異世界イチャラブ冒険譚

りっち

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2章 強さを求めて2 新たに2人

086 竜爵家の違和感 (改)

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 ヴァルハールでの出来事を説明しながら、5人での賑やかな夕飯を楽しむ。事情を聞いたティムルは爆笑し、リーチェは若干引き気味だ。

 リーチェから決闘に関して、考え無しに絡んでくる輩に今のダンが不覚を取るわけないでしょ、という評価をいただいた。ちょっと嬉しい。


 賑やかな夕食も終って、今は寝る前の雑談タイムだ。毎回真面目な話はこのタイミングでしている気がするね。

 今日は色々報告し合う事が多そうなので、少し長くなるかもなぁ。


「ヴァルハールの1件については以上でいいかな? それじゃ本日の報告会としゃれ込もうか」


 夕食までは俺の腕の中に収まっていたフラッタも、真面目な雰囲気を察して今は離れてしまっている。ちょっと人恋しいな?


「まずは簡単なことからだな。リーチェは依頼の件どうなったの? 報告終わってもうフリー?」

「いや、報告は上げたんだけどね。それが正しい情報か精査したいって言うから、依頼自体はまだ終わってないんだ。ただこのまま何事もなく終わりそうな流れではあるよ」


 尤も、もう僕が出る幕はないと思うけどねと、悪戯っぽくウィンクして見せるリーチェ。

 そういうのやめてよ。惚れちゃうでしょっ。既にベタ惚れだけど。


 しかしなるほどね。リーチェの調査が正しいのかを更に調査するわけか。事が事だから仕方ない。

 報酬の問題もあるし、報告を鵜呑みにするわけにもいかないか。確認だけなら大した手間でもないと。


「それじゃあもうちょっと拘束されそうな感じなんだね。今度の遠征に一緒に、ってワケにはいかないかぁ」

「はは。僕と離れたくないのは分かるけど、少し我慢してほしいね。君たちが今回の遠征から戻る頃には自由になっていると思うからさ」


 リーチェくらい良い女相手だと、その少し我慢するのも大変なんですよ。男としちゃあね。

 ま、依頼人の調査待ちってだけなら、リーチェに危険が及ぶ可能性はもう無いかな?


「ともかく危ないことにならなそうで安心したよ。危ない事をしそうになったら俺にも声かけてくれよ?」


 俺がリーチェの助けになれるとも思わないけど、それでも協力してあげたい。

 頼りにしてるよと微笑み返してくれたリーチェに見蕩れてしまった後、気を取り直してフラッタに向き直る。


「それじゃ次はフラッタなんだけど、1つ1つ確認していこうか。まずフラッタ。お前装備は?」


 ヴァルハールに戻ったあとのフラッタは、いつも持ち歩いていた大剣すら持っていなかった。

 格好は薄手のドレス、荷物も着替えと日用雑貨くらいしか持ってきていないそうだ。


「うむ。今までの装備は妾のものでなくルーナ竜爵家所有の品であったからのぅ。流石に持ち出すのは不味いのじゃ。皆に負担をかけることになるが、妾の装備品は新たに用意してもらわねばならぬな」


 そっか。あの装備ってフラッタの持ち物じゃなくて、フラッタの家の持ち物って扱いになるのね。装備は高級品だし仕方ないかぁ。

 前の装備は品質も良さそうだったから、かなり高いんだろうなぁ。


「了解だ。可愛い可愛い俺のフラッタには装備品くらい用意させて貰うよ」


 ティムルが加入してようやくお金が貯められそうになってくると、こうして新たな出費枠が登場するわけだ。

 こりゃどんどん奥の方まで探索していかないと、納税に失敗する可能性すら出てきたなぁ。


「フラッタって得物は両手剣でいいんだよね? 安物しか用意してやれなくて悪いけどさ」

「迷惑をかけているのは妾なのじゃからダンが気に病むことではないのじゃ。武器は斬撃が出来るものなら何でも使えるのじゃ」


 俺が気に病むことではない。それは分かってるつもりなんだけどねぇ。

 ティムルもフラッタも、俺のところに来る前には高級品を身に纏っていたからね。どうしても比較しちゃうよなぁ。


「今のフラッタって装備品は何も無いの? 今履いてる靴も装備品じゃなかったりする?」

「この靴は妾が母上から贈られた物ゆえ、装備品ではあるが持ち出してきたのぅ。それと父上から贈られたこの髪飾りも装備品じゃな。他には無いのぅ」


 靴とアクセサリーが埋まってるわけね。

 フラッタの見せてくれた髪飾りは、フラッタの瞳のような赤い宝石がはめ込まれていた。


 しっかし凄いな貴族。親から子供に装備品を贈るのかよ。しかも両親から別々にとはねぇ。


「了解だよ。それじゃ明日装備を見に行こうな」


 俺達よりも遥かに実力の高いフラッタには、防具よりも武器を優先して揃えてあげたいよな。全身金属鎧ってめちゃくちゃ高そうだし、恐らく今の我が家の収入では手が出せない気がする。


