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2章 強さを求めて3 孤児と修道女
128 休暇の提案 (改)
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冒険者ギルドでの話を終えて帰宅する。
思ったよりも早い時間だったので、子供達に混ざって花壇や畑の世話を手伝う。
……間違いなく自宅の庭の手入れなのに、完全にお手伝い感覚だな。
寝室に直行しても良かったんだけど、ちゃんと4人以外のことにも目を向けないとすぐに溺れてしまいそうだからなぁ。
既にどっぷり溺れて沈んでるけど、流されるだけじゃ幸せは逃げてしまう。
どっぷり溺れて路頭に迷ったどっかのジジイを他山の石とすることが大切だ。
日没後、みんなで夕食を食べながら、冒険者ギルドで聞いた話などを話し合う。
「やっぱりスペルドの北がドワーフ族の生活圏なんだね」
「ええ。奴隷として売り払われた時は知らなかったけど、商売人として経験と勉強を重ねるうちに知ったわ」
この世界にはテレビもネットも無いのだから、ティムルのように行商でもしない限り王国全体の地図を把握する必要は無いのだろう。
きっと殆どの人が、自分の住んでいる場所が王国の何処に位置しているのか把握してないんだろうね。
「尤もドワーフの集落は幾つも点在していて、私の故郷は正確には分からなかったわ。帰る気もなかったしね」
商人時代の話もドワーフ族の話も、ティムルはなんでもないように話してくれる。
どちらの時も辛い体験をしてきたはずなのに、まるでどうでもいいことのように話すティムル。完全に吹っ切れてくれたのかな?
「ギルドの人はドロップアイテム頼みで生活してるって言ってたけど、実際は魔物すら出ない場所なんでしょ? どうやって生活してたのさ?」
「勿論交易よ。この世界にはポータルがあるからね。ドワーフの職人が装備品を作り、それを対価として水や食料を買い込むの」
なるほど。物資の輸送にインベントリはあまり活用出来ないにしても、例えば行商人が限界まで荷物を持ってポータルで移動すれば……。
いやでも、集落のドワーフ全員を賄う食糧って相当な量なんじゃ?
「水や食料が完全に輸入に頼るしかないドワーフたちの生活は、相当に苦しいものだったわ。あんな苦しい生活をしてまでなんで不毛の地に拘るのか、私にはどうしても分からなかったの」
怒りも悲しみもなく、ただ昔を懐かしむように語るティムル。
ティムルの言っていることはとても共感できるし、だからこそやっぱりドワーフたちが不毛の大地に拘る理由が理解できなくて困る。
「って、ドワーフって腕の良い職人が沢山いるんでしょ? そしてこの世界の装備品は超高額商品だ。いくら不毛の地にいるからって、何でそんなに苦しい生活になるの?」
水や栽培された食料の運搬にはインベントリは使えないけれど、少量ずつでも移動魔法で運搬できるのだから、現代日本よりも優れた物流システムが存在していると言ってもいいんじゃないの?
装備品って滅茶苦茶高額だし、装備品をばら撒けばいくらなんでも口減らしが必要になるほど困窮するとは……。
「元々装備品って高額なのに、更にダマスカス以上の装備品の製法なんて、ドワーフが独占してるって話でしょ? いくらでも潤う要素がある気がするんだけど」
「ふふ。それがねぇダン。私も商人になってから知ったんだけど、ドワーフ族の取引って物凄く足元を見られてるのよ。だって、装備品は無くても生きていけるけど、水や食料は欠かすことが出来ないでしょう?」
え、えええ……。つまり、ボッタくられていたと? 種族全体が?
「ティムルには悪いけど、俺にはドワーフ族が理解できないなぁ。だってこの世界の装備品って、スキルで作るじゃん。何処に住んでたって品質なんて変わらないでしょ?」
場所で変わるとすれば、装備品の素材を自力で調達できるかどうかくらい……。
ってそうか。いくら職人の腕が良くても、魔物が出ないドワーフの里では装備品の素材すら手に入らない?
つまり取引材料の装備品を作ることすら、取引先の相手の顔色を窺わないといけないってことか……?
