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外伝:メイド喫茶でバイトテロしたら異世界召喚されました。しかも死に戻り特典付きで。

第13話 伝言

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 王の手紙は近日中に王宮に来て欲しいという内容だった。

 今回は何故か俺の他にもアオイ、エイミー、サクラも来るようにとの事だったが、どのような用事なのかは来てからのお楽しみだそうだ。


「どんな用件だろうな。」

「私達まで呼ばれるなんて何事かしら?」

「まさか……他国からの侵略!?」


 サクラはやけに驚いたように発言する。


「ないない。それはない。」

「そうね。ちょっとあり得ない妄想だったわ。」

「サクラったら冗談が下手だね。ナガツキ家が国内外問わず、どれ程恐れられているか知ってるでしょ?」

「まぁ、不名誉ながらね。」


 俺達は近衛兵に案内され、王の執務室へと通された。


「来たか。」

「「「「はっ。」」」」

「まあ気を楽にして座れ。今は公の場ではないからな。」

「ではお言葉に甘えまして。」


 三人も俺に続いて来客用のソファーに座る。


「今回呼び出したのは他でもない。伝言と渡す物があるからだ。」

「伝言……ですか?」

「そうだ。」


 王を経由して伝言など不敬にも程がある。

 相手は誰だ?


「心当たりはないか?」

「……考えてはみたのですが、皆目見当もつかず。」

「実は我がイットリウム王家には代々伝えられている言葉と物がある。」


 王家には隠された秘宝があるという話なのだろうか?

 しかし、今その話をする理由が不明だ。


「王国歴438年8月21日以降にナガツキ家のレイベルト、エイミー、アオイ、サクラの四名を呼び出しそして……手紙とある品を渡すようにと頼まれている。」

「事情は理解しました。ですが、結局相手は誰なのです?」

「そういう事……。」

「レイベルトは多分分かってないね。」

「えぇ。」


 三人は分かったという事か?

 俺には心当たりなんてないのだが。


「この話はイットリウム王国初代王と王妃からの言葉だ。言っておくが、ナガツキ家という家名を与えられたのはお前たちが王国初。つまり、初代の王が生きていた頃にはナガツキ家は存在すらしていない。」


 王は心底不思議な生き物を見るような目で俺達を見ている。


「お前ら一体何をしたんだ? 何をすれば我がイットリウム王家にこのような言葉が伝えられる事態になるのか想像もつかない。その日を迎えるまでは一切誰にも伝えてはならないと伝言を受けているぞ。」

「初代……という事は伝説の勇者か!」

「やっぱり。」

「だと思った。」

「でしょうね。」


 ジャイン王はもしかすると事情を知っているのだろうか?

