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第一章 出逢い
第28話 ポプラの木
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その橋を過ぎると、遠目にも小学校の目印でもあるポプラ並木が風にサワサワと揺れているのが見えた。この土手沿いの道は車が通ることがないし、道幅が広めに造ってあるので、のんびりと歩くには最適の道だ。日曜日の昼前ということもあって、人通りも殆ど無い。
まぁ、のんびりと金森を待つのも悪くはないなと思いながらユウが遠目に目的地付近を確認すると、車椅子に乗った人影が目に入る。
「金森!」
ユウは大きな声で影の主に声を掛け、小走りに駆け出した。相手も声に気付いたらしく、両手を大きく振ってそれに応えてくれる。ユウは2~300メートルを一気に駆けると少し上がった息で目を丸くしながら待っていてくれた、その人に声を掛けた。
「ハァハァ・・ おはよう金森。ずいぶん早いな」
「・・もう!無茶しちゃダメだって言ったじゃない! ・・おはよう、如月くん」
と、彼女はちょっと怒り顔の挨拶。
「いや、随分早く待ち合わせ場所に着いちゃうなと思ってたら先客がいたんで、つい。・・ゴメン、待たせちゃった?」
「ううん。私も今、来たところだよ」
いや、彼女はそう言って優しく微笑んでくれたが、きっと随分前から待っててくれたんだろうな、この人は。
そしてその時、初めて目の前の少女が、いつもと雰囲気が違うことに気が付く。
いつも制服姿の彼女しか見たことが無かったが、今日は黒い細身のスキニーパンツに、上は大きめのライトピンクのパーカー姿。いたってシンプルな恰好なのだが、それが彼女らしくて似合っている。
何より彼女の一番の特徴でもあった、おだんご頭を今日は見ることはなかったのだ。
ストレートに胸元まで下がった髪が、見知った少女を随分と大人びた印象に変えていた。
「金森、その髪型さ・・」
思わず気持ちが口をつき、漏れてしまった。
「うん、今日は結ばなかったんだ。・・変、かな?」
そう言って金森が髪に軽くふれる。はにかんだ表情が、ユウをドキリとさせる。
「・・いいや。すごく似合ってる。いつもの髪形も似合ってるけどさ、俺は今日の髪形の方が、いいと思う」
それはユウの素直な感想だった。
「・・そっか。うん、ありがとう」
嬉しそうに微笑む金森はすごく眩しくて、ユウは自分の鼓動が明らかに、いつもより高鳴っているのを感じていた。無論、それはさっき走ったからなんかじゃない。
「・・近くで見ると、本当でかいな」
だからユウは、ポプラの木を見上げた。
「本当だね。お父さんが子供の頃から、今と変わらない大きさだったって・・」
自分の動揺を悟らせない為に話を逸らしたのだが、上手くいったみたいだ。
「このポプラの木々達は、もう百年以上も此処ここでこうして子供達を見守ってきたんだね。・・本当に大きく感じるよ」
金森に言われて、ユウは改めてポプラの木を下から見上げた。風に揺れたポプラの葉が歌うサラサラとした音色が、まるでさざ波の様で心地よかった。
・・本当だ。本当に大きくて、優しい木たちだ。
「・・ねぇ如月くん。二人の家までここから15分くらいだけど、どうしよっか?」
暫くポプラたちに見とれていると、金森が声を掛けてきた。きっと彼女もこの木たちのことが大好きなんだろう。木に見とれていたユウを見つめる眼差しが、どことなく嬉しそう。・・なぁに待ち合わせ時間まで、まだたっぷり一時間以上もあるんだ。
「・・ゆっくり、行けばいいさ」
「・・うん!そうしよっか!」
ユウがそう答えると、目の前の彼女も相変わらずの太陽みたいな眩しい笑顔で・・
そう、応えてくれたんだ。
まぁ、のんびりと金森を待つのも悪くはないなと思いながらユウが遠目に目的地付近を確認すると、車椅子に乗った人影が目に入る。
「金森!」
ユウは大きな声で影の主に声を掛け、小走りに駆け出した。相手も声に気付いたらしく、両手を大きく振ってそれに応えてくれる。ユウは2~300メートルを一気に駆けると少し上がった息で目を丸くしながら待っていてくれた、その人に声を掛けた。
「ハァハァ・・ おはよう金森。ずいぶん早いな」
「・・もう!無茶しちゃダメだって言ったじゃない! ・・おはよう、如月くん」
と、彼女はちょっと怒り顔の挨拶。
「いや、随分早く待ち合わせ場所に着いちゃうなと思ってたら先客がいたんで、つい。・・ゴメン、待たせちゃった?」
「ううん。私も今、来たところだよ」
いや、彼女はそう言って優しく微笑んでくれたが、きっと随分前から待っててくれたんだろうな、この人は。
そしてその時、初めて目の前の少女が、いつもと雰囲気が違うことに気が付く。
いつも制服姿の彼女しか見たことが無かったが、今日は黒い細身のスキニーパンツに、上は大きめのライトピンクのパーカー姿。いたってシンプルな恰好なのだが、それが彼女らしくて似合っている。
何より彼女の一番の特徴でもあった、おだんご頭を今日は見ることはなかったのだ。
ストレートに胸元まで下がった髪が、見知った少女を随分と大人びた印象に変えていた。
「金森、その髪型さ・・」
思わず気持ちが口をつき、漏れてしまった。
「うん、今日は結ばなかったんだ。・・変、かな?」
そう言って金森が髪に軽くふれる。はにかんだ表情が、ユウをドキリとさせる。
「・・いいや。すごく似合ってる。いつもの髪形も似合ってるけどさ、俺は今日の髪形の方が、いいと思う」
それはユウの素直な感想だった。
「・・そっか。うん、ありがとう」
嬉しそうに微笑む金森はすごく眩しくて、ユウは自分の鼓動が明らかに、いつもより高鳴っているのを感じていた。無論、それはさっき走ったからなんかじゃない。
「・・近くで見ると、本当でかいな」
だからユウは、ポプラの木を見上げた。
「本当だね。お父さんが子供の頃から、今と変わらない大きさだったって・・」
自分の動揺を悟らせない為に話を逸らしたのだが、上手くいったみたいだ。
「このポプラの木々達は、もう百年以上も此処ここでこうして子供達を見守ってきたんだね。・・本当に大きく感じるよ」
金森に言われて、ユウは改めてポプラの木を下から見上げた。風に揺れたポプラの葉が歌うサラサラとした音色が、まるでさざ波の様で心地よかった。
・・本当だ。本当に大きくて、優しい木たちだ。
「・・ねぇ如月くん。二人の家までここから15分くらいだけど、どうしよっか?」
暫くポプラたちに見とれていると、金森が声を掛けてきた。きっと彼女もこの木たちのことが大好きなんだろう。木に見とれていたユウを見つめる眼差しが、どことなく嬉しそう。・・なぁに待ち合わせ時間まで、まだたっぷり一時間以上もあるんだ。
「・・ゆっくり、行けばいいさ」
「・・うん!そうしよっか!」
ユウがそう答えると、目の前の彼女も相変わらずの太陽みたいな眩しい笑顔で・・
そう、応えてくれたんだ。
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