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最終章 幸せな日々
番外編 第24話 訓練風景
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暫くすると、楽し気に話しながら私達がいた部屋に戻ってきたカイル王子とアーリィ。
二人きりのお見合いで仲良くなれたみたいね。
その間碧ちゃんを私が引きつけていた甲斐もあり、レイ君の惨状には気付かれていない。
「カイル王子。宜しければレイベルトの訓練を見学してみませんか?」
「英雄の訓練……どんなものか興味がありますね。」
最初から興味があるなんてもしかしたら才能があるかもしれないわ。
碧ちゃんは興味をもってもらおうとして、更にカバーストーリーまで話し始めた。
「英雄レイベルトは愛する人を守る為、常軌を逸した訓練に身を投じていたんです。彼は死線を何度もくぐり抜け、絶対に死ぬだろうと思われた戦場から生きて帰ってきました。」
「なんと。愛する人の為だったんですか……。」
「はい。戦争に負ければ自分は勿論、愛する人だってどうなってしまうか分かりません。」
「そう……ですね。侵略戦争に負けた後どうなるか。それは相手次第ですからね。」
深刻そうな顔で同意してみせるカイル王子。
イットリウム王国が侵略されれば次はサルージ王国が国境を接する事になったはずなんだし、他人事ではないわよね。
「はい。だからこその訓練でした。彼は戦後にこう言っていました。」
碧ちゃんは一度言葉を切り、続けて話す。
「いやぁ、あの訓練が無ければ今頃死んでたな。え? 辛くはないのかって? それは勿論辛かった。だがな? 愛する人だって守れたし、やはり訓練をしていて良かったと実感した、と。」
碧ちゃんってこういう細かい芸というかなんというか……得意なのよね。
レイベルトの真似が結構似ている。
まぁ、半分以上…………いえ、ほぼ嘘なんだけど。
他国の王族相手に堂々と嘘をつくあたり、碧ちゃんも相当肝が据わっている。
「英雄レイベルト殿が言うからには効果の高い訓練なのでしょうね。」
「はい。」
訓練の効果が高いのは間違いないと私も思うわ。
異界の神も逃げ出そうとするくらいの訓練内容だけど。
「魔法の訓練だったら私も見たいです。」
「あら。アーリィが訓練なんてどういう風の吹き回し?」
「魔法ならですよ? 魔法の訓練だけなら私も見たいです。」
アーリィは訓練が好きじゃないと言って今まで見学すらした事がない。
だから魔法の訓練もお勉強の延長線上にあると思っているのね。
先日レイベルトに少しだけ魔法を教わったと聞いたけど、結構優しく教えてあげたのかしら?
訓練を見て泣かないといいけど…………
「アオイ殿。刑罰ではなくて、訓練を見せてくれるのではなかったのですか?」
完全に誤解されてるわね。
「訓練です。」
「え?」
「あれが訓練です。」
「……。」
カイル王子は目を見開いて驚いている。
そうよね。
私も初めて見た時は訓練だと思わなかったもの。
「レイア殿の奥方は…………何か許されざる罪を犯してしまったのでしょうか?」
「えぇ。王子に挨拶もなしに立ち去った罪ですね。」
刑罰だとしても確実にあれはやり過ぎだと思う。
一般家屋よりも遥かに巨大な大岩を抱え、のろのろと歩く人を見て刑罰だと勘違いしてしまうのも仕方ないわ。
「あの……気にしていませんので、やめてあげてはどうでしょうか? というか、良くあんなの持てますね。」
「カイル王子。あれは訓練なので安心ですよ。それにあの子は頑丈だから心配いりません。」
「は…………はい?」
「頑丈に出来ていますから。鉄なんかより余程。」
あの訓練のどこに安心する要素があるのかしら。
シューメルちゃんは疲労で立ち止まったりすると、レイベルトの怒声が聞こえては再びのろのろと歩き出すという事を繰り返していた。
私だって魔力を全開にすれば抱えて走る事は出来るけど、シューメルちゃんと同じ量の魔力しか使えないのなら多分同じようになる。
まるで小さな岩山が動いているようにも見えるこの状況、カイル王子に上手く説明する自信が私にはない。
碧ちゃんの説明もかなり無理矢理で、全く説明になっていないもの。
「うぅ……やっぱり訓練なんて禄なものじゃないです。」
アーリィには刺激が強過ぎたみたいね。
「だ、大丈夫よアーリィ? ちゃんとこの後魔法の訓練もあるからね?」
