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2章 強さを求めて2 新たに2人
090 フラッタのスペック (改)
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5人で朝食を取った後、子供達と一緒に井戸の水を組みに来たムーリさんを家に招いて、フラッタの住人登録を済ませる。
これで名実共に、フラッタもこの家の住人になった。
しかしムーリさんと別れ、さぁ俺たちも出発するかと家を出たところで問題が発生してしまった。
「う~~行きたくないぃ。ここでお別れしたら次にダンと会うのは12日後なんて酷すぎるぅ……!」
「おいポンコツエルフ。お前昨日と今日でキャラ変わり過ぎ。さっさと行って依頼済ましてきなってば」
「やぁ~だぁ~よぅ~っ。僕の依頼報告が終わるまで待っててくれよぅ」
俺にしがみ付いて駄々をこねる翠の姫エルフ。
抱きしめながら頭を撫でて宥めているけど、実際どうしたもんかねぇ。
リーチェのこの反応は、ぶっちゃけ物凄く嬉しいんだけどさぁ。俺のせいでリーチェに迷惑をかけてしまうのも困る。
でも終了日が決まってない依頼を待つ経済的余裕は無いのだ。フラッタの装備も準備しなきゃいけないし。
まったく、凛として歴戦の英雄然としていたリーチェが、たったひと晩で随分と可愛い女の子になってしまったもんだよ。
「ご主人様。リーチェ。パーティを結成するのはどうでしょう?」
そんな俺達の様子を見かねたニーナがパーティ結成を提案してくれる。
「パーティメンバーなら常にお互いとの繋がりが感じられますし、もし依頼が早く済めば、リーチェからこちらに合流する事も可能でしょう」
「あ、それいいな。というか昨日のゴタゴタでニーナとティムルとも結成し直せてなかったね。ごめんごめん」
昨日は色々ありすぎてパーティ登録の事を思い出す余裕も無かったよ。ニーナとティムルからも何も言われなかったし、普通に失念してた。
「ニーナ。ティムル。フラッタ。リーチェ。みんな、俺とパーティを結成してくれるかな?」
「勿論ですご主人様」
「エルフとパーティを組んだドワーフって、歴史上でも何人いたんでしょうねぇ」
「ふはははっ! 危うくパーティを組まずに遠征に出発してしまうところだったのじゃっ」
「組むっ! 組みたいっ! 僕もみんなと一緒のパーティに入れて欲しいよっ」
当然だけど誰もいいともーっとも、いいですともっ! とも言ってくれなかった。当然だけど。
全員のステータスプレートを接触させ、パーティ結成と念じると、全員が同じパーティに加入した事が感覚で伝わってきた。
ちなみにリーチェだけは、ステータスプレートを伏せたままで接触させてきた。
鑑定にも過剰に反応していたし、リーチェの事情ってのはニーナの呪いのように、ステータスを見れば一目瞭然なのかもしれない。
「……せっかくパーティを組んでくれたのに、見せられなくてごめん。本当に、ごめんね……。ニーナだって、ちゃんと見せてくれたっていうのにさ……」
「気にするなって。ニーナの呪いを解くのもリーチェの抱える何かを解決するのも、もう俺が請け負ったことだ。お前たち2人がステータスプレートを人に見せれないのは、お前達の問題を解決出来ていない俺のせいだと思っとけば良いよ」
「ふふ。それいいですね。じゃあご主人様。早くご主人様と婚姻契約を結んだステータスプレートを誰の目を憚ることなく見せびらかしたいので、私の呪いもリーチェの問題も、早いところ解決しちゃってくださいね?」
楽しそうに嬉しそうに、ニーナは自分のステータスプレートを俺に向けてくる。
ニーナ 女 16歳 射手
呪い(移動阻害)
ダン ティムル フラッタ リーチェ
ダン(隷属)
2行目と4行目がやっぱ邪魔なんだよ。4行目は内容だけ変えさせてもらうからなぁ。
