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2章 強さを求めて1 3人の日々
066 調理場は戦場だ (改)
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礼拝日に興味があると我が家を訪ねてきたフラッタ。
コイツ泊まる気満々だよぉ。せっかく好色家のレベルを上げたっていうのにさぁ……。
ま、遊びに来てくれたフラッタを追い返すわけにはいかないよな。仕方ないので家に上げてやる事にするか。
……なんて判断は、夕食の時に早速後悔する事になった。
「う、うまぁっ!? 甘ぁっ!? なんじゃこれはっ! なんなのじゃこれはぁっ!?」
「うまぁっ!? 今までこんなの出してくれたことなかったじゃないかっ! ちょっとダン! なんで出してくれなかったのさっ!」
「うるせぇっての。今回はニーナのリクエストだから出したんだよ。感謝はニーナと調理器具を作ってくれた職人さんにしろ」
フラッタと中身フラッタがフレンチトーストを食べて叫んでいる。
2人とも両手を折りたたんで拳を握り、椅子に座ったままジタバタしてる。なんで2人して同じような動きをしてるんだお前らは。
女の人って美味しい物食べると、なぜか座ったまま踊るよね?
「やっぱりこれ大好きですご主人様。もっと食べてもだいじょうぶですか?」
「私もっ! 私もおかわりですご主人様っ!」
「うん。2人は好きなだけ食べれば良いよ。でも出来れば他の料理も食べてくれたら嬉しいかなぁ」
ニコニコとフレンチトーストを頬張るニーナとティムルには好きなだけ食べさせてあげよう。いつもありがとう2人とも。今回も遠征お疲れ様。いっぱい食べてね。
フレンチトーストだけじゃなく、野菜を挟んで焼いたり肉を挟んで焼いたりと、ホント大活躍だなホットサンドメーカー。
大抵の食材は火を通せば食べられるからね。この考えって料理できない人の思考そのものなんだけど、なんかいい具合に火が通るんだよなぁこれ。
「あっ、甘いものとしょっぱいものを同時に出すでないっ! 食が止まらなくなるのじゃっ!」
「ずるいよぉなんで僕には出してくれなかったんだよぉ美味しいよぉっ! 君に言いたい事は山のようにあるけど、まずはおかわりをお願いするよっ」
「お前らは少しは遠慮してくれませんかねぇっ!? うちの食材食い尽くす気なの!?」
フラッタとリーチェはどんだけ喰うんだよ! イナゴかよお前らはっ!?
ていうかフラッタ、お前今回は別に遭難も何もしてないだろうがっ。なんで前回より食ってんだよっ! リーチェも普段の倍以上食ってんじゃねぇぇぇっ!
お前らのおかわりのペースが速すぎて作るのが追いつかねぇんだよっ、んもーっ!
遠征の慰労も兼ねて、奴隷2人に主人からの料理の振る舞いってくらいの軽い気持ちだったのに、まるで戦場じゃんかよぉ。厨房はいつだって戦場だった?
ったく、別に食べるのは止めないから、せめて俺にも食事させろやぁっ!
フレンチトーストの合間に、肉と野菜を挟んで、香辛料強めの味付けでトーストを作る。これこそ正統派のホットサンドかな? ホットサンドって意識して食べたことないけど。
「あーっ! なにを食べておるのじゃっ!? 妾の鼻は誤魔化せぬぞっ! それは妾たちに出してない料理なのじゃっ!」
「なんだって!? それは聞き捨てならないよっ! 何を1人で食べてるんだいっ! 独占する気なのかなっ!?」
「これは俺のでーす。それにちょっと辛めだからお前らの口に合うとも思えないぞ?」
詰め寄るフラッタとリーチェを無視して、2人の目の前で焼き立てにガブリと歯を立てる。
もぐもぐ。うん、思ったより美味しいな。
俺も別に甘い物は嫌いじゃないんだけど、ここまで甘い匂いが充満してると流石に辟易する。そんな中でスパイシーなホットサンドは中々イケるね。
「美味そうに食いおって! やっぱり美味いのじゃろうっ! 妾にも寄越すのじゃっ!」
「僕にもっ! 僕にもくれよーっ! ズルいよーっ! 僕も食べたいんだよーっ!」
「絶対に口に合わないと思うけどなぁ……」
フレンチトーストをもぐもぐと食べながらぎゃーぎゃー騒ぐフラッタとリーチェ。お前らが美味そうに食ってるそれとは正反対の味だと思うよ?
