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2章 強さを求めて2 新たに2人
115 パワーレベリング (改)
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最深部では魔物の強さも群れの大きさも、これまでの道中とは比較にならないようだ。
そして魔物との遭遇頻度も、最深部では大きく跳ね上がるようだ。先ほどの戦闘から10分と休憩しないうちに、大きな影がこちらに向かってきていた。
エレガントエレファントLV52
象かよ!? そりゃでかい筈だなぁ!
その堂々と歩く姿には、相手が魔物じゃなければ魅了されていただろう。
「エレガントエレファント4体! 1人1体ずつで、倒した人から順次加勢に回ってくれっ!」
みんなに指示を飛ばしながら1番レベルの高い象に突っ込む。
ニーナとティムルは何も言わなくてもペアで動いてくるだろう。
俺が間近に迫っても決して慌てず、落ち着いた様子のエレガントエレファント。
攻撃動作に気を付けつつも袈裟切りを放ち、体を切り裂く感触が伝わる。ダメージは通る!
けど、ダメージの通ったはずのエレガントエレファントは、なおも凛として動じていない。
効いてないのか? いや、ダメージは間違いなく通ってる。止まるなっ!
ザクザクと斬り付けていると、エレガントエレファントは流れるような美しい動きでその長い鼻を叩きつけてくる。
なかなかの速度と威力だけど、今の敏捷補正なら余裕を持って回避できる。
巨体のせいで予備動作も大きいからな。
洗練された動きで上から叩きつけられる鼻を躱しながらロングソードで斬り付けていると、エレガントエレファントの足元に巨大魔法陣が現れた。
なんだ? 何をしてくる?
警戒してバックステップ。エレガントエレファントから距離を取った。
「ぐっ、あああっ!?」
鼻も届かない位置まで後退した途端、体が熱さと痛みに包まれる。
なん……だ、これっ!?
いきなり地面から燃やされたような……、ってこれ、フレイムフィールドかっ!?
「こいつ、フレイムフィールドを撃ってくるぞぉっ! 警戒してぇっ!」
力の限り大声で叫びつつ、改めて接近する。
フレイムフィールドはまだ発動していて熱さと痛みが伝わってくるけど、威力の低いフレイムフィールドにビビってる場合じゃない!
俺の接近に合わせて振ってくる上品な振り下ろしを躱し、また懐でロングソードを振り続ける。
その時また、足元に魔法陣が出現するのが見えた。
フレイムフィールドなんか知るかっ。
このまま攻撃を……って、まだフレイムフィールドは消えてない。……ってことは!
間一髪飛び退いた瞬間、足元から勢い良く吹き上がる炎の柱。フレイムサークルだ。
威力低めのフレイムフィールドを放っておいて相手の油断を誘ってから、本命の高威力フレイムサークルかよ。
実にエレガントな戦い方だ。惚れ惚れするね。まったくさぁっ!
しかし今のが本命の攻撃だったのか、それ以降はただ鼻を振り回すだけで魔法陣は現れない。
自慢の優雅で流麗な動きも、どうやら精細さを欠いてきてるぜぇっ!?
「赤き戦槍。紅蓮の暴虐。汝、貫きたる者よ。フレイムランス」
ロングソードで斬りかかりながら詠唱し、フレイムランスでダメージを底上げする。
フレイムランスは詠唱も短いし、エレガントエレファントは的が大きくて外す心配も無い。今の俺なら剣で戦いながらでも扱えるはずだ。
HPを削りきったところに2発目のフレイムランスで横っ腹に風穴を開けて、何とか勝利を収めることが出来た。
1度息を吐いてから他のみんなを確認すると、どうやら俺が最後だったようで、みんなは既に戦闘を終えていた。
「斬撃を繰り出しながらも攻撃魔法でダメージを稼ぐか。面白い戦い方じゃが魔力枯渇にだけは気をつけるのじゃぞ」
「浸透が早いダンならではの戦い方かもね。普通の魔法使いは前に出る事はないしさ」
フラッタとリーチェが俺の戦い方を珍しそうに評価してくれた。
なるほど? 普通の魔法使いは前線にでない。つまり魔法使いに転職するのに戦士LV30にする必要は無いのかな?