「明日から俺たちは遠征の予定だったけど、フラッタも一緒に行くつもりでいていいのかな?」

「無論なのじゃ! みんな、改めて宜しくなのじゃっ」


 花が咲くような笑顔で答えてくれたかと思うと、突然しょんぼりして俯いてしまうフラッタ。


「妾だけ置いていかれたら悲しいのじゃ……。置いていかれてしまったら、みんなが戻るまでずっと独りで泣いてると思うのじゃ……」

「~~~っ!! あーもうっ、これだからっ! これだからフラッタはぁっ!」


 しょんぼりしたフラッタの様子を見て、ニーナがフラッタに抱きついてよしよしなでなでを開始した。

 ……なんか俺よりニーナの方がフラッタのこと好きじゃね?


「元々一緒に連れてく予定だったよ。安心して。ティムル、食料や水も大丈夫だよね?」

「はい。フラッタちゃんの同行を考慮した量になっています。その分ご主人様の荷物が増えてしまっていますけど……」

「問題ないよ。これでも行商人だからね」


 申し訳なさそうなティムルに笑顔で答える。


 身分で役割を決めるなんて非効率だろう。俺達は少人数パーティなんだし、適材適所で上手く回していかなきゃな。

 そもそもニーナとティムルを奴隷として扱う気だって全然無いんだけどね。
 それを分かってるはずのティムルが申し訳なさそうにしてるのは、運搬を担当している自分だけでは運びきれないからなのかな?


「聞いたろフラッタ。俺とニーナとティムルと一緒に、フラッタも遠征に行こうな?」

「うんっ。一緒に行くのじゃっ。みんな一緒なのじゃっ」


 元気よく返事するフラッタと、そのフラッタを抱きしめて、よしよしなでなでから頬ずりまでし始めたニーナ。

 ……あの~ニーナさん? いくらなんでもキャラ崩壊しすぎじゃありません?


「あ~……。そう言えばニーナちゃんって森でご両親と暮らしてて、ご主人様に貰ってもらって、私とかリーチェとか周囲には年上ばかりで、今まで年下の相手と付き合ったことが無かったのかもしれませんね。孤児院の子達は身内とは言えませんし」


 ニーナの様子をこのように分析するティムル。

 つまり、突然出来た妹が可愛くて可愛くて仕方ない、世話焼きお姉ちゃんになってしまってるわけかぁ。


 確かにニーナはひとりっ子なのに姉属性みたいなものを感じるし、フラッタは完全に末っ子属性だもんね。相乗効果で相性爆発してるわ。

 ニーナとフラッタの様子を微笑ましく眺めているリーチェのことも、どさくさに紛れて誘ってみる。


「次の遠征にはリーチェも一緒に行こうぜ、って約束しても構わない?」

「……ふふっ。構わないよ。僕もみんなと一緒に行動するの、本当に楽しみにしてる」


 自分に話を振られると思っていなかったのか、一瞬だけ驚いた表情を浮かべたあとに俺の提案を受け入れてくれるリーチェ。

 しかしすぐにからかうような表情と口調で、俺に微笑みかけてくる。


「それに僕の王子様の実力も見せてもらいたいところだしね?」

「流石に俺のお姫様の期待には沿えないと思うけどね……。でもまずは一緒に過ごしてくれるだけでも嬉しいよ」


 期待に沿えない事と、それでもリーチェと一緒に居られて嬉しい気持ちを正直に口にする。

 俺の返答に満足したらしいリーチェは、笑顔で頷いて見せてくれた。


 さて、今度の遠征からは4人。その次の遠征は5人で挑めるようでなによりなんだけど……。完全にオーバースペックだよなぁ?

 3人だけでも余裕があった場所に、フラッタとリーチェを加えるって、どんだけ~?


