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四章 そうだ、嫌がらせにいこう!

4-3 僕はまだまだ

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「お久しぶりでございますタガンログ様、いえ、今はタガンログ侯爵様でございますね。失礼いたしました」
「あら嫌だ!あの天下の魔女エンゲリス様が、私ごときにそんな気を使わなくてもよろしいですよ」

一瞬の沈黙が起きた後。

「エンゲリス・・・この口調やめない?めんどくさいんだけど」
「あ~あ・・・貴女が侯爵だって事は本当だし、それなりに気を使わないといけないなぁ~って思ってたんだけど、駄目かぁ。やっぱり私も地が出ちゃうみたい。本当にお久しぶりね騎士様」

そう言いながら、ほほほと笑い合いながら、朝からティータイムを楽しむばあちゃんと誰かを見ながら妙に緊張している僕がいます。

ばあちゃんの目の前にいる方は、ばあちゃんと同じくらいのお年の方だと思うんだけど、それを感じさせない気品にあふれる雰囲気をまとってる方。

金色の髪を後ろに束ね、ゆったりした白い衣服がとっても似合っていてね、それがとっても似合ってて、さらに上品さを醸し出してるもんだから、僕なんかが気軽に話しかけてはいけないような高貴なオーラをまとっているように見えたんだ。

そんな方が朝起きたらいたんで、どうしようかと思ったんだけど、思いきって挨拶したらね

「はい、お早うございます。朝早くからお邪魔してご免なさいね。私はおばあちゃんの昔からの友人なの。ちょっとだけ偉い肩書きがついてるけど気にしないでね」

そう微笑みながら言ってくれたんだ。

ただ…

侯爵様って言ってたよね…

ゴトウシャクだっけ?

公爵・侯爵・伯爵・子爵・男爵ってあって、侯爵様って言ったら”ものすごい偉い人”だよね?

ううん、ものすごい功績のあるとてつもなく偉い人だよね…なんて思ってたらね、

「あ、この人、武功でのしあがった人だから、礼儀とか気にしないでも大丈夫よ!ただ、未だに剣の腕は衰えてないから、怒らせると怖いわよ~」
「あら嫌だ!自慢のまごちゃんの前だから大人しくしてようと思ったのにばらしちゃって!」

なんて二人で笑ってるの。

そんな固まってる僕を見て、不思議そうにリビングに入ってきたエリニャは「お早うございます!着替えてきます!」って、慌てて自分の部屋に戻ったんだ。

そんなパジャマ姿のエリニャを見て、僕も慌てて着替えに行ったんだけど。お願いばあちゃん。来客がある時くらい声かけてよ!

そんな僕の愚痴を全く聞かないばあちゃん達は相変わらずお話に夢中なようで、仕方がなく僕はエリニャと一緒にご飯の準備をします。

「それにしても、貴女にはいつも驚かされるわね。戦士様が亡くなってしばらく連絡がとれなくなって、しばらくぶりに会えたかと思ったらこんなに若くなっちゃって!もう!羨ましいったらありゃしない!」
「元から年齢不詳の美魔女に言われたくありませんよ!どんどん年取る私より質が悪いじゃないの!未だに男性から声をかけられる80代なんて貴女くらいじゃないの?」

「う~ん、そうなの?よくわかんないんだけど、あれって年寄りを労ってくれてるだけじゃないの?」
「未だに団員率いて訓練に励む、80代を労る男なんているわけないじゃないの!ばかねぇ~」

ま、まぁ~久しぶりにあったって言ってるし、邪魔しちゃ悪いなぁ~なんて思いながら、エリニャと二人でご飯を食べていたら、タガンログ様が僕とエリニャに近づいてきてね、これからギルドに行くの?って声をかけてくださったんで「いつもの習慣で、何となく朝から行ってるんです」って言ったら、良い機会だから稽古つけてあげようか?って言ってくれたんだ。

ばあちゃんも、騎士様の稽古なんてめったにないから是非受けなさいよ!って後押ししてくれたから、急いでご飯を食べて準備をしたんだ!あ、エリニャ後片付けありがとう!

「キミはこういうシチュエーション好きなんでしょ?」

そんな事を笑いながら言ってくれる相方に甘え、普段使っている木刀を持って庭に行くと、タガンログ様が軽く木刀を回して準備運動するのが見えたんで、よろしくお願いしますって言ったらね、

「エンゲリスの孫ちゃんがどれだけの実力があるか?とっても楽しみだわ!遠慮はいらないからどんどんかかってらっしゃい!」

なんて言ってくれたので、つい嬉しくなっていろいろ試してみたんだ。
身体強化なしで打ち込みさせてもらったら、木刀の先でいなされてタガンログ様に近づく事すらできなかったから、今度は身体強化をしながら打ち込み、僕の奥の手まで使ってどんどん攻めていったつもりだったんだけど、結局涼しい顔のタガンログ様の体に剣を届かせる事すら出来なくて、僕はまだまだだなぁ・・・ってしょんぼりしてしちゃったよ。

本当はもっともっとやりたかったんだけど、タガンログ様にまた機会を作ってあげるからギルドに行ってらっしゃいって言わちゃったから、仕方がなく仕事に行ったんだけど、さすがに落ち込むなぁって思ってたらね、エリニャに背中思いっきり叩かれちゃった。

「アンタこれからでしょ!もっともっといろいろな経験積んで、いつかあのおばさんに褒めてもらえるように頑張りなさいよ!私も応援してるからさ!」

そういう相方に感謝しながら、今日も冒険者ギルドに行く僕。

そうだよね。僕はまだまだだって事はわかりきってる事なんだもん。もっと頑張ればもしかしたらあの方に一本取ることが出来るかも知れないから、もっともっと頑張らないとな!って思った、今日この頃の僕でした。
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