魔力枯渇さえ経験すれば、村人の次に直接魔法使いになる事が可能なのかもしれない。
最深部では巨大で強力な魔物が群れで出たり、小型で素早い魔物が出たりとかなり面倒だ。
でもその分得られる報酬はかなり大きい。
具体的には6回目、29個目の魔玉発光だ。これで145万リーフなり。
次に俺の兵士がLV50になり、騎士に転職可能になった。
好色家をセットして戦った魔物の群れがかなり大きく、勢い余ってLV9からLV12まで上げてしまったけど後悔など微塵もない。
兵士の次は迷いまくったけど、結局豪商にすることにした。
豪商LV1
補正 体力上昇- 持久力上昇- 幸運上昇 装備品強度上昇-
スキル 魔玉発光促進 インベントリ
魔玉に売却以外の用途が出来て、いくらあっても足りなくなりそうだからね。
それに豪商の上位職である紳商のレアドロップ補正もかなり魅力的だ。
だから俺もいつでも転職できるようにしておきたいんだよねー。
「ご、ご主人様っ! 私のインベントリも融合しましたーっ!」
慌てた様子のニーナの声。やっぱりアレ、初めてだとびっくりするよなぁ。
敵が強くて多い分、レベリングが捗る捗る。
戦闘中だけど、ぱぱっとニーナを紳商に変更してしまう。
紳商LV1
補正 体力上昇 魔力上昇 持久力上昇 敏捷性上昇
全体幸運上昇+ 五感上昇 装備品強度上昇
スキル 稀少品出現率上昇
戦闘職でもないはずなのに、戦闘面でも充分すぎる成長が見込めそうだ。
それに加えて、レアドロップ補正と全体幸運大補正のおかげで金策も捗りそうで言うことがない。
そして紳商のスキルがいきなり効果を発揮したのか、アーマーリザードLV51からレアドロップが得られたようだ。
「ご、ご主人様ーっ! 出ました! た、多分銀です! 銀が出ましたーっ!」
ニーナの興奮した声が届く。
戦闘を終わらせてニーナの元に集まると、厚めの下敷きのような銀色の四角形の金属を見せられた。
うん。確かに鑑定で銀と表示されているね。
見た目からしてフラッタの髪と同じ色だから、間違えようが無いぜっ。
「いいね。これはいい感じだ。銀が得られるならブルーメタルをすっ飛ばしてミスリル武器に更新してしまおう。優先順位はフラッタ、俺、ニーナ、ティムルでいいかな?」
俺の問いかけにみんな異論はなさそうなので、順位を決めた理由も解説する。
「フラッタは4人の中で最強だから長所を伸ばす。次は遊撃担当の俺。そして更新が1本で済むニーナ、っていう理由なんだけど」
「良いと思います。フラッタの武器の品質が上がるのなら、ここでの戦闘も一気に楽になるでしょう」
「私もご主人様に鋼鉄のダガーを作っていただいたばかりなので、最後でも全く不満は無いです」
ニーナとティムルは即座に同意してくれる。
うちのパーティで最も火力が高そうなフラッタを優先することが、パーティ全体の安全に繋がると判断してくれたのだろう。
「わ、妾を最優先してくれるなど、なんとも光栄な話なのじゃ……! 皆の期待に、全力で応えてみせるのじゃあっ!」
「ミ、ミスリル武器を自作で用意するパーティなんて、殆ど聞いたことがないよぅ……」
やる気に満ちたフラッタと、戦闘が終わってからオロオロと戸惑うリーチェ。
戦闘中はかっこよかったのに、戦闘後にポンコツ化すんなっての。可愛いだろうが。
ミスリルの材料は、銅と鉄と発光魔玉と銀だ。
ダガー、ロングソード、バスタードソードの順に材料が増えていく。
銅と鉄と発光魔玉は今までの道中で充分な数が確保できているけれど、銀を集めるのが少し大変そうではある。
ダガーでは2個、ロングソードで5個、バスタードソードには10個も必要だ。
全員の武器をミスリルにするためには19個……いや、ティムルがダガー二刀流だから21個か。