 ま、難易度はともかく、フラッタが加わってくれる今度の遠征も、リーチェが参加してくれる次回の遠征も、今から楽しみで仕方ないねぇ。


「それじゃちょっと話は変わるんだけどさ……」


 めでたく2人の参加が決定したところで、昨日から気になっていた事を聞いておく。


「昨日のフラッタとリーチェと話した時、なんだかフラッタがここに引っ越すことを前提に話を進められた気がしてたんだけど気のせいかな? 俺達と話す前に2人で事前に打ち合わせしてあった?」


 ニーナとティムルも同じ印象を抱いていたし、答えてもらえるなら聞いておきたい。この2人が俺達に不利益を齎すとは全く思ってないけどね。

 ……っとまずい。今の聞き方だと不快に思ってるみたいに聞こえちゃうかな?


「ああっとと、別に怒ってるわけじゃないからね? ただ、竜爵家が潰されるのは年末って話だったから、なんで急いでうちに引っ越そうと思ったのか不思議でさ」


 婚約者がいるらしいから、さっさとうちに来てくれたことについては何にも文句はないんだけど。でも少し強引な気がしてしまう。

 ニーナに囚われたフラッタと、リーチェが顔を見合わせる。


「……えっと、結論から言うと、お察しの通り打ち合わせしてあったんだ。昨日は3人ともなかなか下りてこなかったからね」


 俺が怒っていないのを察してくれたリーチェがあっさり認めてくれた。

 ああ、遠征帰りでハッスルしちゃったもんね……。朝食を用意しておけとか言われた程度に待たせちゃったんだっけ。


「君たちがお楽しみの間に訪ねてきたフラッタを招き入れて話をしていたんだけどさ。なんだかルーナ家の様子がおかしいという話になってね。話を聞くに僕も少し危険な感じがしたんだ」


 え? なんだそれ? 先に言ってよそういうことは。今日普通にフラッタを1人で帰しちゃったじゃんかぁ。
 フラッタもリーチェも口を挟まなかったから、問題ないと判断したのかもしれないけどぉ。

 しかしフラッタほどの実力があるのに、リーチェが危険だと判断する話って……。それってよっぽどじゃないのか?


「フラッタはダンに求婚されてるしさ、なるべく早くこの家に避難しようって結論に到ったんだよ。……まさか1日でフラッタの方がダンを受け入れてしまうとは思わなかったけど」

「おいおい、フラッタだけじゃなくお前にも求婚してるだろリーチェ?」


 はいはいそうだねと笑顔で流されてしまった。

 くっそ、結構動揺しやすいくせに、肝心な部分のガードがめちゃくちゃ固いなリーチェって。


「しかしフラッタの実力を知っているリーチェが危険と判断する状況かぁ。俺が力ずくで押し倒そうとしても、フラッタとリーチェならあっさり撃退しちゃえるくらい強いだろうに」

「それはどうかなぁ? ダンに押し倒されたら、僕もフラッタも無抵抗で体を差し出すかもしれないよ、僕の王子様? なんなら試してみる?」


 む、無抵抗でフラッタとリーチェを……?

 ってそうじゃないそうじゃない。


 くそ、いちいちエロ方面に思考を逸らそうとするんじゃないやいっ! ただでさえこの場の女性陣全員にベタ惚れしてるんだからさぁっ!


「……ただなんというかフラッタの話はね、そういうのじゃないんだよ。単純な戦闘力の問題じゃなくて、どう対処していいか分からない感じでさ」


 リーチェほどの実力者が、どう対処していいか分からない状況?


「妾も上手く説明できなくてのぅ……。とにかくここからは妾が引き継ぐのじゃ」


 口ごもるリーチェの様子を見たフラッタが、説明を引き継いだ。

 フラッタは当事者なんだもんな。分からないなりにもリーチェより実感のこもった話が出来るはずだ。


「あの事件以来屋敷で過ごしていると、一見なにも変わっていないように思えるのじゃが、なんだか毎日違和感ばかりを覚えてしまうのじゃ……」


 あの事件以来。マルドック商会の壊滅以降の話か。

 言い辛そうに……、というよりも言葉に迷うように、たどたどしく説明を続けるフラッタ。


「あれ? こんな奴おったか? こんなものあったか? ここには別の物が、ここは違う人間がいたような。なんだかそういう違和感ばかり抱くようになってしまってのぅ……」


 なんだそれ? 認識阻害系の攻撃でも受けている?

 恐らく生まれてからずっと住んでいるだろう自宅に、違和感ばかり抱いてしまうって……?


「両親にも相談したのじゃが、父上は取り合ってくださらなんだ。しかし母上は、出来るだけ早くこの屋敷から去りなさい、と言ってきたのじゃよ。理由は教えてくれなかったのじゃがのぅ……」


 屋敷の異変に対して当主は取り合わず、だけど当主夫人は娘に逃げろと伝えてきた。

 つまりフラッタの覚えた違和感は本当で、実際にフラッタの家は何かされていて、それをしているのは他でもない当主ってこと、か?


