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一章 そうだ。龍に会いに行こう。
二十一 上下運動が効く。
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凍り付いた街を救う為、氷の女王エリッサを訪ねて果てなき階段を登り始めたカリン達。その途中で穴の中に落ちていたエリッサを救い出し、そのお礼にと彼女の居城へご招待されました。出されたお茶を飲んで酔っ払ってしまったミュウを黒龍は介抱しますがその辺は割愛しまして、現在カリン達はお風呂へとやって来ていました。
「うわっ、ひっろーいっ」
お風呂に一番乗りを果たした胸部八十のシルビアが驚きの声を上げます。
「本当。すごく広いですわね」
続いて入ってきたのは、この数ヶ月で急成長を成した胸部九十一のエリザ王女です。
「シルビア、服はちゃんとカゴに入れるでちよ」
最後に胸部測定不可のカリンがやって来ました。カリンの種族『フェリング』は、大人なノッポでも人族の半分くらいしか背丈がありませんので測定不可なのです。そしてパーティ中最大の胸部を持つミュウは、現在大人の情事……いえ、事情によりこの場には居ません。
「すっごぉい。これ全部透明だよー」
湯船も水族館ばりにスッケスケ。置かれたイスも透けていて、下から覗けば総てがまるっと見えてしまいます。ちなみに、いくら下から覗いても、光や湯気等の何らかのエフェクトが加わりますので大事な部分は見えません。
「ひゃっほぅ」
シルビアはお風呂の縁から波波と張られた湯船の中に飛び込みます。そして、溺れます。
「ちょ、ナニコレ。深い深い!」
シルビアが飛び込んだその場所は、彼女の背丈よりも深かったのです。
「全く、何をしているのですか」
命からがら風呂の縁に辿り着いたシルビアに、エリザ王女は呆れた眼差しを向けます。
「そうはいってもお姉様。お風呂がこんなに深いなんて誰も思いませんよ」
普通は腰を下ろしても胸くらいの深さなのですが、ここの場合、それは風呂というよりは、ダイビングプールに近いモノでした。
「良いお湯ですわねぇ」
「そうですねぇお姉様」
普通のお風呂と同じ深さの場所で、二人並んでお湯を堪能するエリザ王女とシルビア。その姿はまるで本当の姉妹の様です。ただし、妹の方は姉を抱く気まんまんです。
「来る前に聞いたのですが、ここのお湯はびみょうに良いそうですよ」
「び、微妙ですか……?」
「ええ、ウサギのメイドさんがそう言ってました」
美容の間違いかと思われます。加えて、この城の使用人は全て兎ですので、どのメイドなのか見分けるのは非常に困難を極めます。
「そういえばお姉様。ここって山の上ですよね、このお湯。どうやってここまで引いているのでしょう?」
シルビアは、手でお湯を掬い上げて頭を傾げます。
「さあ? 何らかの魔術で汲み上げているのでしょうね」
エリザ王女はそう言いますが実際の所、ウサギのメイドが数羽で大きな回し車をハムスターの様に回して汲み上げている事は、知らない方がゆっくり出来るでしょう。
「……本当に良いお湯ですわぁ」
「そうですねぇ……」
お湯に浮かぶ二つの肉まんを眺めながら、シルビアは心底良いお湯だ。と、思っていたのでした。
「ご主人様ァァァッ」
浴室の戸をガラリと勢いよく開け、身体を洗うカリンに向かって駆ける影がありました。その影は、ぴょん。と、小さく飛び跳ね、そのままビタンッ。と、それは綺麗なフォームで土下座をかまします。オリンピックでこんな競技があったなら、高得点は間違いありません。
「すみませんでしたぁっ!」
土下座をしたままで平謝りするエンシェントドラゴンのミュウ。
「もう良いでちよ。わたちも迂闊だったでち」
カリンの言葉に顔を上げたミュウの表情は、パアッと明るくなっていました。
「そんな事より、事の後なんでちから、ちゃんと身体を洗ってから風呂に入るでちよ」
黒龍に連れられて隣室に行ったミュウは、そこで黒龍との何らかの情事があったとカリン達はみていますので、そう言われるのも致し方ありません。
「いや! 何もしてませんからね?!」
全力で否定をするミュウですが、カリン達の対応は冷たいモノでした。そんな中で、冷ややかな対応をしつつも胸中で、『いつか私もお姉様と』と、熱く燃え滾る決意をしたシルビアでした。