もしかしたら防具にもミスリルシリーズがあるかもしれないので、銀はいくらあっても足りそうにないなぁ。
際限なく襲ってくる魔物と戦って戦って戦い続けて、俺の豪商があっさりLV10に到達する。
8㎥のインベントリと比べて、1㎥のインベントリのショボさといったらないよぉ。
でもこれでも充分強力だから、文句なんかないんだけどさぁ。
魔物の群れが、本当にひっきりなしに襲ってくる。
無双将軍フラッタとラスボスリーチェのおかげで戦闘時間がかなり短く済んでいるけど、火力が足りないと切れ目無しに魔物を相手することになりそうだ。
5分でも10分でも、気が抜ける時間があるのと無いのとでは、疲労の溜まり方に大きな差があると思う。
恐らく増援前に魔物を片付けられない場合は、ここで戦う資格はまだ無いということなんだろうね。
うちのパーティはフラッタとリーチェのおかげで、その資格を何とか得ているといった状況だ。
そして次にティムルの職人がLV30に到達。各種生産職が解放された。
ティムルって昨日職人になったばかりじゃなかったっけ?
めちゃくちゃ効率いいな、スポット最深部。
「ティムル。職人の浸透が終わったみたいだけど、どの職人になりたいとかあるかな? 好きなので良いよ」
「はい。それではやはり武器職人をお願いします。最終的には全てこなせるようになりたいですけど」
「おっけい。それじゃ今からティムルは武器職人だよ。戦闘職じゃないんだから無理しないでね」
武器職人LV1
補正 持久力上昇 身体操作性上昇 五感上昇
スキル 武器鑑定 武器作成 インベントリ
本音を言えば俺とは反対側の調剤士やアイテム職人を優先して欲しい気もするけど、この浸透ペースなら年内に5つとも浸透できそうだし、まぁいいか?
防具職人LV20では革のレシピ、LV30でハードレザーと鉄系の防具のレシピが解放された。
これらは全てインベントリ内の材料で作れそうなんだけど、ちょっと様子見だ。
LV40、LV50で解放されるレシピを見てから、改めて更新を考えたい。防具にもミスリルシリーズも出るかもだしね。
そして本日2回目、通算7度目の魔玉発光。34個、170万リーフ。
敵の強さと数の多さ、そして豪商4人分の魔玉発光促進スキルは伊達じゃないね。
最深部エリアは数分間の休憩は取れるけれど、とても野営なんかできる状況ではなさそうだ。
だからこのまま11日目と12日目はひたすら戦い続け、13日目に最深部の壁の外側の、俺が搾り取られた付近で長めの休憩を取ることになった。
食事も調理無しで食べれる物をメインに、戦闘の合間に物を食べて水を飲む。
ひたすら戦い続ける事で最下層の雰囲気にも少しずつ慣れてきて、急速に浸透が進むおかげで全員の戦力が加速度的に上昇していく。
そして8度目の魔力発光。39個目、195万リーフ相当。
空の魔玉は最深部では殆どドロップしなくなってしまっているけれど、今までの遠征で150近い空魔玉の在庫があるので、いくら戦い続けても心配ない。
むしろ在庫が捌けるいい機会だ。
そして防具職人LV40に到達。
解放されたレシピはミスリルシリーズと、魔絹シリーズだった。
魔絹。
それはティムルと初めて会った時に、彼女が身に着けていた装備だ。
レシピを確認すると、ミスリルのように銀を必要としない代わりに発光魔玉を倍必要とするらしい。倍ってアホかよぉっ!?
ただ銀を使用しないので、ミスリル武器と材料的に被らないのは魅力的だ。
うーん、手持ち魔玉が39個ってのが半端で気持ち悪いし、作っちゃおうかなっ! お試しも兼ねて。
戦闘の合間に必要な材料を並べ、そこに発光魔玉を4つ追加。
「拒み、防ぎ、遮り、護れ。力の片鱗。想いの結晶。顕現。魔絹のターバン」
詠唱が終わると素材が魔力の光に包まれていく。
って、ぐおおおっ……!?
