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最終章 幸せな日々
番外編 第18話 信じる事
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「メメちゃん。親が子供の恋愛や結婚に口出しするのは良くないね。」
『その通りだが、突然どうしたのだ?』
メメちゃんは疑問の声をあげている。
「やっぱりさ、自分の息子が選んだ子なんだから信じてみようと思うんだ。」
『そ、そうか。碧殿が良いのなら我からは特に言う事もないが。』
恋愛マスターのメメちゃんからレイベルトの第三夫人というとんでも発言が飛び出し、私は心底嫌だと思ってしまった。
私がレイアとシューメルの結婚を反対し続けると、遠くない未来にメメちゃんの予想は当たるような気がする。
シューメルがレイベルトの第三夫人になるのなら、既にレイベルトと結婚している私やエイミーも連日のようにまとわりつかれる事が確定してしまう。
客観的かつ総合的に判断した結果、レイアとシューメルに一緒になってもらった方が最終的なダメージが少ない。
私が自分の感情を優先するとレイアは幸せな結婚が出来ず、レイベルトの第三夫人にシューメルがなってしまい全員が不幸になる。
自分の感情を横に置いて結婚の許可を出せば、レイアは幸せな結婚が出来て私達も現状を維持できる。
どちらがよりダメージが少ないのかを考えれば自ずと答えは出た。
もう私の気持ちがとか言ってる場合じゃない。
良いじゃない人間じゃなくても。
シューメルの言う通りナガツキ大公家は種族が人間ってだけで、明らかに皆人類から逸脱してるじゃん。
うん。
本物の人外がレイアの嫁になったからって気にする必要なんてない。
「良く考えてみれば、レイアに任せるのが一番だよね。相性も全然悪くないみたいだし。」
幸いレイアはシューメルの事を愛し過ぎて何でも出来ると言っていた。
※そこまでは言ってません
「ありがとうメメちゃん。相談したお蔭で解決出来たよ。」
『うむ。問題が解決したのであれば良かったと言っておこう。』
「何かお礼をしたいんだけど……。」
「礼は必要ない。毎日贅沢な暮らしをさせてもらっているからな。」
魚をもらって撫でられるだけの日々をどうすれば贅沢な暮らしと思えるんだろう?
「とにかくありがとう。メメちゃんは頼りになるよ。」
『うむ。今後も頼られるペットでいようと思う。』
それ、もはやペットじゃないよね?
『後、ついでにもう一つアドバイスしておこうか。』
「なになに?」
『碧殿は少し違う意味で子離れ出来ていないような気がする。もう少しレイア殿を信じてみるのが良いだろう。レイア殿は少し……いや大分変わり者だが、それでも心根は真っ直ぐ育っている。』
「う……そうだね。私、レイアの事をまだまだ子供だと思ってた。」
『子供の成長は早い。碧殿とて昔は親に色々と言われ鬱陶しいと思っていたのではないか?』
メメちゃんの言葉にハッとする。
そうだ。
私自身、昔は親の干渉を凄く嫌だと思ってた。
当時の私は反抗する事なんて出来なかったけど、レイアにしてみれば自分よりも圧倒的に強い母親があれこれ言うから余計に反抗出来ないんだ。
「……おっしゃる通りです。」
『レイア殿は良い子だ。勿論サクラ殿もアーリィ殿も良い子だ。我も余計な事を言ってしまったが、ナガツキ家の子供達は良く育っている。親として自信を持て。その自信が子供達への信頼になり、親から信頼された子供達の自信にも繋がる。』
凄い。
「年上の人みたい……。」
『年上だ。』
そ、そうだった。
メメちゃんはペットとして振る舞うから忘れがちだけど、三万年を生きた大先輩だった。
「今後も相談させてね。」
『任せておけ。』
私はメメちゃんにお礼を言い、待たせている二人の所へと向かった。
「相談は終わったの?」
『ん? サクラ殿か。エイミー殿だけではなく、まさかサクラ殿まで姿を消す魔法を使えたとはな。』
「まあね。遊びで魔法の研究してたわけじゃないのよ?」
前回の記憶を保持している私は魔法という分野においてなら、お母さんに次いで世界で二番目だと自負している。
お母さんの力を制御する為の魔法を研究し、余った時間でたくさんの魔法を開発してきた。
制限無しでの戦闘なら碧ママ以上だと思っている。
勿論剣や通常の魔法だけでは全く勝ち目なんてないけどね。
