異世界イチャラブ冒険譚

りっち

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2章 強さを求めて3 孤児と修道女

129 孤児冒険団結成 (改)

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 目が覚める。えーっと、いつもと同じ時間くらいかな?

 日が短くなってきたのか、まだ暗く感じるなぁ。


 昨日徹夜をしなかった分、おはようのキスをしながら3人に愛を注いで、リーチェにも愛を流し込んだ。

 最近……、具体的には前回の遠征の出発当日の朝辺りから、おはようのキスがもうキスでもなんでもないよね。


 でもその代わりなのか、なんだかがっつくように肌を重ねる事が減って、俺もみんなも腹八分目くらいで止まれるようになってきた気がする。

 限界まで体力を使い果たし、精根尽き果てて気絶するように眠るのもいいけれど、みんなと愛を確かめ合ったあとに汗だくで抱きつきながら、雑談や軽いボディタッチをするのも意外と楽しいものだと知った。

 1戦辺りの回数と時間が短縮された分、頻度は増えているかもしれない。

 起床時、日中、入浴時、そして寝室。うん、絶対増えてるわ。


 朝食を食べ終わったらいつものように俺はフラッタ、リーチェの2人と稽古、ニーナとティムルの2人は家事、風呂掃除だ。

 なんだか毎日お風呂の掃除と朝の洗濯を2人に押し付けてしまって申し訳ないんだけど、入浴の準備は俺1人でやっているのでせめて片付けは任せて欲しい、と言われてしまっては断れなかった。

 その分俺はしっかりと強くなって、早くみんなを嫁として迎え入れる事で報いなければいけないねっ。


 家事を終えたニーナとティムルも、無双将軍フラッタに手解きを受ける。

 リーチェ曰く、人に教えるのはフラッタの方が圧倒的に上手いということなので、2人の指導はフラッタ師匠にお任せして、俺はラスボスリーチェに全力で挑む。


 ここにいる4人全員への愛情を剣に乗せ、リーチェ本人への想いに上乗せしてぶつけても、リーチェに俺の剣が届く事はない。

 職業の浸透数でも負けてるかもしれないけど、身につけている技術が圧倒的に違う。


 少なくとも500年もの時間をたった独りで生き抜いてきた日々に磨き抜かれた、孤高の剣術。

 誰にも頼れないリーチェの身をずっと護り続けてきた、絶対防御の剣術だ。


 そのあまりの堅牢さに感心していると、たまに木剣を投げ捨てて抱きついてくる、リーチェ本人を表すかのようなポンコツの剣術。

 抱きつかれたら応じねばなるまいよぉっ。ちゅー。


「っはあぁ……。ダンはどんどん強くなっていくねぇ……」


 リーチェの体液が甘いのは最早周知の事実だけど、リーチェから零れる吐息まで甘く感じられるなぁ。

 この甘さを逃したくなくて、ついついリーチェとのキスは長引いてしまいがちだ。


「ううん、ダンだけじゃない。ニーナもティムルも、フラッタだってダンに引っ張られてどんどん腕を上げてるよ。これなら次回からぼくは弓を使ってもいいかもしれないね」

「お姫様のお眼鏡に適ったようでなによりだよ。弓を見るのも楽しみだ。だけど稽古の時は稽古に集中して欲しいなぁ?」


 そんなこと言いながらキスを再開する俺も大概だけどなっ。


 年末までの休暇中に沢山稽古をつけてもらって、フラッタとリーチェの技術を少しでも吸収できるように頑張ろう。

 でも今はリーチェとのキスを全身全霊で頑張ろう。れろれろちゅー。


 打ち合い抱き合い絡め合いと何度かローテーションしていたら、瞬く間に教会に行く時間になったようだ。

 教会に向かう前に、他の3人ともたっぷりとキスを楽しんでしまったけどね。


 なんとか遅くならずに教会に到着すると、ムーリに案内された応接室には4人の子供たちが待っていた。

 緊張してるようだけど、その表情はワクワクを抑えきれてないぞぉ?