カリン達がお風呂から上がって少し、ウサギのメイドが食事の用意が出来た事を知らせにやって来ました。そのウサギに食堂へと案内されたカリン達は、豪華絢爛の食べきれない程の食事に舌鼓を打ち、余った物は包んで貰い黒龍の『何処からともなく』に仕舞ってもらいます。その辺は抜かりがないカリン達でした。
「エリッサ女王、ありがとうでち。とても美味しかったでちよ」
食後のお茶の席で、カリンはエリッサ女王に頭を垂れます。
「お風呂も大変素晴らしかったですわ。有難うございます」
びみょう……もとい、美容に良いとされたお湯のお陰で、心なしかエリザ王女の肌もツルツルスベスベです。
「気に入って頂いてウチも嬉しいわぁ。気が向いたら何時でもおこしやす」
そういってエリッサ女王は残ったお茶をくぃっと飲み干し、カチャリ。とカップを置きます。
「そういえば、あんさん方は白龍の元へ行く言うとりましたなぁ」
「あ、はい。そうですエリッサ様」
至福のひとときにちょっと忘れかけていたエリザ王女でした。
「どうやって行かれはりますの?」
「どうやって。とは?」
「彼の地は暴風吹き荒れる極寒の地、龍の翼をもってしても踏破には難儀すると聞きますぇ。生身で立ち入れば即座に凍り付き、粉々に砕かれると言われとります」
エリッサ女王の言葉に、寒さもへっちゃらなドラゴンコンビと、行く気は全く無いドルワフのマギムネ以外がギョグッ。と、唾を飲み込みます。
「古龍帝さんから借りたこの指輪があるでちよ。これで寒さもへっちゃらでち」
カリンが見せた指輪を見て、エリッサ女王は目を細めます。
「なるほど、あの御方が動いとるんどすか。ならばウチも動かなあきまへんな。あんた方に乗り物をお貸ししますぇ」
「乗り物。ですか……?」
「そうどす。白龍の棲家まで約四百キロルメト、普通なら数日掛かる道のりも数時間で行けますぇ。大幅な時間短縮になりますやろ」
「そいつぁ有り難いゼ」
感謝するお店のマスターの陰で、エリザ王女は飛ぶ乗り物では無い事を必死になって祈っていました。
「それと、武具もこの城の物を使こうてもろて構やしまへん。好きな物を持っていっておくれやす」
「え……? 良いのでちか?」
「構へん構へん。ウチはまだ手出しは出来へんよって、これくらいはさせて貰います。有事の際はウチもお手伝いしますよってに」
「エリッサ様、ここまでして頂いてなんとお礼を申し上げればよいか……」
エリザ王女は席を立って深々と頭を垂れました。
「そう畏まらんでもよろしおす。魔王が復活して困った事になるんはどこも同じどすぇ。そうならない様、あんさん達には頑張って貰わなあきまへん。さあ、武器庫に案内しますよってに、必要な物を揃えたら明日の為に養生しておくれやす。恐らく明日が一番大変になるやろなぁ」
そう言ってエリッサ女王は席を立ち、カリン達は彼女の後を付いて武器庫へと向かったのでした。
「こいつぁすげぇ」
お店のマスターはその光景を見て唸るように呟きます。それもその筈、校庭ほどの広さの部屋に所狭しと武具が置かれていては誰しも唸る事でしょう。
「ウチが頼んでドルワフやエルクに作らせたコレクションどすぇ」
武器庫の中には半透明なクリスタルブレイドやクリスタルダガー等が置かれており、中にはクリスタルアーマーやインビジブルコートなんてのもあります。変わり種としては、魅了と媚薬の効果が付与された、燃え上がりたい夜には最適な半透明のネグリジェや、好きな人には堪らない大事な部分だけが透明になっている服などがあります。ちなみに、インビジブルコートは姿が見えなくなるマントではなく、裸の王様気分が味わえる服です。
「好きな物を持っていって使こうておくれやす」
「では、有り難く使わせて貰うでちよ」
カリン達は思い思いの場所に散ってゆきました。
カリン達が散開してしばし。最初に戻って来たのは、カリンとそのお供に付いて行ったミュウです。
カリンはあいも変わらず盗賊ルックに身を包みます。装備は自宅から持ち出したエルク産の風の魔力が付与された短剣に加え、クリスタルダガーのみが増えただけです。ミュウは全身が武器みたいなモノですので、何も持ち出しませんでした。
続いて戻って来たのはお店のマスターです。こちらも変わらず斧系で揃えた様子。半透明のクリスタルトマホークと、何やらゴツい装飾品の付いた槍を持っています。
「ここってすげぇな、古今東西あらゆる武器が揃ってる」
「マスター。ソレ重くないでちか?」
「ん? ああ、コレな」
お店のマスターはそのゴツい槍を片手で軽々と振り回します。
「コイツは羽毛の様に軽いんだ。しかも威力は抜群で、一発で気にいっちまった」
武器を探してる最中で、何かの破壊音がしたのはコレかとカリンは思っていました。
