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第一章
第10話 英勇夫婦誕生
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「にしても、まさか女だったとはなぁ……。」
「ちょっと。いつまでその話をしてるの?」
「あ、いや。」
一見、異国の姫かと見紛う程の美女がアオイの声と口調で話しかけてくる。
正直違和感が凄い。
「レイベルト、お見合いした時からずっと変だよ?」
「……本当にアオイだよな?」
「もう! さっきからそればっか!」
見合いの時はエイミーの件で落ち込んでいたのもあり、そこまで気にしてはいなかった。
しかし、いざ時間をおいて考えてみると、アオイが女である事に今更ながら戸惑いを隠せない自分がいる。
エイミーの件でどん底まで落ち込んでいたと思っていた俺だったが、アオイが女であった事や、王が普段見せる顔があまりに衝撃的過ぎて、色々と吹っ飛んでしまったのだ。
見合いの後、俺とアオイは結婚する事を王へと報告をしたのだが……大喜びで王家が所有する宝剣を手渡してきた王には本当に驚かされた。
全力で受け取りを拒否するも、いいからいいからと親戚のオジサンのような顔つきで宝剣を無理矢理持たされてしまい、返そうとしたのだが今度は王がそれを受け取り拒否。
英雄と持て囃されている俺だが、元々の身分は一騎士家の出でしかない。
この宝剣を持つには明らかに分不相応だ。
俺が困った顔で宝剣を抱えていると「困った事があれば何でも相談しろ。」とまで言われてしまった。
王よ。
分不相応な宝剣を貰ってしまい、たった今、困っているのですが……
「ワシがピカピカに磨いておいたからな。」
「鏡みたいに輝いてますよ。凄いですね。」
アオイ……
凄いね、じゃないだろ。剣を磨くのは王の仕事ではない。
「剣を振るのは嫌いだが、剣を磨くのは好きなんじゃ。」
「へぇー。」
「……。」
ここまでされて受け取らないとなれば、不敬だろうか?
しかし、いくらなんでも王家の宝を貰い受けてしまうのは……。
「何を渋い顔をしとるんじゃ。勇者と結婚するのなら、もっと笑顔を見せんか。こんな良い女は滅多におらんぞ? ワシがあと30年若ければのう……。」
「もう、王様ったら。恥ずかしいですよ。」
王よ。
仮に30年若かったとしたら貴方は60歳ですよね?
計算をお間違えではないですか?
「王様、ありがとうございます。我々はこの宝剣に誓って、国を守護しましょう!」
アオイ。
勝手に貰う事に同意するんじゃない。
「是非頼むぞ。ワシは次の予定がある。英雄と勇者がいれば絶対面倒事になるので、二人は決してここに近づかないようにな。(はぁ。嫌じゃのう……。)」
「「はっ。」」
俺とアオイは退室し、今後について話し合う事にした。
「面倒事って何だろね?」
「分からん。王があれ程までに顔をしかめるのであれば、それ程面倒な手合いなのだろう。」
「難癖つける貴族とか?」
「俺は所詮騎士でしかないわけだから、貴族の連中に関しては知らん。」
「だよね。ま、気にしても仕方ないか。それより、私達は宝剣も貰っちゃったんだし頑張って期待に応えないとね。」
「あ、あぁ……って勝手に貰うなよ。」
「え?」
「この宝剣は王家に代々伝わる由緒ある剣だぞ? 俺なんかが受け取って良い物じゃない。」
「えぇ? そんな事言われても……王様は『ワシがこんな物を持っていても使い道がない。英雄に持たせるのが一番じゃ。』って言ってたよ?」
「王の真似はやめろ。不敬だぞ。」
「王様にも似てるって褒められたんだけどなぁ……。」
公認だったのか。
どれだけ仲良くなってるんだ?