ま、魔力枯渇の結構重めの症状が来たぞ……!?
LV40レシピはやはり魔力消費が大きいのか……。
となると、銀が10個揃うまでに少しでも魔力補正を上げておきたいところだなぁ。
そして魔力の光が治まったあと、懐かしいターバンが完成していた。
魔絹のターバン
無し 無し 無し
「へっ? あ、あれ……? ご、ご主人様……?」
ティムルの戸惑った声が聞こえる。
ふふふ、そうだよティムル。これは以前お前が装備していた装備だよ。
スキル枠も3つもあって、我ながら満足のいく1品に仕上がった。
ひょっとして、装備品の品質が上がるほどスキル枠って空きやすくなるのかなぁ?
完成した魔絹のターバンを持って、ティムルの前に立つ。
「ティムル。これはお前のだよ。俺たちと初めて出会った時にティムルがつけていた装備だ。まだ1つだけだけど、なんとか取り戻すことが出来たよ。受け取ってくれるかな?」
ティムルにターバンを差し出す。
ティムルは凄く戸惑った様子でターバンを受け取ってくれた。
……あれ? なんか、あまり嬉しそうじゃないな……?
「あれ? ごめんティムル。ひょっとして俺、余計なことした? 今更シュパイン商会で用意された装備とか渡されても、とか……?」
「ああいえっ! 違いますっ! 凄く嬉しいです! ご主人様が私の為に装備を用意してくれたこと、物凄く嬉しいんです。嬉しいんですけど……」
必死に弁解するティムルだけど、やっぱり嬉しさよりも困惑のほうが勝っているように見える。
えーっと、なんでだろ? 俺が防具職人なのはティムルも知ってるよな? フラッタに防具作ってやったわけだし。
戸惑う俺に、やはり困惑しながらティムルが衝撃の事実を告げてくる。
「あのー、ご主人様……。多分私、熱視、発現したみたいなんですぅ……」
…………は?
そして魔物との遭遇頻度も、最深部では大きく跳ね上がるようだ。先ほどの戦闘から10分と休憩しないうちに、大きな影がこちらに向かってきていた。
エレガントエレファントLV52
象かよ!? そりゃでかい筈だなぁ!
その堂々と歩く姿には、相手が魔物じゃなければ魅了されていただろう。
「エレガントエレファント4体! 1人1体ずつで、倒した人から順次加勢に回ってくれっ!」
みんなに指示を飛ばしながら1番レベルの高い象に突っ込む。
ニーナとティムルは何も言わなくてもペアで動いてくるだろう。
俺が間近に迫っても決して慌てず、落ち着いた様子のエレガントエレファント。
攻撃動作に気を付けつつも袈裟切りを放ち、体を切り裂く感触が伝わる。ダメージは通る!
けど、ダメージの通ったはずのエレガントエレファントは、なおも凛として動じていない。
効いてないのか? いや、ダメージは間違いなく通ってる。止まるなっ!
ザクザクと斬り付けていると、エレガントエレファントは流れるような美しい動きでその長い鼻を叩きつけてくる。
なかなかの速度と威力だけど、今の敏捷補正なら余裕を持って回避できる。
巨体のせいで予備動作も大きいからな。
洗練された動きで上から叩きつけられる鼻を躱しながらロングソードで斬り付けていると、エレガントエレファントの足元に巨大魔法陣が現れた。
なんだ? 何をしてくる?
警戒してバックステップ。エレガントエレファントから距離を取った。
「ぐっ、あああっ!?」
鼻も届かない位置まで後退した途端、体が熱さと痛みに包まれる。
なん……だ、これっ!?
いきなり地面から燃やされたような……、ってこれ、フレイムフィールドかっ!?
「こいつ、フレイムフィールドを撃ってくるぞぉっ! 警戒してぇっ!」
力の限り大声で叫びつつ、改めて接近する。
フレイムフィールドはまだ発動していて熱さと痛みが伝わってくるけど、威力の低いフレイムフィールドにビビってる場合じゃない!