「……なんで苦しい想いまでして、そんな場所で生活してるのか、俺にはさっぱり理解できないよ」
「っぷ、あっはははははっ! それっ! 私もそれを言ったのよっ! でもドワーフにとって、あの地での生活に疑問を持つこと自体が許されなかったの」
疑問を持つことすら許されないって、それってもう弾圧に近くない?
というかぶっちゃけ、ドワーフの里にそこまでするような価値を一切見出せないんだけど。
「ここは先祖代々の土地だから、ドワーフ族の歴史そのものだからと。そこに疑問を持ったティムルはおかしい、ドワーフの面汚しだって言われるようになったのよねぇ」
ん、ん~……? ま、まさかとは思うけど、ドワーフの連中も明確な理由があって不毛の地に住んでるわけじゃない……?
先祖が住んでたから、ドワーフ族として当たり前だから。
な、なんとなくて不毛の地で大変な生活をしてるとか、そんなわけ、流石に、ない、よね……?
……ヤバいな。せめてダマスカスとオリハルコンの製法の秘密がその土地に無いと、ドワーフ族ってそのうち滅びてもおかしくないくらいのアホしかいないことになってしまうよ……。
な、なんか生産系の浸透進めるの怖くなってきたなぁ……。
「どうしたのダン。珍しいね? 心底うんざりした感じなのに落ち込んでるわけじゃないのって、珍しいの」
ニーナに心配かけずに済んで良かったけど、流石にこれは外れてて欲しい……。
「って質問なんだけど、ダマスカスとかオリハルコンって凄い高級品なんだろうけどさ。今現在、その作り手ってちゃんといるんだよね?」
一般的に出回っている装備品の品質はミスリルまで、つまり武器職人のLV40レシピまでのものしか流通していない。
それどころかミスリル品質の装備品さえまともに置いていない店が殆どだったりする。
「まさかとは思うけど、過去に作られた物しか出回ってないとか、そんなことないよね? ちゃんと新しく生産されてるんだよ、ね……?」
「えっと、少なくとも私は知らないわね。私がドワーフと取引をしたくなかったのもあるけど、そう言えば聞いた事がないわ。リーチェやフラッタちゃんは、ダマスカスやオリハルコンを扱える職人って知ってる?」
「妾は何も知らないのじゃ。装備品も両親に用意してもらったものだしのぅ」
「ぼくも知らないかな。というかエルフのぼくにドワーフの知り合いなんて、ティムルしかいないよ」
や、やばい。どんどん疑惑が深まっていく……。
いや、この問題はもう忘れたほうがいいなっ! 精神衛生上よろしくないわ。
ちょっと無理矢理にでも話題を変更する事にしよう。
「仮に今日紹介されたアウターの中にニーナの両親が潜っていたアウターが含まれているとしたら、位置的に暴王のゆりかごが怪しいと思ってるんだけど、ティムルとリーチェはドワーフ族の集落に行くのには抵抗は無い?」
「私は抵抗もないし、興味もないわね」
「ぼくも気にしないけど、ぼくの場合は逆に集落側に嫌がられそうかな」
リーチェは気にしないけど、ドワーフ側がリーチェを嫌う可能性は低くないか。
なんか初めてリーチェに会った時の事を思い出すな。リーチェが気にしなくてもこっちが気にする場合は対応が難しい、みたいな話をした覚えがあるよ。
「いざとなったらリーチェを別の街で待たせて暴王のゆりかごまで到達して、俺のポータルで改めてリーチェを迎えに行くしかないな。最終手段だけど」
「でもダン。獣人の父さんたちがドワーフの生活圏に入って行ったとはちょっと考えにくいの」
暴王のゆりかごへの侵入に対して頭を捻っていると、ちょっと待ってとニーナから指摘が入った。
「当時は手付かずだって言ってたし、ひょっとしたら未だ世間に知られてない場所の可能性だってあるんじゃない?」
その場合は正直お手上げだわ。
やはり調剤士と修道士を浸透させて、霊薬ツリーと回復魔法ツリーを進めるほうが堅実かなぁ?
