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最終章 幸せな日々

番外編 第32話 ペットの彼女

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「メメちゃん。今日も仕事を手伝ってもらいたいんだが………ってお客さんか?」


 メメちゃんの部屋には部屋の主に加えてアオイとサクラ、そして見知らぬ女の子がいた。


「あ、初めまして。ナガツキ家の当主様ですか? 今日からメメちゃん様の彼女になったドゥエナリルと申します。これからお世話になりま………ひぃぃぃぃっ!!」


 何で俺を見て怯えるんだ?


「こ、この人も神ランキング上位レベル……。サクラさんと魔力値が同等ですぅ。」


 神ランキング? 前にメメちゃんやシューメルが言ってた話か。だとすればこの子もシューメルのように異界からやってきたという事だろう。

 そして俺を人間じゃないとか言うのだ。

 もういい加減に慣れてきたな。


「ドゥエナリルったら何言ってるの。」

「何、とは?」


 良いぞサクラ。言ってやれ。

 お父さんはちゃんとした人間だとな。


「お父さんはシューメルにも勝ったのよ? 私と同等なワケないでしょ?」

「バ、バケモノですぅ……。」


 失礼な。

 本当であればお前らの方こそバケモノだぞ。


「俺は人間だ。」

「ひぃぃぃぃっ! 話しかけてきた!? 最上位の神に勝つなんてバケモノ以外の何者でもないですぅ。私を騙して食べる気ですぅ……。」


 シクシク泣くなよ。

 こっちが悪いみたいだろうが。


「食わんって。いちいち怯えるな。」

「ほ、本当ですか?」

「あぁ。」


 見た感じは準勇者級未満と言ったところだな。ならば強い相手に怯えるのも仕方ないという事か。


「良く見るとこのバケモノはイケメンです。表面上は信じてみたいと思います。」

「あ、あぁ。そうか。まぁ……落ち着くなら何でも良いが。」


 表面上って何だよ。


「レイベルトはあげないからね?」


 アオイ。妬いてくれるのか……。


「いりません。私にはメメちゃん様がいますから。それにイケメンは見るだけで十分です。」

「見るだけで十分なの? ドゥエナリルって変わってるのね。」

「良いですか? サクラさん。イケメンなんて付き合ったら一巻の終わりです。「これ、俺の彼女だから。」とか言ってお友達に共有されたり、エッチなお店で働かされて貢がされたり、ボロボロになるまで使い潰されて最後には捨てられるに決まってます。しかも表面上は優しいから始末に負えません。」


 とんでもない偏見だ。


「レイベルトはそんな事しないよ?」

「表面上はそうかもしれません。ですがアオイさん。貴女はこのイケメンバケモノの本命だからそんな事されないんですよ。それ以外の女は食い物にされるですぅ……。」


 風評被害も甚だしい。


「俺は非道な事などしない。」

「はい。貴方と私は付き合っていませんので何もされないと思います。付き合ったらボロボロにされて捨てられるでしょうけど。」

「付き合ってもせんわ!」

「ですから、貴方とは付き合いません。」


 ごめんなさいと頭を下げるメメちゃんの彼女。


「何で俺がフラれた感じになっているんだ?」


 この女とは全く付き合う気などないが、妙に悔しい。

 この敗北感はなんなんだ。


『ドゥエナリル。レイベルト殿はそのような事はしない人だ。毎日我を撫でながら褒めてくれるのだ。』

「はいメメちゃん様。レイベルト様は大丈夫な人です。」


 突如としてクルリと手のひらを返してみせるドゥエナリル。


「初めからそう言ってただろ。」


 メメちゃんが少し言っただけで驚く程素直に聞き入れたな。

 こいつ、大丈夫か?


「ねえドゥエナリル。今までイケメンに騙されて酷い目をみた事でもあった?」


 心配そうにアオイが質問した。

 考えてもみればああまで具体的内容が出てきてしまうと、この娘は本当に酷い目にあったのかもしれないと思ってしまう。


「そうだな。無理に答える必要はないが、好きなだけ我が家でゆっくりしていっても良いんだぞ? アオイの世界の言葉で……ウマシカ? とか言うんだったか。」

「絶妙に惜しいね。それを言うならトラウマ。」


 少し違ったようだ。


「私自身が何かされたわけではないですけど、イケメンは恐ろしいから見るだけにしておきなさいと母に聞きました。母はそのまた母から教わったそうです。」


 ん?


「何もされてないのか?」

「はい。」


 つまり単なる又聞きか。

 心配して損をした気分だ。


「まあいい。で、メメちゃんの彼女という事で良いんだよな?」

「はい。よろしくお願いします。」


 礼儀正しく頭を下げて挨拶をするドゥエナリルという異界の娘。

 アオイとサクラが連れて来たこの娘だが、どうやらメメちゃんの彼女らしい。

 見た目が完全に人間だというのに、メメちゃんの彼女だと言う。この場合はどう扱うべきなんだ?

 ペット扱いか? それとも人間扱いか?


「ドゥエナリルは……その、餌はあげた方が良いのか?」


 何を聞いているんだ俺は。


「餌は野菜を栽培して食べるので大丈夫です。」

「そ、そうか。しかし野菜だと育つのに時間がかかるだろう?」

「平気です。私は植物を成長させる能力を持っていますので問題ありません。畑を提供していただければ食べる事には困りません。」


 便利な能力だ。


「私はメメちゃん様の彼女です。ペットとして扱ってもらえれば特に言う事はありません。」


 ペット扱いで良いのか………。

 いや待て。この見た目でペット扱いというのは鬼畜の所業だと他から思われはしないだろうか。


「見た目が人間だから問題になりそうだな。」

「問題ありません。」


 大問題だよ。

 こいつのような見た目の少女をペット扱いしたとなれば、ナガツキ家に変な噂が立つだろうが。


「あ、やっぱり時々お肉を下さい。」

「何故だ?」

「さぐぬtヴぃらヴんみrでお肉と言えば、会話可能な相手を食べる事になるので嫌でした。でも、こちらの世界であれば会話可能な相手のお肉は食べないんですよね?」

「ああ。」


 会話可能な相手の肉など食いたくない。

 毎回思うが向こうは本当に嫌な世界だ。


「でしたらお願いします。お肉というものを食べてみたかったんです。」

「分かった。時々お肉をあげよう。」

「ちゃんと時々撫でて下さいね?」


 意地でもペット扱いが良いのか?


「善処する。」


 こうなったら普段はペット扱いで、お客さんが来たら人間扱いするとしよう。

 それなら問題ないだろう。


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