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四章 そうだ、嫌がらせにいこう!
4-7 本当に良かったのか?
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馬を飛ばすこと約1時間。
ようやく目的の場所に到着した。
馬車が通る道は、若干人の手が加わった獣道。
数え切れないほどの馬車が行き交う中出来上がった、まっすぐな細い二つの道が、とある一箇所だけは乱れに乱れていた。
木の破片と、ゴブリンやコボルトの遺体が点々と見えるなか、遺体などが散乱しているのを注意深く見ていると、何かを引きずった跡が森へと伸びているのが見えた。
遺体になっているゴブリンやコボルトの数を見て、自分には少し重責ではなかったかと一瞬悩んでしまったが、生存者がいる可能性を強く信じながら徒歩で跡を追う。
跡を追い森の奥へ奥へと入っていくと、徐々に視界が狭まっていく。
僕が前に専念をしていると、後ろにいた彼女が後続への目印を要所要所につけながら僕の後について歩く。
…後方確認、側面確認、前方確認、間違いはないか危険はないか… と、つぶやくように僕に話しかける彼女の声を聞いて、大丈夫と小さな声で呟くと、彼女は引き続き僕の後についてきてくれた。
しばらく警戒しながら前へ進んでいると、前方に二つの人影が見えたため、僕は彼女を待機させ、注意深く前に進む。
二つの人影が確認できるところまで来ると、どうやら同じ冒険者のようで、こちらに気ずき手招きをし始めたので、僕は彼女に前に出るよう手で合図を送った。
近くに来て初めて気がついたが、この二人の冒険者は、以前、僕らとパーティーを組んだことがある戦士と魔法使いのコンビ。話を聞くと、黒いローブ姿がゴブリンやコボルトを組織的に動かし、何やら人や物をこの奥にある建物に持っていくところを偶然見かけたため追いかけていたということだった。
生きている人を放っておけず、かといい内部の状況が分からない状態だったため、中に入ることを躊躇していた二人にとっても、自分たちの出現はとても心強かったらしい。僕は二人に、自分たちがここに来た理由を話し、中の人間の救出をお願いすると、人を助けるのが冒険者の役割と協力を申し出てくれた。
早速、建物の内部など確認しようとしたところ、後方で待機していた彼女が魔法陣を用いて 一羽のカラスを召喚し偵察を行ってくれるとの事。
カラスに意識を移し、飛び立つ彼女の本体を守りつつ待機していると、無事偵察を終えたカラスが戻ってきて彼女の意識が元に戻った。
入り口にはゴブリンが2体、教会のような建物の内部には約15体ほどのゴブリンとコボルトが 真ん中にある何かを囲っている様子が見られたらしい。裏口もありモンスターの存在は感じられなかったのだが、鍵の有無がわからなかったとの事。
しばらく考えていた僕らだったが、後続の兵士や騎士が来る様子もないため、強行突破に踏み切ることにした。
正面の二体のコボルトゴブリンを、弓とスリングを使って打ち倒した彼女たちだったが、片方のゴブリンが「ぐぎゃ」と大きい叫び声をあげたことから、中にいたモンスターが一斉に門に向かって駆け出す音が聞こえた。
その音を聞きながら僕は裏口へと走り出し、残りの3人の無事を祈りながら裏口に到着した。
扉が開いていることを祈りながら走っていたところ、裏口の戸は朽ち果てていて、もはや戸としての機能をはたしていない状態であったので、なるべく静かに移動しながら中に入ると、僕に背を向け目の前の侵入者に向かっているモンスター達と、小さな檻に入れられた数人のきらびやかな服装の男女数人、そして、その檻の脇に小柄で黒いローブで頭から全身を覆った人物が、何やら杖を振りかざしている。
杖の振り方で微妙にモンスターの動きが変わっているのを見て、杖の人物がモンスターを操っている様に見えた僕は、真っ先にその男の杖を叩き割ろうとし、 男に接近しようとしたが、死角から出てきたコボルト二体に行く先を阻まれ男に近づくことができない!