未だなんの手がかりも掴めてないんだけどさぁ。
しかし妻が44人も居たら、最下段のリストがめちゃくちゃ長くなりそう。ステータスプレート見せられたら確実に吹きだす自信があるね。
「それじゃ行ってこいリーチェ。寂しくなったらステータスプレートを見ろ。俺たちはパーティで、そして家族だからな。もうお前は独りじゃない。だから安心して行ってきな」
とか言いながら、送り出す前にもう1度たっぷりキスをする。リーチェだけ1人にしちゃうからな。ちょっとだけサービスだ。
お前は俺のものだと、文字通り唾をつけておく。もうこれでもかと塗りたくっておく。
古くなった唾を吸い取って、新しい唾を舌にも口内にもこれでもかと塗りたくる。いってらっしゃいのキスだ。
……って、やっぱ役割的に俺が嫁になってる気がして仕方ないんだよなぁ。
「……うん。ありがとうダン。ありがとう皆。僕のこと、家族って言ってくれて本当に嬉しいよ……」
キスを終えたリーチェは、体を離す前にもう1度俺に抱き付いてきて、俺の肩に頭を乗せながらみんなに感謝の言葉を伝えてくる。
「みんなが帰ってくる前に依頼はちゃんと終了させておくからさ。次からは僕もみんなと一緒にいさせてね。それじゃ、いってくるよっ!」
最後はいつものリーチェに戻って、笑顔で元気良くポータルに消えていった。
「ふはは。まったく世話の焼ける英雄殿だのぅ」
世話の焼ける度ではリーチェと大差の無いフラッタがなんか言ってるぞ?
「……でもリーチェの気持ちは妾も分かるのじゃ。大好きなダンと半月近くも会えないなんて、妾だったら耐えられないのじゃ」
「むしろフラッタは、今後一切1人になれる時間は無いと思った方がいいかもねぇ……」
勿論俺がフラッタを1人にさせるつもりが無いし、下手すると俺よりもニーナがフラッタにくっついてくる可能性がある。
でも俺の言葉を聞いたフラッタが最高に嬉しそうにしてくれている。1人の時間は必要なさそうで何よりだ。
「それじゃフラッタ。お前の装備を買いに行こうか。……っと、その前に鑑定していい?」
「おーっ! とうとう妾も鑑定してもらえるのじゃっ! お願いするのじゃっ」
ノリノリかよ。まぁ嫌がられるよりはいいか。鑑定っと。
フラッタ・ム・ソクトルーナ
女 13歳 竜人族 竜化解放 騎士LV50
装備 飛竜の靴 竜珠の護り
騎士LV50
補正 体力上昇 魔力上昇- 物理攻撃力上昇 物理防御力上昇
敏捷性上昇 身体操作性上昇 五感上昇 装備品強度上昇
スキル 全体補正上昇 対人攻撃力上昇 対人防御力上昇
騎士の補正えげつなっ!
そして恐らく騎士の更に上級職っぽい聖騎士って職業が解放されている。これってつまり、フラッタの騎士はもう浸透してるんじゃないかな?
聖騎士LV1
補正 体力上昇+ 魔力上昇 物理攻撃力上昇+ 物理防御力上昇+
敏捷性上昇+ 身体操作性上昇+ 五感上昇+ 装備品強度上昇+
全体幸運上昇+
スキル 全体補正上昇+ 対人攻撃力上昇+ 対人防御力上昇+
対不死攻撃力上昇+ 物理耐性+ 魔法耐性+
聖属性付与魔法 回復魔法
そして聖騎士の補正はどん引きするレベルだった。
+補正の雨あられじゃん。補正もスキルも数からして凄まじい。上級職、または最上級職って奴?
でもまだ13歳だよこの人。スペック高すぎない?
ちなみにフラッタは戦士LV30、剣士LV30、武道家LV30、兵士LV50、そして騎士がLV50だ。脳筋過ぎて笑う。
そしてそれ以外は見事にLV1のままだ。脳筋過ぎて笑う。
飛竜の靴
敏捷性上昇+ 持久力上昇 幸運上昇
竜珠の護り
魔力消費軽減+ 精神異常耐性+ 無し 無し 無し
そして装備品も明らかにぶっ飛んでる。貴族やっべぇな。
というか精神異常耐性+さん仕事しろよ。昨日フラッタ、大泣きしてたんだけど?
……ん? 精神異常耐性?
