異世界イチャラブ冒険譚

りっち

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序章 始まりの日々2 マグエルを目指して

018 ステイーダ (改)

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 野営地で1晩を過ごしたあと、1日中歩き続けて、とうとう初めての街であるステイーダに到着した。

 到着した時点で既に日没近かったので、すぐに宿を取って、すぐに裸になって、すぐに抱き合った。


 お互いの無事と温もりを確かめ合うように肌を重ねた後、気絶するように眠りについたっていうのに、明るくなってからまた再開してしまったので、流石に疲れて休憩中だ。 


「そういえば、人間族と獣人族ってなにが違うの? 外見的には何も変わらないよね?」


 今まさに全身を確かめたわけだけど、ニーナの全身をくまなく細心の注意を払って全身全霊で確認しても、人間と獣人に外見的な差は見つけられない。
 ステータスプレートにも種族の表記はないし、実はそんなに大した違いは無いんじゃ?

 あ、でも人間と獣人の間に子供は作れないんだっけ。


「んー、1番の違いは獣化じゅうかできることかな。私はまだ出来ないけど」

「獣化? えっ、外見を変えたり出来るの?」


 えっ、ニーナに猫耳が生えたり尻尾が生えたりする可能性が?

 ま、まさか発情したりなんてこともっ……!?


「うん。外見を含めたあらゆる性能を人よりも獣に近づけて、より戦闘に向いた体に作り変えることが出来るの。私は出来ないけど、父さんと母さんは獣化出来てたから見たことはあるんだ」


 なるほど。種族毎に固有の能力があるのかな?
 道理で目を皿のようにして全身を徹底的に確認しても、何も違いを見つけられないわけだ。


 最近のニーナは少しずつ体全体に肉が付き始めてきた気がする。
 出会った時は餓死寸前の状況だったせいか、可哀想なくらいガリガリだったもんなぁ。

 保護されてからは充分食事が取れているし、健康になってきた証拠だね。まだまだ細すぎるけどさ。


「多くの戦いを経験した獣人族は、自分の魂に宿した獣の力を引き出すことが出来るようになるの」


 魂に宿した獣っていうのは良く分からないけれど、多くの戦いを経験するっていうのは恐らく一定の経験値の取得するって意味なんだろうな。


「外見的な変化は獣の特徴が体のどこかに現れるくらいかな? 獣化しても獣人がヒトなのは変わらないから」

「へぇ? 外見も変わるなら少し興味があるな。もし獣化できるようになったら見せてくれる?」

「うんいいよ。できるようになったらね?」


 俺に笑顔を見せながら、それでもゆっくりを俺から体を離してしまうニーナ。
 彼女の温もりが離れてしまった事に、どうしようもないほどの寂しさを覚えてしまう。


「さぁダン。そろそろ起きて。今日は1日、ステイーダの街を2人で見て回るって言ってたじゃない。ゆっくりしてると時間無くなっちゃうよぅ」

「あーい。この宿では朝食しか出ないみたいだし、夕飯まで適当に歩こっか。あまりお金が無いのが申し訳ないけどね」


 ニーナに続いてベッドから体を起こし、だけど先に体を起こしたニーナの頬にキスをした。ニーナも俺の頬にちゅっとキスを返してくれてから、ベッドを出て体を拭き始めた。


 マグエルまでの旅には特に期限があるわけでも無いので、昨晩有酸素運動を繰り返した後にニーナと相談して、ステイーダには2泊することに決めた。
 お互い初めての夜営だったから、大事を取って丸1日ほど休息日にあてることにしたのだ。

 休息日のはずなんだけど、野営地では出来なかったことをひと晩中存分に楽しんでしまったよぉ。


 さて、ニーナが言う通り少し寝過ごしてしまったようなので、急いで身支度を整え部屋を出る。

 部屋を出ると俺の後ろに1歩下がる、ニーナとのこの距離感がもどかしいなぁ。


 ニーナと2人で宿を出て、明るい時間に改めてステイーダの街に繰り出した。


「ステイルークと比べると、少し小さいくらいでしょうか? あ、あそこのお店を覗いてみてもいいですか?」

「うん。気になったところはどんどん覗いてみよっか」


 ニーナと2人で、ステイーダの街でデートを楽しむ。

 本当はここで手の1つも握りたいところだけど、ニーナに断られてしまった。奴隷の所有者である俺が侮られてしまうからと。


 でもさぁ。昨日の野営地での扱いを考えると、奴隷として扱う必要あるのかなぁと思えてしまう。

 ニーナだって俺に劣らないくらいに世間知らずだし、気の使いすぎじゃないのかねぇ。


「ダメです。常に用心を怠ってはいけませんよ、ご主人様」


 左手を腰に、右手を顔の前に添えて人差し指を立てて俺を咎めるニーナ。

 いちいち仕草が可愛すぎるってばぁ。この娘が俺の所有物ってマジぃ?


「そんなに私と手を繋いで街を歩きたいのでしたら、なるべく早く私の呪いを解いて、1日も早く奴隷から解放してください。私もご主人様と手を繋いで街を歩く日を楽しみにしてますからね」


 笑顔のニーナに諭されて、なんとかわがままは我慢できた。ニーナも俺と手を繋ぎたいって言ってくれてるだけで今は十分過ぎるほどに満足してしまったから。

 結局は呪いを解かないと何も始まらないんだよなぁ。
 いや、呪いが解ければ全てが解決するって言うほうが正しいかな?


 解呪への決意を新たに、手を繋げないニーナと並んでステイーダデートを再開する。

 ニーナは雑貨や服、小物などを中心に見て回っているけれど、俺はなんとなく魔法薬とかを中心に見て回ってしまう。

 焦っても仕方ないんだけど、可能な限り早く解決したい。そして普通にデートしたいっ……!


「ご主人様。これ、とっても美味しいですねっ!」

「ステイーダは甘い物が沢山あるんだなぁ。これは食べ比べしないとダメだね」


 屋台で売っていた果物の砂糖漬け、リンゴ飴のような食べ物に笑顔で齧りつくニーナ。


 ニーナは食べるのが大好きだけど、今まであまりちゃんと食事が取れなかったせいか、かなりの小食だ。ステイルークで支給された食事なんて俺には全然足りなかったけど、ニーナは食べ切れなくて殆ど残していたからなぁ。

 残った食事は俺が美味しくいただいてましたよ?


 武器屋、防具屋にも立ち寄ってみたけど、やっぱり装備品は高くて手が出ない。せめてニーナに靴を買ってあげたいんだけどなぁ。

 あ、そうだ。鋼鉄の槍みたいに『無し』って付いてる装備品は他にもあるのかな? 鑑定鑑定っと。

 う~ん、1つずつ鑑定しなきゃいけないのはなかなかにめんどくさいね。


 武器屋と防具屋で鑑定しまくった結果、全体の2割程度の商品に『無し』と表示された。
 『無し』がある商品は高額なものほど増えていて、更に『無し』が複数個表示される商品もあった。

 これってあれだよな? ここにスキルを追加する枠があるって意味……、だよね?


「ニーナ。野営地でスキルつきの武器を持ってる人に会ったんだけどさ。装備品にスキルを付ける方法って知ってる?」

「んー、知らないですね。スキル付きの装備品は父も持ってましたけど、それは確かお店で購入したと言ってました」


 お店で購入ねぇ……。

 お店ってどうなんだろ。スキル付きの装備品を専門に扱うお店とかがあったりするのかねぇ?


 ステイーダの店では『無し』がついている商品はちょいちょいあったけど、スキルが付いている商品は1つも置いてなかった。

 つまり、スキルは偶発的に付くものではなくて、後から任意に組み込むものであると思うんだよなぁ。


 いや、スキルが付与された装備品を普通の店で扱わないだけ?
 でもスキルの付与そのものがランダムだとしたら、『無し』なんて表記は必要ない気がする。


 んー、情報が足りないなっ。小難しいことは一旦忘れて、今はデートを楽しもうっ!


「お花とか買ってみたいですけど、今は荷物にしかなりませんからね。お金にも限りがありますし」

「そうだねぇ。無事にマグエルに着いたら、宿じゃなくて家を借りてみる? まだ先の話だけどさ」


 ニーナと先の話をするのはなんだか凄く楽しいなぁ。俺とニーナの明るい未来の為に、絶対にマグエルまで無事に到着しないといけないね。


 ステイルーク、ステイーダ間は殆ど距離がなかったけれど、この先は野営地用に整備されている土地なんて無かったり、徒歩では数日の距離が離れているような場所が殆どだ。

 マグエルまでは順調でも2ヶ月程度は見たほうがいいと言われているし、天候によって足止めされる場合も出てくるだろう。まだまだ先は長そうだ。


 フロイさんにも「少しでも雨が降りそうだと思ったら、その日は街から出るな」ときつく言われた。

 雨の日は視界が閉ざされ、音も聞こえず、暗くなるために魔物が活発化する。死ぬ危険性が跳ね上がるのだと。


 将来への漠然とした期待とハッキリした不安を抱きながら、ステイーダの街を1日中見て回った。




「あら、ニーナちゃんとダンじゃない。ちゃんとステイーダに来てて安心したわー」


 日が暮れて、宿に戻る前に夕食にしようと適当な店に入ったら、野営地で一緒だった人たちと鉢合わせた。鉢合わせてしまったっ……!


「ねぇねぇ2人ともこっち来なさいよ。あれからどうだったの? 今日はステイーダ見て回ったんでしょ? 色々聞かせてよぉ。食事代は出すからさぁ」


 まだ席にもついていない俺達に向かって捲し立ててくるご婦人。

 まーた根掘り葉掘り聞いてくる気満々だよぉ……。


「ご主人様。私はどちらでも構いませんよ」


 同席を躊躇う俺に、ニーナが小声で話しかけてくる。


「それにあの人たちは行商人として各地を回っている人たちだそうなので、もしかしたら有益な情報を得られるかもしれませんよ?」

「絶対あの人たち、酒の肴に俺達のことをからかいたいだけだと思うんだけどぉ。まぁお誘いを断るほどの理由もないけどさぁ……」


 ま、ニーナがいいって言うならご一緒するか。俺達をからかいたいって気持ちも好意には変わらないだろうしな。金欠の俺たちにタダメシの機会を逃すのも勿体無いので、お誘いに乗ってご婦人のいるテーブルに同席した。


 予想通り散々からかわれながらも、腹いっぱい食ってやったぜ!
 食事を口に詰め込みながらも、この先の道中について聞けることは可能な限り聞いてみた。

 しかし流石は商人と言うべきか。簡単なアドバイスはくれても、商売に繋げられそうな情報は一切教えてくれなかった。

 有益だったのは不動産に関する情報だ。家を借りる場合は年単位での契約になり、納税と同じタイミングで契約金を支払う形式だそうだ。
 商店として使用する規模の家屋の家賃は年間5~10万リーフほどで、1人分の人頭税くらいだと考えれば間違いないらしい。


 ニーナも熱心に聞いていたし、そのニーナの様子に女性陣が喜んで色々な話をしてくれた。


「2人で住むなら多少狭くてもいいでしょ。そう考えるなら……、年間1万リーフくらいの物件でも充分じゃないかしら? ダンはニーナちゃんにべったりだし、狭いほうがむしろ喜ぶんじゃなぁい?」


 全然、奴隷と住む家の話には聞こえないんだよなぁ。


「そうですね。私も狭くても気にしませんし、むしろ狭いほうが嬉しいくらいです。なんなら1部屋しかないような場所でも……」


 おっとぉ。ニーナにもお酒が回ってきたのか少々暴走し始めたようだ。

 これ以上恥を上塗りする前に、ニーナの手を引き宿に撤退した。



「ニーナって結構飲めるクチなんだね。俺はあんまり飲めないから驚いたよ」

「え~? 美味しいんだからダンも飲めばいいのよ~」


 考えてみたら、ニーナの境遇的にお酒を飲んだのって今日が初めてなんじゃないのか? あっぶないなぁ。一緒に居て良かったよ。

 ほんのり赤い顔で、俺にひしっとしがみ付いて楽しそうに笑うニーナ。


「ふふふー。ダンと私の家、2人で住む家かぁ。楽しみだねぇ。むふふー」


 へぇ。ニーナって酔うとこんな感じになるの? 笑い上戸なんだろうか。
 俺に見せてくれるのは嬉しいけど、俺以外の奴にこんなニーナの姿を見せるわけにはいかないなっ。

 ニーナの頭を撫でてやると、くすぐったそうに身を捩るニーナが超可愛いんですけど?


「飲まれてるわけじゃないんだろうけど、ちょっと緩まってしまってる感じ? 明日お酒残ってるようなら言ってね? 街の外では万全でいないと」

「大丈夫だよぉ。んも~、ダンはいっつも心配ばっかりしてるんだからぁ」


 不満気な声を上げながら、だけど俺をベッドに押し倒すニーナ。
 俺の体に自分の体をスリスリと擦りつけながら、悩ましい声でおねだりしてくる。


「ねぇダン~。つまんない話はいいから早く寝よー? 明日からまた野宿なんだから、出来る時にいっぱいしようよぉ」


 わぁお、今宵のニーナさんったら積極的ぃ。

 ほろ酔いの女の子ってなんでこんなに色気が増すんだろうね。こんなの我慢できるわけないじゃない?


 酔った女の子を無理矢理ってのは趣味じゃないけど、酔った女の子に誘われたならホイホイされますよ。男の子ですものっ。

 結果的に、ステイーダには良い思い出ばかりが出来てしまったぜっ。
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