上 下
117 / 128
外伝:メイド喫茶でバイトテロしたら異世界召喚されました。しかも死に戻り特典付きで。

第4話 三大悪

しおりを挟む
 家庭教師の人を助けた後、火、水、土の魔法を教えてもらい、習得した。

 家庭教師には「もう教える事はありません。分からない事があっても絶対に聞きに来ないように。」と言われたけど、多分自分で考える事が大事だとか、そういう教えなんだと思う。

 公爵様は「戦争以外で使うなよ? 絶対だぞ? 本当にダメだからな?」と私と微妙に距離を取りながらも視線だけは胸から外れていなかった。

 それってもしかしてフリ?

 私がすんなり魔力を扱えるのは、恐らくゲギャヒちゃんを友達召喚バイトテロした後に流れ込んできた知識によるものだと気が付いた。

 多分ゲギャヒちゃんは危ない系の神様とか魔物とかそんな感じの存在なのだと思う。

 知識によると、彼女にとっての『こんにちは、お友達になりましょう。』が相手を食う事らしいし。

 こんにちは死ねと同レベルだ。

 後、普段から猫耳メイド姿は目の毒だと言われ、公爵様が綺麗なドレスをプレゼントしてくれた。

 普通のドレスだと笑っていたけど、どう見ても高いよねこれ?

 ただ、せっかく貰ったんだけど全然着てない。

 何故かと言われれば、猫耳カチューシャとメイド服が異常に着心地が良くなっていて、しかも魔法を使う時は威力と展開速度が増すの。


「勇者よ。ドレスはいつ着てくれるんだ?」

「公爵様。私は桜って立派な名前があるので、そう呼んで下さい。」


 今までもずっと勇者勇者って呼んできてさ。失礼な話よね。

 って何その顔?


「何で驚いてるんですか?」

「勇者が名前だと思ってた。」


 え?


「勇者が名前なわけないじゃないですか。それは称号ですよ?」

「いや、そういう名前なのかと……失礼した。勇者……あ、サクラ。」

「やっと呼んでくれましたね。」

「そういうサクラも俺を名前で呼んでくれないじゃないか。」


 確かに。

 ついつい公爵様と呼んでいた。


「では何とお呼びすれば?」

「普通にモリちゃんって呼んでくれればそれで……」


 モリちゃん??


「公爵様は偉い人ですよね?」

「おうとも。イットリウム公国の君主だ。」

「モリちゃんはあり得なくないですか? せめてモリブデン様ですよね?」


 どう考えてもオカシイ。

 私も結構ライトな感じに接してるけど本来なら、ハハーッ! て感じに畏まらないとダメじゃない?


「大丈夫だ。我が国は君主も貴族も平民も皆家族だ。家族ならくだけて接するのが良い。公と私をしっかり分けてくれれば何も問題はない。」


 出た出た。

 家族的アピールはブラック企業の始まりよ?

 ブラック企業の実態を知らない私でさえも知ってるんだから。


「家族だからサービス残業を要求するんですね。分かります。」

「さ、さーび? なんだ?」

「契約内容で定められた勤務時間を超過しているのに、超過分の賃金が支払われない労働の事です。私の国ではそれが横行していて、人類の三大悪の一つとも言われています。」


 当然、今私が思いついただけだ。


「お、おう。俺がいつもやってる事じゃないか。悪だったのか……。ほ、他は? 他は何なのだ?」

「二つ目に、『痴漢』ですね。痴漢をされると凄く嫌な気分になります。私のような女性は踵で思いっきり踏みつけて相手の足の指を骨折させる以外対抗する術がありません。」

「対抗出来てるじゃないか。」

「ちなみに、痴漢待つ場所再確認という言葉がありまして、これは近松門左衛門、松尾芭蕉、井原西鶴という過去の文豪を覚える為に非常に便利で覚えやすい語呂合わせです。」

「どうでも良いな。」

「そうですか。では三つ目に、『ごめんごめん。酔ってて覚えてなくてさ。』です。酔ってたからって何をしても良いと思っている事が前提の言い回しでして、飲み会の空気を悪くするような事をしておいて、次の日にはケロッとこんな風に言います。」

「それは最悪だな。」

「はい。先々月の合コンで私の友達を酒に酔ってブスと言った男の人がいたんですけど『酔ってて覚えてないんだけどごめん』って謝られたので、出来るだけ実名で話を広めておきました。少なくとも私の知る限りでそいつは合コンに呼ばれていないそうです。」

「な、成る程。それが三大悪なのか?」

「はい。」

「うむ。確かに悪だな。ところで、サクラはそろそろ戦えるようにはなったのか?」

「勿論です。私の魔法は既に完成の域に達していますので、味方が被害を被らないかが心配なくらいです。」

「頼もしいな! では早速だが……。」

「任せて下さい。」


 いよいよ私の魔法を披露するチャンスね。

 異世界来たら俺TUEEEはやっておきたいもん。


「やっぱりサクラを戦わせるのは無しで。」

「へ?」

「こんなに可憐な美少女を戦わせるわけにはいかんのだ。」

「美少女って歳じゃないんですけど。」


 何歳だと思ってるんだろ?


「いくら国を救ってもらう為とは言ってもだな。まだ十代半ばの、しかも女子を戦わせるのは……」

「私、19歳ですけど。」

「は?」


 そんなに驚く事?


「お、俺と同い年……。」

「奇遇ですね。」


 逆に公爵様は老け顔ね。

 20代後半かと思ってたわ。


「では、戦争が終わったら結婚しよう。」



 1.何がでは、なんですか? 私は帰るので嫌です。
 2.よろしい。ならば結婚だ。



 また選択肢!?

 しかも、結婚が選択肢に入ってる!?

