異世界イチャラブ冒険譚

りっち

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2章 強さを求めて3 孤児と修道女

124 融資のご提案 (改)

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「3人とも……。ここが庭先だってこと、忘れてません?」


 フラッタとリーチェと抱き合っていると、帰宅したティムルに思いっきり呆れられてしまった。


 そりゃそうだ。真面目に訓練してるのかと思えば、3人で抱き合ってるんだもんな。真面目にやれよって思うのも仕方ない。

 実際はこの上なく真剣に訓練してたんだけど。


「こりゃまたお見苦しいところをお見せしちゃったね。訓練自体はこれ以上ないほどに真面目にやってたから、安心して良いよ」

「うむっ! 妾が生まれてから数えても、1番集中した訓練の時間だったと思うのじゃっ」

「訓練してたのは疑ってませんよっ。訓練の結果こうなってるのが理解できてないだけですっ」


 だろうね。剣に大好きな気持ちを乗せてリーチェにぶつけてた、なんて言ったら正気を疑われそう。

 あれは実際に剣を合わせないと理解できない感覚だと思う。


 おいでおいでしてティムルも抱きしめ、鼻先がくっつくくらいの距離で確認する。


「帰ってきたってことは用事は済んだんだよね? 早速教会に行く? ニーナとかすぐ行けるのかな?」

「はい。花壇の手入れを終えて今は畑のほうを手伝ってますから。多分すぐ行けますよ」


 ニーナにとっては花壇は趣味で、畑は仕事だからな。

 花壇の手入れを邪魔されたくはないだろうし、ティムルも邪魔したくないんだろうね。


「それじゃ早速教会に顔を出そうか。リーチェはもう落ち着いたかな?」

「う~……、酷いよ2人ともぉ……。こんなに大好きな気持ちにさせておいて、お預けだなんて酷すぎるぅ……」

「教会から帰ってきたら、1度みんなで寝室に行こうか。さっきとは違う形で、思いっきり好きだって伝えてやるからね」


 不満げに尖らせたリーチェの唇に、約束代わりに唇を重ねる。

 いやー参ったなぁ! 教会での用事が終わった後の楽しみが出来てしまったぜっ。


 稽古道具を片付けて、畑作業をしていたニーナを回収。

 残りの作業は子供たちにお願いして、みんなでトライラム教会に向かった。


 教会に顔を出すと直ぐにムーリさんが対応してくれて、俺達を応接室に通してくれた。


「ええ、11月の礼拝日は4日後ですよ。皆さんがお手伝いしてくれるようになって、本当に助かってます」


 ムーリさんに確認すると、礼拝日は4日後らしい。今回の帰還が如何に早かったかがよく分かるね。


「これでも神様には感謝してるんだよ。それにフラッタもリーチェも楽しみにしてるからね。気にしないで」

「うむっ! いつも礼拝日はとても楽しみなのじゃっ」


 お前は子供達と遊んでばっかだけどなっ!

 でもフラッタも13歳だから、遊んでても文句は言わないけどね。むしろどんどん遊んで欲しい。


「それで、本日はどのようなご用件ですか? 礼拝日の確認だけで教会に来たわけではないですよね? もしかして、またなにか依頼していただけるんでしょうか?」


 礼拝日の確認だけなら明日の水汲みの時でいいはず。そう判断したのか、ムーリさんは違う話を持ち込んだ事を察してくれたようだ。意外と聡いな。

 ……依頼、依頼かぁ。広い意味で見れば依頼になるのかなぁ?


「んー、依頼と言えなくもないかもしれないけど、ちょっと違うかも……? どっちかと言うと提案、かな? 乗るかどうかはムーリさん次第だけど」

「ご提案、ですか? お仕事の依頼ではなく? えっと、良く分かりませんが、まずはお話を伺ってもいいですか?」


 んー、なんて切り出そうかな?