しかも、微妙に似てるから始末に負えない。
「あぁ……ところで、さっきから気になってはいたんだが、本当にアオイなんだよな?」
「はい? レイベルトったら何言ってるの? 私が他の誰に見えるのよ。」
誰にって、それは……
「異国の姫?」
「ちょっと! 恥ずかしいから!」
「聞かれたから答えただけなんだが。」
「まったく! いきなり口説き始めるなんて……これはこれで嬉しいから良っか。」
「口説いてはないぞ。」
俺がそういう奴じゃない事は知っているだろうに。
「はいはい。レイベルトは自覚の無い女たらしだって分かってるから。私が理解のある嫁で良かったね。」
「嫁……か。」
「どうかした?」
嫁。
そうだ。俺の嫁はアオイだ。
アオイは女だったのだ。
「アオイは女だよな?」
「男に見える?」
「……見えないな。」
甲冑を着けているならともかく、今のアオイの姿を見て男だと言う奴はいないだろう。
「まだ疑ってる?」
「疑うというか、違和感が……。」
「仕方ないか。今までずっと男のフリで通してきたからね。」
「すまん。」
「良いって。結婚を決めたのはもしかしたら勢いとかあるのかもしれないけど、性別とか意識せずに私の存在そのものを好いてはくれていた……って前向きに解釈しちゃってるんだけど、違うかな?」
照れくさそうに視線を逸らして髪の毛をいじる彼女のしぐさから、目の前の人物が間違いなく女性なのだと意識させられる。
「あ、あぁ。否定はしない。」
「ふっふーん。レイベルトってば、結構素直だね。普段の調子はどこへ行ったのかな?」
「茶化すなよ。」
「ごめんって。」
結婚が決まったというのに、アオイの態度は相変わらずだ。
いや、俺がアオイの性別を意識し過ぎているのか。
「にしても、まさか女だったとはなぁ……。」
「ちょっと。いつまでその話をしてるの?」
「あ、いや。」
「レイベルト、お見合いした時からずっと変だよ?」
「……本当にアオイだよな?」
「もう! さっきからそればっか!」
「す、すまん。」
「疑り深い奴には……こうだぁぁー!」
アオイは大声を出して俺の手を掴み、ふくよかな自身の胸を触らせようとしたところで……
「ちょっと……うん。やっぱり恥ずかしいし、もっとちゃんとした場面で触ってもらわないとダメだよね。」
「なぁ、アオイ……。」
「うん。今夜辺りが良いかもしれないね。うん。良く考えたら、男の人に胸なんて触られた事もないし、ムードは大事だよね。うん。」
急に怖気づいたのか、突然掴まれた俺の手は宙を彷徨い再び元の位置に戻される。
「う、疑って悪かった。」
「うむ。分かればよろしい。」
得意気に胸を反らせている所悪いんだが、アオイ。
自覚しているのか?
余裕がなくて口が滑ったのかもしれんが、ちゃんとした場面で触らせると自ら言っているぞ。
しかもそれは……
「今夜なのか?」
「え? 今夜? レイベルト……私の考えている事が分かるの?」
アオイは何を言っているんだ?
「凄い……。私達、以心伝心だね! 流石は英勇コンビ! これからは英勇夫婦だー!」
まさか、口に出てしまっていた事に気付いていないのか。
「いや、自分で……」
「ん?」
嬉しそうにはしゃいでいるアオイを見て、考えが変わった。
無理に気付かせなくてもいいか。せっかく嬉しそうにしている彼女に水を差す必要はない。
アオイが自身の考えを口にしていた事は俺の心にそっとしまっておこう。
「なんでもないさ。」
「そう?」
「あぁ……。」
ちょっと抜けているところもあるが、命さえ預け合った事もある大事な嫁だ。
思いがけず結婚する事になってしまったが、彼女を大切にしよう。
「ちょっと。いつまでその話をしてるの?」
「あ、いや。」
一見、異国の姫かと見紛う程の美女がアオイの声と口調で話しかけてくる。
正直違和感が凄い。
「レイベルト、お見合いした時からずっと変だよ?」
「……本当にアオイだよな?」
「もう! さっきからそればっか!」
見合いの時はエイミーの件で落ち込んでいたのもあり、そこまで気にしてはいなかった。
しかし、いざ時間をおいて考えてみると、アオイが女である事に今更ながら戸惑いを隠せない自分がいる。
エイミーの件でどん底まで落ち込んでいたと思っていた俺だったが、アオイが女であった事や、王が普段見せる顔があまりに衝撃的過ぎて、色々と吹っ飛んでしまったのだ。
見合いの後、俺とアオイは結婚する事を王へと報告をしたのだが……大喜びで王家が所有する宝剣を手渡してきた王には本当に驚かされた。
全力で受け取りを拒否するも、いいからいいからと親戚のオジサンのような顔つきで宝剣を無理矢理持たされてしまい、返そうとしたのだが今度は王がそれを受け取り拒否。
英雄と持て囃されている俺だが、元々の身分は一騎士家の出でしかない。
この宝剣を持つには明らかに分不相応だ。
俺が困った顔で宝剣を抱えていると「困った事があれば何でも相談しろ。」とまで言われてしまった。
王よ。
分不相応な宝剣を貰ってしまい、たった今、困っているのですが……
「ワシがピカピカに磨いておいたからな。」
「鏡みたいに輝いてますよ。凄いですね。」
アオイ……
凄いね、じゃないだろ。剣を磨くのは王の仕事ではない。
「剣を振るのは嫌いだが、剣を磨くのは好きなんじゃ。」
「へぇー。」
「……。」
ここまでされて受け取らないとなれば、不敬だろうか?
しかし、いくらなんでも王家の宝を貰い受けてしまうのは……。
「何を渋い顔をしとるんじゃ。勇者と結婚するのなら、もっと笑顔を見せんか。こんな良い女は滅多におらんぞ? ワシがあと30年若ければのう……。」
「もう、王様ったら。恥ずかしいですよ。」
王よ。
仮に30年若かったとしたら貴方は60歳ですよね?
計算をお間違えではないですか?
