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四章 そうだ、嫌がらせにいこう!

4-2 金と権力の先には

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煙管から煙を吐き出し一言呟くばあちゃんを目に、急にキョトンとする二人。

「で、どうするの?」

もう一度ばあちゃんが言うと、

「し、知らなかったんです!貴女があのエンゲリス様だと言うことも!契約の内容も!私は何も知らないままだったんです!」

なんて学園長が叫ぶように言うと、会計士さんや周りから、「知らなかったで済めば兵隊や血の契約者はいらねぇんだよ!」なんて言葉が飛び出して来たんだけど、それを煙管で止め、再度目の前の二人を見下すように見るばあちゃん。

「ただ、さすがに一億イェンは無理です!どうかご勘弁を!お願いいたしますお願いいたします…」

そう言うと、ただただ土下座をしまくる学園長と教頭を目にしていたばあちゃんだったんだけど、ふぅとため息をついて、目の前の二人を無視して呟くんです。

「皆さんごめんなさいね、こんなに骨の無い人間だと思わなかったから、あっさり土下座して終わりになっちゃったみたい。アタクシ、てっきり学園長様が借金でもこさえてアタクシに一泡吹かせようと、何か仕掛けてくるのを待ってたんだけど、目の前の方々はそんな気概はないみたい。期待してたのに損したわ。これじゃアタクシ、弱いものいじめしているようで気分が悪いわ。もうヤメヤメ。こんな弱い者いじめつまらないわ~あ~期待外れもいいところだわ・・・あ~あ・・・つまらないつまらない・・・」

なんて目の前で土下座している二人がいないように、大げさにため息をついて、はいはいお仕事はここまでね~残念だけど、楽しい余興にすらならなかったわね~なんて言うばあちゃんを見て、仕方がないとばかりに部屋を出ていく子分さん達。

子分さん達も「あ~あつまらないの」とか「男ならもっとどうにかできなかったの?」とか、いかにも土下座した二人に対してなぶるように言いながら去って行ってね、気が付けば部屋にはばあちゃんと子分さん二人と僕しか残ってなかったんだ。

で、土下座しながらぶるぶる震えてる二人を、椅子に腰かけてゆったり見ていたばあちゃんだったんだけど、「つまらないからもう出ましょ、もうこの方々と二度とお会いすることはないでしょう」なんて席を立とうとしたとき、

「ふ、ざ、け、る、な」

って、土下座してる学園長のほうから声が聞こえたんだ。

「ふざけるな・・・俺がどれだけあんたに金をかけたと思ってるんだ!あの屈辱を晴らすために、いろいろな刺客を雇って送ったり、男爵様達に訴えかけてアンタを殺ろうとしたさ!だけどよ!あんた達はそんな俺らの苦労を鼻で笑うかのようにかわしたじゃねぇか!俺の精一杯の抵抗もお前には効かなかったのかもしれないが、俺は俺なりにお前に復讐しようとしたさ!今目の前にいるお前が憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎いぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!」

どんどん大きくなっていく声に驚いていると、学園長は我慢できなくなったのか?ばあちゃんに向かって拳を振り上げて突進してきたんだ!・・・けどね、その場で何かに縫い付けられたように止まっちゃったんだ。

「くそっくそっくそっ!糞バアアめぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」
「馬鹿ねぇ、こんな場作った魔法使いが、何も準備してないわけないじゃないの」

「で、アナタたち聞いたわよね」

そう言うばあちゃんの声に、いろいろな場所から顔を出す子分さん達と会計士さん。

「録音ばっちしですぜ!姐さん!」
「こちらもばっちりです!エンゲリス様!」

そう言いながら、とっても悪い顔をしている皆さんを見て、心配して損したなぁ~って思った僕は思わずその場にへたり込んでしまったんだ。

そんな僕を見ていたのか、遊びは終わりとばかりに、ばあちゃんは二人に言います。

「さて、茶番は終わりね。私においたした坊や達のお名前、全て吐いて貰おうかしら?あとでお礼に行かないといけませんからね」

「私を殺そうとしたんですって?とても恐ろしい事を聞いてしまったわ…これは兵隊さんに言わないと…学園の長たる方がこのか弱い娘を殺そうなどなんて恐ろしい事でしょう。私とても怖いわ」

「訴えられて全てを失うのと、全てを吐いてお金払って終わりにするの、どっちがいい?」

そう、にこやかに話すばあちゃんに、肩を落とす学園長がいました。そんな学園長の様子を見ながら、ばあちゃんは僕に言うのです。

お金と権力を持ってしまった人間が、誤った道を歩んでしまうとこうなってしまうと言うこと。将来貴方が多くのお金と名声を持った時、それらを誰のために使えば良いのか?今から考えておいてほしいと言うことを。

冒険者として有名になれば、ちやほやする人間も多くなり、自分が偉い人間になったと勘違いする人間をこれまで沢山見てきたけど、まごちゃんやエリニャちゃんにはそうなってほしくなくて…刺激的だったかもしれないけど、この場に立ち会って貰ったの、と。

うなだれながら子分さんに連れていかれる学園長たちを、僕は複雑な気持ちで見続けていました。
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