作ってから食べれませんでしたって残されたらムカつくし、まずは味見させるべきか? でも今俺が食ってるのしか無いんだけど……、まぁこれでいいか。ダメなら無しだ。
「じゃあ俺の食いかけでいいなら味見させてやるよ。あ、ニーナとティムルも味見する?」
「勿論ですご主人様。本当にありがとうございます」
「私もお願いします。私は辛い料理も好物ですから楽しみです」
へぇ。ティムルは辛いの好きなのか。それならティムルには物足りないかもしれないな。
俺の食いかけホットサンドをナイフで4等分にして4人に分けてやる。
……つうか俺が食う暇、本当に無いね? 夕食が始まってからまだひと口しか食事してないんだけど?
「美味いのじゃっ! やっぱり美味いのじゃっ! これも作って欲しいのじゃっ」
「確かに辛いけどこのくらいは全然大丈夫だよ。僕の分も宜しくね」
「私には少し辛いですね。でも美味しいですご主人様」
「逆に私はもっと辛くてもだいじょうぶです。とても美味しいです」
ニーナの分は辛味控えめ、ティムルの分は逆にマシマシかな? リーチェも少し辛味を抑えたほうが良さそうか。
……フラッタはもうなに食っても同じだろ。焼かずに出しても美味いって言いそうだ。
「全員分同時には作れないから、まずはニーナとティムルの分な。リーチェとフラッタは指でも咥えとけ」
「酷いのじゃっ! 味見させておいて待てだなんて鬼なのじゃっ! また妾のおっぱい触っていいからぁ! 揉みしだいてダンの好きにしていいからぁ! だから先に作るのじゃぁっ!」
「それなら僕のおっぱいも好きにしていいからっ。待てだなんて、そんな酷いこと言わないでくれよっ。これでもおっぱいには自信があるんだっ。もう好き放題していいからさっ。待てなんて言わないでくれよぉっ」
ふざけたことを叫びだしたフラッタとリーチェには、料理の代わりに拳骨を食らわしておいた。
嵐のような夕食が終わると、3日分用意したはずの食材が底をついていた。
ふざけんなよフラッタと中身フラッタのコンビめぇ。フレンチトーストの材料も大量に買い込んだはずだったってのにさぁ。
「ご主人様。とっても美味しかったです。また作ってくださいね」
「甘いのも美味しかったけど、辛いのも凄く美味しかったです。ありがとうございました」
「ニーナとティムルに喜んでもらえて嬉しいよ。2人の好みも少し分かったから、次に作るときはそれも意識してみるね」
満足げにお腹を擦るニーナとティムル。この細い2人のどこにあんなに入ったんだろうなぁ……。
女の人ってたまにめちゃくちゃ食べたりするよねぇ。いったいどんな仕組みなの? 理解不能だよぉ。
「ううう。美味しかったが殴ることはなかろう……? 美味しかったがのぅ」
「殴られたなんていつ以来だか覚えてないよ……。食事代だと思えば耐えられるけど、まだ痛いよぅダン」
「お前らはもう少し自分の美貌を自覚してから発言しろってば。俺の見た中ではフラッタとリーチェは1番の美人なんだよ。そんなお前らが軽々しくおっぱい差し出すんじゃないっ」
おっぱいとはそんなに軽々しく扱っていいものではない。全てのおっぱいに敬意を払い、全てのおっぱいを尊重して初めて、おっぱいに触れる資格を得るのだ。
夕食の優先権の対価なんかに差し出していいほど、お前らのおっぱいは安くない。
「ほほう、思ったよりも妾の評価が悪くないのじゃな。殴りつけられたから嫌われたのかと思ったのじゃ。……妾はダンに嫌われるのは嫌なのじゃ」
「ダンも中々口が上手いね。でも2人の前で僕の事を褒めたりしていいのかい?」
「なんで? フラッタとリーチェが美人なんて誰の目にも明らかだろ。お前らが美人であることと、ニーナとティムルが俺の女であることに何か関係あるの?」
お前ら2人を美人じゃないと評価するほうが難しいっての。
ニーナとティムルのほうを見ると、なんかめっちゃニコニコしてる。そんなに喜んでもらえたなら頑張って料理した甲斐もあったかな。
「さてと。食休みってワケじゃないけど、少し話をさせてくれ」
4人にお茶を配りながら、夕食のせいで聞きそびれていた話を尋ねる事にする。
「フラッタさぁ。この前来たとき没落寸前とか言ってなかった? なに普通にうちに遊びに来てんの? あ、遊びに来たのを責める気はないよ」
「うむ。兄上の行方がまだ分からなくてのぅ。妾たちルーナ竜爵家も捜索に協力しておる立場じゃからな。兄上が見つかるまでは正式な沙汰は保留されておるのじゃろうよ」
捜査協力しているうちは処分が保留されてる? そういうもんなのかなぁ?
