上 下
207 / 228

第192話 ユウのタイガーホース。

しおりを挟む
第192話 ユウのタイガーホース。


「っ!! そこだァァァァァァァっっ!!!」
「グ、グガァァッ!!」

 ──ユウの斬撃が、一際大きな体の狼を仰け反らせる。ユウも、そこにすかさず双剣による猛攻を加える。
 狼のボスは数発の剣撃は躱したり逸らしたりするが、やがて逸らしきれない攻撃が当たるようになり、ついには──

「グ、グォォォォ……。」
「…………っ、ふぅ~~~っ!! ……やっと倒せたぁ。」

 ユウがトドメを刺して40階層ボス……ちなみに、調べたところ名前はハーデスフェンリルって言うらしい。・・・どうでもいいけど、ここ冥界じゃなくて地獄じゃね?
 あ、話を戻すが、そのハーデスフェンリルは、満足そうな顔をして、息絶えていた。

 ・・・そう言えばこの狼、戦ってる時も自分が出せる全力を出そうとしてたな。……多分、相手と心残りがない戦いをしたかったんだろうな。
 そう考えるとこいつ、潔いな。

 あ、ちなみに、ハク達のことだが、2人は他の取り巻き全員を倒すのに全労力を使い果たしたみたいで、近くでぶっ倒れてる。

 ……ついでに、ハーデスフェンリルはこの2人にも攻撃したり人質にしたりしてこなかったな。
 ・・・マジであいつ潔いな。

「さてさて~。今回のドロップはな~にかな~? ・・・あれ~?」

 ユウはハーデスフェンリルを倒したところで留まり、ドロップアイテムの確認をしていた。・・・のだが、何やら気になるなにかがあったらしい。

「どうした? ってなんだ? ソレ。」

 ユウが片手に大きな動物の皮のようなものを持っていて……大方予想はできるけど、鑑定をしてみた結果、やっぱり神狼の毛皮ってやつだった。
 ・・・〝神~の~~〟ってやつ推すねぇ。

 まぁそれはいいとして、神狼の毛皮と、もう片方の手には、さっきまでは持っていなかった、黒っぽい剣が握られていた。

 ・・・ふむ、鑑定した所。〝魔剣 冥魂狼〟ってやつらしい。……いやいや、神に魔剣って。
 普通、魔剣って神とかに仇なすやつじゃね? その神が魔剣を持つって……どうなんだ?

「とりあえずボス討伐お疲れ。あとその手に持ってる剣。名前的にドロップ品だよな?」
「うん! そうっぽいね~! 見た感じ、かなりかっこいいし、僕の普段武器にしようかな~?」

 ・・・難なく振ってるところを見る感じ、別に神に対してデバフがかかるってわけじゃなさそうだな。
 ……いや、こいつの場合、デバフがかかろうとも効かずに、むしろ効果自体を打ち消しそうだが。

 ってあんまり振りすぎると周りにあたって危なそうなんだが……。あ、地味に気をつけてるっぽいね。

「───、──。……ってゼロ~? 聞いてるのー?」
「ん、あぁ聞いてる聞いてる。その剣をユウが一口で全部飲み込むんだろ?」
「違うよっ!? というかそんなこと僕しないよっ!? もうっ〝次の武器は何使おうかな?〟って話だよっ!」

 ユウは慌てて否定したあと、しっかりと要件を言ってくれた。
 ってゆーか、武器、今決めるのね。まぁいいけど。

「んー、今まで出たのが剣、短剣、ハンマー、双剣だったよな……って剣に偏りすぎだろ。
 あ、そうだ。ここは一発、全体的に変更してみるのとかどうだ? 例えば近距離じゃなくて遠距離武器とか。」

 俺がそう言うと、ユウはやや俯いて、考え出した。そして数秒うーんうーんと唸ると、突然バッと顔を上げて「鞭にする!!」と言った。

 ・・・うん、いや、別に決めたことにどうこう言う気は無いけど、なぜ鞭にしたし。一応、ユウに聞いてみた。

「え~とね~。武器で遠距離って言われるとかなり限られてくるでしょ~? それでぱっと思いついたのが、鞭だったの~。
 ・・・なんで思いついたかって言うと、結構前にとある事でシュレイアを怒らせちゃってね~。その時に鞭を使って……この話やめようか~。」