 いや気にしても仕方ないが。俺はいつでも単刀直入。結論から言っちゃえ。


「ねぇムーリさん。俺に借金する気、ない?」

「「「……は?」」」


 おおうびっくりした。なんで俺の嫁連中までシンクロしてんの。前後左右から同じ反応が聞こえてきて驚いちゃったじゃん。
 
 そして当のムーリさんも俺の言葉が理解できなかったようで、未だに呆けたままだ。


「ムーリさん。1つ1つ説明するから、聞きたい事があったら遠慮なく言ってね?」


 ムーリさんに声をかけて意識を取り戻してもらってから、今度は1から順番に噛み砕いて説明していく。


「まず大前提として、今年の納税が出来ないとコットンが奴隷になってしまう。だけど教会には滞納分のお金を払う余裕がない。ここまでは合ってるかな?」

「は、はい。その通りです。生まれた年から来年初めの税金148万リーフ。そんな大金、どうやっても作れなくて……」


 悔しそうに俯いてしまうムーリさん。

 だろうねぇ。俺も先月までは割りと絶望してたよ。なのになぁ。


「単刀直入に言うと、今俺の手元に300万リーフがあるんだ。だからコットンの税金分、俺に借金してみない? ってことだね」

「さささささんびゃくまんリーフぅっ!? そそそそそんな大金、いったいどうやって!?」


 椅子から勢いよく立ち上がったムーリさん。

 そしていつも通りばいぃぃんっ! と跳ね上がるムーリさんのおっぱい。


 うん。ド迫力ぅ。これだけで300万リーフの価値があると言っても過言じゃないなっ。

 
「勿論魔物狩りで稼いだんだよ。今回の遠征でスポットの中心部、最深部まで行けてね。荒稼ぎしてきたんだ」

「さささささ、さいっ、最深部ぅっ!? え、ええええ!? だだだだって、ダンさんとニーナさんって、今年の4月から武器を握ったって……!」


 ムーリさんが動揺して、身を乗り出したり体を捩ったりしている。

 その度にリーチェクラスのおっぱいがばるんばるん揺れてる。目に毒だなぁ。毒過ぎて瞬きすらできないよ。


「落ち着いてムーリさん。要点は、俺がコットンの税金を払うことが出来るって点だ。スポットとか他の話は今はどうでもいい」

「は、はいぃぃ……。ちょ、ちょっとだけ待ってくださいね……」


 すーはー、すーはー、と大きく胸を開いて深呼吸するムーリさん。

 うん、目に毒過ぎて目のやり場に困っちゃうねっ! 凝視しない程度に脳髄に焼き付けておくけどっ。


 あとでリーチェにも思い切り深呼吸して見せてもらおうかなっ。


「えっと、とりあえず細かいことは後で伺うとして……」


 巨大な山脈を俺の目と脳裏に焼き付けてから、恐る恐る口を開くムーリさん。


「ダンさんがコットンの税金を払う事が可能である、そこは、はい、理解しました……」

「そう。それで今回の提案なんだよ。流石にそんな大金、寄付されても困るでしょ? だから借金してみないかって聞いたんだよ」


 トライラム教会の頭がおかしい点は、寄付やお布施を基本的に受け取らないことだ。

 あまりに高額の寄付は、教会側から断ったりするらしいんだよねぇ。


「コットンを助ける為に足りないのは時間でしょ? 今年の納税さえ乗り切れれば、また1年の猶予が生まれる。そして1年の猶予は、今の教会には結構大きい猶予でしょ?」


 今うちから教会には、毎月金貨1枚以上は払われてると思う。下手すりゃ3枚以上か?

 うち以外からも収入があれば……、例えば斡旋所から回された仕事とかも合わせれば、来年以降の人頭税を賄える可能性は出てくるはずだ。


「た、確かにそんな大金、一方的に受け取るわけにはいきませんが……。ダンさんにお借りしたとしてもそんな大金、返済するあてはありませんよ……?」

「あては後から探せばいい。まずはコットンの奴隷落ちを防ぐのが重要だと思う。コットンが借金奴隷に落ちた場合、恐らく高確率で命を落としてしまうでしょ? ならまずはそこを食い止めないと」


 ステイルークでニーナを掻っ攫った時の事を思い出す。

 今のコットンに手段を選んでいる余裕は無いはずだ。まずはどうにかして死の危険を脱しないと、その先の話をすることも出来やしない。


「期限も利子も設けるつもりはないからさ、ゆっくり返済してもらえば良いよ」

「き、期限も利子も無く、返すあてもないのにそんな大金を受け取るわけには……! こちらから渡せるものなんて何も無いのにっ……!」


 またしてもおっぱいを盛大に弾けさせながら、身を乗り出して抗議してくるムーリさん。

 興奮しないでムーリさん! ムーリさんがぶるんっぶるんって暴れちゃうと、俺のごく一部も興奮してきちゃうからっ!


