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第一章 悪役令嬢だった私
11.最悪の再会
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アルベルトに名前を教えた直後のこと。
ドンドンと激しい扉のノック音が室内に響き、アルベルトはそちらへと視線を移動させた。
「……」
ん?どうして何も言わないんだろう?
静まり返った扉を見つめ、私は首を傾げた。
普通なら名乗って、入室の許可を貰うのが礼儀だ。
じゃなきゃ、誰だかわからないし、失礼になっちゃうからね。
王族相手なら尚更そうするべきなはずだ。
それなのに、ノック音が聞こえた後にそのような声は聞こえてこない。
私は不思議に思い、アルベルトの方を見た。
うわあ、あからさまに警戒してる……。
眉間に皺が寄って、目も鋭くなってるし。
それだけで、ただ事ではないのだろうと言うことがひしひしと伝わってた。
えっ、もしかして刺客とか??
うーん、でもこんな大胆な手口を使う刺客なんているはずないし、何よりここは王宮で、多分この場所は王族と許可された者しか入れない区間だ。
だから不審な人物が簡単に出入りできるとは思えないんだけど……。
「アルベルト!いるんだろう!?」
しかし、次に聞こえてきたその言葉によって、なぜそのような無作法が行われたのかを私は完全に理解してしまった。
それでアルベルトは嫌な顔をしていたのかぁ。
ようやく真実を知ることができた私は、刺客でないことに安堵してほっと胸を撫で下ろす。
……って、まずくない!?
尋ねてきた相手はその声から察するにエドワードだ。
何故アルベルトに用があるのかはわからないが、私が見つかったら非常にまずい気がする。
隠れなきゃ……!
反射的に思った私は、手に持っていた毛布を頭まで被って、顔を隠してみる。
すると、クスッと頭の上からアルベルトの笑い声が聞こえ、毛布の隙間から彼の方を盗み見て、軽く睨みつけた。
笑うなんてひどいと思ったからだ。
「どーしたの?急にかわいいことして。」
こちらからはもう目を逸らしているだろうと思っての行動だったが、パチっと目が合ってしまって慌てて逸らす。
しかし、アルベルトに予想外の言葉を投げかけられた私の頬は赤く染まってしまった。
か、かわいいって……!
よくよく考えてみれば、クローゼットとか奥にあるお風呂の中とか安全に隠れられる場所なんて沢山あった。
はっとした拍子に緩んだ手から毛布が抜け落ちる。
あーもう、私のバカ!
普通毛布にくるまる!?
膨らみがあるんだから人がいるのなんてバレバレじゃん!
なのにいきなり毛布にくるまるなんて、もはや奇行だよ!?……恥ずかしすぎる。
そのことに気づいた私の顔はさらに赤くなってしまい、頬を抑える。
その私の姿を見てアルベルトは今度は声を出して笑っている。
うう、居た堪れない……。
「アルベルト!返事をしろ!!」
そんなやり取りをしいると、無視される形になったエドワードは更に声を荒げて激しくドアを叩き始めてしまった。
そうだ、エドワードを待たせてるんだ!