もしかしてこれのおかげで、フラッタって正気を保ててたとかじゃないよな? 他の竜爵家の人間全員、精神異常にかかってた、なんてことは……。
「どうじゃった? 妾の鑑定結果はどうだったのじゃっ?」
ワクワクしたフラッタの声に現実に引き戻される。
……毎度毎度、勝手に嫌なこと考えて勝手に落ち込んでしまって嫌になるね。成長しないなぁ俺。
「フラッタ、お前凄すぎない? 5つも職業が浸透してるし、騎士もどうやら浸透し終わってて、聖騎士とかいう職業にもなれるみたいだよ? あと飛竜の靴と竜珠の護りも強すぎて吹いたんだけど」
「おお。騎士も浸透済みじゃったか。我がルーナ家ではの、9歳以降1年ごとに転職を行う決まりになっておるのじゃ。9歳は戦士、10歳は剣士、11歳は兵士、12歳では武道家、そして13歳の今年は騎士という具合にな」
なるほど。浸透……、累積ボーナスを知っている貴族達は、その恩恵を最大限に享受する為に1年単位で転職を繰り返しているのか。
確かに職業レベルが見えなくても、1年間戦い続ければほぼ間違いなく浸透出来そうだ。
……なんかこう、この世界の貴族って抜け目なくて関わりたくないな?
「これは防具は無視して、予算いっぱい良い武器を用意した方が良さそうかな? ちなみにフラッタは騎士の次はどうしたい? そのまま聖騎士になる? それとも他の職業がいいかな?」
「わわわっ、妾が決めて良いのかっ!? そそそ、そんなこと急に言われても決めかねるのじゃっ……!」
「そっか。まぁすぐに決めなくていい。まずは冒険者ギルドで魔玉を換金。そしたら武器屋に行こう」
急に転職の話を振られて慌てるフラッタを、落ち着いてとよしよしなでなでしてあげる。
突然言われても困るよな。でもこれからは自分がなりたい職業をフラッタ自身に決めてもらいたいんだよ。
「スポットまで歩いていく時間もあるし、ゆっくり考えていいからね? それじゃみんな、出発するよ」
「「はいっ」」
ニーナ、ティムルの元気な返事を合図に家を出る。
まずは冒険者ギルドで前回光った魔玉を換金、30万リーフをゲットする。
その足で武器屋に行き、フラッタ用に鋼鉄のバスタードソードを27万リーフで購入する。ちなみに『無し』は2枠ほどだ。
俺のロングソードは確か18万リーフというティムルの見立てだったと思うから、同じ素材で9万リーフも高額だ。痛い出費だよぉ。
「押しかけてきた妾の為にお金を使わせてしまって、本当に申し訳ないのじゃ……。しかもちゃんと両手剣を用意してくれるなんて、感謝の言葉もないのじゃ……」
「そこはごめんなさいより、ありがとうが聞きたいなぁ?」
しょんぼりと申し訳無さそうにしているフラッタだけど、戦力面での強化を考えたらお釣りが来る投資なんだよなぁ。
今回もティムルの豪商のスキルで魔玉を4個2セット発光させられるだろうし、遠征から帰ってきたら回収できている見込みの金額でしかない。
「つまんないこと気にするなって。フラッタだってもう家族なんだからさ。それにお金はまた稼げばいいんだよ。な、ニーナお姉ちゃん?」
「お、お姉ちゃん……! 私がフラッタのお姉ちゃんっ……!」
あ、やっべ。ニーナに変なスイッチ入れちゃった。お姉ちゃんスイッチ?
お姉ちゃんと呼ばれたニーナは、何かを燃やした瞳をしながらフラッタに頬ずりしている。
「えぇえぇフラッタ。何も遠慮は要らないですよっ。お姉ちゃんに任せてくれていいですからねっ」
……仲が良いのはいいんだけど、最終的にフラッタを巡って俺と対立しそうな勢いだなぁ。燃えてるニーナは頼もしいんだけどね。
フラッタの武器も準備したので、そのままマグエルを出てスポットに向かう。
フラッタはまだ職業を決めかねているのか、先ほどからうんうんと唸っている。
「のうダン。ダンは妾に何の職業について欲しいのじゃ? やはり聖騎士になってほしいと思うかのぅ?」
「ん? フラッタは今現在俺達の中で最強だし、別に好きなのについてもらっていいと思ってるよ。その言い方だと、なってみたい職業が決まったのかな?」
「う、うむ……。妾は今まで父上から言われた職業にしかなった事がなくてのぅ。戦闘職以外の事はまったく知らないのじゃ」
なるほど。13歳にしては戦闘のエキスパートみたいな職歴だったけど、家の指示だったのか。
つまりフラッタが脳筋なんじゃなくて、フラッタの家がそもそも脳筋だった。こういうことだね。
「だから、出来れば戦闘職以外になってみたいのじゃ。戦闘職以外に、どんな職があるのかすら知らぬのじゃが……」
聖騎士の補正を見るとめちゃくちゃ勿体無いんだけどなぁ。仕方ないか。
ま、俺がいつか聖騎士になればいいだけだ。少なくともフラッタの希望を蹴ってまで押し通すものでは無いよな。
しかし、戦闘職以外の知識は無いのね。なら俺から提案してあげたほうが良さそうかな?
