21 / 87
フェルミト王国編
第20話 聖女の友人
しおりを挟む
「大変申し訳ございませんでした。」
近衛兵さんはあの後、お仕置きとして称して雷魔法をくらっていた。
「王女様の近衛さん面白いね。名前教えてよ。」
近衛兵さんともお友達になるのかしら。仕事中なのに大丈夫かな?
「近衛隊副隊長のエルバ=ガークランドと申します。」
「王女様相手に良くあんな事しましたね。身分なんて気にしない方なんですか?」
私は純粋に疑問だった。
「私は近衛として王宮に勤めて8年になります。ルディア王女殿下がまだ9歳の子爵令嬢だった頃、パーティで初めてお見かけしました。」
エルバさんは懐かしそうに昔語りを始める。
「幼いながらも凛とした態度で貴族相手に渡り合う姿を拝見しまして、あんな才ある方に仕えたいとずっと思っていました。」
「確かに、ルディア王女殿下は神童と呼ばれた方ですものね。」
「はい。私はこうして仕えてから、この方を一生守り、幸せにするのだと誓ったのです。その為には私が少々泥を被る事など気にはしません。」
まるで告白だわ。王女様はどう答えるかしら。
「あ、あの……私は既に結婚していますので……。」
王女様ったら随分と気まずそうね。エルバさんはフラれちゃったけど、これは仕方ない。
そんな王女様を見て何を勘違いしたのか、エルバさんは堂々と発言する。
「王女殿下、私は妻も子供もおります故。ご容赦下さい。」
静寂がこの場を支配した。
「……何で私がフラれた感じになっているんですか?」
「申し訳ありません。私は妻も子供もおります故。ご容赦……」
「それはもう聞きましたが、何故私がフラれた感じになるのですか?」
エルバさんが再び同じことを口にした瞬間、王女様はそれを遮った。
「王女殿下は私に心を動かされておいでだと思いましたので、お断りしようかと。申し訳ございません。」
「……別に動かされてはいませんが。どうしてそう思ったのか、こちらが聞きたいくらいです。」
極冷静に対応する王女様。確かに……全く心動かされた様子なんてないようだ。。
「全然そんな感じじゃなかったよね。」
「そうですわね。」
「近衛兵さん大丈夫か? また雷魔法くらうんじゃねぇか?」
「心配ですね。」
「私は妻も子供もおります故。どうか平にご容赦を……あばばばばば!」
エルバさんが再び同じことを言った瞬間に、バチバチと王女様の雷魔法が炸裂する。
雷魔法をくらった彼はガクリとその場に膝をついていた。
「全く。撃ちますよ? 雷魔法。」
「す、すでに……撃っておりますが……。」
流石は副隊長さん。それ相応の魔法耐性を備えているようね。
「あはは! 面白―い!」
「確かに。エルバさんにゃ悪いが、笑っちまうな。」
「ですわね。私もお腹が、痛い、ですわ……。」
「フフっ。王女様の近衛兵さんはお茶目ですね。」
「王女殿下、どうです? 私の活躍でご友人方が楽しそうですよ?」
「まさか、貴方……。」
エルバさんはニヤリと王女様に笑って見せる。
彼はもしかして……
「先程の発言は嘘ではありません。王女殿下がご友人方と仲良くなるキッカケを与える為、年長者として少々泥を被っただけです。」
「王女様、凄く慕われてるじゃん!」
「人徳も兼ね備えているとは、御見それしましたわ。」
「エルバさん根性あるな。」
「それで、わざわざフラれた感じにしたんですか?」
私の疑問に真面目な顔で答えるエルバさん。
「あっそれは趣味です。私自身が禁断の恋的なものを味わってみたかっただけでした。」
「台無しじゃねぇか。」
ギャモーが呆れた顔で返す。
「変わった趣味ですね。」
「割と普通だと自分では思っているのですが……実際、禁断の恋がテーマの演劇は人気がありますよ?」
「確かにエルバさんの言う通りだね。そういったテーマのものは人気があるのは間違いないもん。」
「今だと『貴族の肉食系お嬢様が既成事実を作ろうと迫って来る。俺、平民ですよ?』ですとか『見習い天使の私がイケメン俺様系悪魔を召喚した結果、どストライク過ぎて堕天しそう。』が人気ですものね。」