 それに渡せるものが無いなんて、そんなことは全然ないよ。人手。これは結構馬鹿に出来ないものでねぇ。


「少し話は変わるんだけど、教会に今16人だっけ? 孤児がいるじゃない。ティムルに聞いた話だと、毎年スポットに入りたがる子供が出るって聞いたけど、これって本当かな?」

「え、ええ。本当です。借金を返そうと、無理をしてスポットに入ってしまうんですよね……。今年は皆さんからの依頼のおかげで、無理をしてまでスポットに入る子は居ませんが」


 お、俺達が仕事を依頼したおかげで、子供達が無謀な魔物狩りをするのを食い止められていたんだ?

 コットンは魔物狩りをする性格じゃないし、コットン以外の子は時間的な余裕もあるもんな。危険を冒す必要はないってことか。


「無理して魔物狩りをする必要は無いんだけど、その16人の中に将来魔物狩りを希望している子はいないかな? もしいるなら、俺への借金返済が少し現実的な話になってくると思うんだよね」


 俺達のパーティほど早く浸透は進まないにしても、最終的にポータルまで覚えられたらめちゃくちゃ稼げるようになるはず。

 だからそういうパーティを、俺の手で育てたい。


 ……子供達に希望者いなかったらどうしようかなぁ。


「え、えっと。多分ですが4名ほど、魔物狩りを希望している子は居ます……」


 良かった。始めの始めで躓かずに済んだ。

 あ、ニーナさんや。俺がこっそり胸を撫で下ろしているのを見抜くのやめてもらっていいですか?


「ですがみんな村人ですし、装備もありません。皆さんのようにスポットに入って稼ぐなんてとても無理ですっ……!」


 ムーリさんはやっぱりおっぱいをぶるんっぶるんっと揺らしながら、子供達の身を案じて俺の提案を却下してくる。


「勿論転職はしてもらうし、装備はこっちで提供させてもらうよ」


 だけどねムーリさん。俺なんかぼっちの村人LV1スタートで、今や4人の婚約者を養う身だからね。いくら子供とは言え、4名もいれば余裕で魔物狩りは出来ると思うよ?


「まぁ、要は商会がやってる魔物狩りパーティの支援だね。それを個人規模でやろうかなってさ」


 以前スポットの中でナンパ野郎がやっていた、商会からのドロップ品収集依頼。

 ちょうど俺達のお古の装備が必要なくなったし、それらを子供達に貸し出そうというわけだ。


 手っ取り早く言えば、スポンサー契約だね。


「悪いけど俺は慈善家じゃないし、ただで大金を貸してやる気は無い。ちゃんと回収できる道筋を提案したいし、この教会にもちゃんと自立してもらいたいと思ってるんだよ」

「いや慈善家じゃろう? 職業まであるくせによう言うのじゃ」


 フラッタごめん。今真面目な話してるからちょっとだけ黙っててね?


「成功した魔物狩りが稼げることは、俺たちが証明してみせた。だから教会の子供の中で魔物狩りを希望する子がいるなら支援して、その子達を育てて借金を回収しようと思ってるんだ」


 この世界の一般層の人って、職業補正を過信しすぎ。

 補正の無い村人が軽んじられるのは仕方ないけど、商人は幸運補正、旅人は持久力補正しかなくて、ぶっちゃけ戦闘補正は村人と変わらないんだよ。


 旅人や商人で戦えるなら村人でだって戦えるんだ。ニーナだってティムルだって戦えたのだから。


「こっちからの提案は、今年の分のコットンの納税額の貸し出し。そして魔物狩りを希望する子への支援だね。魔物狩りとして大成させるのが目的だから、無茶なことをさせるつもりはないよ。むしろ思い切り脅して、慎重に動いてもらうつもり」


 魔物狩りは駆け出しの頃が1番危ない。

 だから全員の装備品を支援して、全員が戦士の補正を得られるようになればめちゃくちゃ安定するはずだ。


「お金の貸付と魔物狩りの支援の見返りとして、今教会のみんながやってくれている仕事を無償でやってもらおうと思ってるんだ。ああ、少なくとも今年いっぱいは報酬を出すから、そこは心配しないでいい」