「なるほど。差し迫って危険があるのかは分からないけれど、確かに避難を決断するのも頷ける状況だね」


 いや、流石にこの結論は楽観的過ぎるか? フラッタが違和感を覚えていて、当主夫人が娘を逃がそうとしている時点で、フラッタの自宅は既に安全とは言えないんじゃないか?


「フラッタのお母さんのことはいいのか? 俺にとってもお義母さんになるわけだし、協力できることは協力するけど」

「ありがたい申し出ではあるが気にしなくて良いのじゃ。母上はルーナ家没落後はご実家に戻られる予定じゃ。心配要らぬ。母上自身もそう仰っておったしの」

「母親が安全なのに、フラッタは危険なのか? なんでだ?」

「それは妾も分からぬのじゃ。ただ母上が嘘をついているようには思えなかったのじゃ」


 フラッタ自身にも分からないか。分からないからこそウチに避難するんだもんな。


 あり得るとしたら、ルーナ竜爵家の血に何か意味でもあるのか?
 それとも絶世の美貌を持つ貴族令嬢フラッタ、この最高のカードで政略結婚でも狙ってたとか?

 フラッタとリーチェが混乱するのも分かる。色々とアベコベで意味不明な状況に思えるな。


「状況は分からぬが、恐らく本当に母上は心配要らぬのであろうよ。剣の腕でも妾よりも遥か上であるしのぅ。流石にリーチェには及ばぬと思うが」


 フラッタより強いのかよっ。そりゃ心配するだけ損だなっ!


 んー、フラッタの言葉だけしか判断材料がないけれど、とりあえず当主夫人の身に危険はない。そう信じるとしよう。
 救出作戦とか言われても困るしねぇ……。

 あるいは当主夫人も何らかの悪事に手を染めていて、でも娘だけは助けたくて……。なんて想像は下種の勘繰りすぎるか。そろそろやめておこう。


「ご主人様? 勝手に変なことを考えて1人で落ち込むの、やめてくださいね?」

「うん。大丈夫。ニーナに隠し事は出来ないねぇ」


 嫌な想像をしてしまった俺に即座に釘を刺して来るニーナ。

 そんな彼女に苦笑いを浮かべながら、心配ないよと返答する。


「しかしフラッタの話を聞いていると、リーチェがどうしたらいいのか分からないって言ってた理由も分かるよ」

「でしょ? 恐らく何かは起きてるんだけど、下手に触れていいものなのかも良く分からなくってさ……」


 当主夫妻は問題ないのに、屋敷には何かが起こっているのは間違いない。そして母親に警告まで受けたんだもんな。そりゃ避難するよね。

 リーチェの実力なら力ずくで解決するってことも出来るんじゃないかとも思うけど、相手は爵位持ちの貴族。下手につついて鬼や蛇を出すのも危険か。


「ただ屋敷の話をすると、ダンが竜爵家に忍び込んだりするかもしれないと思ってさ。フラッタの暴走を止める為に、という体にしたほうがいいと思ったんだよね」


 なるほど? フラッタの家が変だから匿って~だと、俺がどう出るか不安だったと。

 いやいやリーチェさん。流石に俺も貴族邸に忍び込むほど命知らずではないと思うんですけど……?


「ティムルの時も、君は躊躇いなく他人の家に侵入したりしてたしさ。ダンに能動的に動かれると、ちょっと僕には動きが予想できなくって」


 ニーナに包まれたフラッタの顔を見る。

 こんなに可愛い俺のフラッタが危険な目に遭っていたら?


 ……ふむ、確かに居ても立ってもいられなくなりそうだ。リーチェの心配もあながち的外れでもなさそうだなぁ。


「む? なんじゃダン。そんなに見詰められると照れるのじゃ」

「いや、可愛いフラッタのためなら、確かにリーチェの言う通りにルーナ竜爵家の屋敷に忍び込むくらいはしたかもなーってさ」


 ぽんっと効果音が聞こえてきそうなくらいに急激に赤面して、嬉しそうに恥ずかしそうにモジモジし始めるフラッタ。そしてそのフラッタによしよしなでなでし続けるニーナ。


「ってあれ? あの話が打ち合わせ通りだったのなら、真相を暴きたいっていうのは嘘? 本音? どっちなのかな」

「勿論暴きたいほうが本音なのじゃ。じゃがそこまで執着があるわけでもないのう」


 あの時のフラッタの気持ちに嘘偽りは無いらしい。

 ま、フラッタって自分の気持ちを隠したりするのは苦手そうだもんな。


「……というか、兄上の話も今の屋敷の様子も、闇を暴くと妾が今まで信じてきたもの全てが崩れ去りそうでなぁ。少し恐ろしいのじゃよ」


 不安げに俯くフラッタ。すかさずなでなでよしよしするニーナ。

 いや今はニーナは関係なかった。


 闇を暴き、真相を白日のもとに晒したいという、純粋で真っ当な正義感。
 だけどそれを暴いた時に、自分の大切な人や、信じている人が関わっていたとしたら?