「この子達が魔物狩りを希望している4名です。既に全員面識があると思いますが、改めて自己紹介しましょうね」


 ムーリが言う通り、紹介されるまでもなく全員面識がある。


 最年長のワンダ。13歳で人間族の男の子だ。

 お調子者でムードメーカー。大人しいコットンに代わって、教会の子供達を牽引している。


 コテン。11歳で獣人族の女の子。

 じゃじゃ馬でいつもコットンを困らせている子だね。本人に悪気は無いんだろうけど。


 ドレッド。12歳。獣人族で無口めの男の子だ。

 口数は少ないけれど小さい子の面倒見もよく、率先して雑用をするからみんなに慕われている。


 サウザー。10歳。最年少にして、こんな場所の孤児にしては珍しいドワーフ族の男の子だ。

 最年少というだけでなく、同年代と比べても小さい体を見てしまうと、戦いに出すのが少し心配になってしまうね。

 
 全員が村人だけど、そのレベルには多少バラつきがある。これはきっと年齢のせいだろう。

 転職のタイミングは全員で統一したほうがトラブルは起きない気がするので、まずは4人の村人を浸透させようかな。


 レンタル装備のルールや、レンタル料金などを説明する。


 転職先とそのタイミングはこちらの指示に従ってもらうこと。

 自分たちが死んだらムーリに借金を背負わせてしまうことは、特に強調して説明しておいた。


 しかしここまでは黙っていたムーリが、引率の話になった途端に声を上げた。


「えっ!? いきなりスポットに入れるのですかっ!? それはちょっと危険なんじゃ……?」

「俺も始めはスポットの外でナイトシャドウ辺りと戦わせるべきかと思ったんだけどさ。スポットの外って野生動物が出る可能性があるんだよね」


 今まで1度も遭遇したことがない野生動物。

 恐らく遭遇率がかなり低いのだろうとは思うけれど、スポット内に野生動物が居ない事は証明されている。突発的な事故率なら、恐らくスポットの中のほうが低いんじゃないだろうか。


「装備品の効力が得られないスポットの外で戦う方が事故が起こる危険が大きい。それを踏まえると、装備をしっかり整えてスポットの入り口付近で戦う方が恐らく安全でしょ?」


 そう。一昨日ムーリと話をした時はバトルシステムの事を失念していたのだ。


 ある程度戦闘職の浸透が進んでも、野生動物に噛み付かれればリーチェでさえも即死する可能性がある。

 だから俺たちが遠征に行く前に引率して、スポットでの活動に慣れてもらったほうが安全だ。


 ……今後の事を考えるなら、1度俺も野生動物と戦っておくべきかなぁ。でもまず出会い方が分からないか。


 ムーリがスポットの中と外の危険性に頭を悩ませているうちに、俺は4人に声をかける事にした。


「お前達には悪いけど、お前たちの職業は俺が決めさせてもらうよ。最初は戦士、旅人、商人、修道士を1人ずつだ」


 子供達の顔を見る。特に不満はなさそうかな?


「戦士、旅人、商人の3つは全員に上げてもらうけど、それ以降はある程度パーティ内で役割分担してもらうつもり」

「う、うんっ……」

「戦闘職を伸ばす前衛担当が1人か2人、旅人から冒険者を目指す移動担当が1人。商人から行商人を目指す、物資の運搬担当が1人欲しい」


 全員が戦士を浸透させる頃には、入り口付近では物足りなくなるはずだ。

 そうなった時、長期遠征には行商人が1人は欲しい。


 子供達で構成されたパーティとは言え、人間込みの3種族混成パーティだ。種族混成で経験値ボーナスが得られるとするなら、年内には2つくらい職業が浸透してもおかしくないはず。


「パーティは6人まで組めるんだから、あとの2名の増員は自由でいいよ。でもお前たちのパーティメンバーになる以上は俺達の指示には従ってもらうから、増員する時はちゃんと納得してもらうようにね」

「わ、分かった。けどうちの奴らでダンたちの言うことを聞かない奴は居ないと思う。心配要らないよ」


 お調子者らしいワンダの回答ではあるけど、実際子供達は素直に言う事を聞いてくれそうだからな。勝手に無茶な事をするような子は出ないだろう。


「あーっとムーリ。修道士ってマグエルでも転職可能なのかな?」

「いえ、マグエルには修道士ギルドが無いので無理ですね。1度スペルディアの修道士ギルドに足を運ぶ必要があります。混み合っていることはないでしょうけど、一応利用には事前予約が必要ですね」