「なんだそりゃ? 何でタイトルがそんなに説明くさいんだ?」
「最近の流行というものだそうですわ。なんでも、内容が想像出来そうなタイトルにしないと、見向きもされないのだとか……。」
「はぁ……。俺には理解出来ねぇぜ。」
「最初は私もタイトルの付け方が気に入りませんでしたが、こんなの慣れですわ。」
「そういうもんかねぇ。」
「私は良いと思います。どんな物語か想像出来た方が興味を引きませんか?」
「分かりやすいから良いと思うけどなぁ。」
「あっ……。申し訳ありませんが他の方にも挨拶に行かなければなりませんので、私は一度失礼します。せっかくお友達になれたのですから、良ければ明日や明後日など王宮に遊びに来て下さい。」
王女様は他の貴族達へ挨拶の為、この場を去っていった。
「行ってしまいましたわね。」
「お腹も空いてきたし、何か食べようかな。」
「そうしましょうか。」
「そうだな。」
「私も公爵夫人として挨拶が必要な方々の所へ行ってまいりますわ。3人は食事をしていて下さいな。」
セリア様も貴族としての責務を果たそうと、その場を去る。
残された私達は豪華な料理を皿に取り分けて食べ始め、それぞれパーティを楽しんだ。
近衛兵さんはあの後、お仕置きとして称して雷魔法をくらっていた。
「王女様の近衛さん面白いね。名前教えてよ。」
近衛兵さんともお友達になるのかしら。仕事中なのに大丈夫かな?
「近衛隊副隊長のエルバ=ガークランドと申します。」
「王女様相手に良くあんな事しましたね。身分なんて気にしない方なんですか?」
私は純粋に疑問だった。
「私は近衛として王宮に勤めて8年になります。ルディア王女殿下がまだ9歳の子爵令嬢だった頃、パーティで初めてお見かけしました。」
エルバさんは懐かしそうに昔語りを始める。
「幼いながらも凛とした態度で貴族相手に渡り合う姿を拝見しまして、あんな才ある方に仕えたいとずっと思っていました。」
「確かに、ルディア王女殿下は神童と呼ばれた方ですものね。」
「はい。私はこうして仕えてから、この方を一生守り、幸せにするのだと誓ったのです。その為には私が少々泥を被る事など気にはしません。」
まるで告白だわ。王女様はどう答えるかしら。
「あ、あの……私は既に結婚していますので……。」
王女様ったら随分と気まずそうね。エルバさんはフラれちゃったけど、これは仕方ない。
そんな王女様を見て何を勘違いしたのか、エルバさんは堂々と発言する。
「王女殿下、私は妻も子供もおります故。ご容赦下さい。」
静寂がこの場を支配した。
「……何で私がフラれた感じになっているんですか?」
「申し訳ありません。私は妻も子供もおります故。ご容赦……」
「それはもう聞きましたが、何故私がフラれた感じになるのですか?」
エルバさんが再び同じことを口にした瞬間、王女様はそれを遮った。
「王女殿下は私に心を動かされておいでだと思いましたので、お断りしようかと。申し訳ございません。」
「……別に動かされてはいませんが。どうしてそう思ったのか、こちらが聞きたいくらいです。」
極冷静に対応する王女様。確かに……全く心動かされた様子なんてないようだ。。
「全然そんな感じじゃなかったよね。」
「そうですわね。」
「近衛兵さん大丈夫か? また雷魔法くらうんじゃねぇか?」
「心配ですね。」
「私は妻も子供もおります故。どうか平にご容赦を……あばばばばば!」
エルバさんが再び同じことを言った瞬間に、バチバチと王女様の雷魔法が炸裂する。
雷魔法をくらった彼はガクリとその場に膝をついていた。
「全く。撃ちますよ? 雷魔法。」
「す、すでに……撃っておりますが……。」
流石は副隊長さん。それ相応の魔法耐性を備えているようね。
「あはは! 面白―い!」
「確かに。エルバさんにゃ悪いが、笑っちまうな。」
「ですわね。私もお腹が、痛い、ですわ……。」
