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聖女の暴力編
第80話 聖女の慈悲
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昨日はギャモーと熱い夜を過ごしたわ。恥ずかしいので中身は割愛しますけど……。
せっかく村人達と和解出来たのだから、今日はギャモーと一緒に村内を散歩しよう。
「ギャモー、一緒に村を散策しましょう。」
「おう、いいぞ。前回はあまり出歩かなかったしな。」
私達は連れ立って実家から出る。村の中心には井戸があり、村内で一番賑やかな場所なのでそこを目指して歩き始めた。
あっ。早速近所に住む姉妹達が楽しそうにお話しているわ。
「おはようございます。」
「あらおはよう。」
「聖女さん、旦那様と仲が良いわね。」
「聖女って凄いのね。阿婆擦れリズの病気まで治せるなんて。」
「阿婆擦れリズに一緒に石を投げに行きませんか?」
この人達は発言した順にアル、イル、ウル、エル。近所に住む仲良し四姉妹だ。
よく私に石を投げてきた子達で、今度はリズに石を投げようと提案してきた。
どうやら今現在も性根が腐っているみたい。でも、せっかく和解したんだから柔らかく注意してあげよう。
「リズも反省しているでしょうから、石を投げるのはどうかと思いますけど。」
「聖女さん優しいわね。」
「阿婆擦れリズは反省しないと思うわ。」
「石をぶつける事によって反省の気持ちを促すのよ。」
「聖女さんが気乗りしないなら仕方ないですね。」
四姉妹はそれぞれ投げやすい大きさの石を持って、颯爽とこの場を去って行った。
リズが『性女』だとバレてしまったから仕方ないのかもしれないわ。
「なぁ……いじめのターゲットがリズに移ったんじゃねぇのか?」
「そうでしょうか? まだあの人達としか話していませんので何とも言えないです。」
事実はまだ分からないので、取り敢えず散策を続行する。
あっ。今度はメリルとサリアだ。
「おはようございます。」
「あぁ、聖女じゃない。」
「おはよう、聖女。」
この二人はそこそこ美人で、いつも率先して私をいじめてきた子達だ。変な植物の汁をかけてこようとするので、毎回ブッ叩いて追い返していた。
「二人は相変わらず仲が良いですね。」
「まぁね。メリル、聖女も誘ってみようか?」
「いいわねサリア。そうしましょう。」
「何の話ですか?」
「これから阿婆擦れリズに変な汁をかけてやるんだけど、一緒に来る?」
「この汁めっちゃ臭いからリズも反省すると思うんだよね。」
壺になみなみと入っている臭い汁を指さし笑い合う二人。
驚いた。人間はそうそう変わらないとは言うけれど、本当に変わらないんだわ。完全に性根が腐っている。
でもせっかく誘ってくれたんだし、丁寧にお断りしよう。
「今日はギャモーとお散歩なので、また今度にします。」
「残念ね。」
「気が変わったら来てよね。」
そう言って二人はこの場を後にした。気が変わる事は多分一生ないけど。
「お前、毎回あんな事されてたのか?」
「はい。石はしょっちゅう投げられてたので十倍くらい投げ返しましたし、変な汁をかけられたら、その人の家で汁をまき散らしました。あっ、勿論ブッ叩いてもおきましたよ?」
ギャモーの顔が引き攣っている。どうしたのかしら?
「お前のいじめられ方もなかなかだが、やり返し方も凄えな……。」
「そうでしょうか?」
お返しは十倍が相場だってお母さんが言ってたんだけどなぁ。
あっ。今度は近所のいじわる婆さんだ。
いじわる婆さんは村の危険人物として知られていて、普段からいっひっひと笑っている。
「おはようございます。」
「いっひっひ。聖女さんおはよう。」
バシャっと煮えた油をかけられた。
「あの、ベタベタするのでやめてください。」
「いっひっひ。すまんねぇ。」
「アリエンナ大丈夫か!?」
ギャモーは慌てて私の前に立ち、庇う動作を見せる。
「はい。全然平気です。」
「それはそれでおかしいだろ……。」
何がおかしいのかしら? 揚げ物作る時だって素手で煮えた油に手を入れてひっくり返すんだから、このくらいで火傷なんてするわけないじゃない。
「後でよく煮えた油のお風呂に入れてあげますね?」
「いっひっ…………ひぃぃぃぃ!!」
いじわる婆さんは信じられない速度で走って行った。
「お、おい。それは死んじまうだろ。」
「大丈夫です。私聖女ですよ? 回復魔法をかけ続けながら煮えた油のお風呂に入れてあげれば死にませんよ。」
「拷問だろ……。」
「違いますよ。そもそも私に煮えた油をかけなければ良いんです。」
「いや、まぁ……うん。うん? 待て。そりゃ聖女のやる事じゃねぇだろ。」
「後で様子を見せましょうか? 絶叫し続けて面白いんですよ。」
「……いらん。」
遠慮してるのかしら?