 教会で転職できたら楽だったんだろうけどなぁ。

 ポータルが一般社会に浸透してるから、細かく支部を作る必要がないんだろうね。


「それじゃムーリに金貨1枚渡しておくから、事前予約と転職の引率をお願いできるかな? えぇっと予定は……、礼拝日の3日後でお願い」

「そ、それは構いませんけどっ……! もし……、もし転職に失敗してしまったら、どうすればいいんでしょうっ!?」

「転職に失敗しても怒らないし、もし必要になるなら転職費用の金貨3枚は俺が出すよ。魔物狩りをするなら必要経費だからね。礼拝日に一生懸命手伝ってるこの4人が修道士になれないなんて、俺は思ってないけどね」


 4人が修道士にも慈善家にもなれるのは確認済みだし?


「さて、さっきも言った様に、戦士、商人、旅人の3つは4人とも経験してもらうつもりだけど、1番最初は職業が被らないように選んでもらいたいんだ」


 安全性を重視するなら4人とも戦士スタートにするべきかもしれない。

 けれどパーティ全員で役割分担をするなら、ドロップアイテムの運搬を担当する旅人、戦闘を担当する戦士、ドロップアイテムの質を上げる商人、不測の事態に対応しやすくなる回復魔法の使い手を1人ずつ参加させるほうが安定すると思うんだよね。


「俺が指名しちゃってもいいけどさ。せっかくだし、お前たち4人で話し合って決めてみなよ」


 俺からの提案に、わーっ! と集まって、ワイワイと楽しそうに話し合う4人。

 この4人を死なせるわけにはいかない。責任は重大だぞ、俺。


 話し合いの結果、ワンダが旅人、コテンが戦士、ドレッドが修道士、サウザーが商人になる事が決まった。


 コテンが戦士を強く希望し、ドワーフのサウザーは将来的には職人になってみたいと商人を希望した。

 そして冒険者に憧れているワンダが旅人に、常に冷静で視野の広いドレッドが修道士を任された。


 割り当てが決まったところで、全員に職業の役割を簡単に説明する。


「ワンダ。旅人の存在は魔物狩りの報酬に大きく関わって来るんだ。責任重大だぞ」

「ああ! みんなが集めたドロップアイテムは、俺が全部持ち帰ってくるよっ!」


 お調子者のワンダらしい、元気の良い返事だ。

 パーティリーダーは、楽天家なくらいでちょうどいいさ。

 
「コテン。お前がみんなを守るんだ。戦士のお前が倒れたら他の3人も死ぬことになる。お前は絶対に倒れるわけにはいかないぞ?」

「うん! 絶対に魔物なんかに負けたりしない! それに絶対に無茶はしないよっ!」


 無茶はしない、と真剣な面持ちで頷くコテン。

 じゃじゃ馬なだけじゃなくて、ちゃんとみんなを守る責任を感じてるようだね。


「ドレッド。修道士のスキルは、傷ついたみんなの体力を回復させることが出来るんだ。もしもの時はお前がパーティを支えるんだぞ」

「……任せて」


 いつも通り口数少ないドレッド。でもその瞳には決意が感じられる。


「サウザー。子供たちだけのパーティには、色々な思惑を持った大人たちが近付いてくるかもしれない。商人のスキルでみんなを悪意から守るのがお前の仕事だ。ある意味1番大変だぞ。がんばれ」

「うんっ。僕達を捨てた大人になんか絶対に利用されてたまるもんかっ」


 大人への怒りを隠そうともしないサウザー。その警戒心を見て少しだけ寂しくなる。


 お前を助けたのも、ムーリみたいな大人なんだよ?

