7 / 87
夫婦円満の秘訣編
7 お友達ですわ 前編
しおりを挟む
「おはようございます旦那様。本日はオワコン商会より譲り受けました、魔道具事業の視察へ行って参りますわ。」
「オワコン商会……から?」
(旦那様ったら資料を読んでいないのね。)
「そうですわ。しっかり業績を伸ばし、ベリオーテ家を盛り立てるのです!」
腕に力コブを作り、頑張りますアピールするセリア。その様子を見たケイスの目尻が下がる。
「そ、そうか。」
「では行ってきますわ。」
「頼んだぞ。」
「本日よりオワコン商会からこの魔道具事業を譲り受ける事になりました、セリア=ベリオーテと申します。皆様と共に事業を発展させていきますので、どうぞ宜しくお願い致しますわ。」
その挨拶を聞いた職人達は、戸惑いを隠せないようでざわついている。
「今後は“オワコン魔道具工房”から“セリア魔道具工房”と名を改めまして、事業を展開致します。手始めに、この資料に目を通して下さいな。」
そう言って彼女は資料を全員に配る。
「この資料は、私が今まで得た研究成果に基づいた魔道具技術の一部です。これがあれば、他の魔道具とは比較にならない高性能な物を開発出来ると思います。」
そう……このブッ飛び公爵夫人は幼い頃から一人で魔道具研究を行っており、魔道具技術においては現行技術の200年は先を行っている。
彼女は一度見聞きしたものは忘れないし、得た知識を応用する事にも長けていた。
ただ面白がって悪戯放題して生きてきたワケではないのである。多分……。
「皆様には、既存の魔道具の高性能化と低コスト化を実現して頂きます。期限は……2ヵ月でお願い致しますね?」
そう言い残すと、彼女は優雅に去っていく。
残された職人達は資料に目を通すと、与えられた知識に歓喜し、急いで魔道具開発に取り掛かるのだった……。
「はぁー。今日のお仕事は終わりですわ。後は何をして遊ぼうかしら。」
そう言って馬車に乗り込もうとしたセリアはある光景を目にする。
「おうおう! 俺様にぶつかっておいて無視とは良い度胸じゃねえか!」
「そ、そんな……謝りました……。」
「あぁ? 聞こえねえぞ!」
「ひっ!?」
「あーあ、骨が折れてんなあ。治療費、くれるよなぁ?」
白昼堂々と大通りで恐喝している男がいた。
(これは……。あの有名なカツアゲというお仕事ですわ。)
セリアは馬車に乗り込み、御者にこう告げる。
「あの男を轢きなさい。」
「え?」
「聞こえませんでしたか? あの男を轢きなさい。女の子の方を轢いてはいけませんよ?」
「わ、わかりました。」
「では……」
セリアはゴホンと咳払いをし……
「ハイヨーシルバー!」
と叫ぶ。
彼女曰く、馬に乗ってシルバーと叫ぶのは常識なのだそうだ。
馬車は勢いをつけカツアゲ男へと突進。
ドンと音がしたかと思えば、轢かれた男はポーンと明後日の方向へ飛んで行った。
セリアは何事も無かったかのように馬車を降り、女の子に話しかける。
「大通りは暴走馬車が来るから危ないですわよ?」
「オワコン商会……から?」
(旦那様ったら資料を読んでいないのね。)
「そうですわ。しっかり業績を伸ばし、ベリオーテ家を盛り立てるのです!」
腕に力コブを作り、頑張りますアピールするセリア。その様子を見たケイスの目尻が下がる。
「そ、そうか。」
「では行ってきますわ。」
「頼んだぞ。」
「本日よりオワコン商会からこの魔道具事業を譲り受ける事になりました、セリア=ベリオーテと申します。皆様と共に事業を発展させていきますので、どうぞ宜しくお願い致しますわ。」
その挨拶を聞いた職人達は、戸惑いを隠せないようでざわついている。
「今後は“オワコン魔道具工房”から“セリア魔道具工房”と名を改めまして、事業を展開致します。手始めに、この資料に目を通して下さいな。」
そう言って彼女は資料を全員に配る。
「この資料は、私が今まで得た研究成果に基づいた魔道具技術の一部です。これがあれば、他の魔道具とは比較にならない高性能な物を開発出来ると思います。」
そう……このブッ飛び公爵夫人は幼い頃から一人で魔道具研究を行っており、魔道具技術においては現行技術の200年は先を行っている。
彼女は一度見聞きしたものは忘れないし、得た知識を応用する事にも長けていた。
ただ面白がって悪戯放題して生きてきたワケではないのである。多分……。
「皆様には、既存の魔道具の高性能化と低コスト化を実現して頂きます。期限は……2ヵ月でお願い致しますね?」
そう言い残すと、彼女は優雅に去っていく。
