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フェルミト王国編

38 王女様ですわ 後編

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「気にしないで下さい。元々は木っ端貴族ですので。それに、麒麟児と呼ばれる程の者ではありません。こう見えても結構な粗忽者でして……。」

「そうは見えないけどなぁ。」

「キャロルったら、もうっ!」

「ふふっ。大丈夫ですよ。同年代のお友達が欲しいと思っていましたし、言葉使いは気を遣わないで頂いた方がこちらとしては嬉しいです。」

「ほらね?」

 キャロルはちょっと得意気に言ってみせる。

「この子ったら……申し訳ございませんわ。」

「良いんです。出来ればセリア様にも……気軽に接して頂きたいです。」

「光栄ですが……宜しいんですの? 私、結構ブッ飛んでおりますが……。」

「それを言ったら、私だって元婚約者の庭で特級魔法を二発放っております。」

「それはエキセントリックだね。」

「エキセントリック? とは聞き慣れない言葉ですね。」

「ブッ飛んでるって意味らしいよ? ドゥーの聖女に教えてもらったの。」

「そうでしたか。確かに私はエキセントリックかもしれません。」

 王女は寛容なのか笑顔で答える。

「あら……あの人だかりは何かしら?」

「男の人だけあんなに集まってどうしたんだろ?」

「トラブルかもしれませんので、ちょっと行ってきますね。」

「ご一緒しますわ。」

「私も。」



「貴方達、何をしているのです!」

 良く通るその声で、王女が咎めるように問いただす。

 王女が人だかりの中心人物を確認すると、そこには信じられないような美しさの女性が無表情で立っていた。

「一人の女性を寄って集ってどうしようと言うのですか?」

「聖女様をお誘いしようと……」
「我が家のパーティに来て頂こうと……」
「あまりの美しさに惹かれてしまいまして。」
「お尻触りたかったです。」
「聖女様とお近づきになりたかったのです。」

「貴方達の言いたい事は分かりましたが、こんなに大人数で誘っても嫌がられるだけですよ。」

 王女が尤もな事を言うと辺りは一瞬静まり返るが、その言葉を皮切りに貴族たちは不平不満を垂れ流す。


「恋愛事情に口を出すのは如何なものかと……」
「これ程美しい人をお誘いしないのは失礼というもの。」
「人の恋愛に口出しとは無粋ですね。」
「王女殿下は男の情熱が理解出来ないようですな。」
「全く、我々は紳士的にお誘いしているだけだというのに。」
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