私があたふたとどうしようかと焦っていると、
「……どちら様でしょうか?許可なく私の名前を呼んでいるのなら……わかっていますよね?」
低く、今まで聞いたことのない怖い声でそう言ったアルベルトの表情は、なんと言うか恐ろしいことになっていた。
よっぽどエドワードのことが嫌いなのだろう、声で誰だかわかっているはずなのに、わざと知らないふりをしている。
だけど、その言葉でエドワードはようやく自分が名乗っていないことに気がついたのだろう。
チッと舌打ちをした後、
「エドワードだ。お前に聞きたいことがあってきた。」
と今度はちゃんと用件まで付け加えていた。
「ああ、兄上だったんだね。今鍵を開けるよ。」
なんて口では言っているが、表情は死んでいる。
よっぽど相手をしたくないのだろう。
はぁとため息をついた後、不服そうにしながらも立ち上がり、扉の方へと歩いていった。
それを見ていた私は、このままの姿でアルベルトに会うのはまずいと思い、取り敢えずベットから出ることにした。
……アルベルトってばなんで鍵開けちゃうんだろう。
私が居るの、わかっているはずなのに。
いまいちアルベルトの思考が読めない。
恨めしく思い、じっとアルベルトの背中を見つめてみる。
『さらちゃんと兄上を合わせる気なんて全く無かったけど、これはチャンスかもな。』
……うん、どうやらよからぬことを企んでいることはわかった。
その前の声を聞けなかったから詳細はわからないが、アルベルトなら悪いようにはしないのだろう。
「おい、お前が美女を連れ込んだって本当か!?」
アルベルトが鍵を解除したのと同時に、エドワードは扉を勢いよく開き、騒ぎ立てる。
中に入ってきたエドワードは部屋中を見回し、私の姿を見て視線を止める。
……あ、やばい目があってしまった。
「っ……!お前が……」
ベットから移動して、椅子に腰掛けていた私の元へ何故かエドワードは歩いてきた。
えっ、何これ。
何が起こってるの!?
一方私はよくわからないこのカオスな状況に頭が混乱してしまっていた。
いきなりエドワードが現れて、えっとアルベルトが美女を連れ込んだ……?
ううん?どういうことだ。
「へー、噂以上だな。……なあお前、俺の側室にならないか?」
はぁ!?
この人は何を言っているの……?
いきなり現れて側室になれだなんて……ほら、後ろにいるアルベルトの顔が恐ろしいことになってるから!
笑顔なのになんか黒いのが見えてるから!
「兄上、それは聞き捨てならないな。」
ニッコリ、と笑顔でそう言ってはいるものの、アルベルトの声はさっきよりさらに低くて、それだけで怒っているのが伝わってしまう。
だけどエドワードは気にもしないのか、はっと笑って流しただけで、すぐに私の方に向き直ってしまった。
うわー、さらに笑顔が黒くなってる……。
「この俺の直々の誘いだ。まさか断らないよな?」
こっちはこっちで、なんか……うん。
どうやら私はまた面倒ごとに巻き込まれてしまったようです。
ドンドンと激しい扉のノック音が室内に響き、アルベルトはそちらへと視線を移動させた。
「……」
ん?どうして何も言わないんだろう?
静まり返った扉を見つめ、私は首を傾げた。
普通なら名乗って、入室の許可を貰うのが礼儀だ。
じゃなきゃ、誰だかわからないし、失礼になっちゃうからね。
王族相手なら尚更そうするべきなはずだ。
それなのに、ノック音が聞こえた後にそのような声は聞こえてこない。
私は不思議に思い、アルベルトの方を見た。
うわあ、あからさまに警戒してる……。
眉間に皺が寄って、目も鋭くなってるし。
それだけで、ただ事ではないのだろうと言うことがひしひしと伝わってた。
えっ、もしかして刺客とか??
うーん、でもこんな大胆な手口を使う刺客なんているはずないし、何よりここは王宮で、多分この場所は王族と許可された者しか入れない区間だ。
だから不審な人物が簡単に出入りできるとは思えないんだけど……。
「アルベルト!いるんだろう!?」
しかし、次に聞こえてきたその言葉によって、なぜそのような無作法が行われたのかを私は完全に理解してしまった。
それでアルベルトは嫌な顔をしていたのかぁ。
ようやく真実を知ることができた私は、刺客でないことに安堵してほっと胸を撫で下ろす。
……って、まずくない!?
尋ねてきた相手はその声から察するにエドワードだ。
何故アルベルトに用があるのかはわからないが、私が見つかったら非常にまずい気がする。
隠れなきゃ……!
反射的に思った私は、手に持っていた毛布を頭まで被って、顔を隠してみる。
すると、クスッと頭の上からアルベルトの笑い声が聞こえ、毛布の隙間から彼の方を盗み見て、軽く睨みつけた。
笑うなんてひどいと思ったからだ。
「どーしたの?急にかわいいことして。」
こちらからはもう目を逸らしているだろうと思っての行動だったが、パチっと目が合ってしまって慌てて逸らす。
しかし、アルベルトに予想外の言葉を投げかけられた私の頬は赤く染まってしまった。
か、かわいいって……!