「それは風雷の槍といいましてなぁ、重量軽減の魔術が掛かっとります。ウチのお気に入りの一つどした……」
エリッサ女王は寂しそうにそう言いました。『どれでも好きなモノを』と言い出した手前、持っていかないでくれとは言えない女王でした。
そして最後に、エリザ王女と金魚のフンの様に付いて行ったシルビアが戻って来ました。魔術を扱う職業ですので、二人共杖の様です。
「エリザは何を選んだんでちか?」
「私はこの小手ですわ」
「それは水晶の小手どすなぁ、内部に杖が仕込まれとって、盾にもなるスグレモノどすぇ。それもウチのお気に入りどす」
場に重い空気が流れました。
「も、戻しましょうか?」
「いえいえ、どれでも好きな様に言ったんはウチやさかい、好きに使ておくれやす。その方がその子達も喜びはるやろ」
武器を子供扱いしているエリッサ女王に、場は更に重みを増しました。
「で、でち」
皆が一斉にシルビアを見ます。そのシルビアは満面の笑みで、コレどうかな? アピールをしていました。
「し、シルビアちゃん。イメチェンかい?」
「えっへっへぇ。コレカッコイイくない?」
そんな上機嫌のシルビアは、海賊ルックを身に纏っていました。しかも、ビキニ海賊です。
「とてもお似合いですよシルビアさん」
こことあそこが特に。と、黒龍は全身を舐める様に見つめます。
「それはパロー装備どすな。パローハットにマント、服はオースーツを合わせたんどすな。杖は、ジャック・オ・ロッドどすか」
本来なら曲刀が似合いそうな格好ですが、シルビアは杖を合わせた様です。
「シルビア。あんた舐めてるでちか?」
「カッコイイの選んだだけだもん」
シルビアの頬がプッ。と膨れます。
「これから行く所を考えたら、ソレは止めた方が良いですわよ」
「私はむしろ歓迎ですけどね」
黒龍の言葉に、お店のマスターは人知れずソッと頷きます。
「お姉様がそうおっしゃるのなら……」
シルビアは渋々戻って行きました。
「ああそうだエリザ、お前さんに似合いそうなモノを見つけたんだが……」
「え……? ミュウさんが私に……?」
「そうだ。着てみるか?」
「ええ、喜んで」
なにかと突っ掛かってくるミュウが、自分の為に選んでくれた服。王女の中で何かが込み上げて来た様で、嬉しさのあまり即答しました。
ミュウはゴソゴソと『何処からともなく』からソレを出しました。出されたソレを見て、誰しもがこう思っていました。『服なんて無いじゃん』と。さも何かありそうな仕草でソレを差し出すミュウの手を、我が目を疑う様に擦るエリザ王女。
「あ、あの。ミュウさんこれ……」
「『エロイ奴には見えない服』だ」
「な、何ですかそれはっ!?」
「エロく無い奴には分かるだろう。この気品溢れるドレス。ああ、最高だなこの肌触りは……」
そう言って頬ずりして見せるミュウ。しかし、一同にはソレを見る事は出来ません。それもそのはず、そんな服なぞ存在しないのですから、見える筈はありません。
「ま、まさか! 健全なエリザともあろう人が見えないのか?!」
ことさら驚いて見せるミュウ。その演技力はベテラン女優並です。
「見えますわよ! 見え……る筈です……わ」
最後は力なく答えました。
「ミュウ」
「何でしょう? ご主人様」
「エリザを揶揄うのも大概にするでちよ」
「なっ!?」
カリンに言われて、自身が揶揄われていた事を知ったエリザ王女でした。
「代わりに透けた服ならありますぇ」
「いえ、結構です」
透けた服で迫る王女。そんな王女を見てみたい。と、妄想膨らむ黒龍とお店のマスターでした。
「お待たせぇ」
上機嫌で戻って来たシルビア。その様相を見て一同は驚きを隠せませんでした。
「この服って凄いんだよ? バカには見えないんだって」
下着がまるっと見えてしまっている馬鹿丸出しのシルビアに、カリンは即座に着替える様に言い渡したのは言うまでもありませんでした。
装備を無事に整えたカリン達一行は、今度はお城の正面口へとやってきました。エリッサ女王がポケットから取り出した小さな笛を吹くと、ピィーっと小気味良い音が響きます。そして、何処からともなく地響きが聞こえてきました。
「な、何だ?!」
ズズンズズン。と、一行に近付くその音に、お店のマスターとシルビアが狼狽ます。
「ひっ!」
山の斜面から山頂にひょっこりと見せたその顔に、今度はエリザ王女までもが驚きました。
「ウサギ……でちか?」
カリンが疑問形で言うのも無理はありません。姿形はウサギなのですが、通常のウサギよりも数十倍も大きなウサギだったのです。