 そう思い至った時に、誰しもが迷わず正しい事を行えるわけじゃない。


 ましてやフラッタは13歳の小さな女の子でしかないのだから、迷うのも躊躇うのも当たり前のことなんだ。


「なるほど。フラッタの事情は分かったよ。その結果フラッタが俺の女になる事を決めてくれたんだから文句なんかないさ。改めて、この先もずっとよろしくなフラッタ」

「うむっ。この先ずっと一緒なのじゃっ」


 フラッタは前から既に家族枠みたいなものだったからなぁ。
 これからずっと一緒にと言われても、なんとなく今更感は否めないね。

 とっくに懐に入られてたんだよなぁ。


「さて。こんなに可愛いフラッタも俺の女になって、最高に美人のリーチェも俺の女になる事が予約済みになったわけだ」


 俺を信用して、俺を好きになってくれたフラッタ。俺を待っていてくれると言ってくれたリーチェに応えたい。

 だから俺も腹を割って、隠し事は無しでいきたい。


「そこでだ。ニーナ、ティムル。俺の話をこの2人にもしようと思うんだけど、2人はどう思うかな? フラッタには話すことにしてたけど、せっかくだからリーチェにも言っていいかな?」


 俺個人の話ではあるけど、ニーナとティムルは家族だからね。重大な事は必ずみんなと相談する。

 ……あれ? 嫁を増やす話って、大体俺が突っ走ってたかなぁ?


「私は別に構いませんよ。フラッタもリーチェも聞きたい話でしょうし」

「私も問題ないと思いますよ。フラッタちゃんもリーチェも、もうご主人様を通して家族だと思ってますし」


 ま、2人とも反対はしないか。

 これがムーリさん相手だったら反対も出そうだけど、フラッタとリーチェはもうこの家の住人だよなぁ。


「あ~……。心配なのはリーチェですかねぇ……。リーチェの事情は分かりませんが、ご主人様の話を聞いたらなんかこう、燃え上がっちゃいそうで……?」

「あはーっ。それ分かりますよニーナちゃんっ。ニーナちゃんも私もそうなんですけど、これからの話を聞けば多分フラッタちゃんもリーチェも、ご主人様には運命を感じちゃいそうですよ?」


 不安げと言うか諦めの漂うニーナと、ワクワクした感じを隠そうともしないティムル。

 2人を受け入れることには賛成しているニーナだけど、2人の抱える問題に俺が首を突っ込むのが心配なんだろうなぁ。いつも心配ばかりかけてごめんね。


「なんじゃなんじゃっ。面白そうな話なのじゃっ。聞きたいのじゃっ。誰にも言わぬと約束するのじゃっ」

「ダンは少し変わっているとは思ってたけど、やはり何か事情があったんだね? でもニーナとティムルの言っている事はちょっとわからないな? 燃え上がるとか運命とか、いったい何の話なのかな?」


 好奇心いっぱいに身を乗り出してくるフラッタと、射抜くような鋭い視線を送ってきながらも、ちょっと怪訝な表情を浮かべているリーチェ。

 俺の女が俺に運命を感じて燃え上がる分には大歓迎だ。むしろメリットしか無いわそんなの。


「それじゃ2人とも、信じられないかもしれないけど聞いてくれ」


 久しぶりだなこの話するの。ティムルに話した時以来だっけ。

 どうやって切り出そうかななんて思ったけど、面倒臭いのでいつも通りにド直球で話してみるか。


「実は俺、別の世界で生まれてさぁ。この世界には半年前に来たばかりの、異世界人なんだよ」

「「……………………は?」」


 意味が分からないと言わんばかりに、鳩が豆鉄砲を食らったような表情を浮かべるフラッタとリーチェ。

 さぁて、話を聞いた2人はどんな反応を見せてくれるかなぁ?


 それにしても、ニーナもティムルも、俺との出会いに運命を感じていてくれたのかぁ。

 嬉しい反面、2人の辿る運命が嫌で2人に手を伸ばした俺としては、少し複雑な気分かもしれないね。
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