ああ、そもそもの話、別にニーナの両親が呪いを受けたアウターを探す必要は無いのか。そこじゃないと解呪出来ないと決まったわけでもないのに。
職業の浸透を進めたほうがやっぱり確実な気がする。
「ちなみにフラッタ。竜王のカタコンベは竜人族以外にも解放されてるの? 人間族でも入れるわけ?」
「ぐっ……、微妙にトゲを感じるのじゃっ……!」
ぐぬぬと可愛く唸りながらも、直ぐに気を取り直して質問に答えてくれるフラッタ。
「あそこは誰でも……、竜人族じゃなくともヴァルハールの住人じゃなくとも入る事が可能なのじゃ。妾も8つの時から入っておるしのぅ」
フラッタは領主の娘で竜人族だからなぁ。
俺が潜れるかどうかの判断の参考にしにくい。
「結局俺の浸透を進めるのがニーナの解呪の1番の近道かなって感じるんだけど、スポット以上に稼げる場所って思いつかないね」
ヴァルハールは遠いし、俺とニーナはステイルークに入れないので侵食の森には行けない。後は全部遠い。
移動時間まで考慮するなら、マグエルに留まって職業浸透を進めるのが1番の近道だったりしないかな?
「……旅をするよりも、ここでガンガン浸透を進めるべきかもなぁ」
「それはなんとも言えないねぇ。旅をしなくていいなら楽だけど、呪いを解除できる職業なんてあるのかなぁ」
それはある。絶対にあるんだよリーチェ。なぜなら呪いは状態異常だから。
この世界の呪いはオカルトじゃなくて仕様だ。
なら絶対に、スキルか魔法か魔法薬で治せないとおかしいんだよ。
1つの希望があるとすれば、転移ボーナスAの魔神皇の指輪についていたスキル、全状態異常耐性の存在だ。
全状態異常っていうくらいだから、多分呪いにも効果があるはず。
それに『全状態異常』という効果対象があるなら、それに対応した回復魔法やアイテムは必ずあるでしょ。無いとおかしい。
「次回の遠征では浸透を進めまくって、色々な職業を確認するよ。年内に呪いを解いて結婚、ってのが最高の流れだけど、そこまで甘くないかな流石に」
「じ、次回の遠征はヤバそうねぇ……。移動が7日で済むなら、10日くらいは最深部で戦える計算になっちゃうわ……」
2日間でも相当浸透を進めることが出来たからなぁ。
次回の遠征では、聖騎士とかまで視野に入れられるかも?
「……あれ? その計算でいくと、魔玉500個じゃ足りなくない……? 前回最深部で2日間戦っただけで、100個以上発光魔玉持ち帰ってるよね……?」
「……ダン。あとで私のインベントリから空魔玉を引き取ってくれる? 出発までにあと500個購入しておくから……」
さ、流石に1000個あれば足りるよな……?
全部光ったら5000万。転移ボーナスCが年内に射程圏内だよ。ビビるわ。
もう税金も家の契約料も、教会の子供達の税金だって、何の心配も要らなくなってしまうなこれは。
お金の心配が無いなら、少しくらいのんびりしようかな?
「あー、1つ提案なんだけど、次回の遠征が終わったら今年の遠征は終わりにして、年末はマグエルでゆっくり過ごさない?」
休んでいる間に出来る事は、沢山あるかもしれないけれど。
みんな今までずっと頑張ってくれてたし、少しくらい休みがあってもいいんじゃないかな。
「なんか次回の遠征で、教会の子供たち全員分の税金払っても余裕が出来そうだし。みんなには問題の解決が遅れることになって、少し申し訳ないんだけどさ」
「うん。私は構わない、っていうか楽しみかなっ。ダンにもムーリをめちゃくちゃにする時間が必要だもんねっ」
そ、それがあったかぁっ!
や、やばい! この4人にムーリまで入れて、1ヶ月間マグエルで過ごすとか……!
絶対次回好色家を上げきるぞぉっ!