俺の接近に合わせて振ってくる上品な振り下ろしを躱し、また懐でロングソードを振り続ける。
その時また、足元に魔法陣が出現するのが見えた。
フレイムフィールドなんか知るかっ。
このまま攻撃を……って、まだフレイムフィールドは消えてない。……ってことは!
間一髪飛び退いた瞬間、足元から勢い良く吹き上がる炎の柱。フレイムサークルだ。
威力低めのフレイムフィールドを放っておいて相手の油断を誘ってから、本命の高威力フレイムサークルかよ。
実にエレガントな戦い方だ。惚れ惚れするね。まったくさぁっ!
しかし今のが本命の攻撃だったのか、それ以降はただ鼻を振り回すだけで魔法陣は現れない。
自慢の優雅で流麗な動きも、どうやら精細さを欠いてきてるぜぇっ!?
「赤き戦槍。紅蓮の暴虐。汝、貫きたる者よ。フレイムランス」
ロングソードで斬りかかりながら詠唱し、フレイムランスでダメージを底上げする。
フレイムランスは詠唱も短いし、エレガントエレファントは的が大きくて外す心配も無い。今の俺なら剣で戦いながらでも扱えるはずだ。
HPを削りきったところに2発目のフレイムランスで横っ腹に風穴を開けて、何とか勝利を収めることが出来た。
1度息を吐いてから他のみんなを確認すると、どうやら俺が最後だったようで、みんなは既に戦闘を終えていた。
「斬撃を繰り出しながらも攻撃魔法でダメージを稼ぐか。面白い戦い方じゃが魔力枯渇にだけは気をつけるのじゃぞ」
「浸透が早いダンならではの戦い方かもね。普通の魔法使いは前に出る事はないしさ」
フラッタとリーチェが俺の戦い方を珍しそうに評価してくれた。
なるほど? 普通の魔法使いは前線にでない。つまり魔法使いに転職するのに戦士LV30にする必要は無いのかな?
魔力枯渇さえ経験すれば、村人の次に直接魔法使いになる事が可能なのかもしれない。
最深部では巨大で強力な魔物が群れで出たり、小型で素早い魔物が出たりとかなり面倒だ。
でもその分得られる報酬はかなり大きい。
具体的には6回目、29個目の魔玉発光だ。これで145万リーフなり。
次に俺の兵士がLV50になり、騎士に転職可能になった。
好色家をセットして戦った魔物の群れがかなり大きく、勢い余ってLV9からLV12まで上げてしまったけど後悔など微塵もない。
兵士の次は迷いまくったけど、結局豪商にすることにした。
豪商LV1
補正 体力上昇- 持久力上昇- 幸運上昇 装備品強度上昇-
スキル 魔玉発光促進 インベントリ
魔玉に売却以外の用途が出来て、いくらあっても足りなくなりそうだからね。
それに豪商の上位職である紳商のレアドロップ補正もかなり魅力的だ。
だから俺もいつでも転職できるようにしておきたいんだよねー。
「ご、ご主人様っ! 私のインベントリも融合しましたーっ!」
慌てた様子のニーナの声。やっぱりアレ、初めてだとびっくりするよなぁ。
敵が強くて多い分、レベリングが捗る捗る。
戦闘中だけど、ぱぱっとニーナを紳商に変更してしまう。
紳商LV1
補正 体力上昇 魔力上昇 持久力上昇 敏捷性上昇
全体幸運上昇+ 五感上昇 装備品強度上昇
スキル 稀少品出現率上昇
戦闘職でもないはずなのに、戦闘面でも充分すぎる成長が見込めそうだ。
それに加えて、レアドロップ補正と全体幸運大補正のおかげで金策も捗りそうで言うことがない。
そして紳商のスキルがいきなり効果を発揮したのか、アーマーリザードLV51からレアドロップが得られたようだ。
「ご、ご主人様ーっ! 出ました! た、多分銀です! 銀が出ましたーっ!」
ニーナの興奮した声が届く。