『サクラ殿はこれで良いのか?』
「レイアとシューメルが結婚する事?」
『そうだ。相手は人間じゃないぞ?』
「うん。少しは心配だけど、碧ママって変に過保護なところがあるでしょ? レイアから結婚の話を聞いた時、間違いなく拗れるなって思ったの。だからメメちゃんに相談してくれて助かったと思ってるくらいよ。」
『つまり、サクラ殿はレイア殿と我が妹の結婚には反対ではなかったと?』
「うん。多分二人はきっと上手くいくよ。親が三人って賑やかで凄く楽しいし素敵なんだけど、こういう点で困った事になるんだなって実感した面も正直あったわ。」
『人間が三人いればそれぞれ違う事を考えているものだからな。今回は碧殿が反対したが、アーリィ殿が相手を連れて来た時はレイベルト殿やエイミー殿が反対する可能性があるわけだ。』
「そうだね。勿論あからさまにおかしな相手を連れてきたら私だって反対するけど、いきなり頭ごなしに反対されるのは辛いよ。幸い私は碧ママになら勝てるからレイアより説得もし易いけどね。」
私が開発した魔力吸収結界を最大出力で展開してやれば、碧ママも私には勝てなくなる。
お父さんは魔法なしでも私より強いし、お母さんは魔力が膨大過ぎて結界の意味がないのでこの対策は二人には効果が薄い。
『サクラ殿が強いのは知っていたが、碧殿に勝てるというのは驚きだ。』
「とっておきの切り札があるの。」
『切り札? 興味がある。』
「知られていないからこその切り札よ。うちは親が三人とも強過ぎるでしょ? そうそうない事だけど揉め事があるとどうしても親の方が実力的には上だから、その時の対策は持っておかないとね。だからメメちゃんにも内緒。」
『それならば仕方あるまい。』
メメちゃんは聞き出す事を諦めてくれたようね。
実は碧ママだけじゃなくて、お父さんとお母さん用の対策も持っている。
お父さんは重力魔法でその場に立っている事が出来ない状態にしてしまえば良い。重力魔法は私を起点に発動するから、核を斬る事も出来ないという寸法。
技術や根性ではどうにも出来ない類いの魔法だ。
お母さんは魂縛魔法で魂ごと縛って動けなくしてしまえば良い。魂縛魔法とは魂を魔力で覆い、肉体の制御と魔力の発生を完全に邪魔する魔法。
これを使われると一時的に行動不能になる。そして通常の魔法に混ぜて使用すればお母さんは絶対にくらう。
お母さんは余裕ぶって一発や二発はこちらの魔法を受ける癖があるからそこを利用すれば勝てるというわけね。
『サクラ殿は余裕がありそうに見える。もしやレイベルト殿やエイミー殿にも勝てる算段があるのではないか?』
鋭いわね。
メメちゃんに人並み程度欲があれば、かなりの危険人物だったのかもしれない。
絶対味方につけておかないといけない相手だから、今度からは私が重点的にお世話するようにしよう。
「無理無理。あの二人は次元違いでおかしいのよ? お父さんなんて特に酷いよね。数値上では絶対に勝てない相手に勝ってみせるんだから。シューメルが頑なに人間だと認めないのも分かる気がするわ。」
『うむ。我も流石に驚いた。我は能力でエイミー殿とその周囲の人間関係を一瞬見通したからこそ、レイベルト殿が人間だと理解している。そうでなければレイベルト殿が人間だとは信じられなかっただろうな。』
上手く話しを逸らせたわね。
もしかしたら、強さというものに興味が薄いだけかもしれないけど。
「ちなみにシューメルの能力はどんなの? メメちゃんみたいに何か面白い能力があるんでしょ?」
『あるぞ。とっておきの能力がな。我もお世話になった事がある。』
やっぱりあるんだ。
どこかで揉めた時の事を考えて一応対策を持っておかないと。
「どんな能力なの?」
『魔力を栄養に変換する能力だ。魔力さえ続けば食べずとも生きていける。』
戦闘向けじゃないのね。
メメちゃんも能力は戦闘向きじゃなかったし、別に変と言う事もない。
でも…………。
「使いようによっては強力ね。戦争中でも無補給で活動できるのは凄いわ。」
『うむ。最悪千年以上も無補給で活動出来るらしいので、ただでさえ強い妹は基本的に負ける事はない。』
「そうね。シューメルに勝ててしまううちの親二人がおかしいんだわ。」
シューメルは魂縛魔法で対処出来そう。
良かった。
『サクラ殿。』
「どうかした?」
『力で強引に、というのは必ず軋轢が生まれる。なるべく話し合いで済ませる事を推奨する。』
……もしかして対策を持っている事に気付いてる?