恐らく竜爵家ってのは戦闘能力が高いんだろう。犯人も竜爵家の出身であれば、犯人を追い詰めるのに犠牲が出る可能性が非常に高い。
だからこそ竜爵家の処分を保留し犯人にぶつける事で、自分達の犠牲を最小限に……、的な?
「そんじゃ次な。明日の礼拝日って俺たちは裏方で参加するんだけど、フラッタは一般参加でいいの?」
「いいわけなかろうがっ。妾も裏方参加で構わぬのじゃっ! なんでダンはことあるごとに妾を排除しようとするのじゃっ!?」
「いやいや排除とかじゃなくてさ。フラッタは手伝いの話は知らなかっただろうし、お前って一応貴族令嬢だから手伝わせていいのかなってね。お前がいいなら裏方参加でいいんじゃない? しかしなぁ……」
この場の女性陣全員を見回してみる。
うん。何度見ても全員目が眩みそうなほどの美人揃いだ。コイツら全員で手伝いって、問題、起きないかなぁ……?
そもそもムーリさんが既に美人巨乳シスターだ。ニーナとティムルもはっきり言って美人だ。
更にそれ以上に美人のフラッタとリーチェが炊き出しを振舞うわけ? 絶対男群がるだろ。
まぁ全員戦闘力が高いわけだし、自力で撃退すんのかもしれないけどぉ。流石にそんな奴らのことまで責任取れないよなぁ。
う~ん、絡んでくる男が居たら同情しそう。危ない! お前正気か! そいつはフラッタだぞ!? みたいな。
「あれ? そう言えばお前プレートメイルは? なに普通の格好してうちに来てんの?」
嵐のような来訪だったからつっこむのが遅れてしまったけれど、今回フラッタは普通にドレス姿のままだった。
鎧を脱ぐのは俺達の前だけ、とか言ってなかったかこいつは?
「うむ。前回で皆と仲良くなったからのう。装備品は置いてくることにしたのじゃ。流石に剣だけは持ち歩いておるがの」
「はぁ……。お前本人がいいならいいんだけどさぁ」
貴族令嬢が危なくないのか? と思ったけど、こいつめちゃくちゃ強いから大丈夫なのか。素手でもマーダーグリズリーとか倒しそう。フラッタだし。
ま、フラッタのことは本人がいいって言ってる以上は追求しても仕方なさそうだな。
「じゃあ次はリーチェな。リーチェって多分シルヴァの捜索を依頼されてるんだろうけど、なんで未だに見つけられないの? エルフの能力って、捜索に向いてるっぽいこと聞いたんだけど」
「……なにサラッと僕の依頼内容言い当ててるのさ? そしてこの子ってシルヴァの妹なの?」
怪訝な顔をして俺とフラッタを交互に見るリーチェ。
ああ、そう言えばリーチェとフラッタって初対面だったんだっけ。その割に夕食を激しく奪い合ってたから初対面感全然無かったわ。
「どこから突っ込めばいいかわからないけど、残念ながら見つかってないね。下手をすると、エルフに協力者がいるんじゃないかと思ってる」
なるほど? エルフの能力はエルフの能力で相殺出来る的な?
……というかこの話、だいぶキナ臭くなってきてない?
どうにも最初から違和感が拭えなかったんだよなぁ。
竜人族と商会の虐殺が義憤に駆られての犯行だとすると、今現在も犯人が逃走を続けているのはおかしいと思う。正義感の強い人物なら自首するなり告発するなりしそうなものだけど。
未だシルヴァが見つかっていない事も不思議だ。会ったことはないので想像でしかないけど、フラッタ並みの美貌を隠して潜伏とか出来るもんかぁ?
