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聖女が村人をブッ叩くまで
第12話 聖女の強化
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「何でその説明で出来ちまうんだよ。才能って奴か? だとしてもおかしいだろ……。」
ギャモーは納得していないようだが、出来てしまったものは仕方ない。
「まぁ、使えたんだから良いじゃないですか。ギャモーもやってみてはどうですか?」
「一応さっきからやってはみてるが、全く出来ねぇ。」
魔法の才能があまりないのかもしれないわ。
「ギャモーさんって魔力はあるけど、外に放つ事が出来ないタイプの人みたいね。」
そんなの分かるの?
「だから、身体強化の魔法を覚えると良いわ。」
「聞いた事ない魔法だな。」
「私のオリジナル魔法だからね。聞いた事ないのも仕方ないわ。」
お母さんのオリジナル? 強そう……。
「じゃあそれを教えてくれ。」
「任せなさい。それじゃあ、体強くなれ……って考えてみて。」
「……やってみるか。」
身体強化? 私も使えるかな?
結構簡単そうだけど……。
「どうだ?」
「全然出来てないわね。」
「ちゃんと魔法の勉強もしないとダメなんじゃないか?」
「うーん。そんな事はないと思うんだけど……。」
「あっ。出来た。」
そんなに難しくなかった。
「あら。アリエンナは出来てるわね。」
「やっぱ、お前ら親子の才能が特別なだけじゃねぇのか?」
「うーん……。アリエンナ、ギャモーさんの手を握って身体強化のイメージを送ってみて。」
「わかった。」
私はギャモーの手を取り、身体強化を使った時のイメージを送ろうと考えてみた。
するとイメージが伝わったようで、彼も身体強化を使えるようになったのだ。
「おお! これはすげぇ! 俺も深淵の森に入れるんじゃねぇか?」
強くなった事が嬉しいのか、ギャモーははしゃいでいる。
「そうねぇ。冒険者ランクで言えばSくらいかしら。森には入らない方が良いと思うわ。」
「これでもダメなのか……。」
ガックリしているギャモー。きっと私と森デートをしたかったんだわ……。
あれ?
「ギャモーもランクとか知っているんですか?」
「おう。言ってなかったか? 俺は元々クリミア王国……今はフェルミト王国か。そこでBランク冒険者をやってたんだ。」
それは知らなかった。
「ギャモーさんって身体強化なしで、Aランクくらいありそうよね。そこそこ強いみたいじゃない。」
「鍛えたからな。修行のつもりで強ぇ魔物が多いドゥーに移ったんだ。」
そうだったのね。
「クリミア王国で政変があって、様子見したいのもあったんだけどよ。」
「政変?」
「あぁ。代々優秀な魔法士を輩出する家系のフェルミト子爵家に王家が喧嘩を売ったのさ。」
「それなら私も知ってるわ。随分アホな王家よね。フェルミト子爵の令嬢は特級魔法くらい使えそうな感じだったわよ?」
「お母さん知ってるの?」
お母さんは2~3日出掛けて帰って来ない時があるのだ。その時に会った事があるのかしら?
「4年前にね。アリエンナを貴族のお嬢様っぽくしてみたかったから、本物の貴族を見る為にフェルミト子爵家に滞在した事があるのよ。」
「それでアリエンナの喋り方がやけに丁寧なのか?」
「真似事だけどね。それでもダンスや礼儀作法、人のブッ叩き方なんかは最低限仕込んであるわよ?」
「そりゃすげぇな。アリエンナはお嬢様でもあった…………待て。人のブッ叩き方はお嬢様じゃねぇだろ。」
知らなかった。私……お嬢様だったんだ。
「ギャモー。冒険者聖女アリエンナお嬢様って呼んで下さい。」
「長すぎだろ。普通にアリエンナって呼ばせてくれよ。」
仕方ないか。
「たまにで良いので、人前でそう呼んで欲しいです。」
「たまになら良いぞ。」
流石は私の旦那様になる人ね。
「そう言えば、フェルミト家の御令嬢はアリエンナと同い年。冒険者って旅もするから、ついでに会いに行ってみたら? 私の名前を出せば会ってくれると思うわよ?」
「それなら会いに行ってみようかな。」
「そうするといいわ。その子は結構私に懐いていたから、すんなり話が通るはずよ。アリエンナの話もした事があるし。」
今度の目標はフェルミト王国ね。
お母さんの話によるとフェルミト家の御令嬢はルディア様という名前らしく、一度だけ魔法を教えた事もあるそうだ。
仲良くなれると良いな……。
その日の夜
「ギャモー。お母さんが言っていたフェルミト王国へ一緒に行ってくれますか?」
結構遠いので、ギャモーが着いてきてくれるか不安に思っていると……
「着いて行くに決まってんじゃねぇか。パートナーだろうが。」
当然のようにそう言ってくれるギャモー。
「ありがとうございます。でも一度ドゥーに戻らないといけませんね。」
「聖女だから、遠くへ行く時は報告が必要だしな。」
ちょっと面倒だが聖女には護衛を付けるのが当たり前なようで、遠くへ行く際には必ず騎士団が派遣されるそうだ。
「そう言えば私って、聖女の仕事をまだ一度もしていませんね。」
「聖女に依頼するのは基本、金のあるお偉いさんだからな。それ程頻繁には依頼が来ないのさ。」
「そういうものなんですね。」
ギャモーも他国でも冒険者をしていただけあって、色々と知っていて頼りになる。
今日はすんなり顔合わせ出来たし、あとは帰ったら婚姻届けを提出するだけね。
出し忘れないようにしないと。
ギャモーは納得していないようだが、出来てしまったものは仕方ない。
「まぁ、使えたんだから良いじゃないですか。ギャモーもやってみてはどうですか?」
「一応さっきからやってはみてるが、全く出来ねぇ。」
魔法の才能があまりないのかもしれないわ。
「ギャモーさんって魔力はあるけど、外に放つ事が出来ないタイプの人みたいね。」
そんなの分かるの?
