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フェルミト王国編

39 撃ってますよ? 雷魔法。ですわ 前編

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 王女の顔は誰が見てもイラついていると分かる表情だった。


「雷光。」

 バチバチバチィ!!!


「「「「「あばばばばば」」」」」」


 会場内が眩い光に包まれる。

 やいのやいのと騒ぎ立てる貴族達は沈黙してしまった。

 彼らからは煙が立っている。

「ミディアムレアですわね。」

「その言い方はどうなの?」

 セリアは感想を言い、キャロルはそれにツッコむ。

「優しく言ってあげたのに何て言い草ですか。本当に撃ちますよ? 雷魔法。」

「王女殿下。既に撃っております。」

 いつの間に現れたのか、近衛兵が王女を窘める。

「これは雷魔法ではありません。静電気です。」

「そ……そうですか。失礼いたしました。」

 近衛兵は王女にツッコむが、簡単に誤魔化されてしまう。

「貴方達は一度下がりなさい。私はこの方に用があるのです。」

 王女がそう命令すると、さっと波が引くように貴族の男達はその場を後にした。

「大丈夫でしたか? アリエーンさんはどうしてあの男達を吹っ飛ばしてしまわなかったんです?」

 いつもの貴女なら吹っ飛ばしていたでしょうに……。

 そう言って聖女アリエンナを見る王女。

「お初にお目にかかります王女殿下。私、聖女アリエンナと申します。アリエーンの娘で御座います。」

「っ!? これは失礼しました。初めまして、ルディア=フェルミトです。確かに……良く似ていますが、そう言われてみればアリエーンさんとは雰囲気が違いますね。」

「王女殿下のお話は母より伺っておりました。」

「そうでしたか。アリエーンさんには私と同じくらいの年の娘さんが居ると聞いていましたが、こんなに似ているとは思ってもみませんでした。」

「似ていると良く言われます。」

「でしょうね。間違えるくらいには似ていますもの。それにしても……」

 王女はギャモーに視線をやる。

「俺……あ、私はドゥーの冒険者ギャモーだ、です。」

 ギャモーは慣れていないのか、言葉遣いがかなり変だった。

「ちゃんと止めないとダメじゃないですか。」

「面目ね…申し訳ありません。俺ではこいつを止められねぇ、ませんです……。」

「この方は目立つから守ってあげないと…………待って下さい。彼女を止めるとはどういうことですか?」

「はい。あやうくアリエンナが男達をミンチにしちまうとこで……あっ、でした。」

 王女の顔が引き攣っている。

 ごく自然な反応だった。そんな事を言われれば誰だってそうなるのは当然だ。

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