『三万年程先輩からの言葉だ。』
「何のことか分からないけど、覚えておくわ。」
『うむ。』
ナガツキ家には力が全てという風潮がある。
でも、そればかりじゃ良くないのは私だって分かる。肝に銘じておこう。
『その通りだが、突然どうしたのだ?』
メメちゃんは疑問の声をあげている。
「やっぱりさ、自分の息子が選んだ子なんだから信じてみようと思うんだ。」
『そ、そうか。碧殿が良いのなら我からは特に言う事もないが。』
恋愛マスターのメメちゃんからレイベルトの第三夫人というとんでも発言が飛び出し、私は心底嫌だと思ってしまった。
私がレイアとシューメルの結婚を反対し続けると、遠くない未来にメメちゃんの予想は当たるような気がする。
シューメルがレイベルトの第三夫人になるのなら、既にレイベルトと結婚している私やエイミーも連日のようにまとわりつかれる事が確定してしまう。
客観的かつ総合的に判断した結果、レイアとシューメルに一緒になってもらった方が最終的なダメージが少ない。
私が自分の感情を優先するとレイアは幸せな結婚が出来ず、レイベルトの第三夫人にシューメルがなってしまい全員が不幸になる。
自分の感情を横に置いて結婚の許可を出せば、レイアは幸せな結婚が出来て私達も現状を維持できる。
どちらがよりダメージが少ないのかを考えれば自ずと答えは出た。
もう私の気持ちがとか言ってる場合じゃない。
良いじゃない人間じゃなくても。
シューメルの言う通りナガツキ大公家は種族が人間ってだけで、明らかに皆人類から逸脱してるじゃん。
うん。
本物の人外がレイアの嫁になったからって気にする必要なんてない。
「良く考えてみれば、レイアに任せるのが一番だよね。相性も全然悪くないみたいだし。」
幸いレイアはシューメルの事を愛し過ぎて何でも出来ると言っていた。
※そこまでは言ってません
「ありがとうメメちゃん。相談したお蔭で解決出来たよ。」
『うむ。問題が解決したのであれば良かったと言っておこう。』
「何かお礼をしたいんだけど……。」
「礼は必要ない。毎日贅沢な暮らしをさせてもらっているからな。」
魚をもらって撫でられるだけの日々をどうすれば贅沢な暮らしと思えるんだろう?
「とにかくありがとう。メメちゃんは頼りになるよ。」
『うむ。今後も頼られるペットでいようと思う。』
それ、もはやペットじゃないよね?
『後、ついでにもう一つアドバイスしておこうか。』
「なになに?」
『碧殿は少し違う意味で子離れ出来ていないような気がする。もう少しレイア殿を信じてみるのが良いだろう。レイア殿は少し……いや大分変わり者だが、それでも心根は真っ直ぐ育っている。』
「う……そうだね。私、レイアの事をまだまだ子供だと思ってた。」
『子供の成長は早い。碧殿とて昔は親に色々と言われ鬱陶しいと思っていたのではないか?』
メメちゃんの言葉にハッとする。
そうだ。
私自身、昔は親の干渉を凄く嫌だと思ってた。
当時の私は反抗する事なんて出来なかったけど、レイアにしてみれば自分よりも圧倒的に強い母親があれこれ言うから余計に反抗出来ないんだ。
「……おっしゃる通りです。」
『レイア殿は良い子だ。勿論サクラ殿もアーリィ殿も良い子だ。我も余計な事を言ってしまったが、ナガツキ家の子供達は良く育っている。親として自信を持て。その自信が子供達への信頼になり、親から信頼された子供達の自信にも繋がる。』
凄い。
「年上の人みたい……。」
『年上だ。』
そ、そうだった。
メメちゃんはペットとして振る舞うから忘れがちだけど、三万年を生きた大先輩だった。
「今後も相談させてね。」
『任せておけ。』
私はメメちゃんにお礼を言い、待たせている二人の所へと向かった。
「相談は終わったの?」
『ん? サクラ殿か。エイミー殿だけではなく、まさかサクラ殿まで姿を消す魔法を使えたとはな。』
「まあね。遊びで魔法の研究してたわけじゃないのよ?」
前回の記憶を保持している私は魔法という分野においてなら、お母さんに次いで世界で二番目だと自負している。
お母さんの力を制御する為の魔法を研究し、余った時間でたくさんの魔法を開発してきた。
制限無しでの戦闘なら碧ママ以上だと思っている。
勿論剣や通常の魔法だけでは全く勝ち目なんてないけどね。
『サクラ殿はこれで良いのか?』
「レイアとシューメルが結婚する事?」
『そうだ。相手は人間じゃないぞ?』
「うん。少しは心配だけど、碧ママって変に過保護なところがあるでしょ? レイアから結婚の話を聞いた時、間違いなく拗れるなって思ったの。だからメメちゃんに相談してくれて助かったと思ってるくらいよ。」