「彼女がウチの乗り物、大雪ウサギのクッキーちゃんどす」
エリッサ女王が愛用している乗り物には、愛玩犬によくある名前が付けられていました。
「あ、よく見れば可愛い」
あまりの可愛さに気を許したシルビアが、近付いて『お手』と言わんばかりに手を差し出します。それに応えた大雪ウサギのクッキーちゃんは、お手ではなくハモッ。でした。
「こらクッキーちゃん、それは食べ物やあらへん。あきまへんで」
主人に怒られたクッキーちゃんは、咥えたシルビアを吐き出しました。ドサリ。と、雪の上に尻餅をついたシルビアの身体には、テラテラヌメヌメの液体が纏わり付き、陽の光を浴びて輝いていました。
「うえぇぇん。怖かったよぉ」
恐怖のあまり、誰かに抱き付いてワンワン泣きたかったシルビアですが、身体に纏わり付いたテラテラヌメヌメのお陰で誰からも、女に目がない黒龍でさえも嫌煙されてしまいました。
「ちょ、シルビア。こっち来ないでくれでちよ」
「えぇー、何でよぉう」
「お風呂場で裸でなら、そういうプレイも構わないんですがね」
黒龍の言葉に、人知れず頷くお店のマスターです。ちなみに、クッキーちゃんが『お手』で応えた場合、シルビアは雪に埋もれてビショ濡れになり、結局出発前にひとっ風呂浴びる結果になったのは変わりませんでした。
「それじゃ、行ってくるでちよ。エリッサ女王、マギムネ。色々とありがとうでち」
「こちらこそ助けてもろて、ありがとう」
「儂もしばらくは街に滞在するじゃのう。用があったら訪ねてくるじゃのう」
シルビアがお風呂を済ませるのを待って、カリン達は大雪ウサギのクッキーちゃんに乗り込みます。
「気いつけてなぁ」
エリッサ女王の別れの言葉と同時に、大雪ウサギのクッキーちゃんは大きく跳ねて、その身を雲の中へと踊らせました。
「ひぁぁぁっ!」
視界が悪い雲の中、ジェットコースターの様にスーッと血の気が引く感覚と、エリザ王女の悲鳴が木霊します。山の斜面を滑り降りるのではなく、飛び降りる事になるとは露ほどにも思っていなかった王女でした。
大雪ウサギのクッキーちゃんが、雪が降り積もる大地を疾走する事一時間。カリン達一行は休憩を取る事にしました。その理由とは――
「ご主人様大丈夫ですか!?」
「うう……上下運動が気持ち悪いでち」
ウサギは地に足を付けて前へ進む為に、頭の上に乗っているカリン達は、上下に揺さぶられて乗り物酔いしてしまったのでした。ちなみに、ミュウと黒龍のドラゴンコンビは、滞空時のホバリングにより上下するので慣れています。
大雪ウサギから飛び降りる様に降りたドラゴンコンビ以外の一同は、思い思いにに散って木の根元で佇みます。そしてここからは、お食事中の方もいらっしゃるとお思いますので、詳しい描写は割愛させて頂きます。ただ、女性陣のソレを見て美しいと感じた黒龍がいた事だけは、お伝えしておきます。
上下運動が意外に効く事を、その身で以って知ったカリン達は、適度に休憩を挟みます。その分移動距離は短くはなりましたが、確実に白龍の棲み家へと近付いていました。そして日が暮れかかった頃、今日の移動は終わりにして明日にしようという事に相成りました。
「しっかし効いたなぁ」
お店のマスターがゲンナリとした様子で呟きます。上下運動によって体のあちこちが揺さぶられるのですから、コレが効かない筈はありません。
「これなら飛んだ方がマシだったでちかね」
カリンの言葉にエリザ王女はブンブン。と、首を横に振ります。飛ぶくらいならこっちの方がまだマシだと、高所恐怖症の王女は思っていたのでした。
翌朝。キャンプ地を引き払ったカリン達は、冷えた大地に聳え立つ唯一の山。ペラッフ山のすぐ側までやって来ました。エリッサ女王によりますと、その山の中に白龍が棲んでいるそうです。しかし――
「な、何だこりゃあ……」
お店のマスターは呻く様な声を上げました。
「白い壁ですわ……」
お店のマスターが驚き、エリザ王女がそう表現するのも無理はありません。何しろソコは豪風吹き荒れる超低温地帯、今までの雪がかわゆく思える程でした。山まで残り約十キロルメト。他に道はありませんので、ここを進むしかありません。
「すぐソコに風の壁があるでちね」
カリン達が古龍帝から借りた指輪は、寒さを防ぎますが風は防ぐ事が出来ません。なので、強風に煽られたままですと、体温が奪われてやがて行動不能になる事でしょう。ちなみに、某名作アニメ映画の『巣』とは違って、風は逆方向には吹いていません。
「みんな、クッキーちゃんの毛の中に入るでちよ」