「んー。次回の遠征次第では、この家を買い取っちゃうのもアリかもしれないわねぇ」
あ、それいいなティムル。もうこの家を手放す気は全く無いし。
「ダンが借りるまで不良債権扱いだったし、金額次第ではあっさり譲ってくれそうな気がするわ。ジジイがいなくなったシュパイン商会なら、多分売ってくれると思うわね」
元シュパイン商会会長夫人の見立てなら信憑性は高そうだ。
年間契約料が2万リーフだったんだから、50年分の100万リーフくらいで売ってくれないかなぁ。
「明日の話次第じゃが、休みがあるなら教会のみんなにもみっちりと訓練をつけることが出来るのじゃっ! 妾たちが休む事で、意外と色々なことが出来そうな気がするのう」
なるほど。それもいいな。
魔物狩り希望の子が誰かは分からないけど、フロイさんにたった数日教わっただけの俺でも生きて来れたんだ。
フラッタによる正しい戦闘指導を1ヶ月間も受けられたら、日帰りできる範囲で事故が起きる可能性をかなり減らせるだろう。
「ぼくは1日でも早くダンのお嫁さんになりたいところだけどね。でも、ダンにこそ休みが必要だよ。強くなるのが早すぎるもの。それに今だから出来ること、今のうちにいっぱいしたいし、さ……」
最後はきっちりエロで締めるリーチェ。流石でございます。
俺も1日でも早くリーチェを迎え入れたいけれど、今のリーチェとだってゆっくりのんびり過ごす時間も必要だ。
今のリーチェも未来のリーチェも、分け隔てなく一緒に過ごしたいからね。
休暇の提案はみんなにも好評で、お風呂で運動しながらも、あれがしたい、これがしたいと話が尽きなかった。
お風呂から上がってベッドの中で有酸素運動を開始したあともなんだかまったりとした雰囲気で、徹夜が許された日だったのに夜が明ける前にみんなでくっついて、色々な話をしながら眠りについた。
話しながらフラッタが眠り、リーチェが眠り、1人ずつ楽しげに夢の世界に旅立っていくのが凄く愛おしかった。
未来に期待が持てるって、本当に素晴らしい事だと思う。
ステイルークで出会った頃のニーナに、年末までには来年の話を笑って出来るようになってるよー、なんて言っても、きっと信じてくれないだろうなぁ。
思ったよりも早い時間だったので、子供達に混ざって花壇や畑の世話を手伝う。
……間違いなく自宅の庭の手入れなのに、完全にお手伝い感覚だな。
寝室に直行しても良かったんだけど、ちゃんと4人以外のことにも目を向けないとすぐに溺れてしまいそうだからなぁ。
既にどっぷり溺れて沈んでるけど、流されるだけじゃ幸せは逃げてしまう。
どっぷり溺れて路頭に迷ったどっかのジジイを他山の石とすることが大切だ。
日没後、みんなで夕食を食べながら、冒険者ギルドで聞いた話などを話し合う。
「やっぱりスペルドの北がドワーフ族の生活圏なんだね」
「ええ。奴隷として売り払われた時は知らなかったけど、商売人として経験と勉強を重ねるうちに知ったわ」
この世界にはテレビもネットも無いのだから、ティムルのように行商でもしない限り王国全体の地図を把握する必要は無いのだろう。
きっと殆どの人が、自分の住んでいる場所が王国の何処に位置しているのか把握してないんだろうね。
「尤もドワーフの集落は幾つも点在していて、私の故郷は正確には分からなかったわ。帰る気もなかったしね」
商人時代の話もドワーフ族の話も、ティムルはなんでもないように話してくれる。
どちらの時も辛い体験をしてきたはずなのに、まるでどうでもいいことのように話すティムル。完全に吹っ切れてくれたのかな?
「ギルドの人はドロップアイテム頼みで生活してるって言ってたけど、実際は魔物すら出ない場所なんでしょ? どうやって生活してたのさ?」
「勿論交易よ。この世界にはポータルがあるからね。ドワーフの職人が装備品を作り、それを対価として水や食料を買い込むの」
なるほど。物資の輸送にインベントリはあまり活用出来ないにしても、例えば行商人が限界まで荷物を持ってポータルで移動すれば……。
いやでも、集落のドワーフ全員を賄う食糧って相当な量なんじゃ?