 なんか急にすげぇ震えだした。・・・たとえ神でも、嫁には敵わんか。

「まぁユウが決めたならそれでいいけど。・・・鞭で敵やれんのか?」
「あ、そこは大丈夫~。鞭って使い方次第で目とかを潰したり、首とかを締めたりとか……あとは技術でなんとかなるよ~。」

 ・・・聞いといてなんだけどなんか物騒だな。まぁ戦えるようならいいか。

「そうかい。・・・とりあえず、ユウはもう準備はいいみたいだな。ハク、ライム。そっちも準備はいいか?」

 ハク達からはい、と返事がくる。

「よし、それじゃ次なる階層へGO!!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

突然現れた自称聖女によって、私の人生が狂わされ、婚約破棄され、追放処分されたと思っていましたが、今世だけではなかったようです

珠宮さくら
恋愛
デュドネという国に生まれたフェリシア・アルマニャックは、公爵家の長女であり、かつて世界を救ったとされる異世界から召喚された聖女の直系の子孫だが、彼女の生まれ育った国では、聖女のことをよく思っていない人たちばかりとなっていて、フェリシア自身も誰にそう教わったわけでもないのに聖女を毛嫌いしていた。 だが、彼女の幼なじみは頑なに聖女を信じていて悪く思うことすら、自分の側にいる時はしないでくれと言う子息で、病弱な彼の側にいる時だけは、その約束をフェリシアは守り続けた。 そんな彼が、隣国に行ってしまうことになり、フェリシアの心の拠り所は、婚約者だけとなったのだが、そこに自称聖女が現れたことでおかしなことになっていくとは思いもしなかった。

悪役令嬢は婚約破棄されて覚醒する

ブラックベリィ
恋愛
書いてみたいと思っていた悪役令嬢ですが、一風変わったように書けたらと思いながら書いております。 ちなみに、プロットなしで思いつきで書いているので、たまに修正するハメになります(涙) 流石に、多くの方にお気に入りを入れてもらったので、イメージ部分に何も無いのが寂しいと思い、過去に飼っていた愛犬の写真を入れました(笑) ちなみに犬種は、ボルゾイです。 ロシアの超大型犬で、最多の時は室内で9頭飼っておりました。 まぁ過去の話しですけどね。 とりあえず、頑張って書きますので応援よろしくお願いします。

さっさと離婚したらどうですか?

杉本凪咲
恋愛
完璧な私を疎んだ妹は、ある日私を階段から突き落とした。 しかしそれが転機となり、私に幸運が舞い込んでくる……

【完結】義母が来てからの虐げられた生活から抜け出したいけれど…

まりぃべる
恋愛
私はエミーリエ。 お母様が四歳の頃に亡くなって、それまでは幸せでしたのに、人生が酷くつまらなくなりました。 なぜって? お母様が亡くなってすぐに、お父様は再婚したのです。それは仕方のないことと分かります。けれど、義理の母や妹が、私に事ある毎に嫌味を言いにくるのですもの。 どんな方法でもいいから、こんな生活から抜け出したいと思うのですが、どうすればいいのか分かりません。 でも…。 ☆★ 全16話です。 書き終わっておりますので、随時更新していきます。 読んで下さると嬉しいです。

エンリルの風 チートを貰って神々の箱庭で遊びましょ!

西八萩 鐸磨
ファンタジー
************** 再編集、再投稿になります。 ************** 普通の高校生が、通学の途中で事故にあい、気がつくいた時目の前には、見たこともない美しい女性がいた。 チートを授けられ、現在と過去、この世界と別世界の絆をつなぎとめるため、彼は旅立つ(転移)することになった。 *************** 「ちーと?」 小首をかしげてキョトンとする。 カワイイし! 「ああ、あなたの世界のラノベってやつにあるやつね。ほしいの?」 手を握って、顔を近づけてくる。 何やってんねん! ・・嬉しいけど。 *************** 「えへっ。」 涙の跡が残る顔で、はにかんだ女の子の頭の上に、三角のフワフワした毛を生やした耳が、ぴょこんと立ち上がったのだ。 そして、うずくまっていた時は、股の間にでも挟んでいたのか、まるでマフラーのようにモフモフしたシッポが、後ろで左右にゆれていた。 *************** 『い、痛てえ!』 ぶつかった衝撃で、吹き飛ばされた俺は、空中を飛びながら、何故か冷静に懐に抱いたその小さな物体を観察していた。 『茶色くて・・・ん、きつね色?モフモフしてて、とっても柔らかく肌触りがいい。子犬?耳が大きいな。シッポもふさふさ。・・・きつね?・・なんでこんな街なかに、キツネが?ん?狐?マジで?』 次の瞬間、地面に叩きつけられた。 信じられない痛みの中、薄れゆく意識。 *************** 舞台は近東、人類文明発祥の地の一つです。 ***************

