って馬鹿な!? リーチェがエロい発言をしていないだとぉっ!?



 夕食が終わって、ティムルたちが用事の為に出かける僅かな時間、ニーナと2人きりの穏やかな時間。

 ……のはずなのに、あれ? ニーナさん、今日はちょっと積極的では?


「ダン~。ちゅー。ちゅーしてぇ? 大好きぃ」

「ままま待ってニーナ? 俺もニーナのことは大好きだしちゅーも大歓迎なんだけど、まだ衝立もしてないんだよ? リーチェがいないと誰か近づいても気付けないかもしれないしっ……」


 俺の腕の中で、俺の服の中に手を入れて色々な場所を弄ってくるニーナ。


 こ、これは好色家が浸透した効果か!?

 いや違うな。単にニーナがエロいだけだ。


「んふふー。ダンって広範囲で人の気配が分かるんでしょ? みんなが帰ってくるまでずっとそのスキル、発動しててくれないかなぁ?」


 なななななななにぃぃぃっ!? せ、生体察知にそんな使い方があっただとぉっ!?

 くっそぉ、天才かよニーナっ! 分っかりましたぁぁぁぁ!


 俺の魂に浸透した数多の魔力補正よ……。3人が戻ってくるまで、絶対に力尽きるんじゃねぇぞぉっ!

 というわけで、生体察知オーン!


 そしてスキル発動と同時に口を塞いでくるニーナ。

 ニーナって絶対、俺の鑑定より上位のスキル持ってるよね? スキルのオンオフなんて鑑定でも見破れないはずなんだけどなぁ?


 ま、細かいことはいっかぁ! ニーナぁ、大好きだよぉっ! ちゅー。
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