仮に今回の犯行が衝動的なものでなかったと仮定すると、結構色々繋がってしまう気はするんだよねぇ。
竜人族を皆殺しにし、商隊を壊滅させ、その後の足取りが追えなくなってるってのは、なんかこう、計画性を感じなくもないんだよ。
ちょっと、吐き気がするようなことに思い至ってしまったんだけど、流石にこれは無いと思いたいよねぇ。
「……ダン。君何か分かったのかい? 良かったら教えてくれないかな?」
「いや? 世の中物騒だなって思っただけだよ」
おっと、流石リーチェは俺の様子を良く見てるな。
でもこれはまだなんの確証も無い話だし、みんなに告げるべきじゃないと思う。特にフラッタには聞かせられない。
これ以上話すとボロが出そうだな。ここらが引き際か。
「そんじゃ俺たちはそろそろ休ませて貰おうかな。フラッタとリーチェは1階の客室を使ってくれ。お客さんもいるし流石に今日は騒がないからさ」
「むぅ? なにを言っておるのじゃダンよ。妾は前回同様に同じベッドで眠るつもりでおったのじゃが?」
「お前がなに言ってんだよ。今回は客室があんだからそっち使えっつの」
シッシッと右手を払ってフラッタを追い払う。
そんな俺を見たフラッタは、おもむろにニーナに抱きついた。
……は? なぜにニーナ?
「のぅニーナぁ。妾も一緒に寝かせて欲しいのじゃぁ。お願いなのじゃぁ。ニーナ、お願いなのじゃぁ……!」
抱きつきからの涙目上目遣いのおねだりか。これは破壊力ありそうだ。
……なんかもうオチが見えましたね?
「ご、ご主人様ぁ。た、助けてくださいぃ。こ、このままじゃ断りきれ……」
「お願い。お願いニーナぁ。妾もニーナと一緒に寝たいのじゃぁ。おねがぁい」
「ああもう分かりましたっ! 分かりましたよもうっ! これだからっ! これだからフラッタはぁっ!」
分かってはいたけど陥落はやっ! もうちょっと粘ろうよニーナ! お前の主人のベッドに異物を混入させないで!?
「わぁい! ニーナ、大好きなのじゃー!」
「あーもう! フラッタは! これだからフラッタはぁ!」
フラッタを抱きしめ返してナデナデしまくってますね。怒りながらニヤニヤするとか器用だな?
まぁ分かってましたよ。フラッタってニーナに特効持ちだもんね。
「え、みんな一緒に寝るのに僕だけ客室って酷くないかな? 寝るだけなら僕も一緒でも構わないよね?」
「……は?」
おい中身フラッタ。なに言ってんだお前は。
フラッタだけならまだしも、流石にそのオチは予想してなかったんですけどぉ……?
コイツ泊まる気満々だよぉ。せっかく好色家のレベルを上げたっていうのにさぁ……。
ま、遊びに来てくれたフラッタを追い返すわけにはいかないよな。仕方ないので家に上げてやる事にするか。
……なんて判断は、夕食の時に早速後悔する事になった。
「う、うまぁっ!? 甘ぁっ!? なんじゃこれはっ! なんなのじゃこれはぁっ!?」
「うまぁっ!? 今までこんなの出してくれたことなかったじゃないかっ! ちょっとダン! なんで出してくれなかったのさっ!」
「うるせぇっての。今回はニーナのリクエストだから出したんだよ。感謝はニーナと調理器具を作ってくれた職人さんにしろ」
フラッタと中身フラッタがフレンチトーストを食べて叫んでいる。
2人とも両手を折りたたんで拳を握り、椅子に座ったままジタバタしてる。なんで2人して同じような動きをしてるんだお前らは。
女の人って美味しい物食べると、なぜか座ったまま踊るよね?
「やっぱりこれ大好きですご主人様。もっと食べてもだいじょうぶですか?」
「私もっ! 私もおかわりですご主人様っ!」
「うん。2人は好きなだけ食べれば良いよ。でも出来れば他の料理も食べてくれたら嬉しいかなぁ」
ニコニコとフレンチトーストを頬張るニーナとティムルには好きなだけ食べさせてあげよう。いつもありがとう2人とも。今回も遠征お疲れ様。いっぱい食べてね。
フレンチトーストだけじゃなく、野菜を挟んで焼いたり肉を挟んで焼いたりと、ホント大活躍だなホットサンドメーカー。
大抵の食材は火を通せば食べられるからね。この考えって料理できない人の思考そのものなんだけど、なんかいい具合に火が通るんだよなぁこれ。
「あっ、甘いものとしょっぱいものを同時に出すでないっ! 食が止まらなくなるのじゃっ!」
「ずるいよぉなんで僕には出してくれなかったんだよぉ美味しいよぉっ! 君に言いたい事は山のようにあるけど、まずはおかわりをお願いするよっ」
「お前らは少しは遠慮してくれませんかねぇっ!? うちの食材食い尽くす気なの!?」
フラッタとリーチェはどんだけ喰うんだよ! イナゴかよお前らはっ!?