なんとか男に気づかれる前に 何とか杖を叩き落とそうとした僕は、コボルト二体を盾で押し出し、男ごと倒すことにした。
< < シールドバッシュ!! > >
渾身の体当たりに似た盾技を使いながら突っ込んでいく僕に、ようやく気が付いた黒ローブだったが、僕の盾に弾き飛ばされたコボルトごと押し潰され、そのまま手から杖を離して倒れ込んだ。
チャンスとばかりに杖を思いっきり蹴っ飛ばすと、目の前で戦っていたゴブリンが急に動きを止めたため、一瞬の隙をついた三人により、目の前のモンスターはを無事倒すことが出来たようだ。
モンスターに押しつぶされた男もそのまま動かなかったので、 勢いのまま押し倒し拘束したけど、黒ローブの視線はずっと檻の中にいる人物に向けられ、怒りをあらわにしながら、僕の隙をついて拘束を逃れようと何度も何度も激しく体を動かし抵抗をしている。
結局、後から来た兵士さん達が来るまでその動きを止めなかった黒ローブは、兵士に連れられていても拘束を解くために激しく動き、最後の最後まで檻にいた男を睨みつけているように思えたんだ。
激しく動く黒ローブを必死に押さえつけていた僕にはこう聞こえたんだ。
「コイツノセイデオレハオワッタ」
「オレノジンセイヲカエセ」
「アイツガオレヲコワシタ」
「オレノヘイワヲカエセカエセカエセ」
・・・・と。
捕らわれた人を救うための行動だったのに、この悲しさは何だろう。
ただ人を救いたかっただけなのに。
僕は本当に良いことをしたんだろうか・・・
僕は最後まで黒ローブの後姿から目を離す事が出来ませんでした。
ようやく目的の場所に到着した。
馬車が通る道は、若干人の手が加わった獣道。
数え切れないほどの馬車が行き交う中出来上がった、まっすぐな細い二つの道が、とある一箇所だけは乱れに乱れていた。
木の破片と、ゴブリンやコボルトの遺体が点々と見えるなか、遺体などが散乱しているのを注意深く見ていると、何かを引きずった跡が森へと伸びているのが見えた。
遺体になっているゴブリンやコボルトの数を見て、自分には少し重責ではなかったかと一瞬悩んでしまったが、生存者がいる可能性を強く信じながら徒歩で跡を追う。
跡を追い森の奥へ奥へと入っていくと、徐々に視界が狭まっていく。
僕が前に専念をしていると、後ろにいた彼女が後続への目印を要所要所につけながら僕の後について歩く。
…後方確認、側面確認、前方確認、間違いはないか危険はないか… と、つぶやくように僕に話しかける彼女の声を聞いて、大丈夫と小さな声で呟くと、彼女は引き続き僕の後についてきてくれた。
しばらく警戒しながら前へ進んでいると、前方に二つの人影が見えたため、僕は彼女を待機させ、注意深く前に進む。
二つの人影が確認できるところまで来ると、どうやら同じ冒険者のようで、こちらに気ずき手招きをし始めたので、僕は彼女に前に出るよう手で合図を送った。
近くに来て初めて気がついたが、この二人の冒険者は、以前、僕らとパーティーを組んだことがある戦士と魔法使いのコンビ。話を聞くと、黒いローブ姿がゴブリンやコボルトを組織的に動かし、何やら人や物をこの奥にある建物に持っていくところを偶然見かけたため追いかけていたということだった。
生きている人を放っておけず、かといい内部の状況が分からない状態だったため、中に入ることを躊躇していた二人にとっても、自分たちの出現はとても心強かったらしい。僕は二人に、自分たちがここに来た理由を話し、中の人間の救出をお願いすると、人を助けるのが冒険者の役割と協力を申し出てくれた。
早速、建物の内部など確認しようとしたところ、後方で待機していた彼女が魔法陣を用いて 一羽のカラスを召喚し偵察を行ってくれるとの事。
カラスに意識を移し、飛び立つ彼女の本体を守りつつ待機していると、無事偵察を終えたカラスが戻ってきて彼女の意識が元に戻った。
入り口にはゴブリンが2体、教会のような建物の内部には約15体ほどのゴブリンとコボルトが 真ん中にある何かを囲っている様子が見られたらしい。裏口もありモンスターの存在は感じられなかったのだが、鍵の有無がわからなかったとの事。
しばらく考えていた僕らだったが、後続の兵士や騎士が来る様子もないため、強行突破に踏み切ることにした。
正面の二体のコボルトゴブリンを、弓とスリングを使って打ち倒した彼女たちだったが、片方のゴブリンが「ぐぎゃ」と大きい叫び声をあげたことから、中にいたモンスターが一斉に門に向かって駆け出す音が聞こえた。
その音を聞きながら僕は裏口へと走り出し、残りの3人の無事を祈りながら裏口に到着した。
扉が開いていることを祈りながら走っていたところ、裏口の戸は朽ち果てていて、もはや戸としての機能をはたしていない状態であったので、なるべく静かに移動しながら中に入ると、僕に背を向け目の前の侵入者に向かっているモンスター達と、小さな檻に入れられた数人のきらびやかな服装の男女数人、そして、その檻の脇に小柄で黒いローブで頭から全身を覆った人物が、何やら杖を振りかざしている。
杖の振り方で微妙にモンスターの動きが変わっているのを見て、杖の人物がモンスターを操っている様に見えた僕は、真っ先にその男の杖を叩き割ろうとし、 男に接近しようとしたが、死角から出てきたコボルト二体に行く先を阻まれ男に近づくことができない!
なんとか男に気づかれる前に 何とか杖を叩き落とそうとした僕は、コボルト二体を盾で押し出し、男ごと倒すことにした。
< < シールドバッシュ!! > >
渾身の体当たりに似た盾技を使いながら突っ込んでいく僕に、ようやく気が付いた黒ローブだったが、僕の盾に弾き飛ばされたコボルトごと押し潰され、そのまま手から杖を離して倒れ込んだ。
チャンスとばかりに杖を思いっきり蹴っ飛ばすと、目の前で戦っていたゴブリンが急に動きを止めたため、一瞬の隙をついた三人により、目の前のモンスターはを無事倒すことが出来たようだ。
モンスターに押しつぶされた男もそのまま動かなかったので、 勢いのまま押し倒し拘束したけど、黒ローブの視線はずっと檻の中にいる人物に向けられ、怒りをあらわにしながら、僕の隙をついて拘束を逃れようと何度も何度も激しく体を動かし抵抗をしている。
結局、後から来た兵士さん達が来るまでその動きを止めなかった黒ローブは、兵士に連れられていても拘束を解くために激しく動き、最後の最後まで檻にいた男を睨みつけているように思えたんだ。
激しく動く黒ローブを必死に押さえつけていた僕にはこう聞こえたんだ。
「コイツノセイデオレハオワッタ」
「オレノジンセイヲカエセ」
「アイツガオレヲコワシタ」
「オレノヘイワヲカエセカエセカエセ」
・・・・と。
捕らわれた人を救うための行動だったのに、この悲しさは何だろう。
ただ人を救いたかっただけなのに。
僕は本当に良いことをしたんだろうか・・・
僕は最後まで黒ローブの後姿から目を離す事が出来ませんでした。
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