異世界イチャラブ冒険譚

りっち

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2章 強さを求めて3 孤児と修道女

130 運命か偶然か (改)

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「子供たちの指導は全員で行うけど、スポットへの引率は基本的に俺がするつもりなんだ」


 夕食を食べながら、明日の子供達の引率について話し合う。


「俺が留守の間は家事をしたり、庭の手入れをしたり訓練したり、それぞれ自由に過ごして欲しいと思ってる。もちろん子供たちと一緒に遊んだり、ゆっくり寛いでくれても構わないよ」

「ねぇ、なんで引率はダン1人ですることにしたの? 1人でするにしても、みんなで交代で回せばいいんじゃないの?」


 ニーナの声色に否定的な意味や心配が混じった様子はない。単純に疑問に思っただけみたいだね。


「スポットの入り口に俺達全員で行くなんて過剰すぎるからね。子供たちも村人だけど、加入したての頃のティムルよりも装備的に安全なくらいだしさ」


 ニーナなんて装備品無しで旅してたんだよなぁ。懐かしい。


「俺が引率を担当するつもりなのは、職業の浸透数が多くて色々な事態に対応しやすいと思ったからだよ」

「うんうん」

「引率の時はパーティを組まない予定だけど、初心者4人には何が起こるか分からない。でも俺ならポータルも回復魔法も使える。適任でしょ?」


 ステータスプレートを見せられないニーナとリーチェは、孤児たちとパーティを組みにくいだろうしね。


「それに引率は、今度の遠征に行くまでで終わりにするつもりだからね。転職さえ出来ればもう引率は必要なくなると思う。なら今くらいは俺自身が面倒見ようかなって」

「そうねぇ。フラッタちゃんとリーチェに次ぐ戦闘能力。豊富なスキルで臨機応変に対応できる能力。それに回復魔法もポータルも使えて、意外だけど凄く視野も広いものねぇ」


 ティムルがうんうんと頷きながら太鼓判を押してくれる。


「確かにダン1人いれば引率には充分すぎるわね。引率の時は日帰りで行ける範囲でしか戦わないでしょうし」

「戦力的に適任ってこともあるけど、これからの事をゆっくり考える時間も欲しいって思ってさ。ようやく生活に余裕も出来て、先のことを考えることが出来るようになってきつつあるでしょ?」

「これからのこと?」


 ニーナが首を傾げて聞き返してくる。

 そんなニーナをよしよしなでなでしながら続きを話す。


「これから先もみんなで一緒に過ごすことに変わりはないんだけど、俺がいないところでもそれぞれ先のことについて考えてみて欲しいんだ。そしてみんなが考えた事をまた家で話したいなって思うんだよ。将来の話をするの、凄く楽しかったからさ」


 みんなであれがしたい、これがしたいって話をするの、本当に楽しいしワクワクする。

 だからあえて1人1人で考えて、夜にベッドの上で語り合いたい。


「先の話、かぁ……。ステイルークで死ぬはずだったのに未来が楽しみになるなんて、夢にも思わなかったよぅ」


 自分が生きているのが間違いで、自分は死ななきゃいけないんだ、なんて言ってたニーナはもう何処にもいないね。


「私にとって、未来って惰性と諦めでしかなかったのよ? 貴方達2人に会うまではね? 今は明日みんなとどう過ごそうかなって思うのが楽しくて仕方ないわぁ」


 日を追うごとにエロさを増していくティムル。

 少しくらい手加減してくれてもいいんですけどねぇ?


「妾の未来もルーナ竜爵家の取り潰しと共に閉ざされるはずたったのにのぅ。今は早く大人になって、ティムルやリーチェくらい大きくなりたいのじゃっ」

 
 悩ましいなぁ。可愛いフラッタも捨てがたいけど、大きくなったフラッタも見てみたい。

 見てみたいというか触ってみたい。揉んでみたい。舐めてみたい。しゃぶってみたい。


「ぼくは本当に長い間、時間を無駄にしちゃったなぁって思うよ。独りだとただ流れるだけの時間も、みんなと一緒ならこんなに愛おしい時間になるんだねぇ」


 1人で生きていくのだって、そんなに悪いものじゃないと思うけどね。

 独りで生きていくしかなかったリーチェには、合わない生き方だったってだけでさ。



 夕食が終わって、お風呂で裸のお付き合い。

 1人1人にちゃんと愛を注ぎ込みながらも、みんなとイチャイチャと先の事を相談する。


 今はまだぬるま湯で長湯してるけど、脱衣所と浴室に暖房用魔導具の設置が必要だなっ。



 お風呂から上がって寝室に移動しても、甘々のイチャイチャタイムが続いている。

 みんなと繋がりながら激しい動きもなにもなく、お互いに触れ合ったりくっついたり、5人でじゃれあうように絡み合う。


 気持ち良くなりたい。気持ち良くしたい。

 そんな気持ちよりも、みんなと楽しく時間を過ごしたい。


 ニーナも未来に希望が持てるようになった。

 ティムルも過去を完全に受け入れた。

 リーチェも自分の運命に、絶望以外の何かを見出せた。


 それぞれの不安やストレスがある程度でも解消されたためか、貪るように互いを求めた衝動は鳴りを潜め、ただ傍で同じ時間を過ごすのが楽しくて嬉しくて仕方ない。
 
 今ですらこんなに幸せなのに、4人と正式に婚姻を結べたらどんなに幸せになっちゃうんだろう。今だってめろめろのトロトロにされちゃってるのにさぁ。


 けどフラッタに包まれている時に、ふとルーナ竜爵家のことが頭をよぎる。


 本当にこのまま放置していい話なんだろうか?