よくよく考えてみれば、クローゼットとか奥にあるお風呂の中とか安全に隠れられる場所なんて沢山あった。
はっとした拍子に緩んだ手から毛布が抜け落ちる。
あーもう、私のバカ!
普通毛布にくるまる!?
膨らみがあるんだから人がいるのなんてバレバレじゃん!
なのにいきなり毛布にくるまるなんて、もはや奇行だよ!?……恥ずかしすぎる。
そのことに気づいた私の顔はさらに赤くなってしまい、頬を抑える。
その私の姿を見てアルベルトは今度は声を出して笑っている。
うう、居た堪れない……。
「アルベルト!返事をしろ!!」
そんなやり取りをしいると、無視される形になったエドワードは更に声を荒げて激しくドアを叩き始めてしまった。
そうだ、エドワードを待たせてるんだ!
私があたふたとどうしようかと焦っていると、
「……どちら様でしょうか?許可なく私の名前を呼んでいるのなら……わかっていますよね?」
低く、今まで聞いたことのない怖い声でそう言ったアルベルトの表情は、なんと言うか恐ろしいことになっていた。
よっぽどエドワードのことが嫌いなのだろう、声で誰だかわかっているはずなのに、わざと知らないふりをしている。
だけど、その言葉でエドワードはようやく自分が名乗っていないことに気がついたのだろう。
チッと舌打ちをした後、
「エドワードだ。お前に聞きたいことがあってきた。」
と今度はちゃんと用件まで付け加えていた。
「ああ、兄上だったんだね。今鍵を開けるよ。」
なんて口では言っているが、表情は死んでいる。
よっぽど相手をしたくないのだろう。
はぁとため息をついた後、不服そうにしながらも立ち上がり、扉の方へと歩いていった。
それを見ていた私は、このままの姿でアルベルトに会うのはまずいと思い、取り敢えずベットから出ることにした。
……アルベルトってばなんで鍵開けちゃうんだろう。
私が居るの、わかっているはずなのに。
いまいちアルベルトの思考が読めない。
恨めしく思い、じっとアルベルトの背中を見つめてみる。
『さらちゃんと兄上を合わせる気なんて全く無かったけど、これはチャンスかもな。』
……うん、どうやらよからぬことを企んでいることはわかった。
その前の声を聞けなかったから詳細はわからないが、アルベルトなら悪いようにはしないのだろう。
「おい、お前が美女を連れ込んだって本当か!?」
アルベルトが鍵を解除したのと同時に、エドワードは扉を勢いよく開き、騒ぎ立てる。
中に入ってきたエドワードは部屋中を見回し、私の姿を見て視線を止める。
……あ、やばい目があってしまった。
「っ……!お前が……」
ベットから移動して、椅子に腰掛けていた私の元へ何故かエドワードは歩いてきた。
えっ、何これ。
何が起こってるの!?
一方私はよくわからないこのカオスな状況に頭が混乱してしまっていた。
いきなりエドワードが現れて、えっとアルベルトが美女を連れ込んだ……?
ううん?どういうことだ。
「へー、噂以上だな。……なあお前、俺の側室にならないか?」
はぁ!?
この人は何を言っているの……?
いきなり現れて側室になれだなんて……ほら、後ろにいるアルベルトの顔が恐ろしいことになってるから!
笑顔なのになんか黒いのが見えてるから!
「兄上、それは聞き捨てならないな。」
ニッコリ、と笑顔でそう言ってはいるものの、アルベルトの声はさっきよりさらに低くて、それだけで怒っているのが伝わってしまう。
だけどエドワードは気にもしないのか、はっと笑って流しただけで、すぐに私の方に向き直ってしまった。
うわー、さらに笑顔が黒くなってる……。
「この俺の直々の誘いだ。まさか断らないよな?」
こっちはこっちで、なんか……うん。
どうやら私はまた面倒ごとに巻き込まれてしまったようです。
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