「だから、身体強化の魔法を覚えると良いわ。」
「聞いた事ない魔法だな。」
「私のオリジナル魔法だからね。聞いた事ないのも仕方ないわ。」
お母さんのオリジナル? 強そう……。
「じゃあそれを教えてくれ。」
「任せなさい。それじゃあ、体強くなれ……って考えてみて。」
「……やってみるか。」
身体強化? 私も使えるかな?
結構簡単そうだけど……。
「どうだ?」
「全然出来てないわね。」
「ちゃんと魔法の勉強もしないとダメなんじゃないか?」
「うーん。そんな事はないと思うんだけど……。」
「あっ。出来た。」
そんなに難しくなかった。
「あら。アリエンナは出来てるわね。」
「やっぱ、お前ら親子の才能が特別なだけじゃねぇのか?」
「うーん……。アリエンナ、ギャモーさんの手を握って身体強化のイメージを送ってみて。」
「わかった。」
私はギャモーの手を取り、身体強化を使った時のイメージを送ろうと考えてみた。
するとイメージが伝わったようで、彼も身体強化を使えるようになったのだ。
「おお! これはすげぇ! 俺も深淵の森に入れるんじゃねぇか?」
強くなった事が嬉しいのか、ギャモーははしゃいでいる。
「そうねぇ。冒険者ランクで言えばSくらいかしら。森には入らない方が良いと思うわ。」
「これでもダメなのか……。」
ガックリしているギャモー。きっと私と森デートをしたかったんだわ……。
あれ?
「ギャモーもランクとか知っているんですか?」
「おう。言ってなかったか? 俺は元々クリミア王国……今はフェルミト王国か。そこでBランク冒険者をやってたんだ。」
それは知らなかった。
「ギャモーさんって身体強化なしで、Aランクくらいありそうよね。そこそこ強いみたいじゃない。」
「鍛えたからな。修行のつもりで強ぇ魔物が多いドゥーに移ったんだ。」
そうだったのね。
「クリミア王国で政変があって、様子見したいのもあったんだけどよ。」
「政変?」
「あぁ。代々優秀な魔法士を輩出する家系のフェルミト子爵家に王家が喧嘩を売ったのさ。」
「それなら私も知ってるわ。随分アホな王家よね。フェルミト子爵の令嬢は特級魔法くらい使えそうな感じだったわよ?」
「お母さん知ってるの?」
お母さんは2~3日出掛けて帰って来ない時があるのだ。その時に会った事があるのかしら?
「4年前にね。アリエンナを貴族のお嬢様っぽくしてみたかったから、本物の貴族を見る為にフェルミト子爵家に滞在した事があるのよ。」
「それでアリエンナの喋り方がやけに丁寧なのか?」
「真似事だけどね。それでもダンスや礼儀作法、人のブッ叩き方なんかは最低限仕込んであるわよ?」
「そりゃすげぇな。アリエンナはお嬢様でもあった…………待て。人のブッ叩き方はお嬢様じゃねぇだろ。」
知らなかった。私……お嬢様だったんだ。
「ギャモー。冒険者聖女アリエンナお嬢様って呼んで下さい。」
「長すぎだろ。普通にアリエンナって呼ばせてくれよ。」
仕方ないか。
「たまにで良いので、人前でそう呼んで欲しいです。」
「たまになら良いぞ。」
流石は私の旦那様になる人ね。
「そう言えば、フェルミト家の御令嬢はアリエンナと同い年。冒険者って旅もするから、ついでに会いに行ってみたら? 私の名前を出せば会ってくれると思うわよ?」
「それなら会いに行ってみようかな。」
「そうするといいわ。その子は結構私に懐いていたから、すんなり話が通るはずよ。アリエンナの話もした事があるし。」
今度の目標はフェルミト王国ね。
お母さんの話によるとフェルミト家の御令嬢はルディア様という名前らしく、一度だけ魔法を教えた事もあるそうだ。
仲良くなれると良いな……。
その日の夜
「ギャモー。お母さんが言っていたフェルミト王国へ一緒に行ってくれますか?」
結構遠いので、ギャモーが着いてきてくれるか不安に思っていると……
「着いて行くに決まってんじゃねぇか。パートナーだろうが。」
当然のようにそう言ってくれるギャモー。
「ありがとうございます。でも一度ドゥーに戻らないといけませんね。」
「聖女だから、遠くへ行く時は報告が必要だしな。」
ちょっと面倒だが聖女には護衛を付けるのが当たり前なようで、遠くへ行く際には必ず騎士団が派遣されるそうだ。
「そう言えば私って、聖女の仕事をまだ一度もしていませんね。」
「聖女に依頼するのは基本、金のあるお偉いさんだからな。それ程頻繁には依頼が来ないのさ。」
「そういうものなんですね。」
ギャモーも他国でも冒険者をしていただけあって、色々と知っていて頼りになる。
今日はすんなり顔合わせ出来たし、あとは帰ったら婚姻届けを提出するだけね。
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