魔法の訓練はこれに比べたらかなりまとも。
「本当ですか?」
「本当よ。」
あくまで、これに比べたらの話だけど。
「あっ……。」
ズウウウウンンと大岩が地面に接地してしまった。
レイベルトが「次は魔法の訓練だ。」と言っているのが聞こえる。
シューメルちゃんが潰されたところで訓練は終了したみたい。
「あの……潰れてしまったのでは?」
「大丈夫です。あの子は鉄より頑丈なので、大岩の下敷きになったくらいでは死にません。」
碧ちゃん。あれを見て大丈夫だと思う人はいないよ。
「やはり……魔神か。」
カイル王子がそう思うのも無理はないでしょうね。
まぁ、魔神というのもあながち間違いではないかしら。
なにせ、シューメルちゃんは正真正銘さぐぬtヴぃらヴんみrの神なのだから。
「シューメルさんが…………。」
アーリィが泣きそうな顔で大岩を見つめていると、レイベルトが大岩をスパスパ斬り始めた。
まるで柔らかい物でも斬るかのように。
そうして大岩の下敷きになったシューメルちゃんを掘り起こした後、引き摺ってこちらへ来る彼は…………どちらが異界から現れた怪物なのか分からない。
「カイル王子。訓練はどうでしたか?」
爽やかな笑顔で王子に話しかけるレイベルトはいっそ清々しい。
「す、凄いですね……。レイベルト殿はいつもあのような訓練を?」
「流石にあれ程の大岩は俺じゃ持てません。精々あの十分の一程度ですね。」
レイベルトの魔力量であの大岩の十分の一も持てるなら十分おかしい。
魔力なしの純粋な身体能力がかけ離れているという事。
「レイベルト殿はその……自分では出来ない訓練を息子の嫁に課したのですか?」
「……申し訳ありません。俺はまだ訓練が足りないのであれ程の大岩を持つ事は出来ないのです。そのうち出来るようになりますので、どうかご容赦を。」
違うよレイベルト。
王子はそういう話がしたいんじゃないと思うの。
「彼女は特別魔力が多いので、あれくらいでなければ訓練にならないのです。」
碧ちゃん。それ、全然フォローになってないよ。
二人きりのお見合いで仲良くなれたみたいね。
その間碧ちゃんを私が引きつけていた甲斐もあり、レイ君の惨状には気付かれていない。
「カイル王子。宜しければレイベルトの訓練を見学してみませんか?」
「英雄の訓練……どんなものか興味がありますね。」
最初から興味があるなんてもしかしたら才能があるかもしれないわ。
碧ちゃんは興味をもってもらおうとして、更にカバーストーリーまで話し始めた。
「英雄レイベルトは愛する人を守る為、常軌を逸した訓練に身を投じていたんです。彼は死線を何度もくぐり抜け、絶対に死ぬだろうと思われた戦場から生きて帰ってきました。」
「なんと。愛する人の為だったんですか……。」
「はい。戦争に負ければ自分は勿論、愛する人だってどうなってしまうか分かりません。」
「そう……ですね。侵略戦争に負けた後どうなるか。それは相手次第ですからね。」
深刻そうな顔で同意してみせるカイル王子。
イットリウム王国が侵略されれば次はサルージ王国が国境を接する事になったはずなんだし、他人事ではないわよね。
「はい。だからこその訓練でした。彼は戦後にこう言っていました。」
碧ちゃんは一度言葉を切り、続けて話す。
「いやぁ、あの訓練が無ければ今頃死んでたな。え? 辛くはないのかって? それは勿論辛かった。だがな? 愛する人だって守れたし、やはり訓練をしていて良かったと実感した、と。」
碧ちゃんってこういう細かい芸というかなんというか……得意なのよね。
レイベルトの真似が結構似ている。
まぁ、半分以上…………いえ、ほぼ嘘なんだけど。
他国の王族相手に堂々と嘘をつくあたり、碧ちゃんも相当肝が据わっている。
「英雄レイベルト殿が言うからには効果の高い訓練なのでしょうね。」
「はい。」
訓練の効果が高いのは間違いないと私も思うわ。
異界の神も逃げ出そうとするくらいの訓練内容だけど。
「魔法の訓練だったら私も見たいです。」
「あら。アーリィが訓練なんてどういう風の吹き回し?」
「魔法ならですよ? 魔法の訓練だけなら私も見たいです。」
アーリィは訓練が好きじゃないと言って今まで見学すらした事がない。
だから魔法の訓練もお勉強の延長線上にあると思っているのね。
先日レイベルトに少しだけ魔法を教わったと聞いたけど、結構優しく教えてあげたのかしら?