「フフっ。王女様の近衛兵さんはお茶目ですね。」
「王女殿下、どうです? 私の活躍でご友人方が楽しそうですよ?」
「まさか、貴方……。」
エルバさんはニヤリと王女様に笑って見せる。
彼はもしかして……
「先程の発言は嘘ではありません。王女殿下がご友人方と仲良くなるキッカケを与える為、年長者として少々泥を被っただけです。」
「王女様、凄く慕われてるじゃん!」
「人徳も兼ね備えているとは、御見それしましたわ。」
「エルバさん根性あるな。」
「それで、わざわざフラれた感じにしたんですか?」
私の疑問に真面目な顔で答えるエルバさん。
「あっそれは趣味です。私自身が禁断の恋的なものを味わってみたかっただけでした。」
「台無しじゃねぇか。」
ギャモーが呆れた顔で返す。
「変わった趣味ですね。」
「割と普通だと自分では思っているのですが……実際、禁断の恋がテーマの演劇は人気がありますよ?」
「確かにエルバさんの言う通りだね。そういったテーマのものは人気があるのは間違いないもん。」
「今だと『貴族の肉食系お嬢様が既成事実を作ろうと迫って来る。俺、平民ですよ?』ですとか『見習い天使の私がイケメン俺様系悪魔を召喚した結果、どストライク過ぎて堕天しそう。』が人気ですものね。」
「なんだそりゃ? 何でタイトルがそんなに説明くさいんだ?」
「最近の流行というものだそうですわ。なんでも、内容が想像出来そうなタイトルにしないと、見向きもされないのだとか……。」
「はぁ……。俺には理解出来ねぇぜ。」
「最初は私もタイトルの付け方が気に入りませんでしたが、こんなの慣れですわ。」
「そういうもんかねぇ。」
「私は良いと思います。どんな物語か想像出来た方が興味を引きませんか?」
「分かりやすいから良いと思うけどなぁ。」
「あっ……。申し訳ありませんが他の方にも挨拶に行かなければなりませんので、私は一度失礼します。せっかくお友達になれたのですから、良ければ明日や明後日など王宮に遊びに来て下さい。」
王女様は他の貴族達へ挨拶の為、この場を去っていった。
「行ってしまいましたわね。」
「お腹も空いてきたし、何か食べようかな。」
「そうしましょうか。」
「そうだな。」
「私も公爵夫人として挨拶が必要な方々の所へ行ってまいりますわ。3人は食事をしていて下さいな。」
セリア様も貴族としての責務を果たそうと、その場を去る。
残された私達は豪華な料理を皿に取り分けて食べ始め、それぞれパーティを楽しんだ。
0
お気に入りに追加
997
あなたにおすすめの小説
芋くさ聖女は捨てられた先で冷徹公爵に拾われました ~後になって私の力に気付いたってもう遅い! 私は新しい居場所を見つけました~
日之影ソラ
ファンタジー
アルカンティア王国の聖女として務めを果たしてたヘスティアは、突然国王から追放勧告を受けてしまう。ヘスティアの言葉は国王には届かず、王女が新しい聖女となってしまったことで用済みとされてしまった。
田舎生まれで地位や権力に関わらず平等に力を振るう彼女を快く思っておらず、民衆からの支持がこれ以上増える前に追い出してしまいたかったようだ。
成すすべなく追い出されることになったヘスティアは、荷物をまとめて大聖堂を出ようとする。そこへ現れたのは、冷徹で有名な公爵様だった。
「行くところがないならうちにこないか? 君の力が必要なんだ」
彼の一声に頷き、冷徹公爵の領地へ赴くことに。どんなことをされるのかと内心緊張していたが、実際に話してみると優しい人で……
一方王都では、真の聖女であるヘスティアがいなくなったことで、少しずつ歯車がズレ始めていた。
国王や王女は気づいていない。
自分たちが失った者の大きさと、手に入れてしまった力の正体に。
小説家になろうでも短編として投稿してます。
聖女として全力を尽くしてまいりました。しかし、好色王子に婚約破棄された挙句に国を追放されました。国がどうなるか分かっていますか?