「水や食料が完全に輸入に頼るしかないドワーフたちの生活は、相当に苦しいものだったわ。あんな苦しい生活をしてまでなんで不毛の地に拘るのか、私にはどうしても分からなかったの」
怒りも悲しみもなく、ただ昔を懐かしむように語るティムル。
ティムルの言っていることはとても共感できるし、だからこそやっぱりドワーフたちが不毛の大地に拘る理由が理解できなくて困る。
「って、ドワーフって腕の良い職人が沢山いるんでしょ? そしてこの世界の装備品は超高額商品だ。いくら不毛の地にいるからって、何でそんなに苦しい生活になるの?」
水や栽培された食料の運搬にはインベントリは使えないけれど、少量ずつでも移動魔法で運搬できるのだから、現代日本よりも優れた物流システムが存在していると言ってもいいんじゃないの?
装備品って滅茶苦茶高額だし、装備品をばら撒けばいくらなんでも口減らしが必要になるほど困窮するとは……。
「元々装備品って高額なのに、更にダマスカス以上の装備品の製法なんて、ドワーフが独占してるって話でしょ? いくらでも潤う要素がある気がするんだけど」
「ふふ。それがねぇダン。私も商人になってから知ったんだけど、ドワーフ族の取引って物凄く足元を見られてるのよ。だって、装備品は無くても生きていけるけど、水や食料は欠かすことが出来ないでしょう?」
え、えええ……。つまり、ボッタくられていたと? 種族全体が?
「ティムルには悪いけど、俺にはドワーフ族が理解できないなぁ。だってこの世界の装備品って、スキルで作るじゃん。何処に住んでたって品質なんて変わらないでしょ?」
場所で変わるとすれば、装備品の素材を自力で調達できるかどうかくらい……。
ってそうか。いくら職人の腕が良くても、魔物が出ないドワーフの里では装備品の素材すら手に入らない?
つまり取引材料の装備品を作ることすら、取引先の相手の顔色を窺わないといけないってことか……?
「……なんで苦しい想いまでして、そんな場所で生活してるのか、俺にはさっぱり理解できないよ」
「っぷ、あっはははははっ! それっ! 私もそれを言ったのよっ! でもドワーフにとって、あの地での生活に疑問を持つこと自体が許されなかったの」
疑問を持つことすら許されないって、それってもう弾圧に近くない?
というかぶっちゃけ、ドワーフの里にそこまでするような価値を一切見出せないんだけど。
「ここは先祖代々の土地だから、ドワーフ族の歴史そのものだからと。そこに疑問を持ったティムルはおかしい、ドワーフの面汚しだって言われるようになったのよねぇ」
ん、ん~……? ま、まさかとは思うけど、ドワーフの連中も明確な理由があって不毛の地に住んでるわけじゃない……?
先祖が住んでたから、ドワーフ族として当たり前だから。
な、なんとなくて不毛の地で大変な生活をしてるとか、そんなわけ、流石に、ない、よね……?