 ならば詳細に報告しなければ。


「王よ! 俺は伝説の勇者に肩を脱臼させられそうになったのです!」

「まるで意味が分からん。」


 何故だ……。


「レイベルトは端折り過ぎ。ついでに言えば結論はそれじゃないし。」

「やはり勇者殿の方が話は通じそうだな。」

「では私から報告致します。」


 くっ……俺の口から報告するのでは不足だという事か。

 勿論アオイの方が俺よりも伝えるのは上手いと思うが。


「待った。それには及ばん。」

「え?」

「レイベルトは面白い。レイベルトの口から話を聞くのが一番だ。」

「ジャイン王……。」


 やはりジャイン王は俺の事を分かって下さっている。


「縋るような目で見られてもな。別に褒めたわけではないんだが……まあ良い。」

「では俺の口から……あれは俺達のペットが空を飛んでいるのを見てしまった時でした。」

「ほう。ペットを飼っているのか。どんな鳥だ? 最近飛び始めたという事はまだ大人になって間もないのだろう?」

「いえ。鳥ではありません。」

「鳥ではない? 空を飛ぶのに鳥ではないとなれば……虫、か?」

「ワニです。」

「は?」


 王よ。口が開いてしまっていますよ。


「巨大ワニが飛んだのです。最近少し大きくなってきまして、大体12mくらいでしょうか。」

「お前……本気で言っているのか? ワニは空を飛ばんぞ。」

「はい。ですが飛んだのです。」


 少し考え込むような態勢で「あり得ないだろ。」と呟くジャイン王。


「……あり得ないが、嘘を言っている風でもない。まさか本当に?」

「俺は嘘を言いません。」

「そうだな。お前は今まで嘘みたいな話を散々俺に言ってきたが、全部嘘ではなかった。相変わらずお前の話は何が飛び出てくるか分からんな。」


 ジャイン王はすぐに俺を信じてくれる。

 恐らく、今まで築いてきた信頼関係がそうさせるのだろう。


「では続きを。丁度ペットが飛んでいる時でした。エイミーが部屋の空間に綻びがあると言ったのです。」

「まさか空飛ぶワニが話の導入部分ですらないだと!? っとすまん。続けてくれ。」

「はい。エイミーは空間の修復作業をしていたのですが、そこでサクラがマジナガムーンキャット参上と叫びながら現れた為に、エイミーは驚いて修復作業を失敗してしまったのです。」

「……マジナガムーンキャットとは何だ?」


 王にはまだ話していなかったか。


「サクラ、ここで見せてくれ。」


 サクラは真剣な顔で頷き、胸に付けているブローチを手に取った。


「プリティキューティーミラクルパワー!」


 謎の呪文を唱えたかと思えばブローチが輝き、サクラの体は虹色に包まれコスチュームチェンジが始まる。

 そしてどこからともなく出現した衣装が体を回転させる彼女へ次々と装着されていく。


「見た目以上にデカいな。」

「そうでしょう?」


 王に対して俺が自慢げに返事をすると、エイミーにギロリと睨まれた。


「闇より這い出でし混沌を倒す為、地獄の特訓から生還した冥土戦士。マジナガムーンキャット参上! 私の行いは全てが天の意思!」


 ビシっと決めポーズを取り、猫耳カチューシャとメイド服を装備したサクラ。


「な、成る程。これがマジナガムーンキャットか。で、マジナガムーンキャットは何をするのだ?」

「マジナガムーンキャットは悪人を魔法のステッキで…………あれ?」

「どうかしたのか?」

「魔法のステッキが無いわ。」


 サクラは衣装に手を入れゴソゴソとステッキを探し始める。


「あんなの飾りだろ。」

「ダメよ。あれがないと人を殴れないじゃない。」

「サクラは直接殴った方が強いじゃないか。」

「直接殴ったら破裂しちゃうでしょ?」


 当然のような顔をして何てことを言うのか。こいつには手加減を覚えさせないとダメだな。


「これ程の美少女なのに、殴って人を破裂させる……? 俺はナガツキ家をまだ甘く見積もっていたようだ。」

「申し訳ありません。教育が行き届いていないばかりに。」

「むしろお前の教育の賜物だろう。」


 何故だ……。

 手加減など本来は自然と身に付くものなのに。


「よし、マジナガムーンキャットは分かった。続きを頼む。」

「はい。空間の修復作業に失敗した結果、その場にいた俺達は伝説の勇者桜が生きていた時代に飛ばされたのです。」

「とうとうナガツキ家は時間すらも超越したのか。」


 王は遠い目で虚空を見ている。


「あ、いえ。結果的にそうなっただけで、特に時間を超越しているなどということは……。」


 待てよ? エイミーに限って言えば、やり直しが出来るので時間を超越しているとも言えるのか?


「レイベルトよ。冗談だったのだが、本当に超越したのか?」

「エイミーはそうかもしれません。」

「ナガツキ家は人類を卒業したと発表したらどうだ? 卒業式には俺も呼んでくれ。」

「ジャイン王。」

「どうした?」

「卒業式は特に予定しておりません。」

「知っている。冗談だ。」


 冗談だったのか。その割には本気の顔に見えたが。

 横ではエイミーとアオイが「仲良いね。」や「もしかして友達?」などと内緒話をしていた。

 ジャイン王と友人だと思われるのは名誉な事だが、いささか不敬ではないか?

 まぁとりあえず、続きを話そう。


「俺達は伝説の勇者サクラと直接対面して色々と事情を聞き、こちら側の協力によって勇者サクラを救う事が出来たのです。」

「暗号文書に書かれていた内容か? となれば、やり直しの能力を封じて来たのか?」

「ご名答。正にその通りです。」

「そうか。通りで……ならばこれは初代からの礼の手紙と品だったというわけだ。概ね事情は理解した。さあ受け取るといい。」

「はっ。」


 ジャイン王から手紙と箱を受け取った。


「ここで読んでみてくれ。どうもナガツキ家の誰かでなければ開けられないようになっているらしい。」


 なら、俺が読み上げるとするか。

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