残された職人達は資料に目を通すと、与えられた知識に歓喜し、急いで魔道具開発に取り掛かるのだった……。
「はぁー。今日のお仕事は終わりですわ。後は何をして遊ぼうかしら。」
そう言って馬車に乗り込もうとしたセリアはある光景を目にする。
「おうおう! 俺様にぶつかっておいて無視とは良い度胸じゃねえか!」
「そ、そんな……謝りました……。」
「あぁ? 聞こえねえぞ!」
「ひっ!?」
「あーあ、骨が折れてんなあ。治療費、くれるよなぁ?」
白昼堂々と大通りで恐喝している男がいた。
(これは……。あの有名なカツアゲというお仕事ですわ。)
セリアは馬車に乗り込み、御者にこう告げる。
「あの男を轢きなさい。」
「え?」
「聞こえませんでしたか? あの男を轢きなさい。女の子の方を轢いてはいけませんよ?」
「わ、わかりました。」
「では……」
セリアはゴホンと咳払いをし……
「ハイヨーシルバー!」
と叫ぶ。
彼女曰く、馬に乗ってシルバーと叫ぶのは常識なのだそうだ。
馬車は勢いをつけカツアゲ男へと突進。
ドンと音がしたかと思えば、轢かれた男はポーンと明後日の方向へ飛んで行った。
セリアは何事も無かったかのように馬車を降り、女の子に話しかける。
「大通りは暴走馬車が来るから危ないですわよ?」
5
お気に入りに追加
246
あなたにおすすめの小説
雪解けの白い結婚 〜触れることもないし触れないでほしい……からの純愛!?〜
川奈あさ
恋愛
セレンは前世で夫と友人から酷い裏切りを受けたレスられ・不倫サレ妻だった。
前世の深い傷は、転生先の心にも残ったまま。
恋人も友人も一人もいないけれど、大好きな魔法具の開発をしながらそれなりに楽しい仕事人生を送っていたセレンは、祖父のために結婚相手を探すことになる。
だけど凍り付いた表情は、舞踏会で恐れられるだけで……。
そんな時に出会った壁の花仲間かつ高嶺の花でもあるレインに契約結婚を持ちかけられる。
「私は貴女に触れることもないし、私にも触れないでほしい」
レインの条件はひとつ、触らないこと、触ることを求めないこと。
実はレインは女性に触れられると、身体にひどいアレルギー症状が出てしまうのだった。
女性アレルギーのスノープリンス侯爵 × 誰かを愛することが怖いブリザード令嬢。
過去に深い傷を抱えて、人を愛することが怖い。
二人がゆっくり夫婦になっていくお話です。
元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?
氷雨そら
恋愛
結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。
そしておそらく旦那様は理解した。
私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。
――――でも、それだって理由はある。
前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。
しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。
「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。
そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。
お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!
かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。
小説家になろうにも掲載しています。
傷物令嬢シャルロットは辺境伯様の人質となってスローライフ
悠木真帆
恋愛
侯爵令嬢シャルロット・ラドフォルンは幼いとき王子を庇って右上半身に大やけどを負う。
残ったやけどの痕はシャルロットに暗い影を落とす。
そんなシャルロットにも他国の貴族との婚約が決まり幸せとなるはずだった。
だがーー
月あかりに照らされた婚約者との初めての夜。
やけどの痕を目にした婚約者は顔色を変えて、そのままベッドの上でシャルロットに婚約破棄を申し渡した。
それ以来、屋敷に閉じこもる生活を送っていたシャルロットに父から敵国の人質となることを命じられる。
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる