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第16話 第一王子失脚計画
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「おはようございますシュナイザー殿下。その節はご協力頂きありがとうございましたわ。」
「あぁ。ジュリア嬢が亡くなったのは残念だったな。」
能無し王子は政務が忙しいとかでここ何日か登校していなかったので、久しぶりの顔合わせだ。
一生来なくて良いのに。
「はい。弟も大層気落ちしておりました。」
「弟……か。」
「えっと、どうなさいましたか?」
そろそろね。
「ジュリア嬢はお前が消したんじゃないのか? 彼女はお前にとって邪魔者だったろう?」
はい。きました。作中屈指の能無し王子がムカつくシーン。
これじゃあ完全なモラハラ男よ。
「いえ、そんな……。」
「弟の婚約者に嫉妬など見苦しい。本当にお前は私の婚約者である自覚があるのか疑わしいものだ。」
すげぇムカつく。お前の嫉妬の方が見苦しいわボケ。
いくらなんでも決めつけにも程がある。殺したのはマリーベルだっての。
状況を作ったのは私だけど。
「……。」
「それとも私との仲を邪魔されたからか? どちらにせよ、あんな状況でジュリア嬢が亡くなったら俺がお前を疑うに決まっている。全く、少し邪魔されたくらいで怒るなどどうかしているな。」
全っ然! 少しじゃありませんでしたけどねっ!
弟とちょっと仲が良いくらいでここまで怒る貴方の方が余程どうかしているわよ!
そりゃ、多少は怒るのも仕方がないとは理解しているけど、ここまで暴言吐くのってどうなの?
「シュナイザー殿下。私はそのような事は致しません。」
「かもしれないな。」
かもしれないな、じゃないわよ!
ゲームやって知ってたけど、面と向かって言われると本当に腹が立つ。テメェが私を信じてたらジュリアが死ぬ状況にまで追い込まなくて済んだっつーの!
やっぱコイツだめだわ。
廃嫡じゃなくて、処刑すべきだわ。マリーベル共々。
「シュナイザー殿下がお疑いになるのも私の不徳の致すところでございます。」
「そうだな。」
なんで私が謝らなきゃならないの? 馬鹿じゃないの?
お前が私に謝れってば!
「あら、これはご機嫌麗しゅうございます殿下、メルトリア様。」
この声はローズマリーだわ。ナイスタイミング。
能無し王子と二人は苦痛だったから丁度良かった。
「あぁ、ローズマリー嬢か。君も早いな。」
「はい。たまたまでございますが。お二人方もお早いんですのね?」
「えぇ。ローズマリー様も、昨日はありがとうございました。」
「うん? 君たちは昨日会っていたのか?」
「はい。テレーゼ様がお茶会を開いて下さいまして。」
あ、ローズマリーが言うのかよそれって顔してるわ。
平気よ。コイツは能無しだからなーんにも不自然に思いやしないから。
「そうか。ジュリア嬢があんな事になった後だというのに、私の婚約者は大層なご身分だな?」
「「申し訳ありません。」」
「あっいや……ローズマリー嬢に言ったのではない。す、すまんが用事を思い出した。それではな。」
「「行ってらっしゃいませ。」」
とっとと行け。しっしっ。
ちょっと失言したからって逃げる男ってダサいわ。
「ちょっとメルトリア。いきなりなんて事言ってるのよ。危ないでしょう。」
「大丈夫よ。今後はあのメンバーで行動する事が増えるのだから、お茶会の事はここで言っておかないと反って怪しいわ。」
「まぁ、そうなんだけど。」
「それより見ました? あの態度。」
「えぇ。完全にメルトリアを排除したがっているように見えたわ。」
そうでしょうとも。ジュリアに色々吹き込まれて機嫌が悪いからね。
「最近はあんな調子ですよ。もしかしたら、私が体を許さないからイライラしているのかも。」
「結婚するまでは普通許さないわよ。」
「本来はそうなんだけど、今までの事があるでしょう?」
「えぇ、あの事ね?」
ローズマリーも当然私の妄想話を聞いているから、能無し王子が女と肉体関係を結んでやらかしては王族が排除している事を信じ込んでいるのだ。
「そうよ。」
「絶対に体を許してはダメよ。今の状態でさえメルトリアは危ういのだから、一度許してしまえば向こうはもう満足したと言って今以上に苛烈な排除を試みかねないんだから。」
「気をつけるわ。」
成る程。そういう考え方もあるわね。
ローズマリーも意地悪だから考え方が私と似ていて、勝手に能無し王子の不自然な様子を悪い方向で解釈してくれるから助かるわ。
「私、教室はこっちだから。」
「えぇ。ありがとう。」
「な……。とと当然でしょ? 私だって危ないんだから。」
「ふふ。照れなくても良いのに。」
「照れてないわよ!」
意地悪令嬢のツンデレも案外悪くないわね。
私とローズマリーは二年生、テレーゼとレイチェルは一年生。
基本的には同学年同士で行動し、お昼の時間や学園が終わった後など四人で行動する事にしている。
私も意地を張らずに接していれば、ローズマリーやレイチェルとも最初から仲良くなれたのかもしれない。
日本人としての記憶がある今の私だからこそ思い至ったわけなんだけどね。
昨日のローズマリーやレイチェルの様子を見るに、意地悪だけど人を殺すまではしないように感じた。
婚約者候補同士の争いをしていたせいで私の目が曇っていたんだわ。
マリーベルなんかと同列に思ってしまってごめんね。多分、人を何人も死に追いやって平気でいる私の方が余程……。
「メルトリア様? どうなさいましたか?」
ローズマリーが余所行きの口調で話しかけてきていた。
「え? えぇ。ボーっとしてしまって申し訳ありません。」
「お昼ですので昼食を御一緒致しませんか?」
「はい。喜んで。」
暗い考えに陥っている間に、お昼になってしまったようだ。
私達はクラスメイトの視線を集めながら教室を出る。
「ちょっと、何ボーっとしてるのよ。」
「ごめんなさい。少し考え事をしていたわ。」
「皆メルトリアの様子がおかしいから見てたわよ。」
「そんなにおかしかったかしら。」
「かなりね。」
気をつけよう。
ボーっとしているという事はそれだけ付け入る隙があるという事なのだから。
食堂ではテレーゼとレイチェルが席を確保し、待ってくれていた。
「やっと来たわね。遅いわよ」
「メルトリアがボケーっとしてるからよ。」
「まぁまぁ、メルトリア様は大丈夫なのでしょうか?」
「ごめんなさい。大丈夫よ。」
私とローズマリーは席に座り、早速本題を小声で話し始める。
「先ず、報告があるわ。メルトリアの話はやはり正しいようね。あの方ったら、あからさまにメルトリアを排除したいようだったわ。」
ローズマリーが今朝の私と能無し王子のやり取り見て、そう確信したのだと告げる。
「性的欲求をぶつける対象がなくてイライラしているようにも見えたから、絶対あの人と二人の状況を作ってはダメよ。」
「そうね。私達は元候補だから特に危ないわ。無理矢理襲われる事も視野に入れておかないと。」
「はい。気をつけたいと思います。」
いや、流石に無理矢理はしないでしょ。
能無し王子を悪い方に疑ってくれる分には全く問題ないからツッコまないけど。
「メルトリア。絶対にこの中の誰かを連れて歩きなさい。貴女は今日襲われ、明日にでも行方不明なんて事になっていてもおかしくないわ。」
ローズマリーが特に念を押してくる。
「分かったわ。」
返事をして頷き返すと、彼女は満足げに続きを話す。
「私なりに情報を精査してみたけど。完全に黒だと思う。ここ五年で行方不明の貴族令嬢は七人。それ以前は行方不明者なんて殆どいないわ。」
「私も同意見よ。しかも、全員がマリーベルの実家から排除されたのではないかと噂が立っている人ばかりだもの。」
「はい。私もその結論に辿り着きました。加えて言えば、先々代国王はお気に入りの侍女に手を付け適当なタイミングで行方不明扱いにしていたのだとか。」
え? なにそれ知らない。
「信じられない。そんな事って許されるの?」
「私が古い書斎を調べていましたところ、記録に残っていました。どうやら私の家、ハワード家は先々代の頃にマリーベル様のご実家と同じ役割を担っていたようです。」
マジで? 私の妄想話だと思っていたけど、実は現実に起こっていた?
いや、たまたま昔の記録が今の状況と被っただけか。
「追い落とした方が良いかも……。」
レイチェルが反逆罪待ったなしの発言をする。
「同意よ。」
「私も賛成です。」
これは完全に予想外。
私が誘導するまでもなく、第一王子殿下失脚計画がスタートしてしまった。
「あぁ。ジュリア嬢が亡くなったのは残念だったな。」
能無し王子は政務が忙しいとかでここ何日か登校していなかったので、久しぶりの顔合わせだ。
一生来なくて良いのに。
「はい。弟も大層気落ちしておりました。」
「弟……か。」
「えっと、どうなさいましたか?」
そろそろね。
「ジュリア嬢はお前が消したんじゃないのか? 彼女はお前にとって邪魔者だったろう?」
はい。きました。作中屈指の能無し王子がムカつくシーン。
これじゃあ完全なモラハラ男よ。
「いえ、そんな……。」
「弟の婚約者に嫉妬など見苦しい。本当にお前は私の婚約者である自覚があるのか疑わしいものだ。」
すげぇムカつく。お前の嫉妬の方が見苦しいわボケ。
いくらなんでも決めつけにも程がある。殺したのはマリーベルだっての。
状況を作ったのは私だけど。
「……。」
「それとも私との仲を邪魔されたからか? どちらにせよ、あんな状況でジュリア嬢が亡くなったら俺がお前を疑うに決まっている。全く、少し邪魔されたくらいで怒るなどどうかしているな。」
全っ然! 少しじゃありませんでしたけどねっ!
弟とちょっと仲が良いくらいでここまで怒る貴方の方が余程どうかしているわよ!
そりゃ、多少は怒るのも仕方がないとは理解しているけど、ここまで暴言吐くのってどうなの?
「シュナイザー殿下。私はそのような事は致しません。」
「かもしれないな。」
かもしれないな、じゃないわよ!
ゲームやって知ってたけど、面と向かって言われると本当に腹が立つ。テメェが私を信じてたらジュリアが死ぬ状況にまで追い込まなくて済んだっつーの!
やっぱコイツだめだわ。
廃嫡じゃなくて、処刑すべきだわ。マリーベル共々。
「シュナイザー殿下がお疑いになるのも私の不徳の致すところでございます。」
「そうだな。」
なんで私が謝らなきゃならないの? 馬鹿じゃないの?
お前が私に謝れってば!
「あら、これはご機嫌麗しゅうございます殿下、メルトリア様。」
この声はローズマリーだわ。ナイスタイミング。
能無し王子と二人は苦痛だったから丁度良かった。
「あぁ、ローズマリー嬢か。君も早いな。」
「はい。たまたまでございますが。お二人方もお早いんですのね?」
「えぇ。ローズマリー様も、昨日はありがとうございました。」
「うん? 君たちは昨日会っていたのか?」
「はい。テレーゼ様がお茶会を開いて下さいまして。」
あ、ローズマリーが言うのかよそれって顔してるわ。
平気よ。コイツは能無しだからなーんにも不自然に思いやしないから。
「そうか。ジュリア嬢があんな事になった後だというのに、私の婚約者は大層なご身分だな?」
「「申し訳ありません。」」
「あっいや……ローズマリー嬢に言ったのではない。す、すまんが用事を思い出した。それではな。」
「「行ってらっしゃいませ。」」
とっとと行け。しっしっ。
ちょっと失言したからって逃げる男ってダサいわ。
「ちょっとメルトリア。いきなりなんて事言ってるのよ。危ないでしょう。」
「大丈夫よ。今後はあのメンバーで行動する事が増えるのだから、お茶会の事はここで言っておかないと反って怪しいわ。」
「まぁ、そうなんだけど。」
「それより見ました? あの態度。」
「えぇ。完全にメルトリアを排除したがっているように見えたわ。」
そうでしょうとも。ジュリアに色々吹き込まれて機嫌が悪いからね。
「最近はあんな調子ですよ。もしかしたら、私が体を許さないからイライラしているのかも。」
「結婚するまでは普通許さないわよ。」
「本来はそうなんだけど、今までの事があるでしょう?」
「えぇ、あの事ね?」
ローズマリーも当然私の妄想話を聞いているから、能無し王子が女と肉体関係を結んでやらかしては王族が排除している事を信じ込んでいるのだ。
「そうよ。」
「絶対に体を許してはダメよ。今の状態でさえメルトリアは危ういのだから、一度許してしまえば向こうはもう満足したと言って今以上に苛烈な排除を試みかねないんだから。」
「気をつけるわ。」