それにしても、皆と仲直り出来たお蔭で村での扱いが随分良くなったわ。
仲が良いって素晴らしい事よね。
「何だ? 井戸の方で皆何かやってんぞ。」
本当だ。井戸の周辺に普段よりも人が集まっている。
私達が小走りで向かうとそこには……
「リズ……?」
村の若い女達が総出でリズをいじめている光景が繰り広げられていた。中でも特に我の強い子達が暴言を浴びせかけている。
「この阿婆擦れリズ!」
「あんた私の男に手を出したわね!?」
「魔女なんかよりも余程酷いわ!」
「人の男に病気うつしてんじゃないわよ!」
「あんたこそが性女じゃないのよっ!」
「聖女さんに病気治してもらってる場合じゃないでしょ!」
「ごめ、ごべんなさい……。もうしま、せんから……。」
リズが土下座で泣きながら謝っている。
可哀想だわ。助けてあげようかな。
せっかく村人達と和解出来たのだから、今日はギャモーと一緒に村内を散歩しよう。
「ギャモー、一緒に村を散策しましょう。」
「おう、いいぞ。前回はあまり出歩かなかったしな。」
私達は連れ立って実家から出る。村の中心には井戸があり、村内で一番賑やかな場所なのでそこを目指して歩き始めた。
あっ。早速近所に住む姉妹達が楽しそうにお話しているわ。
「おはようございます。」
「あらおはよう。」
「聖女さん、旦那様と仲が良いわね。」
「聖女って凄いのね。阿婆擦れリズの病気まで治せるなんて。」
「阿婆擦れリズに一緒に石を投げに行きませんか?」
この人達は発言した順にアル、イル、ウル、エル。近所に住む仲良し四姉妹だ。
よく私に石を投げてきた子達で、今度はリズに石を投げようと提案してきた。
どうやら今現在も性根が腐っているみたい。でも、せっかく和解したんだから柔らかく注意してあげよう。
「リズも反省しているでしょうから、石を投げるのはどうかと思いますけど。」
「聖女さん優しいわね。」
「阿婆擦れリズは反省しないと思うわ。」
「石をぶつける事によって反省の気持ちを促すのよ。」
「聖女さんが気乗りしないなら仕方ないですね。」
四姉妹はそれぞれ投げやすい大きさの石を持って、颯爽とこの場を去って行った。
リズが『性女』だとバレてしまったから仕方ないのかもしれないわ。
「なぁ……いじめのターゲットがリズに移ったんじゃねぇのか?」
「そうでしょうか? まだあの人達としか話していませんので何とも言えないです。」
事実はまだ分からないので、取り敢えず散策を続行する。
あっ。今度はメリルとサリアだ。
「おはようございます。」
「あぁ、聖女じゃない。」
「おはよう、聖女。」
この二人はそこそこ美人で、いつも率先して私をいじめてきた子達だ。変な植物の汁をかけてこようとするので、毎回ブッ叩いて追い返していた。
「二人は相変わらず仲が良いですね。」
「まぁね。メリル、聖女も誘ってみようか?」
「いいわねサリア。そうしましょう。」
「何の話ですか?」
「これから阿婆擦れリズに変な汁をかけてやるんだけど、一緒に来る?」
「この汁めっちゃ臭いからリズも反省すると思うんだよね。」
壺になみなみと入っている臭い汁を指さし笑い合う二人。
驚いた。人間はそうそう変わらないとは言うけれど、本当に変わらないんだわ。完全に性根が腐っている。
でもせっかく誘ってくれたんだし、丁寧にお断りしよう。
「今日はギャモーとお散歩なので、また今度にします。」
「残念ね。」
「気が変わったら来てよね。」
そう言って二人はこの場を後にした。気が変わる事は多分一生ないけど。
「お前、毎回あんな事されてたのか?」
「はい。石はしょっちゅう投げられてたので十倍くらい投げ返しましたし、変な汁をかけられたら、その人の家で汁をまき散らしました。あっ、勿論ブッ叩いてもおきましたよ?」
ギャモーの顔が引き攣っている。どうしたのかしら?
「お前のいじめられ方もなかなかだが、やり返し方も凄えな……。」
「そうでしょうか?」
お返しは十倍が相場だってお母さんが言ってたんだけどなぁ。
あっ。今度は近所のいじわる婆さんだ。
いじわる婆さんは村の危険人物として知られていて、普段からいっひっひと笑っている。
「おはようございます。」
「いっひっひ。聖女さんおはよう。」
バシャっと煮えた油をかけられた。
「あの、ベタベタするのでやめてください。」
「いっひっひ。すまんねぇ。」
「アリエンナ大丈夫か!?」
ギャモーは慌てて私の前に立ち、庇う動作を見せる。
「はい。全然平気です。」
「それはそれでおかしいだろ……。」
何がおかしいのかしら? 揚げ物作る時だって素手で煮えた油に手を入れてひっくり返すんだから、このくらいで火傷なんてするわけないじゃない。
「後でよく煮えた油のお風呂に入れてあげますね?」
「いっひっ…………ひぃぃぃぃ!!」
いじわる婆さんは信じられない速度で走って行った。
「お、おい。それは死んじまうだろ。」
「大丈夫です。私聖女ですよ? 回復魔法をかけ続けながら煮えた油のお風呂に入れてあげれば死にませんよ。」
「拷問だろ……。」
「違いますよ。そもそも私に煮えた油をかけなければ良いんです。」
「いや、まぁ……うん。うん? 待て。そりゃ聖女のやる事じゃねぇだろ。」
「後で様子を見せましょうか? 絶叫し続けて面白いんですよ。」
「……いらん。」
遠慮してるのかしら?
それにしても、皆と仲直り出来たお蔭で村での扱いが随分良くなったわ。
仲が良いって素晴らしい事よね。
「何だ? 井戸の方で皆何かやってんぞ。」
本当だ。井戸の周辺に普段よりも人が集まっている。
私達が小走りで向かうとそこには……
「リズ……?」
村の若い女達が総出でリズをいじめている光景が繰り広げられていた。中でも特に我の強い子達が暴言を浴びせかけている。
「この阿婆擦れリズ!」
「あんた私の男に手を出したわね!?」
「魔女なんかよりも余程酷いわ!」
「人の男に病気うつしてんじゃないわよ!」
「あんたこそが性女じゃないのよっ!」
「聖女さんに病気治してもらってる場合じゃないでしょ!」
「ごめ、ごべんなさい……。もうしま、せんから……。」
リズが土下座で泣きながら謝っている。
可哀想だわ。助けてあげようかな。
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