……ヤバいな。せめてダマスカスとオリハルコンの製法の秘密がその土地に無いと、ドワーフ族ってそのうち滅びてもおかしくないくらいのアホしかいないことになってしまうよ……。
な、なんか生産系の浸透進めるの怖くなってきたなぁ……。
「どうしたのダン。珍しいね? 心底うんざりした感じなのに落ち込んでるわけじゃないのって、珍しいの」
ニーナに心配かけずに済んで良かったけど、流石にこれは外れてて欲しい……。
「って質問なんだけど、ダマスカスとかオリハルコンって凄い高級品なんだろうけどさ。今現在、その作り手ってちゃんといるんだよね?」
一般的に出回っている装備品の品質はミスリルまで、つまり武器職人のLV40レシピまでのものしか流通していない。
それどころかミスリル品質の装備品さえまともに置いていない店が殆どだったりする。
「まさかとは思うけど、過去に作られた物しか出回ってないとか、そんなことないよね? ちゃんと新しく生産されてるんだよ、ね……?」
「えっと、少なくとも私は知らないわね。私がドワーフと取引をしたくなかったのもあるけど、そう言えば聞いた事がないわ。リーチェやフラッタちゃんは、ダマスカスやオリハルコンを扱える職人って知ってる?」
「妾は何も知らないのじゃ。装備品も両親に用意してもらったものだしのぅ」
「ぼくも知らないかな。というかエルフのぼくにドワーフの知り合いなんて、ティムルしかいないよ」
や、やばい。どんどん疑惑が深まっていく……。
いや、この問題はもう忘れたほうがいいなっ! 精神衛生上よろしくないわ。
ちょっと無理矢理にでも話題を変更する事にしよう。
「仮に今日紹介されたアウターの中にニーナの両親が潜っていたアウターが含まれているとしたら、位置的に暴王のゆりかごが怪しいと思ってるんだけど、ティムルとリーチェはドワーフ族の集落に行くのには抵抗は無い?」
「私は抵抗もないし、興味もないわね」
「ぼくも気にしないけど、ぼくの場合は逆に集落側に嫌がられそうかな」
リーチェは気にしないけど、ドワーフ側がリーチェを嫌う可能性は低くないか。
なんか初めてリーチェに会った時の事を思い出すな。リーチェが気にしなくてもこっちが気にする場合は対応が難しい、みたいな話をした覚えがあるよ。
「いざとなったらリーチェを別の街で待たせて暴王のゆりかごまで到達して、俺のポータルで改めてリーチェを迎えに行くしかないな。最終手段だけど」
「でもダン。獣人の父さんたちがドワーフの生活圏に入って行ったとはちょっと考えにくいの」
暴王のゆりかごへの侵入に対して頭を捻っていると、ちょっと待ってとニーナから指摘が入った。
「当時は手付かずだって言ってたし、ひょっとしたら未だ世間に知られてない場所の可能性だってあるんじゃない?」
その場合は正直お手上げだわ。
やはり調剤士と修道士を浸透させて、霊薬ツリーと回復魔法ツリーを進めるほうが堅実かなぁ?
ああ、そもそもの話、別にニーナの両親が呪いを受けたアウターを探す必要は無いのか。そこじゃないと解呪出来ないと決まったわけでもないのに。
職業の浸透を進めたほうがやっぱり確実な気がする。
「ちなみにフラッタ。竜王のカタコンベは竜人族以外にも解放されてるの? 人間族でも入れるわけ?」
「ぐっ……、微妙にトゲを感じるのじゃっ……!」
ぐぬぬと可愛く唸りながらも、直ぐに気を取り直して質問に答えてくれるフラッタ。
「あそこは誰でも……、竜人族じゃなくともヴァルハールの住人じゃなくとも入る事が可能なのじゃ。妾も8つの時から入っておるしのぅ」
フラッタは領主の娘で竜人族だからなぁ。
俺が潜れるかどうかの判断の参考にしにくい。
「結局俺の浸透を進めるのがニーナの解呪の1番の近道かなって感じるんだけど、スポット以上に稼げる場所って思いつかないね」
ヴァルハールは遠いし、俺とニーナはステイルークに入れないので侵食の森には行けない。後は全部遠い。
移動時間まで考慮するなら、マグエルに留まって職業浸透を進めるのが1番の近道だったりしないかな?
「……旅をするよりも、ここでガンガン浸透を進めるべきかもなぁ」
「それはなんとも言えないねぇ。旅をしなくていいなら楽だけど、呪いを解除できる職業なんてあるのかなぁ」
それはある。絶対にあるんだよリーチェ。なぜなら呪いは状態異常だから。
この世界の呪いはオカルトじゃなくて仕様だ。
なら絶対に、スキルか魔法か魔法薬で治せないとおかしいんだよ。
1つの希望があるとすれば、転移ボーナスAの魔神皇の指輪についていたスキル、全状態異常耐性の存在だ。
全状態異常っていうくらいだから、多分呪いにも効果があるはず。
それに『全状態異常』という効果対象があるなら、それに対応した回復魔法やアイテムは必ずあるでしょ。無いとおかしい。
「次回の遠征では浸透を進めまくって、色々な職業を確認するよ。年内に呪いを解いて結婚、ってのが最高の流れだけど、そこまで甘くないかな流石に」
「じ、次回の遠征はヤバそうねぇ……。移動が7日で済むなら、10日くらいは最深部で戦える計算になっちゃうわ……」
2日間でも相当浸透を進めることが出来たからなぁ。
次回の遠征では、聖騎士とかまで視野に入れられるかも?