「王様、ありがとうございます。我々はこの宝剣に誓って、国を守護しましょう!」
アオイ。
勝手に貰う事に同意するんじゃない。
「是非頼むぞ。ワシは次の予定がある。英雄と勇者がいれば絶対面倒事になるので、二人は決してここに近づかないようにな。(はぁ。嫌じゃのう……。)」
「「はっ。」」
俺とアオイは退室し、今後について話し合う事にした。
「面倒事って何だろね?」
「分からん。王があれ程までに顔をしかめるのであれば、それ程面倒な手合いなのだろう。」
「難癖つける貴族とか?」
「俺は所詮騎士でしかないわけだから、貴族の連中に関しては知らん。」
「だよね。ま、気にしても仕方ないか。それより、私達は宝剣も貰っちゃったんだし頑張って期待に応えないとね。」
「あ、あぁ……って勝手に貰うなよ。」
「え?」
「この宝剣は王家に代々伝わる由緒ある剣だぞ? 俺なんかが受け取って良い物じゃない。」
「えぇ? そんな事言われても……王様は『ワシがこんな物を持っていても使い道がない。英雄に持たせるのが一番じゃ。』って言ってたよ?」
「王の真似はやめろ。不敬だぞ。」
「王様にも似てるって褒められたんだけどなぁ……。」
公認だったのか。
どれだけ仲良くなってるんだ?
しかも、微妙に似てるから始末に負えない。
「あぁ……ところで、さっきから気になってはいたんだが、本当にアオイなんだよな?」
「はい? レイベルトったら何言ってるの? 私が他の誰に見えるのよ。」
誰にって、それは……
「異国の姫?」
「ちょっと! 恥ずかしいから!」
「聞かれたから答えただけなんだが。」
「まったく! いきなり口説き始めるなんて……これはこれで嬉しいから良っか。」
「口説いてはないぞ。」
俺がそういう奴じゃない事は知っているだろうに。
「はいはい。レイベルトは自覚の無い女たらしだって分かってるから。私が理解のある嫁で良かったね。」
「嫁……か。」
「どうかした?」
嫁。
そうだ。俺の嫁はアオイだ。
アオイは女だったのだ。
「アオイは女だよな?」
「男に見える?」
「……見えないな。」
甲冑を着けているならともかく、今のアオイの姿を見て男だと言う奴はいないだろう。
「まだ疑ってる?」
「疑うというか、違和感が……。」
「仕方ないか。今までずっと男のフリで通してきたからね。」
「すまん。」
「良いって。結婚を決めたのはもしかしたら勢いとかあるのかもしれないけど、性別とか意識せずに私の存在そのものを好いてはくれていた……って前向きに解釈しちゃってるんだけど、違うかな?」
照れくさそうに視線を逸らして髪の毛をいじる彼女のしぐさから、目の前の人物が間違いなく女性なのだと意識させられる。
「あ、あぁ。否定はしない。」
「ふっふーん。レイベルトってば、結構素直だね。普段の調子はどこへ行ったのかな?」
「茶化すなよ。」
「ごめんって。」
結婚が決まったというのに、アオイの態度は相変わらずだ。
いや、俺がアオイの性別を意識し過ぎているのか。
「にしても、まさか女だったとはなぁ……。」
「ちょっと。いつまでその話をしてるの?」
「あ、いや。」
「レイベルト、お見合いした時からずっと変だよ?」
「……本当にアオイだよな?」
「もう! さっきからそればっか!」
「す、すまん。」
「疑り深い奴には……こうだぁぁー!」
アオイは大声を出して俺の手を掴み、ふくよかな自身の胸を触らせようとしたところで……
「ちょっと……うん。やっぱり恥ずかしいし、もっとちゃんとした場面で触ってもらわないとダメだよね。」
「なぁ、アオイ……。」
「うん。今夜辺りが良いかもしれないね。うん。良く考えたら、男の人に胸なんて触られた事もないし、ムードは大事だよね。うん。」
急に怖気づいたのか、突然掴まれた俺の手は宙を彷徨い再び元の位置に戻される。
「う、疑って悪かった。」
「うむ。分かればよろしい。」
得意気に胸を反らせている所悪いんだが、アオイ。
自覚しているのか?
余裕がなくて口が滑ったのかもしれんが、ちゃんとした場面で触らせると自ら言っているぞ。
しかもそれは……
「今夜なのか?」
「え? 今夜? レイベルト……私の考えている事が分かるの?」
アオイは何を言っているんだ?
「凄い……。私達、以心伝心だね! 流石は英勇コンビ! これからは英勇夫婦だー!」
まさか、口に出てしまっていた事に気付いていないのか。
「いや、自分で……」
「ん?」
嬉しそうにはしゃいでいるアオイを見て、考えが変わった。
無理に気付かせなくてもいいか。せっかく嬉しそうにしている彼女に水を差す必要はない。
アオイが自身の考えを口にしていた事は俺の心にそっとしまっておこう。
「なんでもないさ。」
「そう?」
「あぁ……。」
ちょっと抜けているところもあるが、命さえ預け合った事もある大事な嫁だ。
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