「そうか、毛の中なら風の影響は受けないな」
一同は成る程。と、頷き、もふもふっとした毛の中に入り込みました。
「それじゃクッキーちゃん。頼むでちよ」
カリンがクッキーちゃんの頭をひと撫ですると、プープーと可愛い鳴き声で応えたのでした。
「うわっ、ひっろーいっ」
お風呂に一番乗りを果たした胸部八十のシルビアが驚きの声を上げます。
「本当。すごく広いですわね」
続いて入ってきたのは、この数ヶ月で急成長を成した胸部九十一のエリザ王女です。
「シルビア、服はちゃんとカゴに入れるでちよ」
最後に胸部測定不可のカリンがやって来ました。カリンの種族『フェリング』は、大人なノッポでも人族の半分くらいしか背丈がありませんので測定不可なのです。そしてパーティ中最大の胸部を持つミュウは、現在大人の情事……いえ、事情によりこの場には居ません。
「すっごぉい。これ全部透明だよー」
湯船も水族館ばりにスッケスケ。置かれたイスも透けていて、下から覗けば総てがまるっと見えてしまいます。ちなみに、いくら下から覗いても、光や湯気等の何らかのエフェクトが加わりますので大事な部分は見えません。
「ひゃっほぅ」
シルビアはお風呂の縁から波波と張られた湯船の中に飛び込みます。そして、溺れます。
「ちょ、ナニコレ。深い深い!」
シルビアが飛び込んだその場所は、彼女の背丈よりも深かったのです。
「全く、何をしているのですか」
命からがら風呂の縁に辿り着いたシルビアに、エリザ王女は呆れた眼差しを向けます。
「そうはいってもお姉様。お風呂がこんなに深いなんて誰も思いませんよ」
普通は腰を下ろしても胸くらいの深さなのですが、ここの場合、それは風呂というよりは、ダイビングプールに近いモノでした。
「良いお湯ですわねぇ」
「そうですねぇお姉様」
普通のお風呂と同じ深さの場所で、二人並んでお湯を堪能するエリザ王女とシルビア。その姿はまるで本当の姉妹の様です。ただし、妹の方は姉を抱く気まんまんです。
「来る前に聞いたのですが、ここのお湯はびみょうに良いそうですよ」
「び、微妙ですか……?」
「ええ、ウサギのメイドさんがそう言ってました」
美容の間違いかと思われます。加えて、この城の使用人は全て兎ですので、どのメイドなのか見分けるのは非常に困難を極めます。
「そういえばお姉様。ここって山の上ですよね、このお湯。どうやってここまで引いているのでしょう?」
シルビアは、手でお湯を掬い上げて頭を傾げます。
「さあ? 何らかの魔術で汲み上げているのでしょうね」
エリザ王女はそう言いますが実際の所、ウサギのメイドが数羽で大きな回し車をハムスターの様に回して汲み上げている事は、知らない方がゆっくり出来るでしょう。
「……本当に良いお湯ですわぁ」
「そうですねぇ……」
お湯に浮かぶ二つの肉まんを眺めながら、シルビアは心底良いお湯だ。と、思っていたのでした。
「ご主人様ァァァッ」
浴室の戸をガラリと勢いよく開け、身体を洗うカリンに向かって駆ける影がありました。その影は、ぴょん。と、小さく飛び跳ね、そのままビタンッ。と、それは綺麗なフォームで土下座をかまします。オリンピックでこんな競技があったなら、高得点は間違いありません。
「すみませんでしたぁっ!」
土下座をしたままで平謝りするエンシェントドラゴンのミュウ。
「もう良いでちよ。わたちも迂闊だったでち」
カリンの言葉に顔を上げたミュウの表情は、パアッと明るくなっていました。
「そんな事より、事の後なんでちから、ちゃんと身体を洗ってから風呂に入るでちよ」
黒龍に連れられて隣室に行ったミュウは、そこで黒龍との何らかの情事があったとカリン達はみていますので、そう言われるのも致し方ありません。
「いや! 何もしてませんからね?!」
全力で否定をするミュウですが、カリン達の対応は冷たいモノでした。そんな中で、冷ややかな対応をしつつも胸中で、『いつか私もお姉様と』と、熱く燃え滾る決意をしたシルビアでした。
カリン達がお風呂から上がって少し、ウサギのメイドが食事の用意が出来た事を知らせにやって来ました。そのウサギに食堂へと案内されたカリン達は、豪華絢爛の食べきれない程の食事に舌鼓を打ち、余った物は包んで貰い黒龍の『何処からともなく』に仕舞ってもらいます。その辺は抜かりがないカリン達でした。
「エリッサ女王、ありがとうでち。とても美味しかったでちよ」
食後のお茶の席で、カリンはエリッサ女王に頭を垂れます。
「お風呂も大変素晴らしかったですわ。有難うございます」