ていうかフラッタ、お前今回は別に遭難も何もしてないだろうがっ。なんで前回より食ってんだよっ! リーチェも普段の倍以上食ってんじゃねぇぇぇっ!
お前らのおかわりのペースが速すぎて作るのが追いつかねぇんだよっ、んもーっ!
遠征の慰労も兼ねて、奴隷2人に主人からの料理の振る舞いってくらいの軽い気持ちだったのに、まるで戦場じゃんかよぉ。厨房はいつだって戦場だった?
ったく、別に食べるのは止めないから、せめて俺にも食事させろやぁっ!
フレンチトーストの合間に、肉と野菜を挟んで、香辛料強めの味付けでトーストを作る。これこそ正統派のホットサンドかな? ホットサンドって意識して食べたことないけど。
「あーっ! なにを食べておるのじゃっ!? 妾の鼻は誤魔化せぬぞっ! それは妾たちに出してない料理なのじゃっ!」
「なんだって!? それは聞き捨てならないよっ! 何を1人で食べてるんだいっ! 独占する気なのかなっ!?」
「これは俺のでーす。それにちょっと辛めだからお前らの口に合うとも思えないぞ?」
詰め寄るフラッタとリーチェを無視して、2人の目の前で焼き立てにガブリと歯を立てる。
もぐもぐ。うん、思ったより美味しいな。
俺も別に甘い物は嫌いじゃないんだけど、ここまで甘い匂いが充満してると流石に辟易する。そんな中でスパイシーなホットサンドは中々イケるね。
「美味そうに食いおって! やっぱり美味いのじゃろうっ! 妾にも寄越すのじゃっ!」
「僕にもっ! 僕にもくれよーっ! ズルいよーっ! 僕も食べたいんだよーっ!」
「絶対に口に合わないと思うけどなぁ……」
フレンチトーストをもぐもぐと食べながらぎゃーぎゃー騒ぐフラッタとリーチェ。お前らが美味そうに食ってるそれとは正反対の味だと思うよ?
作ってから食べれませんでしたって残されたらムカつくし、まずは味見させるべきか? でも今俺が食ってるのしか無いんだけど……、まぁこれでいいか。ダメなら無しだ。
「じゃあ俺の食いかけでいいなら味見させてやるよ。あ、ニーナとティムルも味見する?」
「勿論ですご主人様。本当にありがとうございます」
「私もお願いします。私は辛い料理も好物ですから楽しみです」
へぇ。ティムルは辛いの好きなのか。それならティムルには物足りないかもしれないな。
俺の食いかけホットサンドをナイフで4等分にして4人に分けてやる。
……つうか俺が食う暇、本当に無いね? 夕食が始まってからまだひと口しか食事してないんだけど?