成る程。そういう考え方もあるわね。
ローズマリーも意地悪だから考え方が私と似ていて、勝手に能無し王子の不自然な様子を悪い方向で解釈してくれるから助かるわ。
「私、教室はこっちだから。」
「えぇ。ありがとう。」
「な……。とと当然でしょ? 私だって危ないんだから。」
「ふふ。照れなくても良いのに。」
「照れてないわよ!」
意地悪令嬢のツンデレも案外悪くないわね。
私とローズマリーは二年生、テレーゼとレイチェルは一年生。
基本的には同学年同士で行動し、お昼の時間や学園が終わった後など四人で行動する事にしている。
私も意地を張らずに接していれば、ローズマリーやレイチェルとも最初から仲良くなれたのかもしれない。
日本人としての記憶がある今の私だからこそ思い至ったわけなんだけどね。
昨日のローズマリーやレイチェルの様子を見るに、意地悪だけど人を殺すまではしないように感じた。
婚約者候補同士の争いをしていたせいで私の目が曇っていたんだわ。
マリーベルなんかと同列に思ってしまってごめんね。多分、人を何人も死に追いやって平気でいる私の方が余程……。
「メルトリア様? どうなさいましたか?」
ローズマリーが余所行きの口調で話しかけてきていた。
「え? えぇ。ボーっとしてしまって申し訳ありません。」
「お昼ですので昼食を御一緒致しませんか?」
「はい。喜んで。」
暗い考えに陥っている間に、お昼になってしまったようだ。
私達はクラスメイトの視線を集めながら教室を出る。
「ちょっと、何ボーっとしてるのよ。」
「ごめんなさい。少し考え事をしていたわ。」
「皆メルトリアの様子がおかしいから見てたわよ。」
「そんなにおかしかったかしら。」
「かなりね。」
気をつけよう。
ボーっとしているという事はそれだけ付け入る隙があるという事なのだから。
食堂ではテレーゼとレイチェルが席を確保し、待ってくれていた。
「やっと来たわね。遅いわよ」
「メルトリアがボケーっとしてるからよ。」
「まぁまぁ、メルトリア様は大丈夫なのでしょうか?」
「ごめんなさい。大丈夫よ。」
私とローズマリーは席に座り、早速本題を小声で話し始める。
「先ず、報告があるわ。メルトリアの話はやはり正しいようね。あの方ったら、あからさまにメルトリアを排除したいようだったわ。」
ローズマリーが今朝の私と能無し王子のやり取り見て、そう確信したのだと告げる。
「性的欲求をぶつける対象がなくてイライラしているようにも見えたから、絶対あの人と二人の状況を作ってはダメよ。」
「そうね。私達は元候補だから特に危ないわ。無理矢理襲われる事も視野に入れておかないと。」
「はい。気をつけたいと思います。」
いや、流石に無理矢理はしないでしょ。
能無し王子を悪い方に疑ってくれる分には全く問題ないからツッコまないけど。
「メルトリア。絶対にこの中の誰かを連れて歩きなさい。貴女は今日襲われ、明日にでも行方不明なんて事になっていてもおかしくないわ。」
ローズマリーが特に念を押してくる。
「分かったわ。」
返事をして頷き返すと、彼女は満足げに続きを話す。
「私なりに情報を精査してみたけど。完全に黒だと思う。ここ五年で行方不明の貴族令嬢は七人。それ以前は行方不明者なんて殆どいないわ。」
「私も同意見よ。しかも、全員がマリーベルの実家から排除されたのではないかと噂が立っている人ばかりだもの。」
「はい。私もその結論に辿り着きました。加えて言えば、先々代国王はお気に入りの侍女に手を付け適当なタイミングで行方不明扱いにしていたのだとか。」
え? なにそれ知らない。
「信じられない。そんな事って許されるの?」
「私が古い書斎を調べていましたところ、記録に残っていました。どうやら私の家、ハワード家は先々代の頃にマリーベル様のご実家と同じ役割を担っていたようです。」
マジで? 私の妄想話だと思っていたけど、実は現実に起こっていた?
いや、たまたま昔の記録が今の状況と被っただけか。
「追い落とした方が良いかも……。」
レイチェルが反逆罪待ったなしの発言をする。
「同意よ。」
「私も賛成です。」
これは完全に予想外。
私が誘導するまでもなく、第一王子殿下失脚計画がスタートしてしまった。
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