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第2話 撃ちますよ? 雷魔法

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「お断りします。」

 こいつは足りないからハッキリ言ってやらないとダメだ。ハッキリ言っても伝わるか怪しいが……

「どうしてだい? 何も心配いらないよ?」

「私は結婚しないのであれば魔法士としての道を進むからです。」

 足りないと評判の男と無理矢理婚約させられた挙句に魔法士としての道も閉ざされていた私は、少なからず恨みを抱えている。

 しかしながら家格は低いとは言え、こちとら貴族。その恨みも呑んで、足りていない婚約者を立てていたのにこの仕打ち。

 家には面倒をかける事になるかもしれないけど、私はここで魔法をぶっ放す事さえも辞さない覚悟だ。

「魔法士か…。でもそんなにお給金は高くないだろ? 侯爵家の侍女になればもっと良いお給金も用意出来る。」

「私は一級魔法士の資格を既に持っていますの。それでもですか?」

「俺の新たな結婚相手の教育を頼むのだ。一級魔法士とまではいかないが、それなりに用意してみせるさ。」

(バカなの? えぇ…バカでしたね。なんせ足りないんですから…)

 せめて交渉するなら一級魔法士より多い給金を用意しないと話にならない。仮にそれより多い額だとしても、こんな屈辱的な提案には絶対に頷かないが…。

「私は魔法士になる事が夢でしたので、どんなに言われようとお断り致します。」

(ここまでハッキリ言っても分からないなら、一発だけ撃ってみましょう。)

 この男の次に出てくる発言に身構えていると…

「それなら…君との婚約を継続して、君を第二夫人に迎えれば解決じゃないか?」

 そう…彼が凄く良い提案だと言わんばかりの顔で信じられない事を言い出す。

 先程よりも更に輪をかけたふざけた提案に、たった今私の覚悟が決まった。

「…特級魔法をご覧になった事はありますか?」

「無いが…それがどうかしたのか?」

「特別に見せて差し上げます。」

 私は魔法士としての資格こそ一級までしか取得していないが、得意の雷魔法なら特級が使える。特級魔法士の資格は最低三年の実務経験が必要なのだ。

 ちなみに特級魔法を使える者は現在、この国に私以外誰一人として存在していない。

「轟雷。」

 私はゼンベル侯爵家自慢の庭に特級魔法“轟雷”を放った。

 恐らく近隣にまで音が響き渡っただろう。あちこちから悲鳴が聞こえ、庭は見るも無惨に破壊され地面が大きく抉れてしまっている。

 ゼンベル家当主は昔からこの庭が気に入っていたのを私も知っていたが、もう我慢の限界だった。

「婚約破棄の慰謝料はいりません。庭の修理費用と相殺して下さいませ。」

 彼は腰が抜けたのか、テラスの床に座り込んでいた。

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