「それじゃあフラッタ。うちでは俺もニーナもティムルも旅人と商人は浸透しているから、フラッタもまずはその2つを鍛えてみるのはどうかな? そうすればみんなとお揃いだよ」
「お、お揃いっ! みんなとお揃いっ! それはいい、それがいいのじゃっ! 妾はみんなとお揃いがいいのじゃっ!」
それは名案だと、ピョンピョン跳ねて喜びを表現するフラッタが可愛すぎる件。
さて、商人と旅人を上げるなら、やっぱりインベントリ的な意味で旅人からだよな。持久力補正もあるし。職業設定っと。
フラッタ・ム・ソクトルーナ
女 13歳 竜人族 竜化解放 旅人LV1
装備 鋼鉄のバスタードソード 飛竜の靴 竜珠の護り
「フラッタ。ステータスプレートを見てごらん。もうフラッタは旅人になって、インベントリも使えるようになってるよ」
「ほほほ、ほんとなのじゃっ! 凄いのじゃっ! ダンは本当にいつでも職業を変えられるのじゃなぁっ!」
自分のステータスプレートを握りしめながら、またしても飛び回って喜びを爆発させるフラッタ。
フラッタの方が凄いよ。凄く可愛い。可愛すぎて失神しそうだよぉ。
「これで妾もみんなとお揃いになるのじゃっ! 頑張るのじゃっ!」
「えぇえぇフラッタ。一緒に頑張りましょうね。旅人と商人を浸透させればお姉ちゃんとお揃いですからね。ふふふ。お揃い。フラッタとお揃いっ。頑張りましょうねぇっ」
……主従関係じゃないからって、奴隷が他人に抱きついてるのってどうかと思うよニーナ?
フラッタをよしよしなでなでしているニーナを見て、ティムルが柔らかく微笑んでいる。
「ニーナちゃんが燃えてますね。ふふ、こうしてると本当の姉妹に見えてきますねぇ」
「……ティムルだって家族だからね? 奴隷契約のせいでまだ婚姻は結べていないけどさ」
別にティムルから悪感情は伝わってこなかったけど、なんとなくフォローのような事を言ってしまう。
「いやぁあの2人は初めて会ったときから相性良すぎてさぁ。ニーナにとってティムルは親友、フラッタは妹なんだろうね。2人とも大切だけど、それぞれ別の大切なんだよ」
「ふふ。お気遣いありがとうございます。でも大丈夫、分かってますから。私の家族は本当に愛に溢れた人ばかりで、毎日楽しくて幸せですっ」
満面の笑顔を浮かべるティムルに思わず見蕩れてしまった。
本当に美人だねぇ。こんな女性に愛してもらえる俺こそ毎日幸せだよ。
「どこかのクソジジイと違って、ご主人様の女が増えれば増えるほど、私の毎日も幸せになっていくんです。これからもどんどん女の子を幸せにしてくださいね、ご主人様っ」
毎日幸せで楽しい。
ティムルにそう言ってもらえるのが嬉しくて幸せだ。
好きな人が幸せでいてくれる。これ以上の幸せなんて俺には思いつかない。
あんまりティムルが可愛いものだから、ついつい頭を撫でてしまう。
くすぐったそうに笑うティムル。可愛い。大好きだよ。
こんな素敵な女性が俺の婚約者とか、俺より幸せな奴なんているわけがないね。
この幸せをこれからも続けていく為に。もっともっと幸せになるために。
辿り着いたスポットに、4人で力強く足を踏み入れるのだった。
これで名実共に、フラッタもこの家の住人になった。
しかしムーリさんと別れ、さぁ俺たちも出発するかと家を出たところで問題が発生してしまった。
「う~~行きたくないぃ。ここでお別れしたら次にダンと会うのは12日後なんて酷すぎるぅ……!」
「おいポンコツエルフ。お前昨日と今日でキャラ変わり過ぎ。さっさと行って依頼済ましてきなってば」
「やぁ~だぁ~よぅ~っ。僕の依頼報告が終わるまで待っててくれよぅ」
俺にしがみ付いて駄々をこねる翠の姫エルフ。
抱きしめながら頭を撫でて宥めているけど、実際どうしたもんかねぇ。
リーチェのこの反応は、ぶっちゃけ物凄く嬉しいんだけどさぁ。俺のせいでリーチェに迷惑をかけてしまうのも困る。
でも終了日が決まってない依頼を待つ経済的余裕は無いのだ。フラッタの装備も準備しなきゃいけないし。