宮城 晟峰
ファンタジー
代々、受け継がれてきた聖女の力。
それは、神との誓約のもと、決して誰にも漏らしてはいけない秘密だった。
そんな事とは知らないバカな王子に、聖女アティアは追放されてしまう。
アティアは葛藤の中、国を去り、不毛の地と言われた隣国を豊穣な地へと変えていく。
その話を聞きつけ、王子、もといい王となっていた青年は、彼女のもとを訪れるのだが……。
※完結いたしました。お読みいただきありがとうございました。
婚約破棄と追放をされたので能力使って自立したいと思います
かるぼな
ファンタジー
突然、王太子に婚約破棄と追放を言い渡されたリーネ・アルソフィ。
現代日本人の『神木れいな』の記憶を持つリーネはレイナと名前を変えて生きていく事に。
一人旅に出るが周りの人間に助けられ甘やかされていく。
【拒絶と吸収】の能力で取捨選択して良いとこ取り。
癒し系統の才能が徐々に開花してとんでもない事に。
レイナの目標は自立する事なのだが……。
嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜
𝓝𝓞𝓐
ファンタジー
13歳の時に聖女として認定されてから、身を粉にして人々のために頑張り続けたセレスティアさん。どんな人が相手だろうと、死にかけながらも癒し続けた。
だが、その結果は悲惨の一言に尽きた。
「もっと早く癒せよ! このグズが!」
「お前がもっと早く治療しないせいで、後遺症が残った! 死んで詫びろ!」
「お前が呪いを防いでいれば! 私はこんなに醜くならなかったのに! お前も呪われろ!」
また、日々大人も気絶するほどの魔力回復ポーションを飲み続けながら、国中に魔物を弱らせる結界を張っていたのだが……、
「もっと出力を上げんか! 貴様のせいで我が国の騎士が傷付いたではないか! とっとと癒せ! このウスノロが!」
「チッ。あの能無しのせいで……」
頑張っても頑張っても誰にも感謝されず、それどころか罵られるばかり。
もう我慢ならない!
聖女さんは、とうとう怒った。
聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!
さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ
祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き!
も……もう嫌だぁ!
半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける!
時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ!
大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。
色んなキャラ出しまくりぃ!
カクヨムでも掲載チュッ
⚠︎この物語は全てフィクションです。
⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!
似非聖女呼ばわりされたのでスローライフ満喫しながら引き篭もります
秋月乃衣
恋愛
侯爵令嬢オリヴィアは聖女として今まで16年間生きてきたのにも関わらず、婚約者である王子から「お前は聖女ではない」と言われた挙句、婚約破棄をされてしまった。
そして、その瞬間オリヴィアの背中には何故か純白の羽が出現し、オリヴィアは泣き叫んだ。
「私、仰向け派なのに!これからどうやって寝たらいいの!?」
聖女じゃないみたいだし、婚約破棄されたし、何より羽が邪魔なので王都の外れでスローライフ始めます。
戦地に舞い降りた真の聖女〜偽物と言われて戦場送りされましたが問題ありません、それが望みでしたから〜
黄舞
ファンタジー
侯爵令嬢である主人公フローラは、次の聖女として王太子妃となる予定だった。しかし婚約者であるはずの王太子、ルチル王子から、聖女を偽ったとして婚約破棄され、激しい戦闘が繰り広げられている戦場に送られてしまう。ルチル王子はさらに自分の気に入った女性であるマリーゴールドこそが聖女であると言い出した。
一方のフローラは幼少から、王侯貴族のみが回復魔法の益を受けることに疑問を抱き、自ら強い奉仕の心で戦場で傷付いた兵士たちを治療したいと前々から思っていた。強い意志を秘めたまま衛生兵として部隊に所属したフローラは、そこで様々な苦難を乗り越えながら、あまねく人々を癒し、兵士たちに聖女と呼ばれていく。
配属初日に助けた瀕死の青年クロムや、フローラの指導のおかげで後にフローラに次ぐ回復魔法の使い手へと育つデイジー、他にも主人公を慕う衛生兵たちに囲まれ、フローラ個人だけではなく、衛生兵部隊として徐々に成長していく。
一方、フローラを陥れようとした王子たちや、配属先の上官たちは、自らの行いによって、その身を落としていく。
元聖女だった少女は我が道を往く
春の小径
ファンタジー
突然入ってきた王子や取り巻きたちに聖室を荒らされた。
彼らは先代聖女様の棺を蹴り倒し、聖石まで蹴り倒した。
「聖女は必要がない」と言われた新たな聖女になるはずだったわたし。
その言葉は取り返しのつかない事態を招く。
でも、もうわたしには関係ない。
だって神に見捨てられたこの世界に聖女は二度と現れない。
わたしが聖女となることもない。
─── それは誓約だったから
☆これは聖女物ではありません
☆他社でも公開はじめました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる