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第169話特に意味の無い行動がマルを襲う。

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第169話 特に意味の無い行動がマルを襲う。


 ユウが起きるまでティアと|戯(たわむ)れること、約30分くらい。

「んん……。ここは……?」
「おっ、起きたみたいだな。ユウ、おはようさん。」
「ゼロ……? 僕は……あー、そういうことか! いやぁ、やっぱり負けちゃったみたいだね~。最後のアレ、絶対いけると思ってたんだけどなぁ~。残念っ!」

 おぉう。起きたばっかりってのによく喋ることだな。しかも自己解析も明確にできてる見てぇだな。

「いやぁ、俺も最後のあれは正直負けるかと思ったわ。あの後ユウが油断してくれなかったら負けてたと思うし。」
「うーん、やっぱりそこが問題だったのか~。あの時自分でもわかるくらい気が緩んだからなぁ~。
 ま、今度から勝ったと思っても気を緩めないようにすれば平気かな。あとは戦闘中にゼロの気をそらす方法も考えないとなぁ~。」

 ……もう次の試合のこと考えてるし。まぁ俺もいい暇つぶしになったし、時間をあけてまたやるのもいいかもな。


 そんな感じでユウと反省会的なのをしていると、ティアが欠伸をしてるのが目に入った。

 あー、そりゃこんな長時間話してたらティアは暇だよなぁ。・・・ん、長時間?

「ってそういや、今何時だ?」

 ユウとの戦い中は時間を気にする余裕もなかったし終わった後もティアと戯れてたから普通に忘れてた。

「うん? 今の時間? ゼロの世界では~……6:00少しすぎくらいだねぇ~。」
「うわっ、まじかよ。・・・そろそろ戻らねぇとまずいかもな。ってことで今日のところはお|暇(いとま)するわ。」
「そう~? なら大丈夫だとは思うけど気をつけて帰ってね~。あ、また今度試合しようね!」
「ああ。俺が戦いたくなったら来てやるさ。・・・ってか別にそっちから来てくれてもいいんだぜ?」

 正直言うと俺だけの理由で戦いに来るのが申し訳ない。・・・うん、実際はこっちに来るのが面倒いってだけなんだけどな。

 そして、俺の発言を聞いたユウの方は目を|煌(きら)めかせ、嬉しそうに「本当っ!?」と、反応した。

「ああ。・・・ってかなんで来ないか不思議なくらいだったんだが?」
「ん~、とね。急に遊びに行ったらゼロに迷惑がかかるかな~。って思っちゃってね~。ほら、ゼロって一週間の内に1日か2日しか休みがないでしょ?」

 ・・・ユウが俺に気を使ってくれてたのか。……なんか俺だけユウに気を使わせてるみたいで本当に申し訳なくなってきたわ。

「まぁその点僕は休みが多いし平日も作業時間が少ないからいつでも来てくれていいんだけどね~。あと分身の術覚えたからこの先暇が増えるだろうしね!」

 うん、前言撤回・・・とまでは行かないけどそこまで気にする程でもなかったみたいだな。

「・・・んじゃそろそろ本当に帰るな。じゃあまた今度。」
「うん! またね!」

 俺はユウの言葉を聞いた後、自分の世界へと転移した。

◇◆◇◆◇

 ~学園付近の路地裏~

「っと。・・・やっぱ路地裏ってだけあって周りが暗ぇな。まぁ周りに人はいないみたいだし、これでよし。」

 ・・・いきなり学園とか人の多いところに転移したら周りのみんなを驚かせ……は(俺の非常識さを知ってるから)しないと思うけど、万が一のためにも一応人気のないところに来た。

 ・・・うん、時間帯的にも本当に必要あるかわからないくらいだけどな。

「にゃん……?」

 んん、ティアどうした? ・・・そっちの方向に何かいるのか?

「………。……!」

 ! なんかの気配がした。・・・ここ路地裏やぞ? こんな所に普通の人がいるはずもないよなぁ。・・・俺も人のこと言えねぇな。
 ・・・うーん。多分、孤児かホームレスあたりか? いや、でも気配の強さ的に違う感じがする。この気配は・・・邪人族?

「・・・ちょっと行ってみるか。」
「にゃうん。」

 あ、一応。『気配隠蔽、透明化、無音化』

「……。…………。……っ。」

 ・・・あの邪人族。何も声を発して・・・あっ、念話か。

 ・・・『盗み聞き』

「一一はり、あのゼロという教師は危険です。底知れぬ力を持ち、あの学園の勇者を含む全ての生徒を相手に一切の傷をつけることが不可能でした。
 それに加え、私の正体を気づいてるような言動も多々見られます。・・・はい、はい。 ではこのまま継続して監視を続けます。
 ・・・それでは、また次の報告にて。」

 あ。今気づいたけどこいつ、マルか。んで話してる内容は俺の異常性と俺の危険度の報告って所かな?

 ・・・ここで俺が影から現れたりしたらどんな反応をするんだろう……。危険だって思われて攻撃されるのかな?
 それともよくあるスパイ映画みたいに口に含んだ毒で自害しちゃうのかな? あるかわからないけど。

 気になったらもう止められない。あいつの影からすぅっと現れてあいつを動揺させたい気持ちが溢れてくる。

「あぁ、もうっ。あの方はいつもいつも無理難題を|仰(おっしゃ)ってくる……。これからどうすれば……。」
「お前も苦労してるみたいだねぇ。」
「っ!? 何者っ!?」
「くくくくっ。」

 俺は耐えきれず、マルの影からゆっくりと現れてみた。

「やぁ、学園以外で会うのは初めましてかな?」
「っ! ゼロ……っ。」
「もーう。ダメでしょー? 先生にはちゃんと敬称か先生ってつけないとっ!」

 俺は叱るように言い、茶化す。そして、マルは俺から少し離れると、武器を取りだし戦闘態勢に入る。

 が、

「あ、俺今回は戦うつもりないよ。もう今さっき激闘したあとだからね。」

 俺は戦うつもりがないことを伝え、マルの武器を叩き落とす。そして、マルの戦意を削ぐ。

「ぐっ!? ・・・っ!? なぜか戦意がなくなった!? お前、今何をしたっ!?」

 いや、戦意削がれたことわかんのかよ。・・・なに? 邪人族の特性的な感じ?

「いや、戦う気がないからお前の戦意を削いでみた。」
「なんだとっ!? そんなことただの人にできるわけ……っ!!」
「おっ。気づいちゃったー? そうだよォう。俺はただの人じゃないからねっ! ってかもはや人ですらないからねっ!」
「・・・もういい、です、お前、貴方の用件を言え、言ってください。」

 おぉ、なんか急に体がだらんとして諦めたみたいだな。・・・まぁ別にそれと言って要件はないんだけど。

「んや。要件はないぞ? ただなんか面白そうだから出てきただけだし。・・・ってことでじゃあなっ。」
「はっ?」
「あ、俺の事周りに話したらダメだよ? その時はお前の戦意どころか精神、喜び、楽しみとかを全て消すから。じゃあねっ!」

 俺は呆けるマルにそう伝えたあと、そのまま学園へと向かった。・・・ちなみに、本当に意味は無い。ただあいつがどんな反応を示すか見たかっただけだから。

 あ、あと倒すのはあいつが自分から正体を現した時って決めた。

 正確には「私は実は邪人族なのだよっ!「ブスリ」……チーン」って感じにやりたい。あいつには為すすべもなく無残に死んで欲しい。心からそう願ってる。
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