びみょう……もとい、美容に良いとされたお湯のお陰で、心なしかエリザ王女の肌もツルツルスベスベです。
「気に入って頂いてウチも嬉しいわぁ。気が向いたら何時でもおこしやす」
そういってエリッサ女王は残ったお茶をくぃっと飲み干し、カチャリ。とカップを置きます。
「そういえば、あんさん方は白龍の元へ行く言うとりましたなぁ」
「あ、はい。そうですエリッサ様」
至福のひとときにちょっと忘れかけていたエリザ王女でした。
「どうやって行かれはりますの?」
「どうやって。とは?」
「彼の地は暴風吹き荒れる極寒の地、龍の翼をもってしても踏破には難儀すると聞きますぇ。生身で立ち入れば即座に凍り付き、粉々に砕かれると言われとります」
エリッサ女王の言葉に、寒さもへっちゃらなドラゴンコンビと、行く気は全く無いドルワフのマギムネ以外がギョグッ。と、唾を飲み込みます。
「古龍帝さんから借りたこの指輪があるでちよ。これで寒さもへっちゃらでち」
カリンが見せた指輪を見て、エリッサ女王は目を細めます。
「なるほど、あの御方が動いとるんどすか。ならばウチも動かなあきまへんな。あんた方に乗り物をお貸ししますぇ」
「乗り物。ですか……?」
「そうどす。白龍の棲家まで約四百キロルメト、普通なら数日掛かる道のりも数時間で行けますぇ。大幅な時間短縮になりますやろ」
「そいつぁ有り難いゼ」
感謝するお店のマスターの陰で、エリザ王女は飛ぶ乗り物では無い事を必死になって祈っていました。
「それと、武具もこの城の物を使こうてもろて構やしまへん。好きな物を持っていっておくれやす」
「え……? 良いのでちか?」
「構へん構へん。ウチはまだ手出しは出来へんよって、これくらいはさせて貰います。有事の際はウチもお手伝いしますよってに」
「エリッサ様、ここまでして頂いてなんとお礼を申し上げればよいか……」
エリザ王女は席を立って深々と頭を垂れました。
「そう畏まらんでもよろしおす。魔王が復活して困った事になるんはどこも同じどすぇ。そうならない様、あんさん達には頑張って貰わなあきまへん。さあ、武器庫に案内しますよってに、必要な物を揃えたら明日の為に養生しておくれやす。恐らく明日が一番大変になるやろなぁ」
そう言ってエリッサ女王は席を立ち、カリン達は彼女の後を付いて武器庫へと向かったのでした。
「こいつぁすげぇ」
お店のマスターはその光景を見て唸るように呟きます。それもその筈、校庭ほどの広さの部屋に所狭しと武具が置かれていては誰しも唸る事でしょう。
「ウチが頼んでドルワフやエルクに作らせたコレクションどすぇ」
武器庫の中には半透明なクリスタルブレイドやクリスタルダガー等が置かれており、中にはクリスタルアーマーやインビジブルコートなんてのもあります。変わり種としては、魅了と媚薬の効果が付与された、燃え上がりたい夜には最適な半透明のネグリジェや、好きな人には堪らない大事な部分だけが透明になっている服などがあります。ちなみに、インビジブルコートは姿が見えなくなるマントではなく、裸の王様気分が味わえる服です。
「好きな物を持っていって使こうておくれやす」
「では、有り難く使わせて貰うでちよ」
カリン達は思い思いの場所に散ってゆきました。
カリン達が散開してしばし。最初に戻って来たのは、カリンとそのお供に付いて行ったミュウです。
カリンはあいも変わらず盗賊ルックに身を包みます。装備は自宅から持ち出したエルク産の風の魔力が付与された短剣に加え、クリスタルダガーのみが増えただけです。ミュウは全身が武器みたいなモノですので、何も持ち出しませんでした。
続いて戻って来たのはお店のマスターです。こちらも変わらず斧系で揃えた様子。半透明のクリスタルトマホークと、何やらゴツい装飾品の付いた槍を持っています。
「ここってすげぇな、古今東西あらゆる武器が揃ってる」
「マスター。ソレ重くないでちか?」
「ん? ああ、コレな」
お店のマスターはそのゴツい槍を片手で軽々と振り回します。
「コイツは羽毛の様に軽いんだ。しかも威力は抜群で、一発で気にいっちまった」
武器を探してる最中で、何かの破壊音がしたのはコレかとカリンは思っていました。
「それは風雷の槍といいましてなぁ、重量軽減の魔術が掛かっとります。ウチのお気に入りの一つどした……」
エリッサ女王は寂しそうにそう言いました。『どれでも好きなモノを』と言い出した手前、持っていかないでくれとは言えない女王でした。
そして最後に、エリザ王女と金魚のフンの様に付いて行ったシルビアが戻って来ました。魔術を扱う職業ですので、二人共杖の様です。