まったく、凛として歴戦の英雄然としていたリーチェが、たったひと晩で随分と可愛い女の子になってしまったもんだよ。
「ご主人様。リーチェ。パーティを結成するのはどうでしょう?」
そんな俺達の様子を見かねたニーナがパーティ結成を提案してくれる。
「パーティメンバーなら常にお互いとの繋がりが感じられますし、もし依頼が早く済めば、リーチェからこちらに合流する事も可能でしょう」
「あ、それいいな。というか昨日のゴタゴタでニーナとティムルとも結成し直せてなかったね。ごめんごめん」
昨日は色々ありすぎてパーティ登録の事を思い出す余裕も無かったよ。ニーナとティムルからも何も言われなかったし、普通に失念してた。
「ニーナ。ティムル。フラッタ。リーチェ。みんな、俺とパーティを結成してくれるかな?」
「勿論ですご主人様」
「エルフとパーティを組んだドワーフって、歴史上でも何人いたんでしょうねぇ」
「ふはははっ! 危うくパーティを組まずに遠征に出発してしまうところだったのじゃっ」
「組むっ! 組みたいっ! 僕もみんなと一緒のパーティに入れて欲しいよっ」
当然だけど誰もいいともーっとも、いいですともっ! とも言ってくれなかった。当然だけど。
全員のステータスプレートを接触させ、パーティ結成と念じると、全員が同じパーティに加入した事が感覚で伝わってきた。
ちなみにリーチェだけは、ステータスプレートを伏せたままで接触させてきた。
鑑定にも過剰に反応していたし、リーチェの事情ってのはニーナの呪いのように、ステータスを見れば一目瞭然なのかもしれない。
「……せっかくパーティを組んでくれたのに、見せられなくてごめん。本当に、ごめんね……。ニーナだって、ちゃんと見せてくれたっていうのにさ……」
「気にするなって。ニーナの呪いを解くのもリーチェの抱える何かを解決するのも、もう俺が請け負ったことだ。お前たち2人がステータスプレートを人に見せれないのは、お前達の問題を解決出来ていない俺のせいだと思っとけば良いよ」
「ふふ。それいいですね。じゃあご主人様。早くご主人様と婚姻契約を結んだステータスプレートを誰の目を憚ることなく見せびらかしたいので、私の呪いもリーチェの問題も、早いところ解決しちゃってくださいね?」
楽しそうに嬉しそうに、ニーナは自分のステータスプレートを俺に向けてくる。
ニーナ 女 16歳 射手
呪い(移動阻害)
ダン ティムル フラッタ リーチェ
ダン(隷属)
2行目と4行目がやっぱ邪魔なんだよ。4行目は内容だけ変えさせてもらうからなぁ。
未だなんの手がかりも掴めてないんだけどさぁ。
しかし妻が44人も居たら、最下段のリストがめちゃくちゃ長くなりそう。ステータスプレート見せられたら確実に吹きだす自信があるね。
「それじゃ行ってこいリーチェ。寂しくなったらステータスプレートを見ろ。俺たちはパーティで、そして家族だからな。もうお前は独りじゃない。だから安心して行ってきな」
とか言いながら、送り出す前にもう1度たっぷりキスをする。リーチェだけ1人にしちゃうからな。ちょっとだけサービスだ。
お前は俺のものだと、文字通り唾をつけておく。もうこれでもかと塗りたくっておく。
古くなった唾を吸い取って、新しい唾を舌にも口内にもこれでもかと塗りたくる。いってらっしゃいのキスだ。
……って、やっぱ役割的に俺が嫁になってる気がして仕方ないんだよなぁ。
「……うん。ありがとうダン。ありがとう皆。僕のこと、家族って言ってくれて本当に嬉しいよ……」
キスを終えたリーチェは、体を離す前にもう1度俺に抱き付いてきて、俺の肩に頭を乗せながらみんなに感謝の言葉を伝えてくる。
「みんなが帰ってくる前に依頼はちゃんと終了させておくからさ。次からは僕もみんなと一緒にいさせてね。それじゃ、いってくるよっ!」
最後はいつものリーチェに戻って、笑顔で元気良くポータルに消えていった。
「ふはは。まったく世話の焼ける英雄殿だのぅ」
世話の焼ける度ではリーチェと大差の無いフラッタがなんか言ってるぞ?