 嫌よ。

 公爵様は嫌いじゃないけど、ネットも無いとこに住むのは大変。

 これは1の選択肢を選ぶしかない。


「何がでは、なんですか? 私は帰るので嫌です。」


 え? この人、驚いた顔してる。絶対断られないと思ってたヤツだこれ。


「ダメか? ダメなのか? 一国の君主だぞ? 顔もそこまで悪くないぞ?」


 そういう問題じゃないと思う。


「独立戦争負けそうなんですよね?」

「うぐっ! だ、だが……とっておきの秘策が……」

「もしかして、マーダスさんの事ですか?」

「うん? マーダスの事を知ってたのか。」


 そっか。私だけがやり直し出来てるから、公爵様は一周目の事を知らないんだ。

 面倒だし、適当に言っとこ。


「風の噂で聞きました。でも敵も味方も関係なく殺しまくるのはダメじゃないですか?」

「ダメだな。だが、時には君主として非常な決断も……。」


 非常な決断の使うポイント間違えてない?


「もう私がサクッと倒してきますから。結婚はしませんが。」

「おぉ! 頼もしい! 気が変わったらいつでも言ってくれ。」


 多分気なんて変わらないんだよねぇ。

 確かに公爵様と居るのは楽しいし、好みじゃないってわけじゃないんだけど、ここにはスマホもネットもないしなぁ。


「では、サクッと行って来ます。」

「おお。頼むぞ。我が国を救ってくれ!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

勇者パーティを追放されそうになった俺は、泣いて縋って何とか残り『元のDQNに戻る事にした』どうせ俺が生きている間には滅びんだろう!

石のやっさん
ファンタジー
今度の主人公はマジで腐っている。基本悪党、だけど自分のルールあり! パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のリヒトは、とうとう勇者でありパーティリーダーのドルマンにクビを宣告されてしまう。幼馴染も全員ドルマンの物で、全員から下に見られているのが解った。 だが、意外にも主人公は馬鹿にされながらも残る道を選んだ。 『もう友達じゃ無いんだな』そう心に誓った彼は…勇者達を骨の髄までしゃぶり尽くす事を決意した。 此処迄するのか…そう思う『ざまぁ』を貴方に 前世のDQNに戻る事を決意した、暗黒面に落ちた外道魔法戦士…このざまぁは知らないうちに世界を壊す。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!

石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。 クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に! だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。 だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。 ※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。

【石のやっさん旧作】『心は』●●勇者…さぁ勇者褒美をとらす! 欲しい物をなんでも言うが良い! 「はい、では●●●で!」

石のやっさん
ファンタジー
主人公の理人(りひと)はこの世界に転生し、勇者に選として、戦い続けてきた。 理人は誰にも言っていなかったが、転生前は42歳の会社員の為、精神年齢が高く、周りの女性が子供に思えて仕方なかった。 キャピキャピする、聖女や賢者も最早、子供にしか見えず、紳士な彼からしたら恋愛対象じゃない。 そんな彼が魔王を倒した後の物語… 久々の短編です。

『異世界は貧乳が正義でした』~だから幼馴染の勇者に追放されても問題がない~ざまぁ? しませんよ!マジで!

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のリヒトは、とうとう勇者でありパーティリーダーのガイアにクビを宣告されてしまう。幼馴染も全員ガイアの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人去ったのだった。 実は彼は転生者で幼馴染には全く興味が無かったからだ。 そして彼は…此処からは読んでからのお楽しみです。 『美醜逆転』『男女比』で異世界系のリクエストを貰ったので書き始めてみました。 ただ、それだと面白味が無いので少し捻ってみました。 実験を兼ねた思いつきなので中編になるか長編になるか未定。 1話はいつもの使いまわしです。

たとえば勇者パーティを追放された少年が宿屋の未亡人達に恋するような物語

石のやっさん
ファンタジー
主人公のリヒトは勇者パーティを追放されるが別に気にも留めていなかった。 ハーレムパーティ状態だったので元から時期が来たら自分から出て行く予定だったし、三人の幼馴染は確かに可愛いが、リヒトにとって恋愛対象にどうしても見られなかったからだ。 だから、ただ見せつけられても困るだけだった。 何故ならリヒトの好きなタイプの女性は…大人の女性だったから。 この作品の主人公は転生者ですが、精神的に大人なだけでチートは知識も含んでありません。 勿論ヒロインもチートはありません。 他のライトノベルや漫画じゃ主人公にはなれない、背景に居るような主人公やヒロインが、楽しく暮すような話です。 1~2話は何時もの使いまわし。 リクエスト作品です。 今回は他作品もありますので亀更新になるかも知れません。 ※ つい調子にのって4作同時に書き始めてしまいました。   

勇者のハーレムパーティを追放された男が『実は別にヒロインが居るから気にしないで生活する』ような物語(仮)

石のやっさん
ファンタジー
主人公のリヒトは勇者パーティを追放されるが 別に気にも留めていなかった。 元から時期が来たら自分から出て行く予定だったし、彼には時期的にやりたい事があったからだ。 リヒトのやりたかった事、それは、元勇者のレイラが奴隷オークションに出されると聞き、それに参加する事だった。 この作品の主人公は転生者ですが、精神的に大人なだけでチートは知識も含んでありません。 勿論ヒロインもチートはありません。 そんな二人がどうやって生きていくか…それがテーマです。 他のライトノベルや漫画じゃ主人公になれない筈の二人が主人公、そんな物語です。 最近、感想欄から『人間臭さ』について書いて下さった方がいました。 確かに自分の原点はそこの様な気がしますので書き始めました。 タイトルが実はしっくりこないので、途中で代えるかも知れません。

処理中です...