「美味いのじゃっ! やっぱり美味いのじゃっ! これも作って欲しいのじゃっ」
「確かに辛いけどこのくらいは全然大丈夫だよ。僕の分も宜しくね」
「私には少し辛いですね。でも美味しいですご主人様」
「逆に私はもっと辛くてもだいじょうぶです。とても美味しいです」
ニーナの分は辛味控えめ、ティムルの分は逆にマシマシかな? リーチェも少し辛味を抑えたほうが良さそうか。
……フラッタはもうなに食っても同じだろ。焼かずに出しても美味いって言いそうだ。
「全員分同時には作れないから、まずはニーナとティムルの分な。リーチェとフラッタは指でも咥えとけ」
「酷いのじゃっ! 味見させておいて待てだなんて鬼なのじゃっ! また妾のおっぱい触っていいからぁ! 揉みしだいてダンの好きにしていいからぁ! だから先に作るのじゃぁっ!」
「それなら僕のおっぱいも好きにしていいからっ。待てだなんて、そんな酷いこと言わないでくれよっ。これでもおっぱいには自信があるんだっ。もう好き放題していいからさっ。待てなんて言わないでくれよぉっ」
ふざけたことを叫びだしたフラッタとリーチェには、料理の代わりに拳骨を食らわしておいた。
嵐のような夕食が終わると、3日分用意したはずの食材が底をついていた。
ふざけんなよフラッタと中身フラッタのコンビめぇ。フレンチトーストの材料も大量に買い込んだはずだったってのにさぁ。
「ご主人様。とっても美味しかったです。また作ってくださいね」
「甘いのも美味しかったけど、辛いのも凄く美味しかったです。ありがとうございました」
「ニーナとティムルに喜んでもらえて嬉しいよ。2人の好みも少し分かったから、次に作るときはそれも意識してみるね」
満足げにお腹を擦るニーナとティムル。この細い2人のどこにあんなに入ったんだろうなぁ……。
女の人ってたまにめちゃくちゃ食べたりするよねぇ。いったいどんな仕組みなの? 理解不能だよぉ。
「ううう。美味しかったが殴ることはなかろう……? 美味しかったがのぅ」
「殴られたなんていつ以来だか覚えてないよ……。食事代だと思えば耐えられるけど、まだ痛いよぅダン」
「お前らはもう少し自分の美貌を自覚してから発言しろってば。俺の見た中ではフラッタとリーチェは1番の美人なんだよ。そんなお前らが軽々しくおっぱい差し出すんじゃないっ」
おっぱいとはそんなに軽々しく扱っていいものではない。全てのおっぱいに敬意を払い、全てのおっぱいを尊重して初めて、おっぱいに触れる資格を得るのだ。
夕食の優先権の対価なんかに差し出していいほど、お前らのおっぱいは安くない。
「ほほう、思ったよりも妾の評価が悪くないのじゃな。殴りつけられたから嫌われたのかと思ったのじゃ。……妾はダンに嫌われるのは嫌なのじゃ」
「ダンも中々口が上手いね。でも2人の前で僕の事を褒めたりしていいのかい?」
「なんで? フラッタとリーチェが美人なんて誰の目にも明らかだろ。お前らが美人であることと、ニーナとティムルが俺の女であることに何か関係あるの?」
お前ら2人を美人じゃないと評価するほうが難しいっての。
ニーナとティムルのほうを見ると、なんかめっちゃニコニコしてる。そんなに喜んでもらえたなら頑張って料理した甲斐もあったかな。
「さてと。食休みってワケじゃないけど、少し話をさせてくれ」
4人にお茶を配りながら、夕食のせいで聞きそびれていた話を尋ねる事にする。
「フラッタさぁ。この前来たとき没落寸前とか言ってなかった? なに普通にうちに遊びに来てんの? あ、遊びに来たのを責める気はないよ」
「うむ。兄上の行方がまだ分からなくてのぅ。妾たちルーナ竜爵家も捜索に協力しておる立場じゃからな。兄上が見つかるまでは正式な沙汰は保留されておるのじゃろうよ」
捜査協力しているうちは処分が保留されてる? そういうもんなのかなぁ?
恐らく竜爵家ってのは戦闘能力が高いんだろう。犯人も竜爵家の出身であれば、犯人を追い詰めるのに犠牲が出る可能性が非常に高い。
だからこそ竜爵家の処分を保留し犯人にぶつける事で、自分達の犠牲を最小限に……、的な?
「そんじゃ次な。明日の礼拝日って俺たちは裏方で参加するんだけど、フラッタは一般参加でいいの?」
「いいわけなかろうがっ。妾も裏方参加で構わぬのじゃっ! なんでダンはことあるごとに妾を排除しようとするのじゃっ!?」
「いやいや排除とかじゃなくてさ。フラッタは手伝いの話は知らなかっただろうし、お前って一応貴族令嬢だから手伝わせていいのかなってね。お前がいいなら裏方参加でいいんじゃない? しかしなぁ……」
この場の女性陣全員を見回してみる。
うん。何度見ても全員目が眩みそうなほどの美人揃いだ。コイツら全員で手伝いって、問題、起きないかなぁ……?
そもそもムーリさんが既に美人巨乳シスターだ。ニーナとティムルもはっきり言って美人だ。
更にそれ以上に美人のフラッタとリーチェが炊き出しを振舞うわけ? 絶対男群がるだろ。
まぁ全員戦闘力が高いわけだし、自力で撃退すんのかもしれないけどぉ。流石にそんな奴らのことまで責任取れないよなぁ。
う~ん、絡んでくる男が居たら同情しそう。危ない! お前正気か! そいつはフラッタだぞ!? みたいな。
「あれ? そう言えばお前プレートメイルは? なに普通の格好してうちに来てんの?」
嵐のような来訪だったからつっこむのが遅れてしまったけれど、今回フラッタは普通にドレス姿のままだった。
鎧を脱ぐのは俺達の前だけ、とか言ってなかったかこいつは?