「……あれ? その計算でいくと、魔玉500個じゃ足りなくない……? 前回最深部で2日間戦っただけで、100個以上発光魔玉持ち帰ってるよね……?」
「……ダン。あとで私のインベントリから空魔玉を引き取ってくれる? 出発までにあと500個購入しておくから……」
さ、流石に1000個あれば足りるよな……?
全部光ったら5000万。転移ボーナスCが年内に射程圏内だよ。ビビるわ。
もう税金も家の契約料も、教会の子供達の税金だって、何の心配も要らなくなってしまうなこれは。
お金の心配が無いなら、少しくらいのんびりしようかな?
「あー、1つ提案なんだけど、次回の遠征が終わったら今年の遠征は終わりにして、年末はマグエルでゆっくり過ごさない?」
休んでいる間に出来る事は、沢山あるかもしれないけれど。
みんな今までずっと頑張ってくれてたし、少しくらい休みがあってもいいんじゃないかな。
「なんか次回の遠征で、教会の子供たち全員分の税金払っても余裕が出来そうだし。みんなには問題の解決が遅れることになって、少し申し訳ないんだけどさ」
「うん。私は構わない、っていうか楽しみかなっ。ダンにもムーリをめちゃくちゃにする時間が必要だもんねっ」
そ、それがあったかぁっ!
や、やばい! この4人にムーリまで入れて、1ヶ月間マグエルで過ごすとか……!
絶対次回好色家を上げきるぞぉっ!
「んー。次回の遠征次第では、この家を買い取っちゃうのもアリかもしれないわねぇ」
あ、それいいなティムル。もうこの家を手放す気は全く無いし。
「ダンが借りるまで不良債権扱いだったし、金額次第ではあっさり譲ってくれそうな気がするわ。ジジイがいなくなったシュパイン商会なら、多分売ってくれると思うわね」
元シュパイン商会会長夫人の見立てなら信憑性は高そうだ。
年間契約料が2万リーフだったんだから、50年分の100万リーフくらいで売ってくれないかなぁ。
「明日の話次第じゃが、休みがあるなら教会のみんなにもみっちりと訓練をつけることが出来るのじゃっ! 妾たちが休む事で、意外と色々なことが出来そうな気がするのう」
なるほど。それもいいな。
魔物狩り希望の子が誰かは分からないけど、フロイさんにたった数日教わっただけの俺でも生きて来れたんだ。
フラッタによる正しい戦闘指導を1ヶ月間も受けられたら、日帰りできる範囲で事故が起きる可能性をかなり減らせるだろう。
「ぼくは1日でも早くダンのお嫁さんになりたいところだけどね。でも、ダンにこそ休みが必要だよ。強くなるのが早すぎるもの。それに今だから出来ること、今のうちにいっぱいしたいし、さ……」
最後はきっちりエロで締めるリーチェ。流石でございます。
俺も1日でも早くリーチェを迎え入れたいけれど、今のリーチェとだってゆっくりのんびり過ごす時間も必要だ。
今のリーチェも未来のリーチェも、分け隔てなく一緒に過ごしたいからね。
休暇の提案はみんなにも好評で、お風呂で運動しながらも、あれがしたい、これがしたいと話が尽きなかった。
お風呂から上がってベッドの中で有酸素運動を開始したあともなんだかまったりとした雰囲気で、徹夜が許された日だったのに夜が明ける前にみんなでくっついて、色々な話をしながら眠りについた。
話しながらフラッタが眠り、リーチェが眠り、1人ずつ楽しげに夢の世界に旅立っていくのが凄く愛おしかった。
未来に期待が持てるって、本当に素晴らしい事だと思う。
ステイルークで出会った頃のニーナに、年末までには来年の話を笑って出来るようになってるよー、なんて言っても、きっと信じてくれないだろうなぁ。
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昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
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