 シルヴァの足取り、この国の闇。ルーナ竜爵家はその2つとも深く関わっているんじゃないだろうか?


 フラッタの母親は心配要らないと言っていた。では父親は?

 それに理由も告げずに警告してくる母親の身は、本当に安全だと言えるのか?


 もしも精神攻撃を受けている場合、それがステータス異常であれば俺の鑑定を使えば看破できる。

 そう。これまた俺にしか判定出来ない厄介事なんだよ。これ、俺が放置していい問題じゃない気がするんだ。


 仮にルーナ竜爵家に関わる場合、問題は2つある。

 1つは言うまでもなくニーナの呪いだ。取り潰し前にヴァルハールに行くにはポータルに頼らざるを得ない。つまり、ニーナは参加出来ない。


 そして2つ目は精神攻撃だ。

 違和感を感じながらも正気を保っていたフラッタの装備している竜珠の護りの精神異常耐性は大効果。現在俺が装備している静穏の首飾りは中効果だ。

 仮に精神攻撃が屋敷全体に影響を及ぼしているとしたら、中効果では俺が正気を保てない可能性を否定出来ない。最低限、大効果耐性が必要だろう。


 ゾクリとした感覚が背筋に走る。

 耐性が足りない。

 そう思った今のタイミングで俺の職業は付与術士。そのスキルはスキル付与と技能宝珠出現率上昇だ。


 スポットの最深部を出たタイミングで出現した付与術士。

 まるで今は力不足だから竜爵家に赴けないようにと、そんなタイミングで現れたように感じてしまう。


 なんでもかんでも自分に結び付けて考えてしまうのは、俺の悪い癖だと思う。


 悪い癖だと思うけど。

 もし次の遠征で精神耐性のスキルジュエルがドロップするようであれば。


 年内にもう1度ヴァルハールに赴く必要がありそうだ。


 ま、つまらない思考は忘れて、今はみんなとのイチャイチャを思う存分楽しもっかなぁっ!


 寝るまでイチャイチャと楽しんで、朝起きたらイチャイチャを楽しむ。

 おはようのちゅーをしながら何度も何度もみんなを優しく抱いて、みんなの温もりを楽しむ。


 何周したかも覚えてないけど、そろそろ子供たちが来てもおかしくない。いい加減起きよう。

 やっぱり仕事や用事は大切だと思う。それが無いと俺はもう寝室から出ることは出来ないだろうねっ。

 

 1度玄関先に出て、まだ子供たちが来ていない事を確認。

 急いで朝食を用意すると、ちょうど準備が終わった頃に子供たちが到着した。


 寝室のみんなに出発を告げてからホットサンドを1つ齧り、子供たちにも1つずつ配って、初めての引率がスタートした。


「ねぇダン。ダンには感謝してるし、信用してるけどさ。ほ、本当に村人でも、スポットの中で戦えるの……?」

「はは。そう緊張しなくて良いよサウザー。流石にスポットの中に入った時は俺は戦士だったけどさ、魔物狩りを始めた頃はずっと村人1人の状態で、しかもナイフと靴と盾しか持たずに魔物を狩ってたんだよ」

「え、えぇ……」


 不安げなサウザーを安心させようと自分の体験談を語ったところ、村人1人で装備品も整わない状態で魔物狩りを始めた事にどん引きされてしまった。

 お前らって年齢の割りに、地に足が着いた考え方するよね?


「4人で装備も揃った状態。しかもニーナ、ティムル、フラッタに手解きを受けたお前らなら問題なく戦えるさ」


 ちなみに今回は俺のポータルで送る事はせず、徒歩でスポットに向かっている。


 ポータルはあくまで緊急時にしか使わない。

 始めから楽はさせたくないし、俺もみんなのパーティを抜けたくないから。


「ティムルってずっと商売人でドワーフなのに、すっごく動けて凄いんだよっ!」

「うんうん。ティムルは凄いよなコテン。でもティムルはうちのパーティの荷物を運搬する係りでもあってな? 戦闘以外でも凄く頼りになるんだよ」


 コテンのセリフ的に、ティムルの戦闘スタイルは一般的なドワーフの戦い方とは違うんだろうな。

 確かにティムルって竜人族のフラッタと比べても遜色のないパワーしてるもんね。本来はそのパワーを生かした戦い方のほうが向いている筈だ。


 ティムルの力強さは俺の全身の骨が覚えているし?