「……でもリーチェの気持ちは妾も分かるのじゃ。大好きなダンと半月近くも会えないなんて、妾だったら耐えられないのじゃ」
「むしろフラッタは、今後一切1人になれる時間は無いと思った方がいいかもねぇ……」
勿論俺がフラッタを1人にさせるつもりが無いし、下手すると俺よりもニーナがフラッタにくっついてくる可能性がある。
でも俺の言葉を聞いたフラッタが最高に嬉しそうにしてくれている。1人の時間は必要なさそうで何よりだ。
「それじゃフラッタ。お前の装備を買いに行こうか。……っと、その前に鑑定していい?」
「おーっ! とうとう妾も鑑定してもらえるのじゃっ! お願いするのじゃっ」
ノリノリかよ。まぁ嫌がられるよりはいいか。鑑定っと。
フラッタ・ム・ソクトルーナ
女 13歳 竜人族 竜化解放 騎士LV50
装備 飛竜の靴 竜珠の護り
騎士LV50
補正 体力上昇 魔力上昇- 物理攻撃力上昇 物理防御力上昇
敏捷性上昇 身体操作性上昇 五感上昇 装備品強度上昇
スキル 全体補正上昇 対人攻撃力上昇 対人防御力上昇
騎士の補正えげつなっ!
そして恐らく騎士の更に上級職っぽい聖騎士って職業が解放されている。これってつまり、フラッタの騎士はもう浸透してるんじゃないかな?
聖騎士LV1
補正 体力上昇+ 魔力上昇 物理攻撃力上昇+ 物理防御力上昇+
敏捷性上昇+ 身体操作性上昇+ 五感上昇+ 装備品強度上昇+
全体幸運上昇+
スキル 全体補正上昇+ 対人攻撃力上昇+ 対人防御力上昇+
対不死攻撃力上昇+ 物理耐性+ 魔法耐性+
聖属性付与魔法 回復魔法
そして聖騎士の補正はどん引きするレベルだった。
+補正の雨あられじゃん。補正もスキルも数からして凄まじい。上級職、または最上級職って奴?
でもまだ13歳だよこの人。スペック高すぎない?
ちなみにフラッタは戦士LV30、剣士LV30、武道家LV30、兵士LV50、そして騎士がLV50だ。脳筋過ぎて笑う。
そしてそれ以外は見事にLV1のままだ。脳筋過ぎて笑う。
飛竜の靴
敏捷性上昇+ 持久力上昇 幸運上昇
竜珠の護り
魔力消費軽減+ 精神異常耐性+ 無し 無し 無し
そして装備品も明らかにぶっ飛んでる。貴族やっべぇな。
というか精神異常耐性+さん仕事しろよ。昨日フラッタ、大泣きしてたんだけど?
……ん? 精神異常耐性?