「い、今やってる仕事を無償で、ですか……? 草取りやお屋敷の掃除。留守中の換気や畑の世話を、無償で……?」


 何気に毎月金貨数枚くらいの報酬を出してるからね。それを無償化するのはまぁまぁの対価でしょ。


「うん。今だと毎月1万リーフ以上払って依頼してる仕事を、無償でやってもらう。それが条件だ。俺たちは来年にはマグエルを旅立つ予定だけど、あの家を手放す気はないからね。出来れば管理する人が必要なんだよ」

「今がっ! 今の報酬が貰いすぎなんですっ! あんな仕事、あんな仕事で150万リーフの対価になるなんて、そんなはずないじゃないですかぁっ!」


 落ち着いてムーリさん。おっぱい揺らさないで。フラッタのおっぱいに手が引き寄せられたように、ムーリさんのおっぱいには目が引き寄せられちゃうからぁ。

 それに誰も、あの仕事で150万リーフが帳消しになるとは言ってないってばぁ。


「相場なんて知らないよ。うちがそれくらい払ってるんだから、それだけの価値がある仕事なの。それに今の仕事を無償化することで150万リーフがチャラになるとは言ってないからね?」


 150万リーフはそっくりそのまま返してもらうつもりだし、借金を返し終わったあとも屋敷の管理は無償でやっていかなきゃいけないんだ。

 ムーリさんには悪いけど、俺達にとってのメリットのほうが遥かに大きい提案なんだよね。


「すぐに返事をしなくてもいいけど、出来れば礼拝日までには返事が欲しいかな。やるなら早いほうがいい。子供達に戦い方とか教えてあげたいしね」


 始めからスポットに入るのは危険すぎるか。

 まずはマグエルの周りでナイトシャドウ辺りを狩って、職業の浸透を進めてもらうのがいいだろう。


 ホントは野営地辺りまでいければ難易度が下がるんだけど、子供相手だとあまり頼りにしてもらえない可能性も高そうだ。一般の魔物狩りと混ざるのは難しそうだな。


「……礼拝日まで待つ必要はありません。その話、お受けしたいと思います」


 俯いたままで静かに俺の提案を受け入れると呟くムーリさん。

 おーまさかの即答か。なかなかの決断力だ。


「確かにダンさんの言う通り、今はコットンを助けることが最優先です」


 ゆっくりと顔を上げるムーリさん。

 その表情は決意に満ちていて、先ほどのオロオロとしていた雰囲気は微塵も感じさせない。


「150万リーフなんて返済のあてもありませんが、返済方法まで面倒を見ていただけるのに、断る理由はありません。ダンさんが子供達を死地に追いやるようなことは、絶対にしないと確信してますし」

「うん。せっかく仲良くなったんだから無茶はさせないよ。まだ15にもなってない子たちだし、長い目で見てサポートしていくつもり」

「はい。信用してます。どうか子供達をお願いします」


 せっかく上げた頭を、よろしくお願いしますと勢い良く下げるムーリさん。


 ムーリさんが心配するのは当然だけど、俺とニーナの2人だけでも生き延びてこれたんだ。

 いくら子供とはいえ装備と指導をしっかりすれば、駆け出しの頃の俺たちよりも全然稼げるはずだからね。


「……それで、ですね。毎度不躾な話で申し訳ないんですけど、そのお話を受けるにあたって、1つだけお願いがあるんです。聞いて、もらえますか……?」



 しかしムーリさんは頭を下げたままで、なんだか少し言いにくそうにこんなことを言い出してきた。


 お願い? 質問じゃなくて?

 何か条件をつけてくるかな? 例えば礼拝日の手伝いは毎回参加して欲しいとか。ムーリさんのことだからあまり無茶なことは言わないと思うけど。


「うん。俺に出来ることか分からないけど、可能な限り考慮するよ。なにかな?」

「……はいっ!」


 俺の問いかけに頭を上げるムーリさん。

 その表情は俺の提案を受け入れたさっきよりも、更に決意に満ちているように感じられた。


 そんなムーリさんの口から飛び出す、あまりにも予想外のお願い。


「148万リーフの担保として、私をダンさんの物にしていただけないでしょうかっ!」


 …………は? 
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