「うむ。前回で皆と仲良くなったからのう。装備品は置いてくることにしたのじゃ。流石に剣だけは持ち歩いておるがの」
「はぁ……。お前本人がいいならいいんだけどさぁ」
貴族令嬢が危なくないのか? と思ったけど、こいつめちゃくちゃ強いから大丈夫なのか。素手でもマーダーグリズリーとか倒しそう。フラッタだし。
ま、フラッタのことは本人がいいって言ってる以上は追求しても仕方なさそうだな。
「じゃあ次はリーチェな。リーチェって多分シルヴァの捜索を依頼されてるんだろうけど、なんで未だに見つけられないの? エルフの能力って、捜索に向いてるっぽいこと聞いたんだけど」
「……なにサラッと僕の依頼内容言い当ててるのさ? そしてこの子ってシルヴァの妹なの?」
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ああ、そう言えばリーチェとフラッタって初対面だったんだっけ。その割に夕食を激しく奪い合ってたから初対面感全然無かったわ。
「どこから突っ込めばいいかわからないけど、残念ながら見つかってないね。下手をすると、エルフに協力者がいるんじゃないかと思ってる」
なるほど? エルフの能力はエルフの能力で相殺出来る的な?
……というかこの話、だいぶキナ臭くなってきてない?
どうにも最初から違和感が拭えなかったんだよなぁ。
竜人族と商会の虐殺が義憤に駆られての犯行だとすると、今現在も犯人が逃走を続けているのはおかしいと思う。正義感の強い人物なら自首するなり告発するなりしそうなものだけど。
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ちょっと、吐き気がするようなことに思い至ってしまったんだけど、流石にこれは無いと思いたいよねぇ。
「……ダン。君何か分かったのかい? 良かったら教えてくれないかな?」
「いや? 世の中物騒だなって思っただけだよ」
おっと、流石リーチェは俺の様子を良く見てるな。
でもこれはまだなんの確証も無い話だし、みんなに告げるべきじゃないと思う。特にフラッタには聞かせられない。
これ以上話すとボロが出そうだな。ここらが引き際か。
「そんじゃ俺たちはそろそろ休ませて貰おうかな。フラッタとリーチェは1階の客室を使ってくれ。お客さんもいるし流石に今日は騒がないからさ」
「むぅ? なにを言っておるのじゃダンよ。妾は前回同様に同じベッドで眠るつもりでおったのじゃが?」
「お前がなに言ってんだよ。今回は客室があんだからそっち使えっつの」
シッシッと右手を払ってフラッタを追い払う。
そんな俺を見たフラッタは、おもむろにニーナに抱きついた。
……は? なぜにニーナ?
「のぅニーナぁ。妾も一緒に寝かせて欲しいのじゃぁ。お願いなのじゃぁ。ニーナ、お願いなのじゃぁ……!」
抱きつきからの涙目上目遣いのおねだりか。これは破壊力ありそうだ。
……なんかもうオチが見えましたね?
「ご、ご主人様ぁ。た、助けてくださいぃ。こ、このままじゃ断りきれ……」
「お願い。お願いニーナぁ。妾もニーナと一緒に寝たいのじゃぁ。おねがぁい」
「ああもう分かりましたっ! 分かりましたよもうっ! これだからっ! これだからフラッタはぁっ!」
分かってはいたけど陥落はやっ! もうちょっと粘ろうよニーナ! お前の主人のベッドに異物を混入させないで!?
「わぁい! ニーナ、大好きなのじゃー!」
「あーもう! フラッタは! これだからフラッタはぁ!」
フラッタを抱きしめ返してナデナデしまくってますね。怒りながらニヤニヤするとか器用だな?
まぁ分かってましたよ。フラッタってニーナに特効持ちだもんね。
「え、みんな一緒に寝るのに僕だけ客室って酷くないかな? 寝るだけなら僕も一緒でも構わないよね?」
「……は?」
おい中身フラッタ。なに言ってんだお前は。
フラッタだけならまだしも、流石にそのオチは予想してなかったんですけどぉ……?
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SenY
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"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
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