戦闘を終わらせてニーナの元に集まると、厚めの下敷きのような銀色の四角形の金属を見せられた。
うん。確かに鑑定で銀と表示されているね。
見た目からしてフラッタの髪と同じ色だから、間違えようが無いぜっ。
「いいね。これはいい感じだ。銀が得られるならブルーメタルをすっ飛ばしてミスリル武器に更新してしまおう。優先順位はフラッタ、俺、ニーナ、ティムルでいいかな?」
俺の問いかけにみんな異論はなさそうなので、順位を決めた理由も解説する。
「フラッタは4人の中で最強だから長所を伸ばす。次は遊撃担当の俺。そして更新が1本で済むニーナ、っていう理由なんだけど」
「良いと思います。フラッタの武器の品質が上がるのなら、ここでの戦闘も一気に楽になるでしょう」
「私もご主人様に鋼鉄のダガーを作っていただいたばかりなので、最後でも全く不満は無いです」
ニーナとティムルは即座に同意してくれる。
うちのパーティで最も火力が高そうなフラッタを優先することが、パーティ全体の安全に繋がると判断してくれたのだろう。
「わ、妾を最優先してくれるなど、なんとも光栄な話なのじゃ……! 皆の期待に、全力で応えてみせるのじゃあっ!」
「ミ、ミスリル武器を自作で用意するパーティなんて、殆ど聞いたことがないよぅ……」
やる気に満ちたフラッタと、戦闘が終わってからオロオロと戸惑うリーチェ。
戦闘中はかっこよかったのに、戦闘後にポンコツ化すんなっての。可愛いだろうが。
ミスリルの材料は、銅と鉄と発光魔玉と銀だ。
ダガー、ロングソード、バスタードソードの順に材料が増えていく。
銅と鉄と発光魔玉は今までの道中で充分な数が確保できているけれど、銀を集めるのが少し大変そうではある。
ダガーでは2個、ロングソードで5個、バスタードソードには10個も必要だ。
全員の武器をミスリルにするためには19個……いや、ティムルがダガー二刀流だから21個か。
もしかしたら防具にもミスリルシリーズがあるかもしれないので、銀はいくらあっても足りそうにないなぁ。
際限なく襲ってくる魔物と戦って戦って戦い続けて、俺の豪商があっさりLV10に到達する。
8㎥のインベントリと比べて、1㎥のインベントリのショボさといったらないよぉ。
でもこれでも充分強力だから、文句なんかないんだけどさぁ。
魔物の群れが、本当にひっきりなしに襲ってくる。
無双将軍フラッタとラスボスリーチェのおかげで戦闘時間がかなり短く済んでいるけど、火力が足りないと切れ目無しに魔物を相手することになりそうだ。
5分でも10分でも、気が抜ける時間があるのと無いのとでは、疲労の溜まり方に大きな差があると思う。
恐らく増援前に魔物を片付けられない場合は、ここで戦う資格はまだ無いということなんだろうね。
うちのパーティはフラッタとリーチェのおかげで、その資格を何とか得ているといった状況だ。
そして次にティムルの職人がLV30に到達。各種生産職が解放された。
ティムルって昨日職人になったばかりじゃなかったっけ?
めちゃくちゃ効率いいな、スポット最深部。
「ティムル。職人の浸透が終わったみたいだけど、どの職人になりたいとかあるかな? 好きなので良いよ」
「はい。それではやはり武器職人をお願いします。最終的には全てこなせるようになりたいですけど」
「おっけい。それじゃ今からティムルは武器職人だよ。戦闘職じゃないんだから無理しないでね」
武器職人LV1
補正 持久力上昇 身体操作性上昇 五感上昇
スキル 武器鑑定 武器作成 インベントリ
本音を言えば俺とは反対側の調剤士やアイテム職人を優先して欲しい気もするけど、この浸透ペースなら年内に5つとも浸透できそうだし、まぁいいか?