「フラッタの剣は本当に凄くてさっ。同じように振ってるはずなのに、全っ然真似出来ないんだよなぁ」

「フラッタは8歳の頃からアウターに潜ってる超エリートだからな。フラッタに剣を習えるのは物凄く幸運なことなんだ。ワンダ、無駄にするなよ?」


 ワンダと会話したあと、ちらりとドレッドの様子も窺ってみる。


 ドレッドは話し掛けてこなかったものの、瞳はやる気に満ちていて鼻息も少し荒くなっている。

 ま、興奮するなってのは無理か。今はやる気を評価しておこう。


 スポットが見える位置までやって来ても、4人には特に反応が無かった。

 マグエルで暮らす孤児、しかも魔物狩り志望だもんな。中に入った事はないかもしれないけど、目にしたことはあったのかもしれない。

 目指すべき目標として。


「4人ともパーティは間違いなく組んでるね? それじゃ行こうか。お前たちがこれから生きていく世界にね」


 俺が先頭で入り、4人が全員スポットに足を踏み入れるのを待つ。


「ここが、ここがスポットの中……。ようやく、ようやくここまで来れたのねっ」

「あまり騒ぐと魔物を呼び込んじゃうからほどほどにね?」


 興奮気味のコテンにやんわりと釘を刺しておく。

 興奮して浮き足立ってしまうのはどうしようもないよな。だからせめてその興奮をなるべく表に出さないように気をつけてね。


「スポットで安定して戦えるようになれば、天候に左右されずに稼げるようになるよ。がんばろうね」


 興奮したり緊張したりしながら、きょろきょろと周囲を見回している4人。

 初々しいなぁ。俺とニーナが初めてスポットに入った時も、凄く緊張してた気がするよ。


 4人の様子に駆け出しだった頃のことを思い出していると、スポットの奥の方から気配が近づいてくる。早速魔物が来たようだ。


「4人とも、魔物が来たよ。戦闘準備だ」

「えっ!? ど、どこにっ!?」


 えーっと、ホワイトラビットが1、ナイトウルフが6、グリーンキャタピラが3体か。入り口付近ではまぁまぁ大きい群れかもな。


「みんなはここで待機してて。1体ずつこっちに通すから、焦らないで全員で相手してね」

「えっちょっ……、ダンっ!?」


 魔物の群れに自分から突っ込み、足が速く最初に接触したナイトウルフ6体に殴る蹴るの暴行を加えて足止めする。

 俺を無視しようとするナイトウルフを目敏く殴り、絶対に後ろには行かせない。

 素早いナイトウルフをいきなり相手させるのも危険だからな。こいつだけは絶対に通してやらないぞっと。


 最初はナイトウルフも凄く恐ろしい魔物に思えたのになぁ。今じゃ武器を抜かなくても余裕で相手が出来てしまうよ。

 しっかし、スポットの中だとナイト系の魔物が昼に普通に出るのが不思議だなぁ。


 そんなどうでもいい事を考えながらも、突進してきたホワイトラビットを正面から受け止めて、動きが止まったホワイトラビットを子供たちに向かってぶん投げた。


「わっ!? わわわっ……!」

「噛み付きと突進に注意! 落ち着いて見れば大した相手じゃない! しっかり囲んで全員で相手しろ!」


 いきなり目の前に飛び出してきた魔物に戸惑いつつも、なんとか武器を構えて臨戦態勢になる子供達。


 そんな4人の様子を気にしながら暴力による足止めを行なっていると、なんとナイトウルフが霧散してドロップアイテムになってしまった。


 ……え、マジで? 素手で魔物倒しちゃった……?


 ってそうか。物理攻撃力補正と打撃補正か。

 職業補正は装備品に乗るものだってフラッタが言ってたね。その時に打撃系の補正は腕防具に乗るとも聞いた気がする。


 どうやら殴る蹴るだと魔物を殺してしまうみたいなので、頭を掴んで地面に叩きつけたり、ナイトウルフの尻尾を掴んでナイトウルフ自体を武器として振り回して時間を稼ぐ。

 初陣だけあって子供達の動きはあまり良くない。これは仕方ないね。


 耐久力の高いグリーンキャタピラには殴る蹴るを繰り返し、ナイトウルフにはダメージ判定がなるべく出ないようにボコボコにして足止めをする。

 視界の端でホワイトラビットが煙になったところが見えたので、ほーらおかわりだよぉっ、と叫びながらナイトウルフをぶん投げる。


 ナイトウルフが残り4体になったので、2体の後ろ足を掴んで振り回しながら、そのナイトウルフで他の魔物を殴る殴る。

 思った通りに武器判定が無いので、なんの遠慮もなく殴る殴る。

 なんかキュウンと怯えた泣き声が聞こえた気がしたけど知らん知らん。魔物の癖に甘えんな。


 子供たちが魔物を倒す度に、ほーら出荷よーっ、とナイトウルフを子供たちにぶん投げる。

 ナイトウルフは、そんなー、とは言わなかったけど、なんとなく俺から解放されて嬉しそうに見えた。気のせいに違いない。


 魔物の殲滅が終わって全員を鑑定すると、早速サウザーが村人LV7になっていた。

 よっし! これなら転職予定日までに全員村人の浸透が終わるだろ!


 そんな風に喜ぶ俺を、子供達はどん引きした目で見ていた。えぇい、なぜだっ。
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