もしかしてこれのおかげで、フラッタって正気を保ててたとかじゃないよな? 他の竜爵家の人間全員、精神異常にかかってた、なんてことは……。
「どうじゃった? 妾の鑑定結果はどうだったのじゃっ?」
ワクワクしたフラッタの声に現実に引き戻される。
……毎度毎度、勝手に嫌なこと考えて勝手に落ち込んでしまって嫌になるね。成長しないなぁ俺。
「フラッタ、お前凄すぎない? 5つも職業が浸透してるし、騎士もどうやら浸透し終わってて、聖騎士とかいう職業にもなれるみたいだよ? あと飛竜の靴と竜珠の護りも強すぎて吹いたんだけど」
「おお。騎士も浸透済みじゃったか。我がルーナ家ではの、9歳以降1年ごとに転職を行う決まりになっておるのじゃ。9歳は戦士、10歳は剣士、11歳は兵士、12歳では武道家、そして13歳の今年は騎士という具合にな」
なるほど。浸透……、累積ボーナスを知っている貴族達は、その恩恵を最大限に享受する為に1年単位で転職を繰り返しているのか。
確かに職業レベルが見えなくても、1年間戦い続ければほぼ間違いなく浸透出来そうだ。
……なんかこう、この世界の貴族って抜け目なくて関わりたくないな?
「これは防具は無視して、予算いっぱい良い武器を用意した方が良さそうかな? ちなみにフラッタは騎士の次はどうしたい? そのまま聖騎士になる? それとも他の職業がいいかな?」
「わわわっ、妾が決めて良いのかっ!? そそそ、そんなこと急に言われても決めかねるのじゃっ……!」
「そっか。まぁすぐに決めなくていい。まずは冒険者ギルドで魔玉を換金。そしたら武器屋に行こう」
急に転職の話を振られて慌てるフラッタを、落ち着いてとよしよしなでなでしてあげる。
突然言われても困るよな。でもこれからは自分がなりたい職業をフラッタ自身に決めてもらいたいんだよ。
「スポットまで歩いていく時間もあるし、ゆっくり考えていいからね? それじゃみんな、出発するよ」
「「はいっ」」
ニーナ、ティムルの元気な返事を合図に家を出る。
まずは冒険者ギルドで前回光った魔玉を換金、30万リーフをゲットする。
その足で武器屋に行き、フラッタ用に鋼鉄のバスタードソードを27万リーフで購入する。ちなみに『無し』は2枠ほどだ。
俺のロングソードは確か18万リーフというティムルの見立てだったと思うから、同じ素材で9万リーフも高額だ。痛い出費だよぉ。
「押しかけてきた妾の為にお金を使わせてしまって、本当に申し訳ないのじゃ……。しかもちゃんと両手剣を用意してくれるなんて、感謝の言葉もないのじゃ……」
「そこはごめんなさいより、ありがとうが聞きたいなぁ?」
しょんぼりと申し訳無さそうにしているフラッタだけど、戦力面での強化を考えたらお釣りが来る投資なんだよなぁ。
今回もティムルの豪商のスキルで魔玉を4個2セット発光させられるだろうし、遠征から帰ってきたら回収できている見込みの金額でしかない。
「つまんないこと気にするなって。フラッタだってもう家族なんだからさ。それにお金はまた稼げばいいんだよ。な、ニーナお姉ちゃん?」
「お、お姉ちゃん……! 私がフラッタのお姉ちゃんっ……!」
あ、やっべ。ニーナに変なスイッチ入れちゃった。お姉ちゃんスイッチ?
お姉ちゃんと呼ばれたニーナは、何かを燃やした瞳をしながらフラッタに頬ずりしている。
「えぇえぇフラッタ。何も遠慮は要らないですよっ。お姉ちゃんに任せてくれていいですからねっ」
……仲が良いのはいいんだけど、最終的にフラッタを巡って俺と対立しそうな勢いだなぁ。燃えてるニーナは頼もしいんだけどね。
フラッタの武器も準備したので、そのままマグエルを出てスポットに向かう。
フラッタはまだ職業を決めかねているのか、先ほどからうんうんと唸っている。
「のうダン。ダンは妾に何の職業について欲しいのじゃ? やはり聖騎士になってほしいと思うかのぅ?」
「ん? フラッタは今現在俺達の中で最強だし、別に好きなのについてもらっていいと思ってるよ。その言い方だと、なってみたい職業が決まったのかな?」
「う、うむ……。妾は今まで父上から言われた職業にしかなった事がなくてのぅ。戦闘職以外の事はまったく知らないのじゃ」
なるほど。13歳にしては戦闘のエキスパートみたいな職歴だったけど、家の指示だったのか。
つまりフラッタが脳筋なんじゃなくて、フラッタの家がそもそも脳筋だった。こういうことだね。
「だから、出来れば戦闘職以外になってみたいのじゃ。戦闘職以外に、どんな職があるのかすら知らぬのじゃが……」
聖騎士の補正を見るとめちゃくちゃ勿体無いんだけどなぁ。仕方ないか。
ま、俺がいつか聖騎士になればいいだけだ。少なくともフラッタの希望を蹴ってまで押し通すものでは無いよな。
しかし、戦闘職以外の知識は無いのね。なら俺から提案してあげたほうが良さそうかな?
