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鐘をならせば

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大晦日。

さすがに疲れたのか?いつもに比べ、かなり遅くまで寝ちゃったよ。

目が覚め周りを見渡すと、隣にはイデアと勇気が寝ている。カミサンは起きているようで、姿は見えない。

勇気はいつものことだが、イデアがここまで寝ているのは珍しいなあと思いながら顔を見ると、何か苦痛を感じているような険しい顔をしていたので、おでこを触って見たら、どうやら少し熱があるようだ。

最近少し疲れている様子だったので、とりあえず寝ているんだったらいいんだけど、これから熱が上がってきたり、もっと体調が悪くなってきたら、病院行かないといけないな。

とりあえずカミさんの所に行って話をしようかと思ったので、階段を降りて下に降りる。

昨日、掃除をしまくった家の部屋は比較的綺麗で、これで気持ちよく新年を迎えられる!と大喜びしていたカミサン。今日は少し早めに年越しそばを作ろうかと思ったらしく準備をしている真っ最中だ。

おはよう!とカミサンに声をかけ、イデアの調子が悪そうだということを話すと、私が起きた時も何か苦しそうにしていたので、汗などを拭いたらしい。カミサンもかなり心配そうにしてる。

イデアを見ていると、今のところは普通に生活をしているように思えるけど、もしかしたら異世界とこちらでは空気など環境から違うところがあるかもしれないから、知らない間に体が犯されるというもあるかも知れないと心配になる俺ら。

一応イデアにはちょこちょこ体調聞いてるが、今までは特に具合悪いというようなことはなかったので安心しきっていただけに、今回苦痛で顔を歪めながら寝ている姿を見ているととても心配だ。

そんな事を話していたら、勇気も降りてきて、「お姉ちゃん大丈夫かな?」と俺らに相談して来たので、今は3人で様子を見ながらゆっくり休ませてあげようと言う話をしたんだ。

今まで慣れないことの連続で、なかなか気の休まることがなかったのかも知れないし…と考えたらきりがない。

今後の事もそうなんだよね。

今こうやって生活してるけど、いつまでも俺らが一緒に居れる訳ではないし、いろいろな心境の変化で彼女が自ら出ていく事もあるかも知れない。

彼女がいた世界に戻してあげることも踏まえて、いろいろ考えていかなければいけないと思っている。

彼女が今の生活に慣れ、自分の事を自分で出来る様になったら、彼女と今後の事を真剣に話さなければいけないのかな?と、何となく責任感を感じてしまっていると、カミサンが「私もいるよ」と声をかけてくれた。こういうところでも思うけど、イデアが家に来てから家族には本当に助けてもらってばかりだよ、俺。

本当にありがたいね。

そんなこと思いながらも、家族交代でイデアを見ていたら、お昼ぐらいにようやく目を覚ました彼女。

大丈夫?と声をかけると、

「とてもとても怖い夢を見ました」

なんてだるそうな表情をしながら話すイデア。

無理をしすぎたじゃないか?もっとゆっくりしててもいいんだよと話すと、大丈夫ですと無理やり起き上がろうとするんで、慌てて止める。

無理やり起きても、具合が良くならないよ!
今日はゆっくり休みなさいと言うと、ではもう少しだけ…と、言うか言わないかのうちに寝てしまった。

カミサンにその旨伝えると、仕方ないねと言いながらそばを茹でるのをやめて、イデアの様子を見に行った。

結局イデアの目が覚めたのは夕方あたりで、そこから年越しそばを食べたり、長時間流れる歌番組を見たりしていたら、ごーん と言う音が聞こえたので、じゃ~行くか~とみんなに支度をさせて近所の神社に向かって歩く。

「こんな夜中に何処に行くんですか?」

と不思議そうについてくるイデアに、いいからいいから~と勢いで着替えさせ、暖かい格好してお寺さんへ向かう。

お寺さんに着くと、除夜の鐘を目当てに多くの方が並んでいるのが見えたので、列の一番後ろに並んで順番を待つ。

順番を待っている間、自分が持ってる百八つ(無数の数とも言ってた気がするが)の煩悩を綺麗にして、新しい気持ちで新年を迎えるための儀式みたいなもんだよ!なんて話すと、

 「儀式と言うには、色々な人が笑顔で並んでいるんですね」

と不思議そうに話すイデア。

そういえば、あちらの世界では厄落としというものはあるんだろうか?

向こうの世界では、どんな生活があるんだろうか?なんてことを思ったのだが、考えてみたらイデアは奴隷として過ごしていたわけで…

なかなか、そういった一般的な生活のことはわからないのかな?と思うとちょっと残念に思ってしまった俺がいました。

ようやく順番が来て、家族の幸せを書くための帳面目の前にし、そういえばイデアの生年月日や願いなど、全くわからなかったなと固まってしまったところ、後ろからカミサンがイデアの欄をちゃちゃっと書いてくれたので本当に助かったよ。

「適当に書いちゃったけどわかんないからしょうがないよね?これぐらい神様も許してくれるよ」

なんて言うカミサンに惚れ直しながら、家族一人一人が鐘をついているのを見ていた。

イデアも、最初は戸惑っていたものの、俺らが鐘をついているのを見て真似したのか?いい音を鳴らしてご機嫌の様子。

帰りに自動販売機で温かいお茶を買いながら、家族四人お茶で暖をとりながら家路急ぐ。

ふと気が付きスマホを見ると、時間は0時を過ぎ新年になっていた。

カミサンもそれに気がつき二人してあけましておめでとうと言うと 息子もイデアもそれにならっておめでとうと声をかけてくれた。

年の終わりに、イデアという思いがけない人物が家に来たんだけど、今ではそれも幸せの一つになってるなぁ~と思う自分がいます。

イデアや勇気が将来どんな大人になっていくのか?今から心配でもあり不安でもあるけど、それを信じてあげるのも親の務めというものだと思う。

まあ~今は、そんな不安な気持ちを抑えて、二人を後ろから見守ってあげたい。

そう思った、親バカなわたしでありました。
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