「エリザは何を選んだんでちか?」
「私はこの小手ですわ」
「それは水晶の小手どすなぁ、内部に杖が仕込まれとって、盾にもなるスグレモノどすぇ。それもウチのお気に入りどす」
場に重い空気が流れました。
「も、戻しましょうか?」
「いえいえ、どれでも好きな様に言ったんはウチやさかい、好きに使ておくれやす。その方がその子達も喜びはるやろ」
武器を子供扱いしているエリッサ女王に、場は更に重みを増しました。
「で、でち」
皆が一斉にシルビアを見ます。そのシルビアは満面の笑みで、コレどうかな? アピールをしていました。
「し、シルビアちゃん。イメチェンかい?」
「えっへっへぇ。コレカッコイイくない?」
そんな上機嫌のシルビアは、海賊ルックを身に纏っていました。しかも、ビキニ海賊です。
「とてもお似合いですよシルビアさん」
こことあそこが特に。と、黒龍は全身を舐める様に見つめます。
「それはパロー装備どすな。パローハットにマント、服はオースーツを合わせたんどすな。杖は、ジャック・オ・ロッドどすか」
本来なら曲刀が似合いそうな格好ですが、シルビアは杖を合わせた様です。
「シルビア。あんた舐めてるでちか?」
「カッコイイの選んだだけだもん」
シルビアの頬がプッ。と膨れます。
「これから行く所を考えたら、ソレは止めた方が良いですわよ」
「私はむしろ歓迎ですけどね」
黒龍の言葉に、お店のマスターは人知れずソッと頷きます。
「お姉様がそうおっしゃるのなら……」
シルビアは渋々戻って行きました。
「ああそうだエリザ、お前さんに似合いそうなモノを見つけたんだが……」
「え……? ミュウさんが私に……?」
「そうだ。着てみるか?」
「ええ、喜んで」
なにかと突っ掛かってくるミュウが、自分の為に選んでくれた服。王女の中で何かが込み上げて来た様で、嬉しさのあまり即答しました。
ミュウはゴソゴソと『何処からともなく』からソレを出しました。出されたソレを見て、誰しもがこう思っていました。『服なんて無いじゃん』と。さも何かありそうな仕草でソレを差し出すミュウの手を、我が目を疑う様に擦るエリザ王女。
「あ、あの。ミュウさんこれ……」
「『エロイ奴には見えない服』だ」
「な、何ですかそれはっ!?」
「エロく無い奴には分かるだろう。この気品溢れるドレス。ああ、最高だなこの肌触りは……」
そう言って頬ずりして見せるミュウ。しかし、一同にはソレを見る事は出来ません。それもそのはず、そんな服なぞ存在しないのですから、見える筈はありません。
「ま、まさか! 健全なエリザともあろう人が見えないのか?!」
ことさら驚いて見せるミュウ。その演技力はベテラン女優並です。
「見えますわよ! 見え……る筈です……わ」
最後は力なく答えました。
「ミュウ」
「何でしょう? ご主人様」
「エリザを揶揄うのも大概にするでちよ」
「なっ!?」
カリンに言われて、自身が揶揄われていた事を知ったエリザ王女でした。
「代わりに透けた服ならありますぇ」
「いえ、結構です」
透けた服で迫る王女。そんな王女を見てみたい。と、妄想膨らむ黒龍とお店のマスターでした。
「お待たせぇ」
上機嫌で戻って来たシルビア。その様相を見て一同は驚きを隠せませんでした。
「この服って凄いんだよ? バカには見えないんだって」
下着がまるっと見えてしまっている馬鹿丸出しのシルビアに、カリンは即座に着替える様に言い渡したのは言うまでもありませんでした。
装備を無事に整えたカリン達一行は、今度はお城の正面口へとやってきました。エリッサ女王がポケットから取り出した小さな笛を吹くと、ピィーっと小気味良い音が響きます。そして、何処からともなく地響きが聞こえてきました。
「な、何だ?!」
ズズンズズン。と、一行に近付くその音に、お店のマスターとシルビアが狼狽ます。
「ひっ!」
山の斜面から山頂にひょっこりと見せたその顔に、今度はエリザ王女までもが驚きました。
「ウサギ……でちか?」
カリンが疑問形で言うのも無理はありません。姿形はウサギなのですが、通常のウサギよりも数十倍も大きなウサギだったのです。
「彼女がウチの乗り物、大雪ウサギのクッキーちゃんどす」
エリッサ女王が愛用している乗り物には、愛玩犬によくある名前が付けられていました。
「あ、よく見れば可愛い」
あまりの可愛さに気を許したシルビアが、近付いて『お手』と言わんばかりに手を差し出します。それに応えた大雪ウサギのクッキーちゃんは、お手ではなくハモッ。でした。