訓練を見て泣かないといいけど…………
「アオイ殿。刑罰ではなくて、訓練を見せてくれるのではなかったのですか?」
完全に誤解されてるわね。
「訓練です。」
「え?」
「あれが訓練です。」
「……。」
カイル王子は目を見開いて驚いている。
そうよね。
私も初めて見た時は訓練だと思わなかったもの。
「レイア殿の奥方は…………何か許されざる罪を犯してしまったのでしょうか?」
「えぇ。王子に挨拶もなしに立ち去った罪ですね。」
刑罰だとしても確実にあれはやり過ぎだと思う。
一般家屋よりも遥かに巨大な大岩を抱え、のろのろと歩く人を見て刑罰だと勘違いしてしまうのも仕方ないわ。
「あの……気にしていませんので、やめてあげてはどうでしょうか? というか、良くあんなの持てますね。」
「カイル王子。あれは訓練なので安心ですよ。それにあの子は頑丈だから心配いりません。」
「は…………はい?」
「頑丈に出来ていますから。鉄なんかより余程。」
あの訓練のどこに安心する要素があるのかしら。
シューメルちゃんは疲労で立ち止まったりすると、レイベルトの怒声が聞こえては再びのろのろと歩き出すという事を繰り返していた。
私だって魔力を全開にすれば抱えて走る事は出来るけど、シューメルちゃんと同じ量の魔力しか使えないのなら多分同じようになる。
まるで小さな岩山が動いているようにも見えるこの状況、カイル王子に上手く説明する自信が私にはない。
碧ちゃんの説明もかなり無理矢理で、全く説明になっていないもの。
「うぅ……やっぱり訓練なんて禄なものじゃないです。」
アーリィには刺激が強過ぎたみたいね。
「だ、大丈夫よアーリィ? ちゃんとこの後魔法の訓練もあるからね?」
魔法の訓練はこれに比べたらかなりまとも。
「本当ですか?」
「本当よ。」
あくまで、これに比べたらの話だけど。
「あっ……。」
ズウウウウンンと大岩が地面に接地してしまった。
レイベルトが「次は魔法の訓練だ。」と言っているのが聞こえる。
シューメルちゃんが潰されたところで訓練は終了したみたい。
「あの……潰れてしまったのでは?」
「大丈夫です。あの子は鉄より頑丈なので、大岩の下敷きになったくらいでは死にません。」
碧ちゃん。あれを見て大丈夫だと思う人はいないよ。
「やはり……魔神か。」
カイル王子がそう思うのも無理はないでしょうね。
まぁ、魔神というのもあながち間違いではないかしら。
なにせ、シューメルちゃんは正真正銘さぐぬtヴぃらヴんみrの神なのだから。
「シューメルさんが…………。」
アーリィが泣きそうな顔で大岩を見つめていると、レイベルトが大岩をスパスパ斬り始めた。
まるで柔らかい物でも斬るかのように。
そうして大岩の下敷きになったシューメルちゃんを掘り起こした後、引き摺ってこちらへ来る彼は…………どちらが異界から現れた怪物なのか分からない。
「カイル王子。訓練はどうでしたか?」
爽やかな笑顔で王子に話しかけるレイベルトはいっそ清々しい。
「す、凄いですね……。レイベルト殿はいつもあのような訓練を?」
「流石にあれ程の大岩は俺じゃ持てません。精々あの十分の一程度ですね。」
レイベルトの魔力量であの大岩の十分の一も持てるなら十分おかしい。
魔力なしの純粋な身体能力がかけ離れているという事。
「レイベルト殿はその……自分では出来ない訓練を息子の嫁に課したのですか?」
「……申し訳ありません。俺はまだ訓練が足りないのであれ程の大岩を持つ事は出来ないのです。そのうち出来るようになりますので、どうかご容赦を。」
違うよレイベルト。
王子はそういう話がしたいんじゃないと思うの。
「彼女は特別魔力が多いので、あれくらいでなければ訓練にならないのです。」
碧ちゃん。それ、全然フォローになってないよ。
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