防具職人LV20では革のレシピ、LV30でハードレザーと鉄系の防具のレシピが解放された。
これらは全てインベントリ内の材料で作れそうなんだけど、ちょっと様子見だ。
LV40、LV50で解放されるレシピを見てから、改めて更新を考えたい。防具にもミスリルシリーズも出るかもだしね。
そして本日2回目、通算7度目の魔玉発光。34個、170万リーフ。
敵の強さと数の多さ、そして豪商4人分の魔玉発光促進スキルは伊達じゃないね。
最深部エリアは数分間の休憩は取れるけれど、とても野営なんかできる状況ではなさそうだ。
だからこのまま11日目と12日目はひたすら戦い続け、13日目に最深部の壁の外側の、俺が搾り取られた付近で長めの休憩を取ることになった。
食事も調理無しで食べれる物をメインに、戦闘の合間に物を食べて水を飲む。
ひたすら戦い続ける事で最下層の雰囲気にも少しずつ慣れてきて、急速に浸透が進むおかげで全員の戦力が加速度的に上昇していく。
そして8度目の魔力発光。39個目、195万リーフ相当。
空の魔玉は最深部では殆どドロップしなくなってしまっているけれど、今までの遠征で150近い空魔玉の在庫があるので、いくら戦い続けても心配ない。
むしろ在庫が捌けるいい機会だ。
そして防具職人LV40に到達。
解放されたレシピはミスリルシリーズと、魔絹シリーズだった。
魔絹。
それはティムルと初めて会った時に、彼女が身に着けていた装備だ。
レシピを確認すると、ミスリルのように銀を必要としない代わりに発光魔玉を倍必要とするらしい。倍ってアホかよぉっ!?
ただ銀を使用しないので、ミスリル武器と材料的に被らないのは魅力的だ。
うーん、手持ち魔玉が39個ってのが半端で気持ち悪いし、作っちゃおうかなっ! お試しも兼ねて。
戦闘の合間に必要な材料を並べ、そこに発光魔玉を4つ追加。
「拒み、防ぎ、遮り、護れ。力の片鱗。想いの結晶。顕現。魔絹のターバン」
詠唱が終わると素材が魔力の光に包まれていく。
って、ぐおおおっ……!?
ま、魔力枯渇の結構重めの症状が来たぞ……!?
LV40レシピはやはり魔力消費が大きいのか……。
となると、銀が10個揃うまでに少しでも魔力補正を上げておきたいところだなぁ。
そして魔力の光が治まったあと、懐かしいターバンが完成していた。
魔絹のターバン
無し 無し 無し
「へっ? あ、あれ……? ご、ご主人様……?」
ティムルの戸惑った声が聞こえる。
ふふふ、そうだよティムル。これは以前お前が装備していた装備だよ。
スキル枠も3つもあって、我ながら満足のいく1品に仕上がった。
ひょっとして、装備品の品質が上がるほどスキル枠って空きやすくなるのかなぁ?
完成した魔絹のターバンを持って、ティムルの前に立つ。
「ティムル。これはお前のだよ。俺たちと初めて出会った時にティムルがつけていた装備だ。まだ1つだけだけど、なんとか取り戻すことが出来たよ。受け取ってくれるかな?」
ティムルにターバンを差し出す。
ティムルは凄く戸惑った様子でターバンを受け取ってくれた。
……あれ? なんか、あまり嬉しそうじゃないな……?
「あれ? ごめんティムル。ひょっとして俺、余計なことした? 今更シュパイン商会で用意された装備とか渡されても、とか……?」
「ああいえっ! 違いますっ! 凄く嬉しいです! ご主人様が私の為に装備を用意してくれたこと、物凄く嬉しいんです。嬉しいんですけど……」
必死に弁解するティムルだけど、やっぱり嬉しさよりも困惑のほうが勝っているように見える。
えーっと、なんでだろ? 俺が防具職人なのはティムルも知ってるよな? フラッタに防具作ってやったわけだし。
戸惑う俺に、やはり困惑しながらティムルが衝撃の事実を告げてくる。
「あのー、ご主人様……。多分私、熱視、発現したみたいなんですぅ……」
…………は?
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