「こらクッキーちゃん、それは食べ物やあらへん。あきまへんで」
主人に怒られたクッキーちゃんは、咥えたシルビアを吐き出しました。ドサリ。と、雪の上に尻餅をついたシルビアの身体には、テラテラヌメヌメの液体が纏わり付き、陽の光を浴びて輝いていました。
「うえぇぇん。怖かったよぉ」
恐怖のあまり、誰かに抱き付いてワンワン泣きたかったシルビアですが、身体に纏わり付いたテラテラヌメヌメのお陰で誰からも、女に目がない黒龍でさえも嫌煙されてしまいました。
「ちょ、シルビア。こっち来ないでくれでちよ」
「えぇー、何でよぉう」
「お風呂場で裸でなら、そういうプレイも構わないんですがね」
黒龍の言葉に、人知れず頷くお店のマスターです。ちなみに、クッキーちゃんが『お手』で応えた場合、シルビアは雪に埋もれてビショ濡れになり、結局出発前にひとっ風呂浴びる結果になったのは変わりませんでした。
「それじゃ、行ってくるでちよ。エリッサ女王、マギムネ。色々とありがとうでち」
「こちらこそ助けてもろて、ありがとう」
「儂もしばらくは街に滞在するじゃのう。用があったら訪ねてくるじゃのう」
シルビアがお風呂を済ませるのを待って、カリン達は大雪ウサギのクッキーちゃんに乗り込みます。
「気いつけてなぁ」
エリッサ女王の別れの言葉と同時に、大雪ウサギのクッキーちゃんは大きく跳ねて、その身を雲の中へと踊らせました。
「ひぁぁぁっ!」
視界が悪い雲の中、ジェットコースターの様にスーッと血の気が引く感覚と、エリザ王女の悲鳴が木霊します。山の斜面を滑り降りるのではなく、飛び降りる事になるとは露ほどにも思っていなかった王女でした。
大雪ウサギのクッキーちゃんが、雪が降り積もる大地を疾走する事一時間。カリン達一行は休憩を取る事にしました。その理由とは――
「ご主人様大丈夫ですか!?」
「うう……上下運動が気持ち悪いでち」
ウサギは地に足を付けて前へ進む為に、頭の上に乗っているカリン達は、上下に揺さぶられて乗り物酔いしてしまったのでした。ちなみに、ミュウと黒龍のドラゴンコンビは、滞空時のホバリングにより上下するので慣れています。
大雪ウサギから飛び降りる様に降りたドラゴンコンビ以外の一同は、思い思いにに散って木の根元で佇みます。そしてここからは、お食事中の方もいらっしゃるとお思いますので、詳しい描写は割愛させて頂きます。ただ、女性陣のソレを見て美しいと感じた黒龍がいた事だけは、お伝えしておきます。
上下運動が意外に効く事を、その身で以って知ったカリン達は、適度に休憩を挟みます。その分移動距離は短くはなりましたが、確実に白龍の棲み家へと近付いていました。そして日が暮れかかった頃、今日の移動は終わりにして明日にしようという事に相成りました。
「しっかし効いたなぁ」
お店のマスターがゲンナリとした様子で呟きます。上下運動によって体のあちこちが揺さぶられるのですから、コレが効かない筈はありません。
「これなら飛んだ方がマシだったでちかね」
カリンの言葉にエリザ王女はブンブン。と、首を横に振ります。飛ぶくらいならこっちの方がまだマシだと、高所恐怖症の王女は思っていたのでした。
翌朝。キャンプ地を引き払ったカリン達は、冷えた大地に聳え立つ唯一の山。ペラッフ山のすぐ側までやって来ました。エリッサ女王によりますと、その山の中に白龍が棲んでいるそうです。しかし――
「な、何だこりゃあ……」
お店のマスターは呻く様な声を上げました。
「白い壁ですわ……」
お店のマスターが驚き、エリザ王女がそう表現するのも無理はありません。何しろソコは豪風吹き荒れる超低温地帯、今までの雪がかわゆく思える程でした。山まで残り約十キロルメト。他に道はありませんので、ここを進むしかありません。
「すぐソコに風の壁があるでちね」
カリン達が古龍帝から借りた指輪は、寒さを防ぎますが風は防ぐ事が出来ません。なので、強風に煽られたままですと、体温が奪われてやがて行動不能になる事でしょう。ちなみに、某名作アニメ映画の『巣』とは違って、風は逆方向には吹いていません。
「みんな、クッキーちゃんの毛の中に入るでちよ」
「そうか、毛の中なら風の影響は受けないな」
一同は成る程。と、頷き、もふもふっとした毛の中に入り込みました。
「それじゃクッキーちゃん。頼むでちよ」
カリンがクッキーちゃんの頭をひと撫ですると、プープーと可愛い鳴き声で応えたのでした。
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