「それじゃあフラッタ。うちでは俺もニーナもティムルも旅人と商人は浸透しているから、フラッタもまずはその2つを鍛えてみるのはどうかな? そうすればみんなとお揃いだよ」
「お、お揃いっ! みんなとお揃いっ! それはいい、それがいいのじゃっ! 妾はみんなとお揃いがいいのじゃっ!」
それは名案だと、ピョンピョン跳ねて喜びを表現するフラッタが可愛すぎる件。
さて、商人と旅人を上げるなら、やっぱりインベントリ的な意味で旅人からだよな。持久力補正もあるし。職業設定っと。
フラッタ・ム・ソクトルーナ
女 13歳 竜人族 竜化解放 旅人LV1
装備 鋼鉄のバスタードソード 飛竜の靴 竜珠の護り
「フラッタ。ステータスプレートを見てごらん。もうフラッタは旅人になって、インベントリも使えるようになってるよ」
「ほほほ、ほんとなのじゃっ! 凄いのじゃっ! ダンは本当にいつでも職業を変えられるのじゃなぁっ!」
自分のステータスプレートを握りしめながら、またしても飛び回って喜びを爆発させるフラッタ。
フラッタの方が凄いよ。凄く可愛い。可愛すぎて失神しそうだよぉ。
「これで妾もみんなとお揃いになるのじゃっ! 頑張るのじゃっ!」
「えぇえぇフラッタ。一緒に頑張りましょうね。旅人と商人を浸透させればお姉ちゃんとお揃いですからね。ふふふ。お揃い。フラッタとお揃いっ。頑張りましょうねぇっ」
……主従関係じゃないからって、奴隷が他人に抱きついてるのってどうかと思うよニーナ?
フラッタをよしよしなでなでしているニーナを見て、ティムルが柔らかく微笑んでいる。
「ニーナちゃんが燃えてますね。ふふ、こうしてると本当の姉妹に見えてきますねぇ」
「……ティムルだって家族だからね? 奴隷契約のせいでまだ婚姻は結べていないけどさ」
別にティムルから悪感情は伝わってこなかったけど、なんとなくフォローのような事を言ってしまう。
「いやぁあの2人は初めて会ったときから相性良すぎてさぁ。ニーナにとってティムルは親友、フラッタは妹なんだろうね。2人とも大切だけど、それぞれ別の大切なんだよ」
「ふふ。お気遣いありがとうございます。でも大丈夫、分かってますから。私の家族は本当に愛に溢れた人ばかりで、毎日楽しくて幸せですっ」
満面の笑顔を浮かべるティムルに思わず見蕩れてしまった。
本当に美人だねぇ。こんな女性に愛してもらえる俺こそ毎日幸せだよ。
「どこかのクソジジイと違って、ご主人様の女が増えれば増えるほど、私の毎日も幸せになっていくんです。これからもどんどん女の子を幸せにしてくださいね、ご主人様っ」
毎日幸せで楽しい。
ティムルにそう言ってもらえるのが嬉しくて幸せだ。
好きな人が幸せでいてくれる。これ以上の幸せなんて俺には思いつかない。
あんまりティムルが可愛いものだから、ついつい頭を撫でてしまう。
くすぐったそうに笑うティムル。可愛い。大好きだよ。
こんな素敵な女性が俺の婚約者とか、俺より幸せな奴なんているわけがないね。
この幸せをこれからも続けていく為に。もっともっと幸せになるために。
辿り着いたスポットに、4人で力強く足を踏み入れるのだった。
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