 ま、いつか自分で気付いてくれりゃいいさ。


「転職は全員同じ日、ドレッドが修道士になる日にしようか。今日はこのままうちに来てくれる? 装備品を渡すから、少し武器の振り方を練習しよう」


 ワンダにはロングソード、他のみんなはナイフかダガーかな。

 獣人族で小柄なコテンには、ティムルみたいにダガー二刀流が合ってるかもしれない。


「明日から早速、俺の引率でスポットに入ろうと思うんだ。絶対に無茶はさせないから安心してね」

「ええ。ダンさんのこと信用してますから。みんなの事を、それから私の事も、どうかよろしくお願いしますね」


 ムーリを迎え入れる以上、マグエルのトライラム教会を丸ごと引き受けるくらいのつもりでいなきゃね。


 4人と自宅に戻り、まずは装備を配布する。


 ワンダには鉄製のロングソードを新しく作成。

 人間族のため非力で、まだ体も成長し切っていないワンダには盾は渡さず、両手で剣を振るうスタイルで戦ってもらう。

 借りる装備数が減れば、レンタル料が抑えられるというメリットがあるしね。


 コテンはティムルのお古の、無印ダガー二刀流だ。

 獣人族のため身体能力も高いので、積極的に魔物を殲滅して欲しい。


 ドレッドにはメイスと木の盾を渡す。

 視野が広く冷静沈着なドレッドには、ヒーラー型タンクとして要所要所でパーティを救ってもらいたい。


 サウザーにはナイフをと思ったけど、前回の遠征で作った鉄の槍を渡すことにする。

 サウザーは小柄ではあるけど筋肉質で、獣人族ほどの瞬発力はない。割と槍の扱いとは相性が悪くない気がしたんだよね。



 ワンダ
 男 13歳 人間族 村人LV9
 装備 ロングソード 皮の帽子 皮の軽鎧 皮の篭手 皮の靴


 コテン
 女 11歳 獣人族 村人LV8
 装備 ダガー ダガー 皮の帽子 皮の軽鎧 皮の篭手 皮の靴
 

 ドレッド
 男 12歳 獣人族 村人LV9
 装備 メイス 木の盾 皮の帽子 皮の軽鎧 皮の篭手 皮の靴


 サウザー
 男 10歳 ドワーフ族 村人LV6
 装備 鉄の槍 皮の帽子 皮の軽鎧 皮の篭手 皮の靴




 渡してから気付いたけど、槍の技術を教えられる人が誰もいなかった。

 バトルシステムのおかげで魔物戦には問題がないと思うけど、将来的には少し心配かなぁ?

 槍の使い手に指導の依頼を出すのもいいかもしれない。


 ワンダとサウザーをフラッタが指導し、コテンはティムル、ドレッドはニーナが指導を担当。俺とリーチェは2人で手合わせだ。

 子供もいるんだから抱きつき禁止な?


 移動阻害の呪いのせいで仕方なく確立した、ニーナの受け止めて反撃する戦闘スタイル。

 それがヒーラータンクのドレッドに最も相応しい戦い方であるなんて、なんとも面白いもんだ。


 コテンはティムルの指導がハマって、かなり楽しそうに訓練しているな。

 獣人族に瞬発力では敵わないけれど、ティムルにはそれを補って有り余るほどの戦闘経験があるからね。


 ワンダとサウザーはフラッタの細かい指導に悲鳴を上げながらも、真面目に取り組んでいるようだ。

 フラッタの剣術は本当に美しいし、脳筋ルーナ竜爵家には槍使いもいたらしく、本格的な指導は出来ないとは言いつつも、本質を見抜くのが得意なフラッタの槍の指導は初心者には十分な内容だろう。

 そんな子供達を横目に見ながら、リーチェとひたすら稽古に励んだ。暗喩ではない。


 暗くなるまで稽古を続け、装備品もそのまま貸し出して今日は解散だ。


「みんな、今日はお腹いっぱい食べてしっかり寝るようにね。寝不足でスポットに入ったら間違いなく死ぬから。無茶はさせないから、まずは体調を万全にして欲しい」


 あまり不安を煽るのもどうかとは思うけど、スポットの危険性と魔物狩りのリスクについては再三伝えていく事にする。


「明日は朝食を食べたらうちに来てね。体調に不安があったら隠さずにちゃんと報告することっ」


 元気良く返事をして、元気良く走っていく4人。

 なんとなく、種族が混成しやすい孤児って魔物狩りに向いてね?


 まずはサウザーの村人を浸透させてしまわないとな。

 4人のやる気次第だけど、きっと転職日には全員浸透が終わってるはず。


 さて、トライラム教会の経済的自立の第1歩は踏み出せた。

 だから始めの1歩で躓くわけには、いかないよねぇ。
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