チュートリアル場所でLv9999になっちゃいました。

ss
ファンタジー
これは、ひょんなことから異世界へと飛ばされた青年の物語である。 高校三年生の竹林 健(たけばやし たける)を含めた地球人100名がなんらかの力により異世界で過ごすことを要求される。 そんな中、安全地帯と呼ばれている最初のリスポーン地点の「チュートリアル場所」で主人公 健はあるスキルによりレベルがMAXまで到達した。 そして、チュートリアル場所で出会った一人の青年 相斗と一緒に異世界へと身を乗り出す。 弱体した異世界を救うために二人は立ち上がる。 ※基本的には毎日7時投稿です。作者は気まぐれなのであくまで目安くらいに思ってください。設定はかなりガバガバしようですので、暖かい目で見てくれたら嬉しいです。 ※コメントはあんまり見れないかもしれません。ランキングが上がっていたら、報告していただいたら嬉しいです。 Hotランキング 1位 ファンタジーランキング 1位 人気ランキング 2位 100000Pt達成!!

銀河皇帝のいない八月

沙月Q
SF
女子高生が銀河皇帝に? 一夏の宇宙冒険を描く青春スペースオペラ。 宇宙を支配する銀河帝国が地球に襲来。 軍団を率いる銀河皇帝は堅固なシールドに守られていたが、何故か弓道部員の女子高生、遠藤アサトが放った一本の矢により射殺いころされてしまう。 しかも〈法典〉の定めによってアサトが皇位継承者たる権利を得たことで帝国は騒然となる。 皇帝を守る〈メタトルーパー〉の少年ネープと共に、即位のため銀河帝国へ向かったアサトは、皇帝一族の本拠地である惑星〈鏡夢カガム〉に辿り着く。 そこにはアサトの即位を阻まんとする皇帝の姉、レディ・ユリイラが待ち受けていた。 果たしてアサトは銀河皇帝の座に着くことが出来るのか? そして、全ての鍵を握る謎の鉱物生命体〈星百合スター・リリィ〉とは?

所詮は他人事と言われたので他人になります!婚約者も親友も見捨てることにした私は好きに生きます!

ユウ
恋愛
辺境伯爵令嬢のリーゼロッテは幼馴染と婚約者に悩まされてきた。 幼馴染で親友であるアグネスは侯爵令嬢であり王太子殿下の婚約者ということもあり幼少期から王命によりサポートを頼まれていた。 婚約者である伯爵家の令息は従妹であるアグネスを大事にするあまり、婚約者であるサリオンも優先するのはアグネスだった。 王太子妃になるアグネスを優先することを了承ていたし、大事な友人と婚約者を愛していたし、尊敬もしていた。 しかしその関係に亀裂が生じたのは一人の女子生徒によるものだった。 貴族でもない平民の少女が特待生としてに入り王太子殿下と懇意だったことでアグネスはきつく当たり、婚約者も同調したのだが、相手は平民の少女。 遠回しに二人を注意するも‥ 「所詮あなたは他人だもの!」 「部外者がしゃしゃりでるな!」 十年以上も尽くしてきた二人の心のない言葉に愛想を尽かしたのだ。 「所詮私は他人でしかないので本当の赤の他人になりましょう」 関係を断ったリーゼロッテは国を出て隣国で生きていくことを決めたのだが… 一方リーゼロッテが学園から姿を消したことで二人は王家からも責められ、孤立してしまうのだった。 なんとか学園に連れ戻そうと試みるのだが…

処理中です...