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フェルミト王国編

44 挨拶ですわ。 後編

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「気になりますわ。」

 急いでその場へ向かうと、聖女アリエンナが輝いていた。

 王女と同様の雷を体に纏って……。

 そして、それを止めようとするキャロルとギャモーの姿もある。

「どういう状況ですの?」

 セリアが尋ねると、これまでの経緯を教えて貰った。

 アリエンナとその母が強すぎるので、世界征服出来そうだね。と揶揄ったら突然アリエンナが王女の真似をしたそうだ。

 体に雷を纏いながら。

 雰囲気や声も結構似ていたそうだ。

「私がいない間、そんな楽しそうな事になっていたなんて……」

「こっちは気が気じゃなかったぜ。」

「でも本当に似てたよね。モノマネ芸人でもやっていけるんじゃない?」

「そんなに褒められると嬉しいですね。今後は……モノマネ聖女アリエンナと呼んで下さい。」

 アリエンナは何かをやり切ったという雰囲気を醸し出し、得意気に言うのだった。

「いくら何でも長すぎますわ。普通にアリエンナ様ではいけませんの?」

 すると、シュンと残念そうな表情になってしまうアリエンナ。

(可愛い。チューを……チューをして差し上げたいですわ!)

 思わずアリエンナを抱きしめてしまうセリア。

「セリア様?」

「アリエンナ様。お友達は時に、こうやって抱き合う事もありますのよ?」

「友達って良いものですね。」

 そう言いながらも恥ずかしそうにする聖女。

(あぁ……。このまま家に連れ帰ってしまいたいですわ。ギャモーさんも面白い方ですし、二人とも連れて行けたら良いのですが……)

 セリアは要人誘拐で国際問題に発展しそうな事を考えていた。


「本日はパーティに参加頂き、誠にありがとうございました。改めまして、イリジウム王国には感謝申し上げます。特にベリア伯爵とベリオーテ公爵夫人による多大なご恩は私達の記憶に残る事でしょう。途中で体調を崩され、退席なさった方もおいでですが……」


 王女の声が聞こえて来た。締めの挨拶をしているところを見れば、どうやらパーティも終わりのようだ。

「体調って……王女様が雷魔法を放ったからだよな。」

「だね。結構強めにぶっ放してたよ。」

 実際、雷魔法をくらった貴族たちからは煙があがっていた。

 そんな彼らは、良く無事だったものだと全員が感心している。

「そのお蔭で私達は助かりましたけどね。」

「面白れぇ王女様だったな。」

 王女による聖女救出劇は全員の記憶に強く残る事となる。

「そうですね。お友達にもなれましたし、私は満足ですわ。」

「私も!」

「私もです。」

「では、私達も解散と致しましょうか。」

 王女と友人になった4人は、今後もどこかで会う機会を設けようと約束しその場を去った。
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