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4 102号室 住人 光井慎
38.
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美沙恵さんの送別会は夜の8時すぎから始まった。奇跡的にアパートの住人が全員の総勢7名が参加していた。普段ほとんど姿を見ることのない相良くんまでいたのだから驚いた。ネコのノラは人数の多さに辟易したのかキャットタワーの上に登ったまま降りては来なかった。
食事が普段より遅くなった伊織くんは我慢できないとわかっていたらしく、自室でカップラーメンを食べてきたらしい。それでも並んだ料理を次々と食べていくのだからさすが成長期である。
ちらし寿司にあつあつの茶碗蒸し。ハマグリの吸い物。肉気が欲しいだろうと用意されてたローストビーフにポテトサラダ。
テーブルは隅に追いやられ、床にみんなで輪になり座り込んで飲み食いしている。行儀が悪いけど大人数なのだから仕方がない。
ちらし寿司にはレモンが入っていてそれがなんとも言えず美味しいと思う。茶碗蒸しも出汁が絶妙だ。
いつきさんはバランス良く料理が上手だと思う。何をやらせてもそつなくこなす人がいるが、おそらくこの人はそのタイプの人間だ。少しかじっただけで平均以上の成果をだす。きっとカンがいい人なのだと思う。こういう人が一つのことを極めたらとんでもなく精度のたかいものが出来上がるのだろうと思う。きっと自分では太刀打ちできないくらい。
「ほら、脩平にーちゃん。ご飯しっかり食わないと」
存在が伝説の相良くんは隙あらば部屋の隅に逃げようとしているが、そのたびに伊織くんにつかまり引き戻され、最年少である伊織くんに世話されていた。
取り皿にちらし寿司やらローストビーフををガッツリ盛っている伊織くんは「おおざっぱなおかん」のようだ。伊織くんはまだまだ成長過程でちょっと小柄なのだが、風が吹いたら吹き飛びそうなひょろりとした風貌の相良くんと並ぶとどっちが年上だかわからない。
「みっちゃん、みっちゃん」
隣に座っている礼子さんに呼ばれた。
「こないだありがとう!なんかデザート分、丸ごとお会計から引かれててびっくりしたんだけど。みっちゃんのお財布、ダメージくらってない??」
結局、あの日のデザート代は梅本さんが「祝いだ!いらん」ということで話がついた。というかつかされた。
「いえ、大丈夫です。オーナーが「お得意様のキレイな女性にいいカッコしたいんだ」と言ってましたから。自分の財布は無事ですよ」
むしろダメージ食らったのは精神のほうだ。
「礼子ちゃん、みっちゃんのお店に行ったの?」
礼子さんの隣で『明日も仕事。だけど外せないから少しだけ』ということで大人組に配られた缶ビールを片手に美沙恵さんが会話に入ってきた。
「そう、そう。ティラミスがみっちゃん作に変わってたんだよね。前のも美味しかったけどみっちゃんのが一番好きだなぁ」
「へぇ、そうなんだ?みっちゃんよかったねぇ。ああ、だから最近ティラミスがみっちゃんのスイーツレパートリーから消えたのかぁ」
その通りだ。一応、店で出している商品なのでプライベートで作るのは控えている。
「うーん、私もあっちに行くまでに食べに行こうかなぁ。あそこのお料理美味しいよねぇ」
美沙恵さんは結婚を機にしばらくドイツに住むことになったらしい。話を聞いてちょっと驚いた。礼子さんほど頻繁ではないが時々お店に男の人と来られてたのでお付き合いしてる人がいるのは知っていたのだが。
「先日からデザートメニューにが増えたんですよ。その日のドルチェ3種の盛り合わせ。1種類の量は少なめなんで総量的には少し多めかな?くらいですよ」
そう、結局あのメニューは定番化することになった。礼子さん達のウケが良すぎて、梅本さんも乗り気だったため早急にメニューに加えられた。価格はちょっとだけ上がるのだけれど女性客には甚だ人気で結構な確率でオーダーが入る。男性は質より量だという人がいるが、女性は量より種類なのかもしれない。
食事が普段より遅くなった伊織くんは我慢できないとわかっていたらしく、自室でカップラーメンを食べてきたらしい。それでも並んだ料理を次々と食べていくのだからさすが成長期である。
ちらし寿司にあつあつの茶碗蒸し。ハマグリの吸い物。肉気が欲しいだろうと用意されてたローストビーフにポテトサラダ。
テーブルは隅に追いやられ、床にみんなで輪になり座り込んで飲み食いしている。行儀が悪いけど大人数なのだから仕方がない。
ちらし寿司にはレモンが入っていてそれがなんとも言えず美味しいと思う。茶碗蒸しも出汁が絶妙だ。
いつきさんはバランス良く料理が上手だと思う。何をやらせてもそつなくこなす人がいるが、おそらくこの人はそのタイプの人間だ。少しかじっただけで平均以上の成果をだす。きっとカンがいい人なのだと思う。こういう人が一つのことを極めたらとんでもなく精度のたかいものが出来上がるのだろうと思う。きっと自分では太刀打ちできないくらい。
「ほら、脩平にーちゃん。ご飯しっかり食わないと」
存在が伝説の相良くんは隙あらば部屋の隅に逃げようとしているが、そのたびに伊織くんにつかまり引き戻され、最年少である伊織くんに世話されていた。
取り皿にちらし寿司やらローストビーフををガッツリ盛っている伊織くんは「おおざっぱなおかん」のようだ。伊織くんはまだまだ成長過程でちょっと小柄なのだが、風が吹いたら吹き飛びそうなひょろりとした風貌の相良くんと並ぶとどっちが年上だかわからない。
「みっちゃん、みっちゃん」
隣に座っている礼子さんに呼ばれた。
「こないだありがとう!なんかデザート分、丸ごとお会計から引かれててびっくりしたんだけど。みっちゃんのお財布、ダメージくらってない??」
結局、あの日のデザート代は梅本さんが「祝いだ!いらん」ということで話がついた。というかつかされた。
「いえ、大丈夫です。オーナーが「お得意様のキレイな女性にいいカッコしたいんだ」と言ってましたから。自分の財布は無事ですよ」
むしろダメージ食らったのは精神のほうだ。
「礼子ちゃん、みっちゃんのお店に行ったの?」
礼子さんの隣で『明日も仕事。だけど外せないから少しだけ』ということで大人組に配られた缶ビールを片手に美沙恵さんが会話に入ってきた。
「そう、そう。ティラミスがみっちゃん作に変わってたんだよね。前のも美味しかったけどみっちゃんのが一番好きだなぁ」
「へぇ、そうなんだ?みっちゃんよかったねぇ。ああ、だから最近ティラミスがみっちゃんのスイーツレパートリーから消えたのかぁ」
その通りだ。一応、店で出している商品なのでプライベートで作るのは控えている。
「うーん、私もあっちに行くまでに食べに行こうかなぁ。あそこのお料理美味しいよねぇ」
美沙恵さんは結婚を機にしばらくドイツに住むことになったらしい。話を聞いてちょっと驚いた。礼子さんほど頻繁ではないが時々お店に男の人と来られてたのでお付き合いしてる人がいるのは知っていたのだが。
「先日からデザートメニューにが増えたんですよ。その日のドルチェ3種の盛り合わせ。1種類の量は少なめなんで総量的には少し多めかな?くらいですよ」
そう、結局あのメニューは定番化することになった。礼子さん達のウケが良すぎて、梅本さんも乗り気だったため早急にメニューに加えられた。価格はちょっとだけ上がるのだけれど女性客には甚だ人気で結構な確率でオーダーが入る。男性は質より量だという人がいるが、女性は量より種類なのかもしれない。
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