『つまり、サクラ殿はレイア殿と我が妹の結婚には反対ではなかったと?』
「うん。多分二人はきっと上手くいくよ。親が三人って賑やかで凄く楽しいし素敵なんだけど、こういう点で困った事になるんだなって実感した面も正直あったわ。」
『人間が三人いればそれぞれ違う事を考えているものだからな。今回は碧殿が反対したが、アーリィ殿が相手を連れて来た時はレイベルト殿やエイミー殿が反対する可能性があるわけだ。』
「そうだね。勿論あからさまにおかしな相手を連れてきたら私だって反対するけど、いきなり頭ごなしに反対されるのは辛いよ。幸い私は碧ママになら勝てるからレイアより説得もし易いけどね。」
私が開発した魔力吸収結界を最大出力で展開してやれば、碧ママも私には勝てなくなる。
お父さんは魔法なしでも私より強いし、お母さんは魔力が膨大過ぎて結界の意味がないのでこの対策は二人には効果が薄い。
『サクラ殿が強いのは知っていたが、碧殿に勝てるというのは驚きだ。』
「とっておきの切り札があるの。」
『切り札? 興味がある。』
「知られていないからこその切り札よ。うちは親が三人とも強過ぎるでしょ? そうそうない事だけど揉め事があるとどうしても親の方が実力的には上だから、その時の対策は持っておかないとね。だからメメちゃんにも内緒。」
『それならば仕方あるまい。』
メメちゃんは聞き出す事を諦めてくれたようね。
実は碧ママだけじゃなくて、お父さんとお母さん用の対策も持っている。
お父さんは重力魔法でその場に立っている事が出来ない状態にしてしまえば良い。重力魔法は私を起点に発動するから、核を斬る事も出来ないという寸法。
技術や根性ではどうにも出来ない類いの魔法だ。
お母さんは魂縛魔法で魂ごと縛って動けなくしてしまえば良い。魂縛魔法とは魂を魔力で覆い、肉体の制御と魔力の発生を完全に邪魔する魔法。
これを使われると一時的に行動不能になる。そして通常の魔法に混ぜて使用すればお母さんは絶対にくらう。
お母さんは余裕ぶって一発や二発はこちらの魔法を受ける癖があるからそこを利用すれば勝てるというわけね。
『サクラ殿は余裕がありそうに見える。もしやレイベルト殿やエイミー殿にも勝てる算段があるのではないか?』
鋭いわね。
メメちゃんに人並み程度欲があれば、かなりの危険人物だったのかもしれない。
絶対味方につけておかないといけない相手だから、今度からは私が重点的にお世話するようにしよう。
「無理無理。あの二人は次元違いでおかしいのよ? お父さんなんて特に酷いよね。数値上では絶対に勝てない相手に勝ってみせるんだから。シューメルが頑なに人間だと認めないのも分かる気がするわ。」
『うむ。我も流石に驚いた。我は能力でエイミー殿とその周囲の人間関係を一瞬見通したからこそ、レイベルト殿が人間だと理解している。そうでなければレイベルト殿が人間だとは信じられなかっただろうな。』
上手く話しを逸らせたわね。
もしかしたら、強さというものに興味が薄いだけかもしれないけど。
「ちなみにシューメルの能力はどんなの? メメちゃんみたいに何か面白い能力があるんでしょ?」
『あるぞ。とっておきの能力がな。我もお世話になった事がある。』
やっぱりあるんだ。
どこかで揉めた時の事を考えて一応対策を持っておかないと。
「どんな能力なの?」
『魔力を栄養に変換する能力だ。魔力さえ続けば食べずとも生きていける。』
戦闘向けじゃないのね。
メメちゃんも能力は戦闘向きじゃなかったし、別に変と言う事もない。
でも…………。
「使いようによっては強力ね。戦争中でも無補給で活動できるのは凄いわ。」
『うむ。最悪千年以上も無補給で活動出来るらしいので、ただでさえ強い妹は基本的に負ける事はない。』
「そうね。シューメルに勝ててしまううちの親二人がおかしいんだわ。」
シューメルは魂縛魔法で対処出来そう。
良かった。
『サクラ殿。』
「どうかした?」
『力で強引に、というのは必ず軋轢が生まれる。なるべく話し合いで済ませる事を推奨する。』
……もしかして対策を持っている事に気付いてる?
『三万年程先輩からの言葉だ。』
「何のことか分からないけど、覚えておくわ。」
『うむ。』
ナガツキ家には力が全てという風潮がある。
でも、そればかりじゃ良くないのは私だって分かる。肝に銘じておこう。
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